企業の業績を高めるには従業員満足度の向上が欠かせません。満足度が低いと、従業員の定着率が下がり、現場の改善力も弱くなってしまいます。従業員満足度を高めるために苦労されている経営者の方は多くいらしゃいます。
しかし、実は従業員満足度は、オフィス環境を改善することでも向上させることが可能です。この記事では、従業員満足度とオフィス環境の関係や、オフィス環境を改善する際に気をつけたいポイントなどを詳しくご紹介します。
従業員満足度とは何か
「従業員満足度」は、もともと欧米で確立された考え方で、英語では「Employee Satisfaction」と呼び、略して「ES」と記すこともあります。その意味するところは文字通り、従業員が職場や勤め先に対して感じている満足度のことです。今、この従業員満足度をどうやって上げたらいいのか悩む企業が増えています。
従業員満足度と近い言葉に「顧客満足度」があります。顧客満足度も欧米で定義されたものであり、英語では「Customer Satisfaction」、略して「CS」と表現されます。もともと日本では「お客様は神様だ」という言葉があるように、顧客満足度の方が一般的には受け入れられてきました。
これは「良いものを作れば売れる」「良いサービスをすれば受け入れられる」という商品やサービスに注目した考え方であり、その結果、世界でも有数の品質を誇る商品や、手厚いサービスの提供につながりました。
しかしその反面、商品の生産やサービスの提供に無理がかかり、長時間労働など、従業員の負担が増えるという問題も生み出しました。その結果、会社としての業績が落ちたり、事故や不祥事が起きたりして世間に批判されるなど、顧客満足度だけを見ていればよい時代ではなくなったのです。
従業員満足度は、従業員が企業の理念や行動指針、職場の環境や人間関係、給料や休日などの待遇や福利厚生などのあらゆる面について企業に対して抱く感情のことです。結果として、ストレスが少なく、やる気や自尊心の持てる環境ほど満足度は高くなり、ストレスばかりで気分が落ち込み、自尊心を挫くような環境ほど満足度は低くなります。
参考:ベネフィット・ワン「従業員満足度とは?明日から実践できる5つの考え方と企業事例を解説」
参考:アチーブメントHRソリューションズ「従業員満足度とは?向上させる価値と事例を紹介」
従業員満足度とオフィス環境
これまでも工場などの現場では、事故などの危険を抑止するため労働環境の改善が積極的に行われてきました。しかし、事務を行う一般のオフィスについては、いまだに改善の余地が残っているといえます。従業員にとって多くの時間を過ごすことになるオフィスの環境を良くすることは、従業員満足度の向上にも大きな影響を与えるはずです。
とはいえ、多くの日本の会社において、これまではオフィスのあり方に固定観念があり、大きな変化を嫌っていた面があったことも事実です。定型的な作業をするオフィスは、それ自体が価値をもたらすわけではないことから、単なる経費と見られることもありました。
しかし、新しい発想や生産性の向上を実現するためには、働きやすく快適で、機能性に優れた環境を備える必要があります。なぜなら、アイデアや知恵は従業員同士の自由な会話や意見交換からヒントが生まれたり、ブラッシュアップされたりして、実現へと向けて進んでいくからです。
単に大部屋で学校の教室のように机が整然と並んでいる、また、逆に細かい仕切りで個人が切り離されただけのレイアウトでは、こうした自由な交流は生まれません。オフィスには、リフレッシュするためのスペースや、伸び伸びと会議が行えるスペースなど、異なる目的に合わせて、複合的な要素を兼ね備えておく必要があります。
こうしたことに気付いた一部の企業が、これまでも特注のような形でユニークなオフィス環境を作ってきましたが、ここ最近ではオフィス機器メーカーも積極的にデザインや機能性に優れた商品を発売するようになりました。そして、オフィス改善を先行させた企業の様子をメディアやカタログなどで目にすることも増えたため、このような製品を導入するハードルも下がってきたといえるでしょう。
実際に、オフィス用品メーカーのコクヨが行ったアンケートでは、「オフィス環境によって仕事に対するモチベーションが上がったことがあるか」という問いに対して、約7割の人が「ある」「ややある」と答えています。さらに「オフィス環境によって仕事に対するモチベーションが下がったことがあるか」に対しては、なんと8割以上の人が「ある」「ややある」と答えたのです。
