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ヒト・モノ・カネ・情報〜4大経営資源とは?災害に強い企業を作る対策

企業の4つの経営資源「ヒト・モノ・カネ・情報」は、事業を安定して経営するために欠かせない構成要素です。
この4大経営資源の質や量を保ち、発展させていくことが、企業の経営には不可欠です。

しかし地震や台風、土砂災害など、大きな自然災害が発生して企業が被災した場合、大切な経営資源を失う危険が生じます。
経営資源が欠けると、業務の継続が厳しくなり、対応にも追われます。

そのため、普段から災害に備えて対策を整えておくことが、安定した企業経営には不可欠です。
今回は、4大経営資源を中心に、災害から企業を守る方法を解説します。
災害に備える対策として有効な、BCPの策定についてもあわせてお伝えします。災害に強い企業を作るために、ぜひお役立てください。

企業の4大資源「ヒト・モノ・カネ・情報」とは

「ヒト・モノ・カネ・情報」というのは、ビジネスや事業における「経営資源」を表す要素のことです。
主に次のような要素を表します。

  • ヒト:人員、人材、組織
  • モノ:設備、機器、商品
  • カネ:お金
  • 情報:データ、ノウハウ、技術

それぞれの経営資源について、詳しくみてみましょう。

ヒト

経営資源の「ヒト」とは、人員や人材を表します。
経営者、管理職、新入社員、アルバイトなど、すべての人が含まれている表現で、経営資源の中で最も重要なものです。

ヒトは企業の要です。ヒトがいるから事業が成り立ちます。
さらにヒトは、他の3つの資源と異なり、自らの意思で活動・行動を起こせるということが特徴です。

モノ

「モノ」とは、設備や備品など、経営で利用する物理的な資源を指します。
企業の設備、機械、商品、建物から、車、不動産、インフラなどが、モノに含まれます。

事業経営では、ヒトが機械や設備などを利用して、商品やサービスを生産・提供し、利益を得ます。
モノは、企業が経営を行うための大きな資源であり、カネと交換される価値を生み出す資源でもあります。

カネ

「カネ」とは、現金、預貯金、金融資産など、まさにそのままお金のことを表します。
従業員のための給与、経営に関わる備品の購入資金、宣伝広告の費用など、あらゆる経営資金を指しています。

カネは、ヒトやモノなど、他の経営資源を獲得するためにも不可欠です。
まずカネがなければ、他の経営資源も調達できないという点で、別格の経営資源とされています。
カネが無くなってしまうと、企業の経営にも大きく響き、倒産してしまいます。

情報

最後の「情報」とは、企業の無形財産・無形資源のことを言い、顧客情報や技術、ノウハウなどを指します。
さらに、業務データや統計データなど、各種のデータや、著作権や特許などの知的財産も情報に含まれます。

顧客情報や技術などは、企業にとって欠かせない財産です。
大きく括ると、「ヒト・モノ・カネ」は有形の経営資源、「情報」は無形の経営資源となります。

災害がもたらす4大資源への影響

次に、災害が起こったとき、4つの経営資源にどのような影響をもたらすかを考えてみましょう。

  • ヒト:従業員に被災による人員不足
  • モノ:家具・設備・建物の損壊
  • カネ:売上低下や復旧費によるコスト増
  • 情報:データの破損や情報の流出

それぞれ詳しく解説します。

ヒト:従業員に被災による人員不足

大きな災害が起こった際、従業員が災害に直接的・間接的に被害に合い、人員不足で企業が機能しない事態となる危険があります。
従業員が死傷してしまうことも考えられます。

従業員自身は無事でも、自宅が大きな被害を受け、当面出社できない状況になったり、交通機関の断絶で通勤が困難な状況に陥ったりする可能性もあります。
経営者や決裁権限を持つ社員、指揮を執るような社員が出社できない事態が起こるかもしれません。

大きな災害が起こったときに備えて、平時から対策を立てておきましょう。
担当者以外でも業務が遂行できるよう、複数人で業務をバックアップしておくなどの備えが大切です。

