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海外で災害や事故に巻き込まれたら?知っておきたい安否確認法

海外で働く従業員の安全を守るのは会社の役目です。しかし、海外では、日本にいては想定外の災害や事故・事件が起きることも。そんなとき、従業員と連絡がとれなくなったり現地の正確な情報を入手できなくなるのを防ぐため、今回は、海外駐在の従業員に起こり得るリスクや安否確認の方法をまとめました。企業の経営者、危機管理担当の方はぜひご覧ください。

海外にいる従業員に起こり得るリスク

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まず挙げられるのは災害です。日本でも災害は起こりますが、海外でもさまざまな災害が発生します。アジアでは洪水や暴風雨、中南米では地震や津波、アフリカでは干ばつといった非常事態が起きており、海外にいる従業員がこうした災害に巻き込まれる可能性は多分にあるといえるでしょう。アメリカだと激しい竜巻のような自然災害も少なくありません。日本では珍しい現象だけに適切な対策ができず、被害に遭ってしまうことは十分考えられます。国によって頻発する災害の種類も異なるため、予備知識なく出張や駐在に向かってしまうとリスクが高まります。

また、海外で警戒すべきリスクの1つにテロが挙げられます。日本国内でも、テロと疑われる事件がなくはありません。しかし、海外ほど多くないのが実情。公共施設や人がたくさん集まる場所が爆弾で破壊された、新幹線や国内線の航空機がジャックされたなどというドラマのようなニュースを実際耳にするのは滅多にないことです。一方、海外の国によっては日常的にテロの脅威にさらされている地域もあり、深刻な問題になっているケースが散見されます。そういった場所においては、テロに巻き込まれて命を失う可能性が日本では考えられないほど身近な脅威なのです。

大規模なテロが起こると、周辺はパニックになって情報が錯綜しがちな状況に陥ってしまいます。通信ネットワークの障害が起きる場合や、従業員と連絡がつかなくなることもあるでしょう。本人の安否どころか、現地の情報を確認する術がないという事態に追いやられる想定もできます。海外では、テロは決して珍しいものではありません。最近だと2019年2月28日にソマリアで自爆テロが発生、少なくとも29人が死亡しました。2月14日にはインドでも自動車自爆テロが発生、43人が亡くなっています。

出典:公安調査庁

自然災害やテロだけでなく、感染症のリスクも見逃せません。海外には、日本では発生していないダニや蚊といった昆虫などが媒介する感染症が多発する地域が存在します。調べずに訪れて感染症にかかってしまい、命に関わる事態になることもあり得るでしょう。また、日本ではワクチンが義務づけられているため絶滅したといわれる狂犬病も、海外においてはその限りではありません。このように、自然災害にテロ、感染症など、海外にいる従業員にはさまざまな危険が常につきまとうのです。

参考:
SPA Concur 社員の海外出張時の安全をどう確保するか 前編「聞こえてくる危機管理担当者の嘆き」
jiCA 独立行政法人 国際協力機構 各地域の特徴は?世界の災害を知る
NATIONAL GEOGRPHIC 竜巻、なぜアメリカだけで多発?
PSIA 公安調査庁 世界のテロ等発生状況
首相官邸 海外での感染症対策

どのような安否確認方法があるか


海外にいる従業員の安否確認を行う方法はいくつか挙げられますが、大きく分けると、外務省のオンライン安否紹介システムを使う方法と、民間の安否確認ツールやシステムを利用する方法があります。外務省のオンライン安否確認システムは2011年から運用されており、海外で甚大な災害や事件が勃発した際、照会者が対象者の安否確認を依頼できるシステム。大規模な緊急事態が起きたとき、外務省のホームページ上にシステムが立ち上がる仕組みです。受付番号とパスワードを取得して対象者情報を入力すれば、在外公館や外務省の調査で安否が確認され次第情報が反映されます。

民間の安否確認ツールやシステムを使う方法もあります。費用がかかりますが、危機管理を効率化できるものが多いので検討する価値は十分あるでしょう。民間のサービスだと、「セコム安否確認サービス」や「レスキューナウ安否確認サービス」、「インフォコムエマージェンシーコール」など、多彩に存在します。サービスによって特徴や費用が異なるため、導入前に用途や機能をしっかり理解することが大切です。

