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72時間の壁を超えるには?災害時、社員を守るために企業が準備すべき7つのこと

72時間の壁”という言葉はご存知ですか?

災害発生から72時間が、生存率が急激に低下する分岐点となっていることから、救出・救助のデッドラインを表す言葉として使われているのです。

ここでいう生存率とは救出・救助が必要な負傷者を主に指しています。そして、企業が行うべきこととして東京都が定めている「帰宅困難者対策条例」では、企業は従業員を3日間オフィスに滞在させる必要があるとしています。これはつまり、3日間、すなわち72時間は、災害時に取るべき対策のリミットとして、ひとつの目安となる時間であることを意味します。

では、災害発生後72時間に取るべき対策を万全に遂行するために、企業は何を準備すべきなのでしょうか。この記事では、72時間を生き延びるために、企業が事前に準備できることを網羅的に紹介します。

災害から72時間のあいだ、企業が社員を滞在させなければならない理由


そもそも、企業が従業員を災害から72時間のあいだ滞在させる必要があるのは、なぜでしょうか。理由は2つあります。

1つめの理由は、地震による二次災害が落ち着くまでに、最低でも3日間はかかるということがあげられます。余震が続き、建物倒壊のリスクは続きます。その中で外出することで負傷する可能性は十分に考えられるのです。

もう1つの理由が、負傷者の救出・救助活動の妨げにならないようにするためです。生存率が急落する、災害発生から72時間のデッドライン。この時間内に負傷者を助けることが、救出・救助活動においても目安とされています。

そうした一刻を争うときに、負傷していない人が徒歩で帰宅するなどで出歩いてしまうと、救出・救助活動を妨げることになりかねません。さらに、帰宅中に被害に遭ってしまうと、自身が救助される側となってしまい、被害者が増えることになってしまいます。

以上の理由から、企業は災害発生から72時間のあいだ、従業員をオフィスに滞在させる必要があるのです。では、この72時間を生き延びるために、準備しなければならない7つのことを紹介しましょう。

1. 72時間を生き残るための備蓄品を準備する

水・食糧

生命線である、水と食糧。72時間をオフィスで過ごすための備蓄は必須です。備蓄量は次の通り。

・水(1人あたり1日3リットル、計9リットル)
──従業員200人の企業の場合、1800リットル必要。これは2リットルペットボトルにして900本の量。
・食糧(1人あたり1日3食、計9食)
──従業員200人の企業の場合、1800食必要。

なお、災害食を選ぶ際は、日常的に食べられるものを選ぶべきです。そうすれば、通常の食事として食べることもでき、一気に入れ替えるというコストを削減することができます。そのためには、美味しい非常食を選ぶ必要があります。

こちらの記事「2016年で一番美味しい非常食が決定!第一回「日本災害食大賞」レポート【防災EXPO2016】」では、2016年の「日本災害食大賞」に選ばれた非常食を紹介しています。美味しさ部門、機能性部門があるため、非常食を選ぶ際の参考になるはずです。

衛生用品


3日間集団生活を送るため、病気にかかる社員が出てくる可能性があります。それに備えるために、薬の備蓄は欠かせないでしょう。また、オフィスの衛生環境整備のためにも、衛生用品のストックは不可欠です。必要な衛生用品は次の通り。

・非常用トイレ(1日に5回として1人あたり15回分)
──従業員200人の企業の場合、3000回分必要。
・トイレットペーパー(1人1ロール)
・ティッシュペーパー(1部屋に1箱)
・救急セット(包帯・ガーゼ・絆創膏・消毒液など)
・薬(総合風邪薬、胃腸薬、解熱剤など)
・歯ブラシ(1人1本)
・タオル(1人1枚)
・毛布(1人1枚)
・生理用ナプキン(女性1人につき1個)

こちらの記事「災害時に社員の命を守る!会社に備蓄しておきたい薬・衛生用品12選」でも、詳しく紹介しています。

2. 「日常備蓄」を行う

「災害食大賞2016」機能性部門3位のカゴメ「野菜の保存食セット」

「災害食大賞2016」機能性部門3位のカゴメ「野菜の保存食セット」

こうした食糧や水は消費期限を考えて入れ替えをする必要があります。しかし、膨大な量の備蓄を一度に入れ替えようとすると、大変な手間とコストとなることでしょう。

そこで、従業員が日常的に食べるものとして保存しておきましょう。これを日常備蓄といいます。こうすることで、一度に入れ替えるという手間がかからず、備蓄の継続を行いやすくなります。

