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ネット炎上で評価が上がった?賛否を呼んだ2015年ネット炎上5大事例

ネット炎上」は企業が情報を発信する上で避けては通れない大きな問題です。みんなのBCPでは以前に『ソーシャル時代の企業防衛。ケーススタディで学ぶ「ネット炎上」対策』として、ネット炎上が起こる原因や対策法についてご紹介しました。

ここでは前回ご紹介した内容を踏まえ、より具体的に2015年下半期に話題を集めた5つの事例についてご紹介します。

何が原因となってネット炎上が起ったのか、またどういった内容であれば違った反応が得られたのか、ぜひ一緒に考えながら各事例について見ていきましょう。なお、それぞれの記事に編集部のトッティがコメントをしています。

海外からの逆輸入で再燃!“牛の擬人化”が話題を呼んだブレンディの動画

※現在、動画は非公開となっています。

【概要】
ブレンディの挽きたてカフェオレを紹介する動画が大きな話題に。高校生の姿をした卒業式ならぬ“卒牛式”に臨む“牛”たちが言い渡されるのは、動物園や闘牛場、食肉工場といったそれぞれの進路。彼らは擬人化された「牛」で、進路が決まるまでに努力を重ねる姿が描写されている。こちらの動画について、制作者は「主人公が高い目標を達成するための『努力』や『達成感』を表現した」としている。

■ 炎上ポイント
・自分が望まない進路を言い渡され、泣き叫ぶ男子生徒の様子が残酷に見えるという点
・女子生徒が走る際に胸の揺れが強調されるなど、女性差別的にとらえられる表現が含まれている点
・就職活動における厳しさや強い社会風刺色が視聴者に強い印象を残す点

■ 総括
SNS上だけでなく、ブログや各種メディアでも多数取り上げられたこちらの動画。公開当初は、シンガポールで行われたアジアの広告祭『スパイクスアジア』でも銅賞に選ばれるなど、映像としての完成度が評価されていました。その後、日本国内に住む外国人ライターが海外に向けてこの動画を紹介したところ、たちまち話題となり、海外から逆輸入されるかたちで注目度が再燃するという、特殊な取り上げられ方をした動画です。

■ 参考
これアカンやつでしょ!?ブレンディのCM、今ネットが大炎上中!!
“牛の擬人化”で炎上のブレンディCM 制作意図をAGFに直撃「努力と達成感が強調されるよう留意した」

プレゼンテーション3

「このCM、特に大きな問題を抱えているとは思えないですけどね。結局webはノイジーマイノリティの意見が通る、という典型的な例の様に感じます。上記をここまで嫌悪する感覚が「普通」であれば、2014年11月公開当初から問題になっていそうなものですが、実際に騒ぎになったのは2015年9月〜10月になってから。時間差逆輸入炎上の様ですね。ただ、企業としては、いつこの様な炎上が起きたとしても、適切な対応ができるようにガイドラインを定めておくべきだと思います。今回の動画は既に削除され、AGFのHPを見ても特に意見や謝罪は述べられていません。これは凄く残念に思います。意見を述べるのであれば、そのページ(今回であればyoutube)にいくらでも意見は書けると思いますし、削除して謝罪するのであればHP等で公開すべきな様に感じます。」

高級ハムのネット通販で価格の誤表記。キャンセルされたショックで女性死亡の投稿も?

【概要】
インターネット通販で高級ハムのセットが648円で販売され、注文が殺到。後に誤表記だったことが判明し、価格を6048円に変更。販売側は全ての注文をキャンセル扱いに。一連の対応に苦情が殺到し、中には「キャンセルのショックで母が亡くなった」という投稿も…。

■ 炎上ポイント
・販売側の手違いにより誤った価格表記で販売し、それまでに届いていた注文を全てキャンセル扱いとした点
・「キャンセルのショックで母が亡くなった」という扇情的な内容の投稿があった点
・そもそも「母の死」という投稿自体がデマではないかという観点からも注目が集まった

■ 総括
ネット通販サイトにおける価格の誤表記については、あってはいけないことではあるものの、それ自体は何も目新しいものではありません。しかし、今回は「キャンセルのショックで母が亡くなった」というセンセーショナルな内容が絡んだことで、より注目度が高まったといえます。また、その投稿自体の真偽にも多くの意見が集まり、2次的な炎上が起こったといえます。

プレゼンテーション3

「嘘でも本当でもあまり面白くは無いですね。面白くもないネタにみんなで乗っかって大騒ぎをする、悪ノリのパターンでしょうか。ただ、この事業者側が一方的にキャンセル扱いにしたのは悪手だったのでしょう。受注件数にもよりますけど、もうちょっと丁寧なやりかたをするべきだったでしょう。」

『サーフィン×車』スバル新型フォレスターのCMで描かれた家族像に賛否

新型フォレスターの新CMをSUBARUファンのみなさまに、ひと足早く紹介!楽曲はスピッツの「渚」です。新島の自然を新型フォレスターが駆けめぐります。 #SUBARU #安心と愉しさを https://t.co/CJgIJtfosK pic.twitter.com/VSuLhKYM6f

— SUBARU/富士重工業株式会社 (@SUBARU_FHI_PR) 2015, 11月 16

【概要】
サーフィン初心者と思われる夫が妻と子を連れて車で海辺へ出かける。何度も転倒しながらも、最後には波乗りに成功。その様子を妻と子は車付近から見つめる。後部座席で眠る父と子の姿を横目に、妻は車を走らせ帰路につく。

■ 炎上ポイント
・「不器用ながらもサーフィンに挑戦し成功する夫のことを見直し、後部座席で眠る親子の姿を微笑ましく見守る妻」ととるか「夫の趣味に付き合わされた挙句、帰りは運転までさせられている妻」ととるかで大きく印象が異なる点

・このCM(動画)を通じて伝えたいメッセージが不明瞭ではないか?という意見も

■ 総括
「男尊女卑だ!」という意見がある一方で、実際にサーファーを夫にもつ妻からは、サーフィン後の体力的な問題や車を運転することの安全性の観点から肯定的な意見も出ています。理想とする家族像や見る人の環境などによっても大きく印象が変わる可能性があるようです。

■ 参考
『サーフィン×車』スバル新型フォレスターCMが炎上!?

