最近ニュースで聞くことが多い、「人材不足」。あなたの会社では、どんな方法で人材を確保していますか。
総合人材サービスを提供する、パーソルグループのパーソルテクノロジースタッフ株式会社の調査によると、25〜39歳の第二新卒層やリーダー層にとって、転職時に関心がもっとも高いのは「給与」。次いで2番目にあげられたのが「福利厚生」とのこと。転職先の魅力を訴求するためには、福利厚生を整えておくことが重要だということがわかりました。
しかし、一言で福利厚生の制度を整えるといっても、どんな福利厚生を導入すればいいのか想像がつかない方もいるでしょう。そこで、今回はユニークな制度を導入している5社にアンケート調査を行い、その実態を調べてみました。
制度を導入した経緯や、実際に制度を活用している従業員の方の声を伺ってみましょう。
目次
ユニークな福利厚生を導入している企業の紹介
まず、ユニークな福利厚生を取り入れている企業を紹介します。それぞれの企業は、どんな制度をなぜ取り入れているのでしょうか。
今回後紹介する企業と福利厚生は、以下の通りです。
①Yahoo! JAPAN【新幹線通勤】
②リクルートホールディングス【同性パートナー配偶者の福利厚生への適用】
③ソウ・エクスペリエンス【子連れ出勤】
④サイバーエージェント【F休】
⑤面白法人カヤック【毎月「給料×(サイコロの出目)%」が、+αとして支給される制度】【アンケート質問内容】
1、制度を導入した理由・経緯
2、実際に利用している従業員の意見
では、ひとつずつ確認してみましょう。
①Yahoo! JAPAN【新幹線通勤】
新幹線代を含む通勤交通費を非課税限度額の月額15万円まで会社が負担する。在来線等、通常の交通機関を利用した場合、通勤時間に片道2時間以上かかる従業員が対象になる。
1、制度を導入した理由・経緯
Yahoo! JAPANでは、社員の多様な働き方を支援するさまざまな制度を導入している。新幹線通勤もその一つであり、住む場所の選択肢を増やすことで、さまざまな事情を抱える社員にとって、より生活に合った働き方ができるように導入した。
2、実際に利用している従業員の意見
「実家が越後湯沢で、地元を盛り上げたかったのでこの制度の開始を機に東京から移住しました。越後湯沢は空気も、水や食べるものもすべてがおいしく、さらに温泉もあって疲れがとれます。通勤時間はかかりますが、その間、読書や英語の勉強ができるし、仕事を切り上げるタイミングがおのずと決まってくるので結果的に残業も減り、仕事のパフォーマンスは上がりました」
②リクルートホールディングス【同性パートナー配偶者の福利厚生への適用】
就業規則で定めている配偶者やその家族に適用される福利厚生が、同性パートナーにも適用される。すべての従業員が自分らしさを活かせ、個性が尊重される職場環境を目指す。主要グループ会社のうち、株式会社リクルートホールディングスを含む9社で運用をしている。
1、制度を導入した理由・経緯
多様性推進の一環として、2016年よりLGBT支援に注力し始め、社内のLGBTに対する理解を深めるために、啓発研修等を実施。また、制度面での支援も重要と考え、2016より社外有識者や社内当事者へのヒアリングを重ね、同年4月に福利厚生の適用に至る。
2、実際に利用している従業員の意見
「同性パートナー配偶者への福利厚生を利用して証明書の発行だけでなく、サンクス休暇もいただきました。なくて当たり前だと思っていたので、やはり嬉しかったですね。パートナーも喜んでくれて。職場のメンバーからも祝っていただき感激しました」
③ソウ・エクスペリエンス【子連れ出勤】
1~3歳の子供を育てているスタッフが、子供をオフィスに連れてきて働くことを認めている。「子連れ出勤100社プロジェクト」と銘打って、オフィスを見学してもらう会を2カ月に一度程度の頻度で開催している。
1、制度を導入した理由・経緯
「制度を導入」というより、「子連れ出勤も認めている」という状態。スタッフが10人程度のときに(現在は約50人)、そのうちの1人が妊娠・出産をした。オフィスの業務は多忙な一方、スタッフは「思ったよりも暇で外に出たい」と話していたことから、試しにやってみようと始まった。とても小さな組織でしたのでお互いに気心が知れており、もともと社長の西村がたまに子供を連れてきていたという背景もあった。
2、実際に利用している従業員の意見