モノ:家具・設備・建物の損壊

企業の設備、機械、商品から、建物、インフラまで含む「モノ」が、災害で影響を受けたとき、事業の継続が難しくなります。

具体的には、次のような影響を受ける可能性があります。

  • 設備・機械の損傷
  • 家具の転倒
  • 商品・在庫品の損傷
  • 建物の倒壊
  • 停電・断水などのインフラの停止
  • 休業による損害

被害を最小限に抑えるために、家具の転倒を防ぐ工夫や、ハザードマップで想定される災害を確認するなど、有事に備えて対策しておくことが大切です。

カネ:売上低下や復旧費によるコスト増

災害時にもたらす「カネ」の影響も深刻です。
被災によって、通常の営業が継続できず、売上や収入が大幅に低下する可能性が生じます。
被害状況によっては、設備・建物の修繕などにもコストがかかるかもしれません。

災害発生時には、事業を再開するまでにかかる資金の確保が不可欠です。
まずはどれくらいの金額が必要となるかを算出し、現在の資金、保険や救済の活用などから、資金調達手段を検討する必要があります。

情報:データの破損や情報の流出

被災すると、電子機器の損傷や重要書類の損失(焼失、浸水、埋没など)から、重要な情報を消失してしまう危険があります。
情報の消失だけでなく、非常時の混乱から、情報が流出してしまうリスクも発生します。

重要な情報は、普段からバックアップを取って保管したり、クラウドサービスを利用したりするなどの対策が欠かせません。
リモート勤務している社員の情報管理などについても、非常時の対策を検討しておく必要があります。

災害から4大資源を守る方法

最後に、災害から4つの経営資源を守る方法について、具体的に考えてみましょう。

  • ヒト:安否確認システムの導入
  • モノ:機械や設備の転倒防止対策
  • カネ:保険の加入
  • 情報:事前のバックアップ・データ化

災害がもたらす影響でもお伝えしました通り、企業の経営資源を守るために最も有効なのは「あらかじめ対策しておくこと」です。

それぞれの経営資源について、平時から取り組める対策をご紹介します。

ヒト:安否確認システムの導入

災害から4大資源を守るためには、平時からあらかじめ備えておくことが不可欠です。日頃の備えが、非常事態の落ち着いた確実な対応につながります。

そこで有効となるのが、「BCP(事業継続計画)」を策定しておくことです。

BCPとは、自然災害やテロなどの緊急事態に備えて、企業があらかじめ災害発生時の対策や対応手順などを決めておく取り組みをいいます。
有事に備えて、前もって対策計画を立てておくことで、冷静さを欠きがちな被災時に落ち着いて行動することができます。

BCPを作成し備えておくことで、被害を最小限に抑えて、事業を継続することができることでしょう。倒産などの最悪の事態を防ぎ、事業の早期回復にもつながります。

災害発生時、企業が真っ先にやるべきことは、従業員の安否確認です。誰がどこにいて、どのような状況なのか、被災状況を、ひとりひとり漏れなく早急に確認していきます。
BCPにおいても、災害発生時の安否確認は、初動対応のひとつに挙げられています。

しかし災害時は、電話やメールの利用が集中し、回線が混雑します。
企業の規模や業種にもよりますが、多くの従業員を抱えている企業では、家族間など少人数の安否確認以上に確認作業は難航します。責任者や管理職など、安否確認を行う立場の人が被災してしまい、確認作業が進められない事態もあるでしょう。

企業での安否確認をスムーズに行うためには、安否確認システムの導入が有効です。

安否確認システムを活用することで、次のような効果が発揮されます。

  • どのような状況でも確実に安否確認ができる
  • 大人数の安否確認も、自動でスムーズに実行される
  • 従業員の情報を一覧で確認することができる
  • 情報が一ヵ所に集約され、確認の手間が省ける

モノ:機械や設備の転倒防止対策

「モノ」への対策としては、地震や浸水に備えた取り組みが必要となってきます。

  • 家具や機器の転倒・落下防止対策
  • 建物や設備の耐震対策
  • 窓やガラスの飛散対策
  • 浸水に備えて、重要な機器や設備を高所に置いておく
  • 排水溝などの掃除(詰まり防止)

災害時は、一次被害だけでなく、火災や土砂崩れなど二次被害が起こる可能性もあります。
近隣に海や河川がある場所や、海抜の低い土地では、水害も想定した対策が必要です。