3. 防災訓練を行う


従業員の命を守るために、特に必須なのが防災訓練。とりわけ災害発生直後に行うべき行動である、初期消火、避難、救出・救助、応急救護の4つの訓練は必ず行いたいことです。

こちらの記事「【9月1日は防災の日】中小・ベンチャーの会社でもできる「防災訓練」のススメ」では、防災訓練の方法を紹介していますので、参考にしてください。

初期消火訓練

消火で大切なのは、火災発生から最初の2分間それを超えると自分で消火することは不可能になります。消防隊は7〜8分ほどで到着するとされており、初期消火に間に合いません。災害時であれば、なおさら到着が遅くなる可能性が高いでしょう。そのため、自分たちで消火する訓練を行う必要があるのです。

消火器の使い方といった火の消し方はもちろん、消火器がある場所の把握、火災警報器が作動するかどうかのチェックといったことは、事前に準備しておきましょう。

避難訓練

避難訓練では避難経路の確認と、避難時の行動の取り方を理解しておくことが必要です。オフィスが損傷し外に避難しなければならない場合、オフィスに留まる場合とそれぞれ分けて考えておきましょう。

救出・救助訓練

災害発生後は、負傷者がいないかの確認を取る必要があります。そのために、従業員の人数を確認し、行方不明者を探すという対応を取りますが、こうした救出・救助活動に当たる担当者を事前に決めておきましょう。

応急救護訓練

負傷者が出てしまったら、応急救護を行います。そのために包帯や消毒液やガーゼなどの救急セットの準備、万が一のためのAEDの設置は事前に準備しておくべきことです。しかし、ただAEDを設置しておくだけで、使い方がわからないのであれば意味がありません。救護担当を決め、基礎的な普通救命講習を受講してもらい、心臓マッサージ、人工呼吸、AEDの使い方も含めた人命救助の術を学んでおきましょう。

4. オフィス家具などの転倒防止対策


基本的なことですが、オフィスの家具や棚の転倒防止対策は、意外とできていない企業もあるのではないでしょうか。オフィスの家具はサイズが大きいため、地震が起きて転倒すると負傷者、下手をすれば死亡する可能性もあります。必ず対策しておきましょう。

5. ケガの防止対策


一度、あなたのオフィスを見渡してみてください。部屋の仕切りに大きなガラスが使われていたり、ガラスでできた机などはありませんか? 普段はオシャレなこうした設備も、一度地震が起きて割れてしまえば、途端に凶器に変わります。

これを対策するには、大きなガラスを使ったものを取り除くことが一番ですが、オフィスに備わっている場合は難しいでしょう。その際は、飛散防止シートを貼るなどして対策を取ってください。

ガラス以外にもケガの原因となるものはオフィスにはあります。例えば、吊り下がっているタイプのライトがあれば、落下する可能性があります。これも防災を考えるなら、天井に固定されているライトに交換した方がいいでしょう。

6. オフィスの耐震強度を確認する


いくらオフィス内部の対策ができていても、オフィスそのものが大地震に耐えられず損傷してしまえば、元も子もありません。オフィスの耐震性については事前に確認しておきましょう。管理会社に依頼して耐震診断を行ってください。もし、耐震性に問題がある場合、改修を検討すべきです。

7. ハザードマップで地域の災害リスクを把握する

アプリ「ARハザードスコープ」でハザードマップを表示させている様子

アプリ「ARハザードスコープ」でハザードマップを表示させている様子

オフィスの防災対策が完璧だったとしても、その地域が災害に弱い地域だったら被害は避けられないでしょう。ハザードマップを見て、あなたのオフィスがある地域はどんな災害リスクがあるのか知っておきましょう。例えば、海沿いであれば、洪水や津波対策は必須ですし、オフィスの周囲に木造住宅が多い地区なら火災が拡がるリスクがあることは認識しておくべきです。

こちらの記事「ポケモンGOだけがARじゃない!「ARハザードスコープ」で見る、新宿周辺の災害リスク」では、自分が今いる場所のハザードマップをAR機能を使って可視化するアプリで、東京のどんな場所が危険なのかを歩いて確かめています。身近な場所に災害リスクが潜んでいることがわかるはずです。

72時間の間に取るべき備えは万全ですか?

生存率が急激に下がり、救出・救助活動のデッドラインとされている72時間の壁。また、企業が社員をオフィスに滞在させなければならない時間でもあります。この72時間を生き延びるために、企業が準備すべきことを紹介してきました。

この準備を万全にすることこそ、企業の防災の備えとして何よりも優先すべきことなのです。ぜひ、参考にしてください。

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