地震に前兆はある?|30年以内に大地震が発生する確率や対策を紹介

遠藤 香大(えんどう こうだい)
地震大国である日本では、いつどこで大地震が発生してもおかしくありません。地震の発生前には「前兆」と呼ばれる現象が見られることも多く、事前に備えることで被害を最小限に抑えられるでしょう。
この記事では、地震の前兆の可能性がある現象や、30年以内に大地震が発生する確率について説明します。企業が行うべき地震対策についても紹介するため、経営者や役員、経営企画部門、総務部門の方はぜひ参考にしてください。
目次
南海トラフ地震の予測可能性
地震の前兆として考えられている現象には、科学的根拠を示せないものが多いのが現状です。しかし、これまで実際に地震が発生する直前に不自然な現象が多く発生しており、それらのなかには調査結果に基づいて、前兆の可能性が指摘されているものもあります。
そのような現象が発生したあとに地震が来るとは言い切れないものの、備えておくこと自体は可能です。南海トラフ地震の被害を抑えるためには、前兆から発生タイミングを予測し、備えておく必要があります。そこで、この記事ではJESEA(地震科学探査機構)の調査結果をもとに、地震の前兆として考えられるものを紹介していきます。
地震の前兆の可能性がある現象
ここでは、JESEA(地震科学探査機構)の調査結果から明らかとなった、地震の前兆として考えられる現象を紹介します。
- 地盤の隆起や沈降
- プレスリップ
地盤の隆起や沈降
地震の前兆として、震源地周辺の地盤の隆起や沈降が重要な指標になると考えられています。JESEAによると、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震の約5か月前から震源地周辺の地表全体が隆起と沈降を繰り返していました。
▲出典:JESEA
地震発生前の隆起沈降図で、震度5弱以上の揺れを観測したエリアを確認してみると、沈降したエリアで大きく揺れていることが明らかとなりました。このことから、地盤の沈降が進行し、隆起に転じたことにより、北海道胆振東部地震を誘発したと考えられます。
(参考:北海道胆振東部地震|JESEA)
プレスリップ
プレスリップとは、地震の発生前に震源域付近の断層面で起こると考えられているゆっくりとしたすべり現象のことです。JESEAが東日本大震災について調査したところ、地震発生の3日前から観測地点でプレスリップが観測されました。
地震発生の直前には、北上ミニプレートが大きく東南東方向に滑ったことにより、異常なひずみが発生していました。そのあと、プレートが元の位置に戻ろうとした反発力により、大地震が発生したと考えられています。
(参考:東日本大震災を科学分析して捉えた「異常変動」と「前兆現象」|JESEA)
地震の前兆と考えられない現象
これまで地震の前兆と考えられている現象を紹介してきました。ここでは地震の前兆ではないと考えられている現象を紹介していきます。
- 地震雲
- 深海魚の出現
地震雲
地震雲とは、地震の前に現れるという特殊な形状の雲のことです。SNSで多くの人が地震雲のような写真を投稿していますが、地震と雲の関連性を示す証拠は見つかっていません。
以下は、公益社団法人日本地震学会の公式サイトに掲載されている、地震雲に関するFAQの抜粋です。
地震研究者の間では一般に、雲と地震との関係はないと考えられています。地震の前兆としての「雲」に関する研究は、過去に何度か発表されたことがあるのは事実で、雲と地震の関係が皆無であると断言はできません。しかしながら、過去の報告例は大地震の前にたまたま特異な雲の形態をみたことで、地震と特異な雲の形態を結びつけてしまうケースが圧倒的に多いのではないかと考えられています(その一方、地震が起きなかった場合には雲のことを忘れてしまいます)。
(引用:公益社団法人日本地震学会)
上記からわかるように、地震研究者のなかでは、地震雲は地震の前兆ではないと考えられているのです。報告されている地震雲のほとんどが、飛行機雲や巻雲・巻積雲、層積雲などで説明がつくとされています。
深海魚の出現
地震の前兆として、深海魚が海岸に打ち上げられる現象が報告されることがあります。そのため、深海魚の出現は地震の前兆ではないかと考えられてきました。しかし、海大学海洋研究所と静岡県立大学の研究グループは、深海魚の出現は大地震の発生に必ずしも結びついていないことを明らかにしました。
研究で「リュウグウノツカイ」や「サケガシラ」など8種類の深海魚に絞って調査を実施したところ、1928年から2011年までに336件の漂着や捕獲の実例が見つかりました。さらに、深海魚の出現日から30日以内に、出現場所から半径100km以内に発生したマグニチュード6.0以上の地震を調査した結果、深海魚が出現してから大地震が発生したケースは2007年の新潟県中越沖地震のみでした。
