あなたのオフィスがある地区は、災害が起きたときに安全ですか?
狭い土地に、数多くの企業のオフィスが集まる東京都。そんな面積が小さい東京都ですが地区によって、災害のリスクには差があるのです。例えば、地震が起きたときの建物倒壊、火災、液状、洪水など被害は様々。こうした、地域の被害を一目で見ることができるのが、ハザードマップです。
ハザードマップは全国に存在しますが、今回は東京都のハザードマップから分かる、都内のオフィス街の災害リスクを紹介します。あなたの会社がある地区をチェックして、オフィスの防災に役立てましょう!
目次
隅田川や荒川の氾濫が起こるリスクあり|千代田区
丸の内、大手町がある千代田区は、日本有数のビジネス街です。リスクのある場所は秋葉原駅近く、東神田側。建物倒壊の危険性が3〜4の場所があり、注意が必要です。
参照:千代田区ホームページ-防災関係リンク集
千代田区の災害情報マップによると、地図中心に位置する千代田区の被害のリスクは、比較的少ないようです。
では、洪水の被害はどうなのでしょうか。ハザードマップを見ると、山手線の外側に水色が広がっています。これは1〜3mの浸水を意味します。隅田川や荒川がそばにあるため、氾濫による浸水の被害が拡がるリスクがあることがわかります。そのため、ビルの低層にオフィスを構える企業は洪水対策を取る必要があります。
洪水によるオフィスの被害でリスクがあるのは、機械類が浸水することによる被害です。大事な社内のデータが消えたり、機械が壊れ、制作ができなくなり、会社として大きな損失を負う……。このように、洪水には企業活動に被害を与えるリスクをはらんでいるのです。
沿岸部は液状化・洪水のリスクが潜む|港区
赤坂や六本木がある港区も、多くの企業が集まる地区です。港区のハザードマップによると、六本木などの内陸部は地震の被害や洪水の被害はありません。しかし、問題は沿岸部です。港区の液状化マップを見ると、ここには液状化の危険性が高い場所が密集しているほか、揺れが大きくなる場所なのです。
そして、防潮施設に損傷があり、液状化している状態で、首都直下型地震が発生して津波が発生したすると、沿岸部が被害を受けるリスクは十分に考えられます。
また、港区の汐留という地名は「汐を留める」という由来があり、かつて堤防があった場所だといいます。
古い町並の大火災、そして火炎旋風の発生リスク|新宿区
新宿区は西新宿に高層ビルが立ち並び、オフィス街を形成しています。新宿区が公表する資料を見ると、新宿駅周辺よりも落合や神楽坂の方面は建物倒壊や火災のリスクが密集しています。これは、この周辺に古い建造物が集積しているためです。
とはいえ、オフィス街ならそうした被害は無関係、というわけにはいきません。大規模な火災が発生した場合、火炎旋風という恐ろしい災害が起こるリスクがあるためです。火炎旋風とは、火災の炎が旋風となり、1000℃を超える高温の炎が甚大な被害を及ぼす災害のこと。1923年の関東大震災のときにも発生し、これが原因で数万人が亡くなったのだといいます。
もし、首都直下型地震が発生した場合、古い建物が密集した町が近くにあると、火炎旋風のリスクは想定する必要があるのです。
谷となっているので洪水のリスクあり|渋谷区
ベンチャー企業が多く集まる渋谷区のハザードマップを見てみると、オフィスが集まる渋谷駅周辺の地震による被害は比較的少ないようです。しかし、洪水の被害は十分にあるのです。渋谷は地名が示すように、土地が低く、谷になっています。そうした歴史的な経緯もあり、被害が想定され得るのです。
また、幡ヶ谷や青山の場面には、建築物崩壊の危険性があるため、火災のリスクもあります。その方面にオフィスがある場合は注意が必要です。
企業が取るべき災害別の対策
都内のオフィス街には、災害の被害を被るリスクのあることがわかりました。では企業はどう対策すればいいのでしょうか。実際に災害が起きた場合の対策を紹介します。
もし首都直下型地震が起きたら?|地震対策
首都直下型地震が、近いうちに起こると言われているなど、地震の対策は今、東京で勤務する会社員にとって他人事ではありません。本メディアでもこれまでにも地震対策の方法を紹介してきました。例えば、企業が取るべき地震対策。家具の固定やデータのバックアップなどの対策は必須でしょう。
また、大地震時は帰宅難民が発生するため、会社に最低3日間の避難生活を行うための備蓄を行う必要があります。備蓄には食料だけでなく、薬・衛生用品も欠かせません。