民間の安否確認システムで代表的なものに、トヨクモの「安否確認サービス2」が挙げられます。国内シェアナンバーワンのグループウェアデザインを踏襲したインターフェースになっており、誰でも直感的に操作できる仕様なので、いざという時に戸惑うこともないでしょう。英語表記に対応しているのも特徴。インターネットに接続できる端末さえあれば、国に関係なくシステムを利用できますし、サーバー設置を国際分散しているので、どの国で災害が起きたとしても安定稼働するのもメリットです。

ここまででお伝えしたように、海外にいる従業員の安否確認を確実に行う方法は、外務省のシステムもしくは民間のサービスやツールを使うことです。ただ、外務省のシステムだと、外務省の調査力に依存するかたちになります。また、正確な対象者情報を入手できない危惧もあります。そのため、国の仕組みを利用しつつ、トヨクモのような民間のツールも併用するのがベストだといえるでしょう。

参考:
みんなのBCP 防災対応の新スタンダード・多言語対応安否確認システム
MOFA 外務省 海外安全ホームページ オンライン安否照会システム~利用案内~

海外での事故・事件事例を紹介

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インドへ出張に出かけた人が、ホテルのフロントを通じてタクシードライバーに部屋番号を教えてしまったため、その後脅迫電話がかかったり見知らぬ人が押しかけてきたといった被害に遭ったケースが報告されています。海外出張の際は、ホテルの部屋番号や携帯電話番号などはできるだけ周りに伝えないことです。日本国内なら大した問題にはなりませんが、海外だと話は違ってきます。海外で不用意に個人情報を第三者に教えてしまうと、こうしたリスクがあることは覚えておきましょう。

また、タイのバンコクでも驚くような事件が起きています。仕事終わりにバーで飲んでいた人が、たった束の間トイレへ立った隙に飲み物へ強力な睡眠薬を入れられてしまったのです。入れられた人は、そのようなことを知る由もなく睡眠薬入りのドリンクを口にしてしまい、気づいたときには病院のベッドの上だったとか。しかも、身ぐるみすべてを剥がされており、財布はもちろんパスポートやパソコン、ビジネスで使う書類なども全部盗まれてしまったそうです。

日本でも時折、このような昏睡強盗は発生しますが、海外では発生率が日本の比ではありません。タイのバンコクでは、こうした事件が日常的に起こっているとのこと。リスク情報を前もって入手しておけば、飲みかけのドリンクをテーブルに残したまま迂闊にトイレへ行きはしなかったでしょう。つまり、これは知ってさえいれば防げた被害ともいえます。

では、海外出張や海外赴任に向かう従業員を、企業はどのように守ればいいのでしょうか。対処法の1つに事前研修が挙げられます。海外では自分の身は自分で守るのが常識。それを徹底して周知することが重要です。海外進出している企業では、年に数回ほど海外でのリスクに関する研修が行われています。とくにリスクの高い国へ出張する従業員に対しては、個別に渡航先についての教育を施すこともあります。

第一に、海外で起こり得る最新のリスク情報を知らせること。そして、それに対する予防策と被害に遭ったときの対応策の知識を学ばせる機会も必要です。海外に従業員を多く派遣する企業ならなおさら、従業員を守るための事前研修をしっかり行いましょう。さらに、男性と女性とでは遭遇するリスクが違ってくるため、性別に応じた指導やトレーニングも求められます。

また、最近では海外留学プログラムをもつ大学が、学生の渡航前に研修を設けて「危機管理」を教育するケースが増えています。外務省の海外安全情報配信サービス「たびレジ」への登録を促し、いざというときの最新情報入手法や大使館・総領事館への連絡の仕方がわかるようにしています。

参考:
インターナショナルSOS 発生対応では遅い! ~リスク認識・準備することから始まる出張者のリスク対策と企業の安全配慮義務~【3】出張者の安全対策
近畿大学 海外渡航安否・危機管理
関西学院大学 交際教育・協力センター 海外渡航・留学中の危機管理
外務省 海外安全情報配信サービス たびレジ

まとめ

海外では何が起こるかわかりません。国や地域によって、日本では考えられないようなことも発生し得ます。企業としては、従業員の安全を確保するのが先決ですし、そのための取り組みが必要でしょう。また、もしも従業員が海外で災害やテロ、犯罪などに巻き込まれてしまったとき、スピーディに安否確認できるシステムを構築しておくのも大切です。今回ご紹介した安否確認システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。