(参考:学校法人東海大学)
30年以内に大きな地震が来る確率
日本は世界有数の地震大国であり、近い将来に大きな地震が発生する可能性が高いと言われています。ここでは、30年以内に大きな地震が発生する確率について見てみましょう。
海溝型地震が発生する確率
海溝型地震とは、海のプレートが陸のプレートの下にもぐりこむことによって発生する地震のことです。代表的なものに、関東大震災や東日本大震災が挙げられます。
数十年から数百年という短い期間で地震を繰り返すのが、海溝型地震の特徴です。たとえば、宮城県沖で起こる地震の平均発生間隔は約37年であり、約30年前に地震が発生しています。そのため、10年以内にマグニチュード7.5前後の地震が発生する確率は60%程度で、30年以内に発生する確率は99%に達しています。
また、30年以内に震度6 弱以上の揺れが起こる確率を見てみると、太平洋側の大部分が26%以上 となっており、高い確率となっています。海溝型地震は規模が大きくなりやすく、津波を伴うことも多いため、十分な注意が必要です。
(参考:内閣府|特集 地震を知って地震に備える!)
活断層型地震が発生する確率
活断層型地震とは、陸地の活断層で発生する地震のことです。代表的なものに、阪神・淡路大震災や熊本地震、大阪府北部地震が挙げられます。
平均活動間隔が長いのが、活断層型地震の特徴です。日本列島を二分する糸魚川静岡構造線断層帯の平均活動間隔は、約1000年です。最後に発生した地震が約1200年前であることから、今後30年以内にマグニチュード8程度の地震が発生する確率は14%で、50年以内に発生する確率は20%、100年以内に発生する確率は40%といわれています。
また、30年以内に震度6 弱以上の揺れが起こる確率を見てみると、多くは0.1%未満となっていますが、決して安全を意味しているわけではありません。発生確率は低くなっていますが、いつ地震が発生してもおかしくないという認識は必要です。
(参考:内閣府|特集 地震を知って地震に備える!)
企業における地震対策の重要性
地震大国である日本で企業が事業を継続していくためには、地震対策が欠かせません。ここでは企業における地震対策の重要性について説明します。
従業員の保護
企業には従業員の安全を守る責任があり、これは安全配慮義務と呼ばれています。労働契約法では、労働者の生命や身体などの安全を確保する必要があることが定められています。
(労働者の安全への配慮)第五条使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする
(引用:e-GOV法令検索|労働契約法)
法律で安全配慮義務について定められていますが、違反したとしても罰則があるわけではありません。しかし、安全配慮義務を怠ったことにより従業員が怪我を負った場合には、従業員から損害賠償を請求される可能性があります。
事業の継続
地震によって企業の建物や設備、インフラが被災すれば、事業の継続は困難です。事業が中断する期間が長くなればなるほど、企業の存続が危うくなるため、迅速に事業を復旧することが企業に求められます。
事業を継続させるためには、平時からBCPの策定や設備の固定、データのバックアップなどの対策を講じることが重要です。また、サプライチェーンの寸断によって事業継続が困難になるケースも想定されるため、調達先の分散化や代替調達先の確保など、サプライチェーンのリスク管理も欠かせません。
企業がすべき地震対策3選
企業が行うべき地震対策にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは企業がすべき地震対策を3つ紹介します。
BCPを策定する
BCP(Business Continuity Planning)とは、緊急事態が発生した際でも、事業を継続できるように具体的な手段などをまとめた計画のことです。日本語では、事業継続計画と訳されます。
BCPを策定しておけば、地震発生時にどのように行動すべきかが明確になり、迅速な対応が可能となります。また、顧客からの信頼を得られる、税制優遇や金融支援を受けられるといったメリットもあるため、まだBCPを策定していない場合にはこれを機に策定を始めてみることがおすすめです。
内閣府が公表している「令和6年版 防災白書」によると、BCPを策定している企業は、大企業で76.4%、中堅企業で45.5%でした。BCPを策定している中堅企業は50%を下回っているものの、策定中である企業は12.1%、策定を予定している企業は24.5%であることから、約80%の中堅企業がBCPを策定済み、または策定を予定しています。
