日々の業務の中で膨れあがっていくオフィスの書類。忙しさに紛れ放っておくと、必要な資料が取り出せず業務効率にも支障をきたしかねないため、文書保存やファイリングは必要不可欠な作業です。また会社の根幹をなす書類や個人情報を大量に扱う総務では、ひときわ文書のライフサイクルに合わせた適切な文書管理が求められます。
ここでは、文書の「保管」と「保存」の違いを明らかにしたうえで、「保管」すべき文書について具体的なファイリング方法を解説します。次いで「保存」すべき文書の種類と期間をおさらいしたうえで、保存の仕方や整理のコツのHow-toを紹介していきます。
実はたくさんある、ファイリングの方法と種類
そもそもファイリングとは、「書類の整理・保管」のことです。より正確にいえば、書類がたどる「作成→活用→保管→保存→廃棄」という一連の流れの「保管」に該当します。「文書のライフサイクル」とも呼ばれるこの流れを念頭に置きつつ書類を管理することで、どのような理由で書類が滞っているのか明らかになったり、活用頻度が高い書類を検索しやすくしたりすることが可能になります。
なお上記のライフサイクルにおける「保管」と「保存」の違いを簡単にいうと、「保管」はよく使う文書ファイルを事務室内で管理している状態です。一方「保存」は、あまり使われなくなった文書ファイルまたは何年間かとっておかなければならないという法的要求から、文書庫などで集中的に管理している状態をいいます。
具体的なファイリング方式は3つ
ファイリング方法は、次の3種類に大別されます。各人の恣意でまちまちに整理するのではなく、組織全体でルールを決めて統一することが重要です。文書の分類基準、保管期間・廃棄基準、アクセス権限など、共通の保管ルールの下でファイリングしてはじめて、統制のとれた文書管理ができているといえます。
●バーティカル(垂直)方式ファイリング
フォルダを使って共通性のある文書をまとめ、キャビネットの引き出しや、ファイルボックスに立てて並べる保管方法です。フォルダに文書をファイルする場合は「綴じ込まないこと」が原則。綴じ込まないことで取り出しやすく、小まめに廃棄しやすいというメリットがあります。その反面、書類を紛失しやすいという欠点があります。また、引き出しが目の高さよりも低い場所にないとフォルダを探しづらくなります。
大量のフォルダができたときは引き出しも数多く用意し、引き出しごとにインデックスを付けておくようにするとよいでしょう。
●簿冊(バインダー)方式ファイリング
バインダーや、厚型ファイルといった背表紙に厚みのあるファイルに書類を重ねて「綴じ」、書棚などに図書のように立てて並べて保管する方法です。背表紙には見出しやタイトル、インデックスを記します。年代別や種類別に分類することで、検索が容易になりますが、一方で、ファイルに綴じ込む手間がかかります。また綴じた書類の枚数に関係なく、バインダーや厚型ファイルのサイズを置くためのスペースが必要といったデメリットがあります。
●ボックスファイリング
書類の種類ごとにボックスファイルで管理し、そのボックスに収まるフォルダで細分化して整理する方法です。わざわざ書類をとり出さなくても簡単に必要な文書を見つける事ができるメリットがあります。また持ち運びにも便利です。デメリットは、ボックスファイル内の空いている空間もスペースとしてかさばることと、コスト(用品代)がかさむ点です。
文書保存が義務付けられたものの主な例とその期間
主な文書保存期間は下記のとおりです。同一廃棄年度のものは同一文書保存箱に収納しましょう。こうすることで、廃棄年度が到達したときに文書保存箱ごと廃棄処理ができるからです。
なお、法定の保存期間はあくまで最低限度の定めです。会社にとっての必要性や安全性から、適宜期間延長の必要性がないかどうか社内ルールを決める必要があることも覚えておきましょう。
<総務・庶務関係>
定款、株主名簿、会社の設立・登記、訴訟に関する文書、固定資産や商標権の関連書類
●10年
<総務・庶務関係>
株主総会議事録、取締役会議事録、創立総会議事録、製品の製造・加工・出荷・販売記録
<経理・税務関係>
会計帳簿及びその事業に関する重要な資料、計算書類等
●7年
<経理・財務関係>
取引に関する帳簿、決算関係書類、青色・白色申告者の帳簿書類
●5年
<総務・庶務関係>
有価証券届出書、有価証券報告書及び添付書類、訂正報告書の写し
<経理・税務関係>
会計参与が作成する書類、監査報告、会計監査報告
<労働安全衛生関係>
健康診断個人票、医師の面接記録
●3年
<人事・労務関係>
