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非常用発電機とは?オフィスの防災対策に必要な理由を解説

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オフィスには業務を遂行するうえで不可欠なPCやWi-Fiのほかにも、命を守るためのインフラが集積されています。そしてそのほとんどが電源を必要とするため、オフィスの防災対策に非常電源は欠かせません。

今回は非常用発電機がオフィスの防災対策に必要な理由を解説します。

非常用発電機とは?

そもそも非常用発電機とはどのような機器なのでしょうか。はじめに、非常用発電機の特徴や用途、常用発電機との違いを解説します。

万が一のときに電力を供給する設備

自然災害が発生した際、設備への電力が失われる可能性があります。そのような状況で使用するものが「非常用発電機(非常用発電設備)」です。

消火に必要なスプリンクラー、消火栓、非常用エレベーター、排煙設備などに接続し、万一の事態にも設備が動作するように電力を供給します。

非常用発電機の設置基準は、消防法や建築基準法で細かく規定されています。また、稼働するかどうかの点検を定期的に実施することが必要です。

常用発電機との違い

常用発電機は平時の業務を遂行させる目的で設置されます。そのため、長時間運転を想定した構造をしており、継続的な運転が可能です。オフィスや工場など、業務を止められない現場には不可欠な設備といえます。

一方、非常用発電機は緊急の電源です。自然災害が発生した際、スプリンクラー、消火栓、排煙機などの消火設備を正常に作動させることを目的としていて、要件を満たす建物については法律で設置が義務づけられています。

非常用発電機がオフィスの防災に役立つ理由

非常用発電機は、人命を救うための設備に使用される発電機です。

しかしそれだけでなく、オフィスの防災にも重要な役割を担っています。ここからは、非常用発電機がオフィスの防災に役立つ理由を説明します。

災害時に電力を使える

大きな自然災害が起きた際に問題となるのが、ライフラインの断絶です。

電気、ガス、水道などのライフラインは日常生活を送るうえで欠かせないインフラです。しかし大きな災害が起きると、これらを使用できない可能性があります。

3つのライフラインのなかでも、災害時の復旧に最も急を要するとされるものが電力です。非常用の発電機があれば、自然災害で停電したとしても電力を確保できるでしょう。

また、非常用発電機があれば、データ管理や通信の確保など、ビジネスにおける最低限の業務継続にも役立ちます。

従業員の安全を守れる

大規模災害が夜間に発生すると、停電により周囲や足元が見えず、安全が確保できません。オフィス内や倉庫にいる従業員が避難をする際に、思わぬ怪我をする可能性があります。

従業員の安全を守るうえでは、非常用電源が正常に稼働し、電源の供給が確保されている必要があります。

また、ラジオやテレビの電源を確保することで、避難や自然災害に関する情報を得られることも有益です。

BCP対策になる

BCPとは「事業継続計画」と訳されます。

会社が被災した場合において、資産の損害を最小限にとどめながら事業の継続や復旧を可能とするために決めておく計画のことを指します。

非常用発電機で確保できる電力をもとに電源の供給時間をBCPで事前に計算できていれば、被災時に優先して取り組むべき行動が判明するでしょう。いついかなる状況においても、電力の供給手段が確保できていれば、BCP策定にも幅が広がります。

https://www.anpikakunin.com/docs/firstbcp.pdf

非常用発電機の種類と仕組み

非常用発電機にはいくつかの種類があります。それぞれに発電方法の違いや特徴があるため、設置や稼働にあたって迷わないように、事前に理解しておくことが大切です。

ガスタービン式非常用発電機

ガスタービンエンジンを搭載した非常用発電機は、発電された電気の品質安定性と排気色の良さがメリットです。

たとえば、データセンターでは高い電力品質を求められるため、ガスタービン式非常用発電機が向いています。

また、後述するディーゼルエンジン式非常用発電機に比べ、騒音や振動が少ないことも特徴です。したがって「黒煙」や「ばい煙」規制の厳しいエリアにも設置しやすい発電機です。

デメリットとしては、コストの高さが挙げられます。初期費用である本体価格のコストだけでなく、使用するにあたっての燃料費も多くかかります。燃料の消費量はディーゼルエンジン式のおよそ2倍です。

また、排風圧がディーゼルエンジン式に比べて強く、排気口が限られる点もデメリットです。

ディーゼルエンジン式非常用発電機

ディーゼルエンジン式非常用発電機のメリットとしては、コストと耐久性が挙げられます。

ディーゼルエンジンは発電機以外にも広く使用されているため、共通の部品が多数存在し、部品代が安価です。本体価格も比較的安く、エンジンの耐久性が高いこともコストパフォーマンスの良さにつながっています。

2018年6月の消防法改正により、非常用発電機に義務づけられる負荷試験が変更され、ガスタービンエンジンは負荷試験が免除されました。しかし、ディーゼルエンジンは免除されておらず、引き続き負荷試験の実施が必要です。

デメリットとしては、稼働時の音や黒煙など、ディーゼルエンジンに特化した構造的な問題があります。ディーゼルエンジンはピストン運動をするため、エンジン音や振動が大きいのです。