まずは、ハザードマップなどを活用して、災害時に自社の土地で想定される被害を確認しておきましょう。

ハザードマップは、国土地理院のハザードマップポータルサイトで、簡単に確認することができます。

また、事務所などが使えなくなることを想定して、在宅勤務やリモートワークができる環境を整えておくことも有効な手段です。

カネ:保険の加入

災害が発生して企業が被災した場合、被災した建物や設備の修繕、商品の補完などをしなければならなくなります。そのための資金が必要となります。

事業が再開するまでにかかる運転資金も、確保しなければなりません。

このように、思いもよらぬ資金が必要になるときに備えて、資金繰り方法を事前に整理しておくことが大切です。
災害時に利用できる融資制度を調べて把握しておくことや、保険や共済に加入しておくことも有効な対策となります。

保険を検討する際は、災害直後の運転資金がどれくらい必要となるかを考え、建物や設備損壊への補償内容が十分であるかどうかを確認することが大切です。

注意が必要となるのが、建物や設備に関するリスクを担保する「火災保険」についてです。
法人向けの火災保険は、企業が所有する建物や商品など、モノに対するさまざまなリスクから守るための保険です。

しかし火災保険は、自動車や証書、データなど、補償の対象とならないものがあるため、注意が必要です。
さらに地震や、地震に付随して発生した火災や津波で負った被害も、補償の対象外となります。

地震に伴う被害に備えるには、火災保険に付帯する「地震保険特約」に加入する必要があります。
ただし法人向けの火災保険では、個人向け火災保険と違い、希望通りに地震保険特約を付帯できないこともあります。その点もしっかり確認し検討しましょう。

情報:事前のバックアップ・データ化

被災し、パソコンや機器が損壊してしまうと、データが消失してしまったり、データにアクセスできなくなったりしてしまいます。
そのため、大切なデータは、日頃からコンスタントにバックアップを取って、適切に保管しておくことが重要です。

バックアップを取っていても、社内の同じ場所で保管していた場合、すべて同時に被災し、消失してしまう可能性もあります。他の営業所や別の場所にある事務所に保管したり、クラウドサービスを活用したりなど、データを失わないよう保管場所にも配慮しましょう。

さらに、通信網の断絶により、自社のサーバーや外部のサーバーへの接続ができなくなり、必要な情報が入手できなくなる可能性もあります。
災害時の混乱から、データが流出してしまう危険も考えられます。

また、リモートワークや在宅勤務などが進むと、従業員のパソコンから情報が漏えいしてしまう危険も考慮しなければなりません。
サーバーに対する免震装置の設置やセキュリティの強化や、ユーザーのパソコン上の操作を監視するシステムを構築するなどの対策も進めましょう。

すべての情報を電子データで管理するのではなく、重要なものは敢えて紙に印刷し、金庫に入れて管理するなどの工夫も必要です。逆に、紙の重要書類が焼失してしまったときに備えて、電子データにして二重に保管するなども有効です。

事業の継続には人命が最優先ですが、企業の命ともなる情報・データを守るための対策が、非常に重要になります。

あらゆる非常事態を考慮し、平時からデータを守る対策を整えておきましょう。

企業力を強化するために、災害時に備えた対策を進めましょう!

事業を支える4つの経営資源、ヒト・モノ・カネ・情報について、災害時の対策を交えてお伝えしました。

災害などの有事に、事業を守ってくれるのは、平時からの備えです。
普段から非常事態に備えた対策をしておくことで、被災したときの被害を最小限に抑え、最悪の事態を回避できる可能性が大きくなります。

事業と人を守るために欠かせない備えとして有効な取り組みが、「BCP(事業継続計画)」を作成しておくことです。

BCPを策定することで、重要業務を見直すきっかけにもなり、平時の業務が改善する点もメリットです。

しかし、災害時に備えた事前対策の実施状況は、規模の大きな企業ほど対策を進めているものの、中小企業では進んでいない状況です。

BCPの策定状況も、規模の小さな企業ほど、進んでいません。

(参考:中小企業の防災・減災対策に関する 現状と課題について

BCPの策定に取り組んでいない理由として、策定のスキル・ノウハウ不足を挙げる企業が依然として多く、取り組むハードルの高さが課題となっています。

しかしBCPは、ポイントを押さえれば約1時間ほどの作業で作成することができます。

以下の記事では、BCP策定の手順とポイントを丁寧に解説しています。

ダウンロードしてご利用できる「BCPマニュアル」なども、あわせてご活用ください!

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