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従業員の安否も分かる位置情報確認の意義とは?

東日本大震災をきっかけに、災害時に従業員の位置情報を確認するシステムへのニーズが高まっています。安否情報と同時に従業員の位置情報も確認できれば、企業の担当者の負担を大きく減らせるうえ、次の業務へ迅速に取りかかることもできます。従業員の安全を守るために、企業が備えておくべき位置情報確認のシステム構築に役立つ情報をご紹介します。

災害時の位置情報確認で安否確認の精度を高める

GPSの衛生
位置情報とは、人や物などがどこにいるかという情報を、GPS(グローバルポジショニングシステム)もしくは携帯電話の電波を中継する基地局から取得するものです。一般に、緯度と経度によって表され、山間部よりも中継局が多い都市部で計測する方が位置情報の精度が高くなります。

位置情報を確認すれば、災害時に従業員の居場所を瞬時に知ることができます。特に、営業職や建設現場など、スタッフが社外で業務にあたっている場合は位置情報がとても重要です。スタッフの位置を把握できれば、周辺の交通状況の情報を提供したり、被災している場合では被災状況を把握できます。

スタッフ自身が周囲の状況を把握していない場合でも、位置情報があれば帰宅手段の確保、救助、避難所への誘導など安全確保に繋がる情報を引き出せる可能性もあります。さらに、位置情報を含んだ現地の情報を写真付きで送信してもらうことで、安否確認の制度をより高めることができます。

また、就業時間外でスタッフの居場所が一定していない時間帯でも、従業員の位置情報を確認できれば迅速な安否確認に繋げられます。このように、位置情報を活用した安否確認は重要性を増しています。今回は災害時に位置情報を確認できる方法やサービスを紹介します。

参考:
国土交通省 位置情報を利用する場面、取得する方法を知りたい
コトバンク 位置情報
NTT西日本 「位置情報」はオンにしたほうがいいの?
安否確認システムとは?28サービスの比較からメリットまで徹底紹介!

災害時の位置情報確認方法

災害時の位置確認
安否確認や位置情報確認ができるサービスやアプリもいろいろな種類がリリースされています。

緊急地震速報が発令された時点で出先にいる場合、自分の居場所がすぐに把握できないことがあります。そんなとき、現在地を自動受信する機能を利用すると安心です。これは、緊急地震速報を受信すると同時に、被災した時点でいた場所が自分宛に自動で送信されるもの。この機能を利用して、被災場所から希望した目的地までの徒歩帰宅ルートと地図を受け取ることができるサービスもあります。

逆に、設定震度以上の地震が起きた際に、GPSが搭載された各端末と交信して位置情報を取得し、一括で企業へ自動送信するサービスもあります。このサービスでは、災害のごく初期段階で情報を取得することが可能で、担当者が電話をかけたりメールを送信したりする手間を経ずに全員の位置情報がそろい、就業時間外に災害が起こったときでも対応しやすいという利点があります。従業員が被災してしまったり、災害が起きて通信制限がかかってしまったりすると、本人が位置情報を送ることが難しくなります。自動通知ならそういった場合でも情報を送ることができるので、より確実に位置情報を集めることができます。

たとえば「Biz安否確認」は、システムへの登録依頼を自動で行い、回答も自動集計なので、多忙な企業担当者の業務を減らすことができます。ヘルプデスクも24時間365日対応していて、安心感があります。
こういった安否確認サービスシステムは各社からリリースされており、機能のバリエーションも豊富です。企業の規模やサービス内容によって、選択すると良いでしょう。

みんなのBCPでは、28製品の比較ページも公開しているので是非ご覧ください。

自分の今いる場所から最寄りの避難所を知りたいときは、「全国避難所ガイド」というアプリを使うと便利です。このアプリには全国の自治体が定めた避難所や避難場所が収録されています。現在地に合った防災情報が通知されるほか、避難勧告や気象情報、地震情報などの防災に関する情報を受け取ることができます。安否登録や安否確認機能も搭載されていて、事前確認や避難所検索も可能です。オフラインにも対応しているので、スマートフォンのバッテリーを節約したいときにも役立ちます。