ハイブリッド型非常用発電機

ハイブリッド型の発電機には次の2種類が存在します。

  • ガスタービン式とディーゼル式の発電機に蓄電池を搭載したもの
  • ガソリンとLPガスのどちらでも運転が可能なもの

前者は、発電中に蓄電池を充電します。充電が完了したあとは蓄電池からの電力供給に切り替わります。一般の発電機と比較し、より長い時間電力供給が可能であり、燃料補給の手間を省ける点がメリットです。

後者は、ガソリンを使い切ったあとにLPガスへ切り替えられます。LPガスは自然災害発生時に強いとされているため、万一のときに重宝するでしょう。

ハイブリッド型非常用発電機は、自然災害発生時における想定外の事態にも対応しやすく、事業の早期復旧に役立つと考えられています。

オフィスにおける非常用発電機の選び方

これからオフィスに非常用発電機を設置する場合、発電機の選択で悩むこともあるでしょう。ここではオフィスの規模、使用方法、調達する燃料などから選ぶべき発電機を解説します。

オフィスの規模

発電機を選ぶうえで、オフィスの規模は大きな判断材料です。

一般的に、大きな事務所には大きな出力を持つ発電機が適しています。普段から大きな電力を使う場合、非常用の発電機についても高出力に対応できる製品がおすすめです。

使用する電気機器の種類や数

電力を使用する機器の種類や数を正確に把握しましょう。

電力消費量の高い機器が多ければ、大きな発電機を用意します。一方、被災時でも最低限のPCや電子機器が稼働すれば事足りる場合、その数を把握し、対応する小型の発電機を用意しましょう。

PCやテレビなど、どのような電子機器がどの程度の期間動いてほしいかを考え、必要な電力を計算してください。そして、その電力が賄える発電機を導入します。

燃料の種類

非常用発電機を導入する際には、燃料の備蓄もしておきましょう。

せっかく非常用発電機を用意しても、燃料がなければ稼働できません。したがって、必要な燃料の量も計算して備蓄しておくことが大切です。

ただし、燃料は消防法に則って取り扱ってください。ガソリンや軽油などは引火性の液体であり、消防法上の第4類危険物とされます。それぞれ保管場所や指定数量が定められているため、取り扱うときは各市町村長への届出や申請を適切にしましょう。

非常用発電機導入の際の注意点

非常用発電機は、万一の事態に効果を発揮するツールです。しかし、誤った使い方をすると非常に危険なため、取り扱いには細心の注意が必要です。ここからは、非常用発電機の注意点を解説します。

設置の際は関連する法律を遵守

設置する際は関連する法律を遵守しましょう。関連する法律としては、消防法建築基準法電気事業法などがあります。

消防法の対象は、災害時に非常用発電機を必要とする消防用の設備があり、延べ床面積が1000㎡以上の商業施設、病院、オフィスビルなどです。非常用発電機を設置する際は、この規制をクリアしたうえで、所轄の消防署に届出を提出します。

建築基準法は、高さ31m以上の建築物や不特定多数の人が出入りする建築物に、非常用発電機の設置を義務づけています。半年から1年周期で点検を実施し、特定行政庁へ点検報告をしなければなりません。

電気事業法は、以下の条件を満たした発電機を、電気工作物に位置づけています。

  • エンジン(内燃機関)を備えている
  • 10kw以上の発電容量がある
  • ガスタービン式の発電機である

設置する際は、電気主任技術者の選定と届出をしたうえで、月次点検と年次点検を実施します。

電気技術者を自社で雇用する必要はないため、アウトソーシングでも構いません。

点検が必要

非常用発電機は、緊急時に正しく稼働しなければなりません。定期的な点検が消防法により義務化されているため、定期的な点検を怠ったり虚偽の申請をしたりすると罰則の対象です。

点検方法は2種類です。

ひとつは『実負荷試験』と呼ばれるもので、実際に稼働させる点検のことです。発電機の点検と同時に防災設備の動作点検ができるメリットがありますが、瞬間的な停電を伴うというデメリットもあります。

もうひとつの方法は『模擬負荷試験』です。非常用発電機に試験用の装置を接続し、負荷をかけて点検します。模擬負荷試験は電力源の切替が不要なので停電を伴いません。

試験に必要な人材は少数で済み、試験費用が抑えられる点もメリットです。

設置場所

非常用発電機は稼働する際に大きな音が出ます。排気ガスも出るため屋内では使用できません。

屋内に保管している場合、非常時に屋外へ搬出する必要があります。

大型の発電機は、持ち運びが困難です。緊急時の移動を想定し、高出力で持ち運びやすい発電機を選びましょう。

非常用発電機で災害に備えよう

今回の記事では、非常用発電機について解説しました。

自然災害発生時は電力の確保が欠かせません。電力がなければ、安全確認や情報収集ができないだけでなく、企業の事業継続にも影響が出ます。

非常用発電機は非常時の電力確保に最適です。オフィスの防災にも役立つでしょう。ぜひ、今回紹介したことを参考にして、企業やオフィスに非常用発電機を導入してください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。