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【緊急対策本部のあり方】万が一のリスクを信頼に変えるためのアクションとは 

企業の緊急対策本部とは、その名の通り「緊急事態」に関連する本部。企業の万一のときに備え、対応することで企業へのダメージを最小に抑えることを目的としています。

2020年4月16日、全国を対象とした緊急事態宣言が行われ、多くの企業が通常通りの事業継続が困難になりました。「緊急事態はそう訪れないから重要性が低い」と考えがちな企業の防災担当の方も、新型コロナウイルスの影響を受け、「緊急事態」を意識したことでしょう。

5月14日、約1ヶ月続いた緊急事態宣言は39県で解除され、残る8都道府県も解除に向けた議論が行われています。

1日も早く日常を取り戻すことを願わずにはいられませんが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」では意味がありません。毎年台風をはじめ、地震や集団食中毒、サイバーテロなどの被害によって企業が大きなダメージを負うことは少なくありません。

今回は緊急対策本部のあり方について「タイミング」「メンバー」「アクション」の3軸で説明します。緊急対策本部の全体像を知り、自社にとって必要な対策について一緒に考えてみましょう。

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【新型コロナウイルス】企業に必要な対応とは

 

緊急対策本部の目的

緊急対策本部の目的は「緊急時の統一した意思決定と素早い対応」そして「緊急時の情報収集、そして情報発信の一本化」です。

緊急事態が発生したとき、発生地点が局所的であったとしても、現場はもちろん、直接影響を被っていないオフィスや地域でさえも混乱します。そういった場合に備えて緊急対策本部を設立し、決定の判断を下す責任者(意思決定者)を明確にしておきましょう。

たとえば被災状況を把握したいとき、意思決定者が定まっていないと、事のありさまがわからない状態で指示が出され、さらに混乱した状態に陥ることも。事態についての最新情報をきちんと得たり、届けることもままならなくなるでしょう。

的確な意思決定と指示を出すために、性格な情報を収集し、関係各所に届ける必要が出てきます。あらかじめ定めておいた場所から適時、最新情報を提供し続けることで、社員や社員の家族、そして地域住民の方などを混乱させることのないよう準備をしておきましょう。

熊本地震でけが人0。「株式会社ミスターマックス」の事例


2016年4月14日以降、熊本県と大分県で相次いで発生した「熊本地震」。そのときの株式会社ミスターマックス*の事例をご紹介します。

*株式会社ミスターマックスは家庭用電器製品、日用雑貨、衣料、食品等をセルフサービス方式で販売するディスカウントストア

株式会社ミスターマックスは本社を福岡県に構え、九州地方全域から中国地方、関東地方にまで店舗を展開。熊本県にも4店舗構えている同社は、2016年4月に発生した熊本地震で被災しています。

しかし、震災の翌日から営業を再開し、従業員にけが人をひとりも出していないといった、被害を最小限に抑えることに成功しているのです。
引用:『熊本地震でのミスターマックスの初動対応に学ぶ、企業に必須の危機管理マニュアル』より

被災時、株式会社ミスターマックスでは、前震、本震ともに営業時間外(21時46分に震度7の地震を観測)だったため、あらかじめ配布されていた「緊急事態対応マニュアル」にもとづいて各店舗の店長が判断を下し、翌日15日の朝には営業を再開できたようです。

その内容は以下の通り。

・従業員の出社要請
・店内への出入りの可否
1、まだ余震が続いていたので、熊本南店ではお客様を商品棚のスペースに入れず、店員が商品をレジに持ってきて販売
2、店内に損傷があり入店できない熊本インター店と松橋店では、店の前でテントを立て、水や電池などを販売。
・周辺設備損傷の有無の確認、状況を本部に報告

これらの細やかな初期対応は、すべて緊急事態対応マニュアルに記載してあったことだそう。

災害の種類と度合い、営業時間内かどうか、店舗と本部の場合、などをフローチャートにしたマニュアルがあり、それに沿った形で、現地の責任者が状況に応じて判断し、実施するという流れ
引用:『熊本地震でのミスターマックスの初動対応に学ぶ、企業に必須の危機管理マニュアル』より

