地震発生時、従業員が業務中や通勤途中で負傷したら、労働災害として認定されるのでしょうか。厚生労働省のQ&Aや通達文を参考に、どのようなケースで労災が認められるのかを詳しく解説します。さらに、労災を防ぐために事前に企業が取るべき対策についても紹介します。従業員を守り労災リスクを最小限に抑えるヒントとして、ぜひ参考にしてください。
編集者:遠藤香大(えんどう こうだい)
トヨクモ株式会社 マーケティング本部に所属。2024年、トヨクモ株式会社に入社。『kintone連携サービス』のサポート業務を経て、現在はトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営メンバーとして編集・校正業務に携わる。海外での資源開発による災害・健康リスクや、企業のレピュテーションリスクに関する研究経験がある。本メディアでは労働安全衛生法の記事を中心に、BCPに関するさまざまな分野を担当。
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地震発生時の労災とは
労災とは労働災害の略称であり、業務中もしくは通勤中に発生した傷病を指す言葉です。では、地震が起きたときに発生する労災には、どのようなものがあるのでしょうか。労災が厚生労働省に認定されると、労災保険の適用によって、従業員は医療費の給付を受けられます。
労災の認定を受けると、通常、企業にはデメリットがあるとされます。理由は労働保険料や休業補償の負担に加え、労働基準監督署に送る労働者死傷病報告の審査次第では、民事責任や刑事責任を負うおそれがあるためです。仮に法的責任を問われると、企業として評判が下がるリスクも発生します。
とくに地震発生時は、作業場や事務所内の倒壊事故や津波の被害による従業員の負傷、死亡リスクが存在します。災害は不可抗力であるものの、地震に関連した負傷や死亡事故は労災として認められやすい傾向があります。
労災の定義や事例、対象方法については、以下の記事も参考にしてください。
労災が認められる事例
地震発生時に、労災が認められた実例を紹介します。業務中の災害と通勤中の災害は、それぞれどのような条件で労災と認められるのかを確認しましょう。
業務災害のケース
- 仕事中に地震や津波に見舞われ、怪我や死亡につながった事例
- 出張先の地域で地震や津波の被害に遭った事例
- 仕事の休憩時間中に地震や津波の被害にあった事例
通勤災害のケース
- 自宅ではなく避難所から会社への通勤中に怪我をした事例
- 帰宅中に警報が発令され、自宅ではなく避難所に向かう最中で怪我をした事例
- 地震の影響で交通機関が止まり、長時間の徒歩帰宅中に怪我をした事例
これらのケースは、すべて労災として認められます。
業務災害として認められるには、地震や津波が危険な状況下で仕事をしていたという条件が求められます。つまり、仕事中や休憩中の事故は、労災の認定が可能です。また、出張には業務命令が伴うため、出張先での被災も労災に含まれます。
通勤災害の認定条件は「住居」と会社を行き来することです。自宅が利用できないとき、避難所は一時的な住居として認められます。通勤の移動手段は、災害時の交通状況によって臨機応変に判断されます。
(参考:厚生労働省「東北違法太平洋沖地震と労災保険Q&A」)
地震による労災認定は拡大している
地震が原因で発生した傷病は、近年では広い範囲で労災認定される傾向にあります。
労災認定の主管である厚生労働省は、地震を「天災地変」と位置づけています。天災地変とは、暴風・地震・落雷・洪水などの自然が引き起こす災害のことです。
従来は、天災地変によって生じた傷病は、原則として労災の認定は受けられない傾向にありました。現状としては、日中に発生し、多くの従業員が被害を受けた東日本大震災以降、業務中や通勤中の被災は積極的に労災として認めようとする動きがあります。
東日本大震災では、厚生労働省から以下のような通達文が出されています。
業務災害
業務遂行中に、地震や津波により建物が倒壊したこと等が原因で被災した場合にあっては、作業方法や作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものとして業務災害として差し支えない。通勤災害
(引用:厚生労働省「東北地方太平洋地震に係る業務上外の判断等について」)
業務災害と同様、通勤途中で津波や建物の倒壊等により被災した場合にあっては、通勤に通常伴う危険が現実化したものとして通勤災害として差し支えない。
前述の引用文では、地震や津波による怪我が業務災害と通勤災害の両方で労災認定を受けられることが示されています。
また、地震が発生すると企業の建物に被害が生じ、労災認定の事務処理に必要な書類を用意できないケースが想定されます。そこで、労災の認定にあたっては代替資料の提出や、聞き取り調査を根拠とした認定が可能です。つまり、地震や津波による怪我は広い範囲で労災認定を受けられるといえます。
従業員を守り、労災を防止するために
ここまでで、現在の地震による怪我や志望には、労災が広く認められることをお伝えしてきました。一方で、労災の発生を低減するため、何より大切な従業員を守るためにも、地震の発生に備えた事前準備は、企業にとって不可欠です。