そのほか、社員が個人で備えておきたい最低限必要なものの準備は事前にまとめて会社に置いておきましょう。
東京の大火災は火炎旋風のリスクあり|火災対策
地震が発生したときに人命に関わる被害が拡大するのは火災です。地震直後による火災はもちろん、電気が止まり、復旧したときに破れたコードなどから発火する通電火災も起こる可能性があります。
さらに前述したように、オフィス街であっても、近くに古い建造物が集積している場所があれば、甚大な被害をもたらす火炎旋風が発生するリスクがあります。
では、どう対策すればいいのでしょうか。企業では防災報知器や消火設備など防災設備が備わっているのですが、いざというとき故障して使えないという事態に陥らないために、点検は定期的に行うようにしましょう。そして、避難場所と避難経路を決めておく必要があります。
そして、火事は一刻を争う災害のため、防災責任者が定期的に点検や避難訓練などを実施しておくという対策は必須です。
忘れがちだが確実に被害を被る|洪水対策
後手後手に回りがちなのが洪水対策ではないでしょうか。とはいえ、ハザードマップを見ると東京のオフィス街でも、浸水の被害は起こる可能性は十分にあるため、対策は必須です。
企業ができる対策としては、データをバックアップしておく、仕入先を分散しておく、電源系統を手動で切断する手順を予め知っておく、電源系統が水に浸からないように防水対策をしておくなどがあります。また、サーバーなどの重要なデータを低層階に置かないようにしておくこともいいでしょう。
水辺に近いエリアほど注意|液状化対策
地震により地盤が軟化する液状化現象は、ときに建物を傾けるほどの大きな被害を招きます。既存の建物下に液状化対策を施す手段はあるものの、高価な工事費用がかかることから、最大の液状化対策は「被害が懸念されるエリアを避ける」という方法が現実的でしょう。
出所:東京都建設局「東京の液状化予測図 平成24年度改訂版」
上記は、東京都における液状化リスクを示した資料です。画像のうち、ピンク色で塗りつぶされているエリアは、液状化の可能性が高く危険だと予想されています。
次いで黄色が液状化の危険をはらんでおり、緑色の部分は液状化の可能性が低いエリアです。画像を参照すれば、東部に行くほど液状化の懸念が強くなる様子が見て取れます。
一度でも液状化した場所は、再び液状化する可能性が高いといわれるため、液状化の可能性が低い緑色部分を「長期的に拠点とする場所」として選ぶことをおすすめします。
危険度ランクが高いエリアなら移転も要検討|建物倒壊対策
建物構造が強固かつ築年数の浅い建物ほど、災害時に倒壊する可能性は低いです。しかし、自社オフィスに「倒壊の可能性が低い物件」を選択しても、周囲に倒壊しやすい建物ばかりが立ち並ぶなら被害は避けられません。
つまり、液状化対策と同様、能動的に取り組める対策は少ないのです。そのため、建物倒壊の対策を考慮する場合には、あらかじめ被害を回避するように場所選びを進めるべきです。
マップのうち危険度ランクの高いエリアは、ほかのエリアに比べて建物の密度が高くなっており、昭和55年以前に建設された「築古の木造物件」が多い傾向にあります。
要するに、危険度ランクの高い茶色・赤色・橙色に染まっているエリアは、自社オフィスの強度に関係なく建物倒壊に巻き込まれるリスクが高いため、リスク回避の観点でいえば避けるべきなのです。
ただし、危険度ランクの高い場所であったとしても、必ず建物倒壊が起こるわけではありません。周りの建物の強度・間隔による部分が、大きく影響します。
そのため、リスクが懸念されるエリアにオフィスを構えている場合は、まず周囲に倒壊が予想される建物があるのか否か確認することから始めましょう。
倒壊が予想される築古の木造物件が少ない、もしくは自社オフィスとの距離が離れているなら、地震や火事などほかの災害対策を優先して問題ありません。一方、明らかに倒壊が懸念される建物に囲まれているのであれば、事業内容や予算と折り合いを付けつつ、諸対策より優先してオフィス移転を検討すべきでしょう。
防災担当者はハザードマップをチェックしよう!
東京都内のオフィス街に潜む災害リスク。ハザードマップを見ることで、想定される被害は一目瞭然です。ハザードマップは各地区のサイトに掲載されているので、該当する地区にオフィスを構える企業の防災担当者は、入念にチェックしておきましょう。