▲出典:令和6年版 防災白書
しかし、いきなりBCPを策定するとなっても、どのように策定すればよいのか分からないという方も多いでしょう。以下の記事では、初めての方でも策定しやすいようにBCPマニュアルの作成手順を解説しています。BCPコンサルタント監修のテンプレートも紹介しているため、BCP策定を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
オフィスの家具を固定する
地震の際、オフィスの家具が転倒し、従業員がケガをする危険があります。また、家具の転倒によって避難経路が塞がれ、迅速な避難の妨げになることもあります。そのため、地震が発生した際にもオフィスの家具が転倒しないよう、耐震ポールなどで適切に固定しておきましょう。
東京都防災ホームページでは、固定のポイントとして、以下のものが紹介されています。
- 金具で床、壁下地の鉄骨、コンクリートなどとボルトで固定する
- 上下二段式の家具は上下を連結する
- 家具を左右または後ろ側の家具と相互に連結する
- 扉の開放防止や引き出しの飛び出し防止のために、ラッチ付きやセーフティロック付きの家具を選び、故障したら修理する
- 家具類の扉や引き出しは開けたままにせず、使用頻度の低いところは施錠する
- ガラスに飛散防止フィルムを貼る
- 避難経路をふさがない位置に家具類を配置する
- 重い収納物を下に入れ、重心を下げる
- 家具の上に物を置かない
- 時計、額縁、掲示板などは落下しないように固定する
(参考:東京都防災ホームページ)
安否確認システムを導入する
地震発生時には、従業員の安否確認が重要な課題となります。地震発生などの非常時には、アクセスが集中して連絡が取れにくくなることが多いため、安否確認システムを導入して迅速に安否確認を行える体制を整えておくことがおすすめです。
安否確認システムとは、災害時に従業員の安否情報を自動で確認できるシステムのことです。非常時に自動で安否確認のメッセージを通知し、従業員からの回答も自動で集計します。迅速に緊急対応できる人員を把握できるため、次のアクションにスムーズに移行できて、事業が復旧するまでの期間を抑えることにつながります。
以下の記事で、安否確認システムのメリットやデメリット・選び方について詳しく解説しています。興味がある方は、ぜひあわせて読んでください。
トヨクモの「安否確認サービス2」
トヨクモが提供する『安否確認サービス2』は、AWSの堅牢なデータセンターで運用している安否確認システムで、もしものときにも安定して稼働します。2024年に能登半島地震が起こった際にも活躍しました。
これまでの導入実績は4,000社以上で、さまざまな業界の企業や団体で利用されています。初期費用が0円で、最低利用期間もないことから、導入ハードルの低い点が特徴です。料金プランもわかりやすく、初めて安否確認システムを導入する企業でも導入しやすいでしょう。
なお、30日間の無料お試しを用意しています。機能制限は一切なく、30日が経過しても自動で課金されないため、興味がある方は一度実際に操作してみてください。
初期費用・解約費用 | 0円 |
月額費用(税別) | ライト:6,800円プレミア:8,800円ファミリー:10,800円エンタープライズ:14,800円 |
最低利用期間 | なし |
主な機能 | 外部システム連携/通知条件の設定/予行練習/自動一斉送信/回答結果の自動集計/家族の安否確認/災害以外のお知らせ送信ほか |
無料トライアル | あり(30日間の無料お試し) |
地震に備えて今から準備を始めよう
地震大国の日本では、いつ大きな地震が起きてもおかしくありません。まだ地震対策を行っていない場合は、従業員を保護して事業を継続させるためにも、地震対策を始めましょう。
世間で地震の前兆と噂されている現象には、科学的根拠が十分でないものもありますが、それでも備えは欠かせません。本記事では、JESEAの調査をもとに、地震の前兆と考えられる現象を紹介しました。この現象は実際の地震を調査して導き出されたものであり、信頼できるデータと考えられます。このような現象が発生した際には、地震に備えて速やかに行動しましょう。
トヨクモの『安否確認サービス2』では、定期的に全国一斉訓練を実施しています。訓練後にはレポートが送付され、そのレポートでは社内の回答率の推移や訓練全体の平均回答時間などを確認することが可能です。これにより自社の防災力を確認できるため、安否確認システムの導入を検討している方は、ぜひ選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。