以下では、3つを地震対策として紹介します。それぞれの具体的な進め方や、導入によって期待できる効果を確認しましょう。
防災訓練の実施
防災訓練を実施すると、従業員が地震発生時の適切な行動を知ることができ、怪我や事故に遭うリスクを減らすことができます。
例えば、企業全体で実施する避難訓練では、地震の発生を想定し、正しい経路で安全な場所まで避難をする経験を積むことが重要です。災害時の避難方法が曖昧な場合、危険な場所に留まり続けるリスクや、行動を焦って転倒し怪我を負うリスクが発生します。避難訓練を通じて災害時の行動を明確にすることで、緊急事態が発生した際にも安全な避難ができます。
応急救命訓練も有効です。従業員が怪我を負った際、周囲にいる従業員によって適切な応急処置ができれば、被害を最小限に抑えられる可能性が高まります。怪我の度合いを小さくできれば、労災認定のリスクが下がり、従業員の回復も早まるでしょう。
また、以下の記事では防災訓練の種類や、事前に準備する内容などを解説しています。初めて防災訓練に取り組む企業担当者の方に向けて「防災訓練マニュアル」の資料を用意しています。ぜひ活用ください。
BCP(事業継続計画)の策定
BCPの策定によって、災害時における事業と従業員の安全確保が可能です。BCPは「事業継続計画」の略称で、災害やシステム障害など、事業の継続に脅威を与える緊急事態の発生に備えた方針を意味します。
地震が発生して社屋や従業員に被害が及ぶと、事業の継続は困難に陥ります。BCPを事前に策定し、従業員の安全を考慮した計画を立てておくことで、従業員を守りながら事業を早期復旧させることができます。
経済産業省九州産業経済局の資料によると、BCPの策定で災害後の素早い事業復旧に成功した例として、木造住宅の設備施工を行う新産住拓が挙げられています。この企業では、従業員の安否確認ができるシステムの導入や災害用物資の常備、ストレスチェックの導入など、社員の安全と顧客のケアを最優先に考えた施策をBCPに盛り込みました。その結果、2016年の熊本地震が発生した際に、従業員の安全を確保したうえで、顧客からの物件の補修や対応、ケアの依頼に3,000件以上対応することができました。
(参考:経済産業省 九州産業経済局 BCP事例集「社員の安全と顧客のケアを最優先!企業信頼度アップへ」)
BCPをあらかじめ策定すると、万が一の災害発生時にスムーズな行動が可能です。こちらの記事では、BCPマニュアルのテンプレートをご用意しています。ぜひダウンロードしてご利用ください。
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安否確認システムの導入
安否確認システムは、あらかじめ登録した定型文のメッセージを従業員に向けて自動で配信できるシステムです。災害発生時には従業員の安否確認が重要になります。安否確認システムを導入することで、従業員に怪我はないか、危険な状況でないか迅速に把握することができます。
BCPの策定もあわせて行うことで、従業員は緊急時でもよりスムーズな判断のもとで行動できるでしょう。
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地震への事前準備として安否確認システムを導入する際は、トヨクモの『安否確認サービス2』をおすすめします。
トヨクモの『安否確認サービス2』は、災害の発生にあわせた従業員への一斉送信が可能で、回答の自動集計によって行動方針をすぐに策定できます。従業員に迅速で明確な指示を出せることで、社内の混乱を防ぐことができます。
災害発生時に大切な従業員の安全を守り、労災の発生を防いだうえで事業の迅速な復旧を目指したいときは、『安否確認サービス2』をぜひご利用ください。
地震対策で従業員を守ろう
この記事では、地震と労災の関係について解説しました。労災は業務災害と通勤災害の2種類に分かれ、地震の影響で発生した怪我は労災として広く認められる傾向にあります。
労災が発生することは企業の負担になるだけでなく、従業員の被害を意味します。従業員の安全を守るためにも、労災の発生を避けることが大切です。
労災の発生リスクを下げ、従業員の安全を確保するためには、事前の地震対策が有効です。とくに、防災訓練・BCP策定・安否確認システムの導入は、地震発生を想定した準備に役立ち、スムーズな行動と迅速な事業復旧に貢献します。
また、災害発生時の行動指針が社内で明確に共有できていることで、緊急事態下でも慌てずに落ち着いた行動が可能です。冷静な行動をとることは、労災の発生リスク低減に有効です。
日本は地震大国であり、どの地域でも大規模な地震が発生するおそれがあります。社内で地震対策をあらかじめ策定し、大切な従業員を守りましょう。
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地震に備え、ぜひ導入をご検討ください。
編集者:遠藤香大(えんどう こうだい)
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