「保育園に預けられずに働くことを諦めていたが、子連れ出勤でまた働くことができてうれしい。家庭で子育てをしていたときよりも冷静に子供と接することができるようになったことも、この制度のおかげだと思います。男女問わず、好評な制度です。」
④サイバーエージェント【F休】
エフはfemale(女性)のFを指す。生理など、女性特有の体調不良による有給を取得しやすくするための呼称。女性社員が取得する有給の呼び方をすべてエフ休に統一することで、有給取得目的をわからないようにする。
1、制度を導入した理由・経緯
「女性が出産・育児などを経ても長く働ける環境づくりが必要という考えから、女性活躍推進制度「macalonパッケージ」を導入した。この制度の一つに「妊活休暇」を設けているが、周りにわからず取得できるようにしないと制度として利用されないという懸念があったこと、また元々あった生理休暇についても周囲や男性上司に取得理由が言いづらいということがあり、女性の休暇をすべて「F休」という名称にし、女性特有の体調不良でも休暇の取得ができるようにした。」
2、実際に利用している従業員の意見
《利用者の声は、取得理由を伏せているということもあり、今回は伏せさせていただきます》
⑤面白法人カヤック【毎月「給料×(サイコロの出目)%」が、+αとして支給される制度】
人間が人間を評価すること自体、不確実性に左右されてしまうという前提に立っている。出目によって+αとして加算されるので、給料が減ることはない。
1、制度を導入した理由・経緯
人間が人間を評価するのは難しいもので、どんなに公平になろうとしても、運や感情という不確実な要素が入ってしまう。そうした不確実性の振れ幅は、サイコロ給で物事を決めることと変わらないのではと考えた。であれば、評価の仕組みとして、そうした不確実性を取り入れたい。「他人からの評価に一喜一憂せず、面白くやろう」という考えで、創業時から導入している。
2、実際に利用している従業員の意見
「原則として、全員がこの制度を利用しています。月に一回のサイコロ振りに参加できない場合は、同僚に代振りを頼むことも可能。必勝法を編みだそうと挑戦する従業員もいますが、まだ成果にはつながっていません(笑)」
以上、5つの福利厚生を確認しました。制度を導入した理由や経緯を見ると、どんな会社にとっても迎える可能性のある局面ばかりです。それらを福利厚生として認めることで、より従業員が働きやすい環境となるのではないでしょうか。
福利厚生を充実させて、人材確保と節税を両立しよう
最後に、福利厚生を充実させることのメリットを再確認してみましょう。
①優秀な人材を確保することができる(人材の流出を抑えることができる)
②節税対策になる
まずひとつめは、人材の確保。福利厚生を充実させることで、求職者だけでなく、既存の従業員の業務パフォーマンスを向上させるだけでなく、結果的に人材の流出を抑えることにつながります。
ふたつめは、節税効果です。忘年会や新年会、歓送迎会などを会社が負担した場合、原則として福利厚生費になります。そのほか、社員旅行も、次の条件を満たしていれば、かかった費用を経費にすることができます。
1、旅行の期間が4泊5日以内
2、旅行に参加した人数が全体の50%
3、欠席者に現金支給を行わない
4、少額である(ひとり当たり10万円までと言われていますが、法的根拠はありません)
以上のように、節税対策として捉えることもできる福利厚生。今一度、自社でどんな制度を導入することができるのか、考えてみることをおすすめします。
まとめ
福利厚生はしっかり整えたいと考えながらも、実際にはどんな風に始めたらいいかわからない方も多いはず。今回のアンケートでは、Yahoo! JAPANから以下のような助言がありました。
『働き方の取り組み含め、常に新たな人事制度を考え、チャレンジしています。新しい制度を入れる際には、さまざまな懸念・不安が浮かぶこともあるかと思いますが、社内の一部でトライアル実施するなど、小さなチャレンジから始めてみると、進めやすいのではないでしょうか。』
この助言のように、まずは小さく取り組みをしてみて、従業員の意見を参考にしながら、少しずつ大きくしていくといいのではないでしょうか。
福利厚生の充実は、言い換えれば「仕事と生活の調和を実現する手助け」。住宅補助や雇用保険、年金など、既存の福利厚生だけでなく、育児やスキルアップに関する制度など、多様性を認めた新たな福利厚生を充実させてみることをおすすめします。