落雷が事業にどのような影響を及ぼすかご存じでしょうか。たとえ直撃を免れても、雷による影響でビジネスが大打撃を受けることは珍しくありません。企業の防災担当者や経営者は、落雷対策についてきちんと考える必要があります。対策の一つとして保険加入が考えられますが、そもそも落雷を補償できる保険はあるのでしょうか。ここでは、落雷の代表的な被害と、落雷を補償できる保険の有無・内容などをお伝えします。
落雷が事業に及ぼす影響
雷が建物に落ちると破損する、ということは多くの方が理解しているはずです。雷の電圧は約1億ボルトといわれており、なんと、一般家庭での電圧のおよそ100万倍となります。それが建物や人に直接落ちるとなれば……どんなに凄惨かはほとんどの方がおわかりのことでしょう。しかし、雷は直撃しなくても被害をもたらすのです。
落雷時に近くにあるアンテナ、電話線などに巨大な電流や電圧が発生し、電線などを介して建物内に入ってくることがあります。これを「誘導雷」と呼びます。建物から離れた場所に雷が落ちたとしても誘導雷の被害に遭うことがあり、侵入した電流、電圧によって電気製品がダメージを受けます。また、避雷針に落ちた雷が大地に流れ、アースを通じて電圧や電流が逆流してくる「逆流雷」と呼ばれる被害も起こりえます。これも誘導雷と同様、電気製品に甚大なダメージを与えます。では、落雷は事業にどのような影響を与えるのでしょうか。
まず、雷が建物に直接落ちた場合ですが、外壁や屋根部分を損壊される被害が考えられます。建物の外部が損壊すると、そこから風や雨が侵入する可能性もあり、業務に影響が出る恐れがあります。当然建物の外壁の修繕が必要です。被害の度合いによっては相当な費用が発生する場合もあります。また、落雷によって損壊した部分、たとえば、コンクリート片やタイルなどの外壁材が地上に落下することも考えられ、通行人に当たる可能性があります。ましてや、ビルの高層から落ちたコンクリート片などが人に当たる事故となれば、ケガどころではありません。
実際、雷の直撃によって外壁のコンクリート片が地上に落下する被害は起きています。東京都庁も、かつて側壁に雷の直撃を受け、外壁の一部が地上に落下しました。このときは幸いにも通行人がおらず、被害を受けた方はいませんでした。また、国会議事堂も落雷によって剥がれた御影石が1階の食堂に落下する事故がありました。
法律では、20mを越す高さの建物には避雷針の設置が必要となっていますが、それだけでは雷の被害は防げません。高層ビルの場合だと、横からも雷が襲ってくることもわかっています。
落雷によってパソコンの大切なデータが失われる被害も考えられます。施設内で使用しているIT機器などはまとめてダメージを受けることが多く、すべてのデータが消えてしまうこともあります。複数の機器が同時にダメージを受けることで、バックアップも一緒に消失してしまうかもしれないのです。
仮に、顧客情報がすべて失われたとしたらどうでしょうか。顧客の情報は企業にとって大切な宝です。既存客はもちろん、見込み客の情報なども失われたとなると、サービスの提供やマーケティングアプローチもできなくなります。それが事業継承にどれほどの損害をもたらすか、想像しただけで恐ろしくなるでしょう。
オフィスに直接的な被害を受けた場合だと、新たに別オフィスを構える必要が生じることもありえます。もし落雷で従業員が被害を受けてしまったら、代わりの人員を採用する必要もあります。また、業務を進められなくなると商品の納期が間に合わなくなる可能性もあります。
このケースだと、取引先から損害賠償を求められる可能性も出てきます。信頼を失い、今後の取引に多大な影響が起こるかもしれません。人的、金銭的な被害にとどまらず、今後事業を継続できない可能性すら考えられるということです。
このように、落雷は企業のビジネスに大きな打撃を与える危険性があります。つまり、企業にとって落雷は間違いなく脅威といえるため、適切な対策を施さなくてはなりません。その対策の一つとして保険加入が考えられるわけです。