緊急事態に備えて事前にマニュアルを整えておいたことでリスクを減らし、被害を最小限に抑え、迅速なお客様への対応と従業員の安全確保に成功。現地の責任者だけに負荷がかかる状態を避けることもでき、すばやい営業再開にもこぎつけることが可能になったのです。

この事例を参考にしながら、緊急対策本部が必要になるタイミングと構成メンバー、そして実際に被災したときにどのようなアクションを取るべきか、考えてみましょう。

緊急対策本部が必要となるタイミング

事業を続けていると、自然災害や人的被害など、以下のようなさまざまな緊急事態に陥ることがあります。

・台風や大雨による浸水、洪水、土砂災害
・地震による建物崩壊・液状化現象・津波
・火災、大規模停電
・インフルエンザなどの感染症
・サイバー攻撃
・機密情報の盗難
・反逆行為、テロ

そのような場合、もしくは発生が想定できる場合に、以下の手順で緊急対策本部を設置することが望まれます。

1、緊急事態の発生が予測された場合の警戒活動

緊急事態が発生されることが考えられる場合は、素早い対応ができるように警戒態勢をとることになります。具体的には、緊急事態が起きても被害が最小限になるよう、情報収集など活動を行います。

2、緊急事態の報告とメンバー招集

緊急事態が発生したことを認識したメンバー(総務など緊急対策担当者)は、規定の手順に従い、緊急対策本部構成メンバーに報告します。

報道やSNSなど、外部の情報によって検知されたときは、対象部門に情報の確認を行います。緊急対策本部のメンバーは連絡を受ける前に集まるよう周知しておくといいでしょう。より迅速なメンバー召集の手段として、安否確認システムの導入もおすすめです。

例えば、トヨクモの安否確認サービス2は、社員の安否確認だけでなく、その後の指示や相互の議論も行えるツールとなっています。

3、状況の検証

情報収集を行い、状況の把握に努めます。緊急事態の発生した現場と連絡がとれない場合は、可能ならば現地に担当者が行って、状況を確認することも必要になります。

4、緊急事態を宣言

社会的な影響が拡大する事態であれば、社員やそれ以外の関係者に対し、緊急事態に入ることを宣言・伝達します。

5、緊急対策本部設立

緊急事態を宣言することにより、緊急対策本部の設立をします。このとき、通常業務継続が可能な部門はそのまま業務を続行します。

緊急対策本部を構成すべきメンバー

緊急対策本部における構成員に必要な要素と役割は9つあります。どの役割も、緊急事態において欠かせない存在となります。業務内容が似通っている部門から人員を配置すると混乱なく実施できるでしょう。

【マネジメント(意思決定者・責任者)】
緊急事態の対応策について、最終的な意思決定者となります。経営陣に対して報告や調整をしながら、社内で足並みを揃える役割を担います。

【対策立案】
集められた情報を分析し、具体的な対策を考えます。対策が決まったら担当者を決めて、指示を行います。集められている情報の公開・非公開などを区別する役割を担います。

【調査と分析】
対策立案者の指示に従って、詳細な調査と分析を実施する役割を担います。

【情報収集と連絡】
集められた情報を整理し、対策立案者へ伝達します。また、対策立案者から指示された内容を各担当者に連絡する役割を担います。

【広報(報道機関の窓口)】
報道機関の窓口となり、定時報告、取材対応、記者会見設定などを行います。対策立案者の指示により、発表資料を作成したり、報道内容に対する分析の役割も担います。
※広報部門推奨

【渉外】
取引先の業者や官公庁、業界団体などとの対応をします。対応をしているときに集められた情報や、欲しいもの・欲しい情報などがあれば、社内に持ち帰り報告を行います。
※営業部門(法人)推奨

【被害者対応】
緊急事態による被害を被ってしまった関連企業や消費者への対応を行います。直接連絡したり、往訪することにより、状況を説明した上で被害状況を把握し、報告する役割を担います。

補償内容が決まれば、その内容に従い行動します。

【顧客対応】
顧客からの問い合わせや苦情、または情報提供などがあった場合の対応をします。伝達すべきコメントなどを決めた上で、コールセンターなど顧客と接点のある部署に内容を伝え、指示をする役割を担います。
※カスタマーサポート部門推奨