参照:コクヨファニチャー・オフィスのモチベーションアップに関するアンケート
このように、オフィス環境を改善するかしないかで、従業員満足度は大きく変わってしまいます。また経営側としても、オフィス環境の改善には大きなメリットがたくさんあります。オフィスには社員だけでなく、取引先など社外の方や、採用時期になれば就活の学生も多く訪れます。
また、ホームページや会社案内などでもオフィスの写真が使われることがあります。このような場面では、オフィス自体が会社の経営理念の具現化となり、働き方のプレゼンテーションとなります。オフィス環境の改善は、企業としての評判を上げ、より正しく自社のことを理解してもらうための手段ともなります。その結果、商取引や採用活動にプラスの効果が期待できます。
参考:UT SPAC OFFICE「従業員満足度を向上させるために改善すべき意外な備品とは?」
参考:おかんの給湯室「オフィス環境・労働環境の改善|事例・ポイント・メリットなど」
参考:ヘルスケア通信「職場環境を大きく改善して、従業員満足度をアップする方法」
オフィス環境改善のポイント
では、オフィス環境を改善するに当たって、押さえておきたいポイントをご紹介します。
まず、実際にオフィスで働いている人を対象に、どのような悩みや不安があるか、どのような環境があれば今よりも働きやすくなりストレスが減るのか、という点についてヒアリングしましょう。そして不満度や要望の高いものから、対応策を検討するといいでしょう。
ただし、ヒアリングでわかるのは働く人の気持ちです。どのように職場のデザインをしたらよいかと、いきなり従業員に聞いても、おそらく的確に答えられる人はほとんどいません。それを踏まえて策に落とし込んでいくことが、経営陣の仕事です。もちろん、従業員の代表を交えて、一緒に考えてもいいでしょう。
オフィス全体については、仕事に集中できるスペース、会議のためのスペース、気分転換のためのスペースなど、目的別のスペースの必要性とともに、実施に必要な面積を考えます。プリンタやシュレッターなど、従業員が共有する機器や資料置き場などへの導線も重要です。
運用面では、例えば夏の冷房が強すぎる、いや弱すぎる、という従業員間の軋轢は多くのオフィスで見られます。空調の配置により、同じオフィス内でも温度に大きく差が出ることが原因ですが、こういった状況を避けるために、席の配置や設定温度を見直しましょう。多くの人が働くオフィスでは、それぞれのストレスを緩和する努力が大切です。
最近はオフィスに常設するタイプのお菓子を定期的に補充してくれるサービスや、ドリンクサーバなどを導入するケースも増えています。これらは直接、仕事に役立つものではありませんが、従業員満足度を高める方法として有効です。
各個人の作業環境の改善策は非常に多岐にわたります。最低でも、道具や備品については改善を検討する必要があります。例えば、机のサイズや高さ、椅子の素材などは、地味ですが、作業の質に大きな影響を与えます。多くの企業で必須となっているパソコンも、古く、性能が低いものだと作業の進行に大きな課題となります。そのほか、書類の収納、ハサミやテープなどの事務用品、果ては筆記具ひとつとっても、使いやすい・使いにくいの差があります。
参考:UT SPAC OFFICE「従業員満足度を向上させるために改善すべき意外な備品とは?」
参考:おかんの給湯室「オフィス環境・労働環境の改善|事例・ポイント・メリットなど」
参考:ヘルスケア通信「職場環境を大きく改善して、従業員満足度をアップする方法」
まとめ
オフィス環境の改善による従業員満足度の向上は、今やすべての企業に求められるといっていいでしょう。会社の規模が小さく予算を捻出しづらい場合は、厚生労働省の助成金の利用を検討するのもおすすめです。
大きなコストを掛けなくても、従業員に不満や希望について聞き取りをすることで、有効な対策を打つことができます。ぜひ、ご紹介したようなポイントを押さえて従業員満足度を高め、従業員のモチベーション向上や生産性の向上につなげてください。
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