参考:
東北物産株式会社「01雷対策は万全ですか?」
ITmedia PC USER_「落雷から大切なPCやデータを守るためのポイント(1/3)」
NHKクローズアップ現代「稲妻が超高層ビルを襲う~明らかになる“雷クライシス”~」
音羽電機工業株式会社「雷の知識」
落雷に備えられる保険はあるか
企業が落雷によって受ける損失は、ときとして甚大になります。巨額の損失を出してしまうと、自社の資金では賄えない可能性もあります。金融機関から融資を受けてその場をしのぎたくても、絶対に融資が実行されるという保証はどこにもありません。
そのため、落雷による損失をカバーできる保険があれば、このような事態に陥っても不安が軽減します。落雷の損害を補償する保険は多々あるため、企業の防災担当者や経営者の方は検討してみることをおすすめします。
たとえば、東京海上日動の「企業総合保険(財産補償条項)」が挙げられます。これは、火災や爆発、落雷などによって建物、設備、商品に生じた損害を補償する保険です。保険対象となる評価基準は、建物や設備、屋外設備、什器などの場合だと時価額、もしくは再取得価額の2つから選択することになります。再取得価額は、保険の対象と用途や能力などが同じものを再取得するのに必要な額をベースとします。時価額は、再取得価額から経過年数による減価償却額、消耗額などを差し引いた額がベースです。
また、NTTファシリティーズからも「落雷利益保険」という商品がリリースされています。独自リスクマネジメント提供型の商品で、落雷によって建物や設備などが損壊した場合における収益の減少額を補償する専用商品です。事故原因を落雷に特化することで、リーズナブルな保険料を実現していることが特徴です。詳しくは後述しますが、業界でも初となるオーダーメイド型の利益保険としても注目を集めています。
参考:
東京海上日動「企業総合保険(財産補償条項)商品概要」
NTTファシリティーズ「独自リスクマネジメント提供型「落雷利益保険」」
基準や金額など補償の内容について
落雷保険に加入するにしても、気になるのは補償内容です。すでにご紹介した2つの保険以外にも商品はありますが、補償内容はそれぞれ異なります。加入を検討するのなら、内容をきちんと把握することが先決です。
たとえば、東京海上日動の企業総合保険(財産補償条項)では、1から6までのプランが用意されています。数字が大きくなるほど補償内容が充実しています。プラン6だと火災や落雷のほか、風災や水災、車両や航空機の衝突、偶発的な損壊事故などにも対応しています。
プラン1だと、火災と落雷、破裂、爆発のほか、風災や雹(ひょう)、雪災に対応しています。そのため、落雷への備えとして加入するのならプラン1でも十分かもしれません。
NTTファシリティーズの落雷利益保険は、先述の通り落雷による被害のみが補償の対象です。落雷によって火災が発生し、その火災によって損害が生じた場合はそれも補償対象です。この保険は、独自のシステムで落雷のリスクや現状把握を行い、ヒアリングも実施したうえでコンピューターによる分析が行われるのが特徴です。そこで導き出された診断結果によって、リスクに応じた保険料水準の提示が行われます。そのため、既定のプランはなく、保険料と保険金額は被保険者により異なります。
参考:
東京海上日動「企業総合保険(財産補償条項)損害保険金のお支払対象となる事故」
NTTファシリティーズ「独自リスクマネジメント提供型「落雷利益保険」
まとめ
落雷が事業にもたらす脅威と落雷保険について数事例をご紹介しました。雷による被害を受けないことが理想ですが、天災である以上確実に雷を回避する方法はありません。ですから、落雷によって生じる損害をカバーできる保険への加入は有効な対策といえるでしょう。企業はもちろん、従業員を守るためにも必要な保険です。