プレゼンテーション3

「このような炎上パターンって、『メーカーのCM担当者は視野が狭い!今時こんなCMが刺さる層なんていねえよ!』というもっと視野の狭い人による弱パンチなパターンが多い気がします。自分が消費者代表みたいな。スバルさんの無視して動画を残している姿、惚れますね。」

炎上後評価が向上?ライフネット岩瀬社長とインターンを申し出た学生とのやり取り

【概要】
ライフネット生命岩瀬大輔氏の元に、ある学生がインターンシップの希望を申し出た。その学生はドアの前で待ち伏せするくらいの勢いだったため、岩瀬氏は手持ちの名刺をExcelファイルへ入力するという仕事を与えた。学生は2週間後に希望していたマーケティングの仕事ではなかったという旨を伝え、その仕事を辞めていった。

■ 炎上ポイント
・名刺の情報入力の作業自体は単純なものだが、学生がライフネット生命という成長企業の社長が持つ人脈に直接触れられることの価値が見過ごされているという点や、その中で得られた情報をいかにビジネスに結びつけるかがマーケティングなのではといった意見も

・一連の経緯が紹介されている記事のタイトルに【炎上】という表記が付いている点や「2週間で辞めやがった」と岩瀬社長が実際には言っていない表現が用いられ、内容が誇張されて紹介されている点

・ブラック企業、ブラック労働といった言葉が日々話題に上るように、労働環境に関するテーマは非常にセンシティブな側面があるため、記事の中で「その内容は驚くほどブラックなものだ。」といった表現が人によっては感情を逆なでする結果に繋がった可能性も

■ 総括
企業と学生の「仕事」に対する認識や、「インターンシップ」の捉え方の違いが双方にとっての食い違いを生む結果になったのかも知れません。

■ 参考
【炎上】ライフネット生命の岩瀬大輔社長「インターンさせてほしいって言ってきた学生に名刺のExcel入力の仕事をあげたら2週間で辞めやがった。単純作業でも楽しめよ」
ライフネット岩瀬社長のインターンめぐる発言に賛否 企業・学生にとって異なる目的

プレゼンテーション3

「web界隈に擦り寄るメディアとして有名なnet geekさんですが、感覚がずれて購読者に梯子を外された格好です。ライフネットさんでは無く、net geekさんの炎上案件ですね。『火事だー!』と叫び回っていたら、実は自分のところが焼けていた、というとてもほのぼのとした案件です。net geekさんは個人的にとても好きなメディアの一つです。」

美濃加茂市、アニメ「のうりん」とのコラボポスターの表現を巡り論争

pic.twitter.com/swrAPCdN2e

— 森 光正 (@hiihaa333) 2015, 12月 14

【概要】
岐阜県の美濃加茂市観光協会は、アニメ「のうりん」とコラボした企画を発表。告知用のポスターでは同アニメのキャラクター「良田胡蝶」が描かれたものの、「セクハラ」や「不愉快」といった反応が多く集まる。市民やスタンプラリーに協力した各店舗からは概ね好印象だったため、協会は困惑しつつもポスターを取り替えるなどの対応をとっています。

■ 炎上ポイント
・アニメ「のうりん」のファンからの反感を買ってしまった点
・過去に行われた同様のスタンプラリーはいずれも好評で、アニメファンを中心に観光客を集めていたという点
・市民やスタンプラリーに協力した各店舗は概ね好印象だったということもあり、ネット上の批判が行き過ぎではないかという意見も

■ 総括
ネット上では直接的に関わりのない第三者からも多くの意見や注目が集まるため、中には想定をしていないかったような批判や指摘が入る可能性があります。どこまでが表現の自由なのか、不適切な表現なのか、判断の見極めが重要になります。

■ 参考
美濃加茂市、アニメ「のうりん」コラボポスター撤去 ネット上の「セクハラ」「不適切」批判受け
プレゼンテーション3「件のアニメを良く知らないので、ノーコメントで良いでしょうか。こうして見ると、ジェンダーに関する問題は炎上率高そうですね。女性を弱者にしたてて作者を叩く、というのが分かりやすい流れのようです。上記の3例は女性蔑視されていますかねえ。。。暇で怒りっぽい人は、僕の大好きな中川淳一郎さんの『ウェブはバカと暇人のもの』をご一読ください。」

まとめ

今回取り上げた5件に関して共通するのは、情報を受け取る人の立場によって受ける印象が異なり、それによって大きな論争が起きているという点です。

また、その中でも動画が使われていたり、特にインパクトの強い内容が扱われていた場合は、より感情のエネルギーが増幅するといえるでしょう。加えて、その時々の社会情勢や時流によっても炎上の火種が変化していくことも見逃せません。

今後もネット炎上の傾向には注目していきましょう。

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