【事務局】
緊急対策本部の庶務作業を担います。緊急対策本部内で発生する会議などの調整や情報の取捨選択なども行います。
※総務部門推奨

本来の担当者が怪我をしたり、出張などで本来の勤務地にいない場合など、緊急事態のとき集まれない可能性もあります。そのときのために、各役割に2人ずつ代行者も選定しましょう。

・同一部門、または類似の部門に所属している人であること
・マネジメントスキルを有している人であること
・通常業務と兼務で対応するのは難しいため、通常業務を他の人に任せられる人であること

以上の要件を満たす人を代行者として指定し、緊急対策本部を動かします。

緊急対策本部で行うべきアクション

緊急対策本部が設立されたときのアクションは以下の手順の通りです。また、対応する役割についても記載しています。

1、緊急対策本部の設置と招集
緊急事態が発生したとき、マネジメント(意思決定者・責任者)またはその代行者は、本社など適切な拠点に「緊急対策本部」を設置します。並行して、緊急対策本部のメンバーを招集します。
【マネジメント(意思決定者・責任者)】

2、情報収集と伝達
「何が起きたのか」を正確に判断するべく情報収集を行います。「発生状況」「影響範囲」「被害状況」と、自社企業に関連する外部の組織の対応状況、テレビやラジオなどでの報道内容についても確認しましょう。

収集した情報は整理し、情報の確度や性質ごとに仕分けます。その上で情報を部門ごとに伝達しましょう。
【対策立案】【調査と分析】【情報収集と連絡】【事務局】【渉外】【顧客対応】

3、緊急事態の宣言
緊急対策本部が設置され、メンバーが招集されたあとでも、まだ誤報の可能性はあります。収集されたメンバーはすでに集まっている情報などを確認し、緊急事態であるか確認しましょう。

緊急事態であると判断された場合はその宣言を行います。社員やその家族、また取引先など、関係者に伝達します。この宣言を皮切りに、緊急対策本部の活動がスタートします。
【マネジメント(意思決定者・責任者)】

4、「今」対応する内容の決定と実施
収集された情報を分析し、評価したうえで、今実施すべき対応策を決定します。

決定された対応策の担当を明確にした上で、指示を開始。その後、指示を行った対象から進捗など報告を受けます。

必要に応じて、専門的なスキルを有する要員を招集し、対応策の強化などに努めます。
【対策立案】

5、広報対応
緊急事態における報道機関などの対応については、一括で行いましょう。誤報を防ぎ、混乱を招かないようにするためです。そのため各部門には、原則として報道機関への対応をしないよう伝達します。

プレスに対する発表内容があれば、ホームページ上で速やかに公表します。
【広報(報道機関の窓口)】

6、緊急対策本部の解散
緊急対策の責任者、または代行者が「緊急事態の状況を脱した」と判断した場合、緊急対策本部は解散します。

まとめ

今回は緊急対策本部のあり方について「タイミング」「メンバー」「アクション」の3軸で説明しました。緊急対策本部はリスクが発生した際に、事業の継続ができるよう被害を最小限にするために必要な組織。きちんと対策をしておけば、何か問題が起きたときにも迅速な対応をとることができます。

リスクが発生した際も、迅速で的確な対応をとることができれば、取引のある企業や顧客、世間からも「安心」と「信頼」の印象を持たれることでしょう。そのためにも、日頃から意識して対策を練ることが重要です。

以下の過去記事を確認しながら、いざというときの緊急対策本部がきちんと成立するよう、訓練を欠かさないようにしましょう。

参考記事:
マネージャーが守るのは売り上げのみにあらず!緊急時の対応力を磨く「ジャッジメント訓練」
BCP改善のために欠かせない「机上訓練」を成功させるには
「3秒、30秒、3分」が生存率を左右する!震災時の初動対応を学ぼう。

情報の収集とその整理方法については、緊急事態を想定した訓練を行いながら確立させるといいでしょう。緊急対策本部を設立する上で参考となる、中小企業庁の緊急対策におけるシートをご案内します。

①顧客・協力会社への連絡、②中核事業の継続方針立案・体制確立の2つについてシートが用意されているので、確認しながら緊急対策について考えてみてはいかがでしょうか。

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