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製造業のBCP(事業継続計画)|必要性や策定のポイントを解説

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近年、地震、台風、豪雨などの自然災害が激化しており、企業にとってBCP(事業継続計画)の策定は喫緊の課題となっています。特に、サプライチェーンの複雑化やグローバル化が進む製造業においては、BCPの重要性はますます高まっています。

この記事では、製造業におけるBCPの必要性と策定のポイントを解説します。当記事を参考にしていただくことで、緊急事態に迅速かつ効果的に対応し、事業継続の命綱を築くための助けになればと考えています。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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製造業に必要とされるBCP(事業継続計画)とは

BCPとは、Business Continuity Planningの略で、日本語では事業継続計画と訳します自然災害やテロ、感染症などの緊急事態が発生した際に、被害を最小限に抑え、被害が出た場合には迅速に復旧させることで事業を継続させることを目的とする計画です。

製造業では大手企業と中小企業の間には設備や社員数などに差があり、それぞれBCP対策で重視するポイントが違います。

とくに中小企業ではBCP対策の導入が遅れています。内閣府の調査によると、BCP策定済みと回答した割合は大企業の70.8%に対し、資本金10億円未満、従業員数50人超の中堅企業では40.2%です。

参考:内閣府 令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査の概要

製造業のBCP(事業継続計画)の必要性

そもそも、なぜBCP対策は製造業で必要とされているのでしょうか。その理由は、他社に与える影響や生産設備など、製造業ならではの特徴にあります。ここで紹介する3つの理由を踏まえて、BCP対策の導入に取り組みましょう。

他業種よりも影響が広範囲に及ぶ

製造業は開発から販売に至るまで携わる関係者の数が多く、何か問題が起きると、その影響が広範囲に及ぶ可能性が大きい業種です。

そのため、自然災害などの被害によって一社でも機能不全に陥ると、製品の供給網であるサプライチェーン全体が停止することが珍しくありません。サプライチェーンが止まると最終的には消費者への製品供給が滞ります。とくに生活必需品の供給が不足すれば、国民生活そのものにも直接影響を及ぼすでしょう。

このようにひとつの会社で発生した問題が社会全体にもたらす影響の範囲が広いため、製造業は積極的にBCP対策を導入する必要があるといえます。

業績悪化のリスクが高い

製造業は発生した緊急事態にいち早く対応できなければ、業績が悪化しやすい傾向にあります。

製造業では、製品を生産するうえで自社工場の設備が不可欠です。被災で設備が壊れてしまい生産できなくなると、取引先へ納品ができないという状況に陥ります。

その後、設備が復旧して生産再開できたとしても、その間に取引先が別の企業を選択していれば、取引そのものが終了する可能性があります。

製造ノウハウやデータ紛失のリスク

自然災害などの影響で、工場設備だけでなく製造のノウハウやデータを失うリスクもあります。

製造業では自社が築き上げた独自の生産技術やシステムなどのノウハウが武器になるため、他社との差別化を果たす財産として大切に扱われる傾向があります。

ノウハウをもっている従業員に加え、ノウハウが蓄積されているデータを保管しているPCやUSBメモリなどが自然災害で破損もしくは紛失してしまうと、長年積み重ねた会社の強みを失う結果につながりかねません。

会社の重要資料はバックアップを定期的に取った上で、複数の同時被災しない安全な場所に保管し、リスクを分散させておくことがおすすめです。

製造業のBCP策定の5つの手順とポイント

ここからは、製造業でBCPを策定する際の手順を説明します。

明確な目的や対応策を事前に策定しておけば、非常事態を迎えても慌てることなく動けるでしょう。紹介する各プロセスをぜひ参考にしてください。

1.目的を決める

はじめに、BCP対策を作成する目的を定めましょう。

社員の安全を守ることや、優先すべき事業を守ることなどがBCP策定の目的にあたります。目的を定める際には、企業理念や経営方針を踏まえて考えましょう。

企業文化に沿った目的のもとにBCPを策定することで、緊急事態でも従業員が同じ目的に向かって対応できるようになります。

2.リスクを洗い出す

次に、緊急事態発生時に起こりうるリスクを洗い出しましょう。自社の設備や環境を踏まえてリスクを予測できれば、会社としてどのようなリスクに対応すればよいのかが見えてきます。

また、ひととおりリスクを列挙したあとは優先順位をつける作業に移ります。とくに従業員の安全や会社の資産などは、対応の優先度が高いものです。なお、この工程は異なる部署や職種の従業員を集めて議論を実施し、複数の立場からアイデアが出るようにするとよいでしょう。

3.対応策を考える

続いて、洗い出した優先順位の高いリスクへの対応策を検討しましょう。緊急事態が発生した際は、冷静な判断が困難です。具体的な対応策を事前に作成しておけば、不測の事態が起こった際もスムーズに行動に移せます。