労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・退職、災害補償に関する書類、賃金その他労働関係の重要書類
<労働安全衛生関係>
身体障害者雇用関係書類、労災保険に関する書類、派遣元・派遣先管理台帳
●2年
<労働安全衛生関係>
雇用保険・健康保険・厚生年金保険に関する書類
●1年以下
<総務・庶務関係>
会社合併・分割(吸収・新設)に関する書面
<経理・税務関係>
株式交換契約・株式移転計画に関する書面
今の自社の状態と合わせて、今一度しっかり把握しておきましょう。
これでスッキリ!文書保存とファイリングのコツ7選
オフィスの空間をすっきり維持するためには保管書類のこまめなチェックが大事です。年度末のほか、1週間や1カ月に1回、整理日を決め、10~15分でも定期的に取り組む時間をもちましょう。
1、ファイリングのラベルは右端の上に
書類をファイリングする際につける見出しやラベルは、右端の上にするのがおすすめです。ファイルボックスの縦型・横型どちらにも対応できるからです。またファイリングの際、必要以上に細分化するとファイルが増えすぎ、後でかえって探しにくくなるため、7つ以下を目安としましょう。
2、「使わない」「再入手可能な」書類は思い切った処分を
書類は「いつか使うかも」ではなく「何度見直したか」の観点から、捨てるのか保管するのかを決めましょう。一例として、年度計画や会議録など毎年作る「年度別文書」のオフィス内保管は2年分(当年度・前年度)にとどめたり、マニュアルや社内規定などの「資料扱い文書」は利用する価値がある間は置いておく、といった共通ルールを制定しておくことも大事です。
また、迷ってなかなか捨てられない場合は、「手放しても再入手可能かどうか」という基準を使うのがおすすめです。この基準で判断すると、パソコン内にデータが残っているものや、取引先から取り寄せられるパンフレットなどは処分できるので、書類の量を大幅に減らすことができます。
3、仕事と同時進行でファイルのスリム化を
ファイリングが続かない原因の一つに、ファイルのスリム化ができていないことが挙げられます。溜まった書類をそのままにするためファイルが膨らみすぎ、必要な書類が探しにくくなり折角のファイリングが機能しなくなってしまうのです。書類整理は、「仕事が一段落したらしよう」と後回しにせず、仕事の進行と同時に行うようにしましょう。たとえば差し替えになった書類を廃棄するだけでも、かなりスリム化します。
4、ファイリングに色づけを
ファイリングができていても、フォルダや書類が多すぎると、優先順位の高い仕事のファイルを見落としてしまう危険があります。特別な書類は、例えば「赤は急ぎの書類」、「青は重要な書類」など、カラークリアフォルダを用いて色分けし、他と区別を図ると効果的です。ただし色は2色程度までに、そしてよほどの場合のみに用いるようにしましょう。過度の使用はかえって混乱を招くからです。
5、必要な書類はオフィスで共有化を
共有すれば1部で済むのに、それぞれが机の中に抱え込むため重複コピーが増え、コスト面でも無駄が生じます。書類の私物化は避け、「仕事の書類は組織のもの」という意識を持ちオープンにすることも大切です。「課」「部」単位で共有スペースを作り、原本を一括して管理しましょう。
6、「玉突き方式」の移し替えで処分の判断を
例えば、「当年度」の書類はキャビネット上段で保管。2年目に入り「前年度」扱いになったら、利用頻度が落ちるのでキャビネットの下段へ。3年目に必要であれば書庫へ。このように古い書類は「玉突き方式」で移し替えながら、随時処分を図りましょう。
7、保管期間はあいまいにしないこと
書類をきちんと管理するためには、保管している書類を保存に移すタイミングを、「作成から3カ月後」、「年度末」などと決めておくことが大切。その時期が来たら、保存/処分を決断し、保存するものは倉庫などに移しましょう。
重要書類を取り扱う総務では、文書の棚卸や廃棄の可否に細心の注意を払うだけに、社内での共通のルールづくりに向けて知見が深いのが通常です。また全社的にも、統一的な文書保存・ファイリングにより、検索時間が短縮され、保管スペース削減につながるというメリットがあります。これ以外にも、社内文書の管理基準、方法、方針などが明確になり、内部統制やセキュリティが強化されることで、重要文書の紛失や盗難防止といった効果も挙げられます。社内の誰もが必要性を感じているだけに、総務担当者がリーダーシップをとって、文書管理の観点から社内の仕事環境整備に取り組み出せば、感謝と協力が得られることでしょう。