「わが家の防災ナビ」は、日本気象協会が提供している防災情報アプリです。災害が発生した場合に、登録しているメンバーの現在地が地図上に表示されるだけでなく、現在地の土砂災害や水害の危険度を知ることができます。また、自宅での災害に備える機能も搭載されています。自宅の位置や構造、立地条件などから災害の危険度の判定が受けられ、家族の人数を入力すると必要な備蓄品の目安を算出します。これらの操作を一定回数行うと防災ポイントがたまるシステムもあるので、楽しみながら防災に目を向けることができます。

安否情報をまとめて検索したいときは「J-anpi安否情報まとめて検索」が便利です。このサービスは、通信キャリア各社が提供する災害用伝言板の安否情報と企業や団体から情報提供された安否情報が一度に確認できるシステムです。2011年3月の東日本大震災をきっかけに、このような連携が強化されるようになりました。

「J-anpi安否情報まとめて検索」では、連携している防災アプリからも安否情報の登録や確認ができます。また、アプリから災害対策に役立つ情報を収集することも可能で、事前に災害時のシミュレーションを行えます。

このほかにも、さまざまなアプリやサービスが提供されているので、それぞれの企業ニーズに合わせて最適なサービスを検討してみましょう。

参考:
安否確認システムとは?28サービスの比較からメリットまで徹底紹介!
Zetta 防災BCP―1st スマートフォンで緊急地震速報を受信した時点の所在地情報を即時に通知
マイナビニュース 国内特許取得!災害時に自動で位置情報を通知する「ココダヨ」
MEDIA1st 防災情報「全国避難所ガイド」
INTERNET Watch 地図を活用した防災・災害時対応アプリまとめ――いざというのときのために
協会 トクする!防災 アプリ「わが家の防災ナビ」
goo防災アプリ

企業による従業員の位置情報取得・保有にはリスクもある

位置情報取得、保有のリスク
災害時に従業員の安否確認や位置情報の把握を行うことは、企業側の労務管理を行うために必要なことです。一方で、災害時ではない普段の業務中に位置情報を常に把握し続けることは問題ないのでしょうか。

たとえば、スマホのGPS機能を利用して営業職の従業員の位置を把握することができますが、就業時間中に正当な理由をもって行う場合は法的に問題ありません。従業員には就業時間中は企業の職務に専念する義務(職務専念義務)があり、この義務を果たしているかどうかを管理する権限が企業側にもあるのです。当該の従業員がどのような会社に営業しているかを把握するための確認や、緊急時にすぐ連絡が取れるようにする目的で確認することは合理的で正当な理由です。

ただし、就業時間外に正当な理由なく、従業員の位置情報をむやみに確認するのは「ロケーションハラスメント」だという考え方もあります。位置情報サービスをみだりに確認することで居場所や移動状況を監視し、プライバシー権を侵害する行為にあたります。

就業時間外や休日にGPS機能で監視されているとしたらどうでしょうか。休日でもGPSの履歴から滞在場所が推測されてしまう可能性があります。これらの行為は、従業員の私的領域に入り込むことに該当するため、トラブルに発展する可能性があります。

このようなトラブルを防ぎ、無用な誤解をなくして従業員の仕事に対するモチベーションを保つためにも、位置情報確認の運用については事前の説明をしっかり行い、社内規則で用途を定めておくことが必要です。営業時には法人携帯の必携を定める一方で、就業時間外は法人携帯を自宅へ持ち帰らないようにしたり、営業が終わって帰社したらGPS機能を停止させたりするなどの対策をとるといった方法もあります。

参考:
ロア・ユナイテッド法律事務所 労働者の位置情報とプライバシー
NTT西日本 「位置情報」はオンにしたほうがいいの?
ずっとほっとスマイルOFFICE110 GPSの監視はだめ?法人携帯の注意と対応策
朝日新聞DIGITAL 法と経済のジャーナル ロケーションハラスメント 従業員の位置情報把握の留意点
企業の労働問題解決.com GPSで労働者の位置情報を取得したら違法?プライバシー侵害?

まとめ

災害が起きた時に、従業員の安否確認に加えて正確な位置情報を確認することは、大切な人材を確保して企業の業務を継続するため基本です。災害時には停電が起きることも視野に入れて、安否確認や、位置情報取得システムにPC以外でも使えるツールを用いたシステムを選択することも重要です。安否確認システムを導入したうえで日頃から従業員の意識を高めていく努力も行い、災害時でも確実に業務継続を行えることを目指しましょう。

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