たとえば、現場の指揮を執る監督者や、外部と連携する担当者を定め、それぞれの担当者の行動順序まで定めておくことが挙げられます。

また、一度作成した対応策は定期的に訓練などで見直して内容の加筆修正をしましょう。これは、従業員の異動や社内環境の変化によって対応策が変化するためです。

4.従業員に周知する

BCPは従業員に周知し、社内での浸透を図りましょう。緊急事態時の対応を従業員が把握していれば、統率の取れた行動が可能です。

周知の方法としては、主に研修での座学と訓練での実践が挙げられます。

研修を実施すれば、前述したBCPの理念や目的、リスクへの対応策を社員に直接伝えることができます。また、研修で伝えた対応策が盛り込まれた訓練を実施すれば、社員の理解がより深まり、BCP対策を社内の共通認識として捉えてもらえるでしょう。

5.ツールの導入を検討する

BCP対策にはツールの導入がおすすめです。時間や手間がかかる工程は、ITツールを導入することで効率化できる可能性があります。

たとえば、自然災害発生時は従業員の安否確認に時間と労力を要します。その際に安否確認ツールを使用すれば、自然災害発生と同時に従業員全員の連絡先にメッセージを送信して回答を自動で集計することが可能です。

製造業のBCP対策例

ここからは、企業規模ごとにBCP対策のポイントを解説します。大手企業は自社の従業員数や取引会社の数が多く、周囲への影響力が大きいことが特徴です。そのため、リスクの分散や周囲への働きかけを通じたBCP対策を行う必要があります。以下で詳細について解説します。

サプライヤーの分散

大手企業の場合は、多くのサプライヤーと取引を行うことでリスクの分散が図れるという考え方があります。

製造業界ではサプライヤーから部品や資材を調達するため、そのサプライヤーが機能停止に陥ると自社の製造まで止まってしまうというリスクが存在します。同時に被災しないような離れたところにある別のサプライヤーから調達できる状態にすれば、自然災害でひとつの会社からの供給が止まったとしても事業を継続することが可能です。

特定のサプライヤーに依存しない環境を作っておくとよいでしょう。

サプライチェーン全体のBCP導入を促進

大手企業が率先して関係会社のBCP導入を促進させられれば、サプライチェーン全体にBCP対策の機運が広まります。大手企業の体力があれば、自社のBCP対策に注力するだけでなく、自社の製品供給を担う企業のBCP導入支援に取り組むことも可能です。

とくに中小企業の場合、資機材や人材の不足が原因でBCP対策に取り組めていないことがあります。そのような調達元を大手企業が支援し、全体の防災レベルを上げましょう。

迅速な従業員の安否確認

自然災害発生時には迅速な安否確認が求められます。その際に、一人ひとりに連絡して人力で集計を取りまとめるという方法では、手間と時間を浪費するでしょう。

また、安否確認が迅速に行われれば、復旧・再開に向けての人員確保や配置も速やかに行うことができ、早期の事業継続にもつながります。

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防災対策・訓練の実施

防災対策や訓練の実施はBCP対策に有効です。自然災害発生時に、従業員が正しい行動を理解していれば被害を最低限に食い止められるでしょう。

防災対策として、ハザードマップが示す危険なエリアを全員が把握し、防設備の保全方法の確認したり、会社内に留まる際の食料・生活物資の備蓄などをすることが挙げられます。

また、建物からの避難が必要な場合には、定期的に避難訓練を実施して避難経路を把握していれば、迅速な避難が可能になります。

データのバックアップ体制の確保

会社の経営資源であるデータはバックアップを取り、安全性を確保しましょう。

業務にまつわるデータを社内だけで保存していると、被災ですべて失うおそれがあります。たとえば、書類は地震による紛失や火災による消失のリスクがあります。また、PCにデータ保存をしている場合でも、PC自体が破損してデータを取り出せなくなるリスクがあるでしょう。

そのため、クラウドサーバーなどでの保存がおすすめです。時間や場所を問わずデータにアクセスでき、業務再開がスムーズに進みます。

製造工程の代替手段の確保

各工程の代替手段を確保しておけば、緊急事態時の生産停止を回避できます。施設や生産設備、さらに人員に関しても代替可能なものについては代替手段を用意しておきましょう。

施設や生産設備の代替手段としては、近隣に別の施設を用意して簡易な生産設備を整えておくという対策も考えられます。

人員の面では、従業員が復旧作業に追われて人手不足に陥るケースが発生します。関係会社からの派遣や協力を通じて人員を確保するという対策を講じることができるのならば、業務を継続できるでしょう。

資金や物的資源の確保

生産停止に伴い売上が減少するリスクに備えて、運転資金や物的資源を日頃から一定数確保しておくことをおすすめします。

資金面では、中小企業向けにBCP対策を支援する融資制度を用意している自治体があります。そういった制度を利用したり、取引銀行に相談し、資金の調達を行うことも有効な対策です。

また、物的資源の面では、生産に用いる資材や部品の調達遅延に備えて在庫を日常的に確保しておくとよいでしょう。

製造業におけるBCPの必要性を理解しよう!

この記事では、製造業の会社が実践できるBCP対策について解説しました。目的を定め、日頃から緊急事態に備えることで従業員と資源の安全を確保できます。

とくに自然災害発生時は、従業員の安否確認に時間を要します。

安否確認が迅速に行われれば、復旧・再開に向けての人員確保や配置も速やかに行うことができ、早期の事業継続にもつながります。安否確認システムを導入していない、興味がある企業は、この機会に、トヨクモ『安否確認サービス2』の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。