近年、個人情報の流出、食品への異物の混入など、企業の不祥事がよく取りざたされます。企業としてどんなに気を付けていても、不祥事が起こる可能性は0ではありません。ここで重要になるのが、不祥事が発生した後のマスコミ対応です。事件を報道するマスコミにネガティブな印象を持たれてしまえば、世間からの批判はより加熱し、社会的な信用を一気に失いかねません。
今回は、近年話題となったマスコミ対応の失敗事例を参照しつつ、不祥事があった際、いかに対応すべきかについて考えていきます。
目次
何が間違っていたのか?マスコミ対応の失敗事例
近年話題になった企業の不祥事としてあげられるのが「日本マクドナルド」と「ベネッセ・コーポレーション」の事例。食品への異物混入、個人情報の流出という大問題を起こしたうえ、そのマスコミ対応の酷さから、大きく信頼を損なう結果となりました。
事例①:日本マクドナルド
賞味期限が切れた鶏肉を、チキンナゲットに使用していたことで批判を浴びたマクドナルド。それに続き、ハンバーガーやシェイクにプラスチック等の異物が混入していた、というクレームも数多く寄せられました。大きな批判を浴びた理由は、不祥事そのものに加え、発覚後の対応のまずさにもありました。
・問題発覚後、約10日間も謝罪会見を開かなかった
・謝罪会見に経営トップのカサノバ社長が現れなかった
・会見で「マックはだまされた」と語るなど、責任転嫁をする態度を示した
非を認めていち早く情報開示をする、という姿勢がなく、決算会見のタイミングに合わせて謝罪を行うという、自社の都合を優先した対応に批判が集中しました。これによって「商品の安全性を軽んじている」との印象を世間に与えることになり、マクドナルドに対する信頼が一気に下がることになりました。
事例②:ベネッセ・コーポレーション
情報管理会社の社員が会員情報を流出させ、名簿業者3社に転売するという問題が発生。3,000万人を超えるベネッセ会員の住所、氏名、アドレスなどの個人情報が流出しました。マクドナルドとは異なり、謝罪会見を行うまでは迅速でしたが、マスコミからの質問に対する回答に批判が集まりました。
・ベネッセは加害者か被害者かと聞かれた際に、現時点では加害者と回答。「現時点」という表現に、責任回避の意図が感じられた
・最初の記者会見で「金銭的な補償は検討していない」と明言、補償内容が不明確
問題を起こしたのは個人ですが、責任を取らなければならないのは本社。責任回避するような発言はすべきではありませんでした。また、お客様に「補償する気がないのか?」と思わせてしまうような対応をとってしまったことも大きなミスです。これでは、顧客の個人情報を軽視していると取られても仕方ありません。会社のことを第一に考えるのではなく、顧客を第一に考える。それに基づいた対応をすることが重要だったのです。
マスコミ対応で気をつけたい3つのポイント
2社の例から、マスコミ対応において気をつけるべき点が見えてきます。不祥事が起きてしまったあとの「二次被害」を防ぐためには、以下の3つのポイントが大切です。
1. トップが自ら記者会見に臨む
当然ですが、謝罪の記者会見には組織のトップである社長が参加すべきです。社長が記者会見に臨まないこと自体が、「この問題を軽視している」と受け止められかねません。「社員が〜」「取引先が〜」といったような、責任転嫁のような発言も問題です。
マクドナルドのカサノバ社長は非を認めず、「取引先の悪意」「日本に出荷された証拠がない」などの発言を繰り返したために、大きな反感を買いました。トップには会社存続のため、ひたすら頭を下げ続ける忍耐力が求められるのです。
2. 隠蔽をしない、曖昧な事実を示さない
情報開示が遅れて対応が後手にまわることのないよう、起こったことをありのまま伝えることが重要です。問題を先送りすれば、批判は大きくなるばかり。事実としてわかっていることは、隠し立てせずに全て伝えるのが最善策です。
これは、マスコミによる連続的な報道を防ぐことにもつながります。情報を小出しをすることによって、連日のように報道がなされると、「大きな問題を起こした」というマイナスの印象を、世間により強く与えることになってしまうのです。
3. マスコミの傾向を把握する
過度な批判報道を抑えるためには、マスコミの傾向を把握しておくことも大切です。通常、企業の不祥事を取材する場合は、「社会部」の記者が担当になります。社会部の記者といえば、社会的責任、生活者への影響、社会への影響に強い関心を持っているもの。
社会的正義に反する行動に対しては、容赦なく切り込んできます。組織の社会的責任を問われている場面で、責任転嫁をしたり、曖昧な事実を述べようものなら、翌日にはマイナスの報道がなされてしまうことでしょう。
誠実なマスコミ対応で、顧客に信頼される企業に
適切なマスコミ対応ができれば、不祥事を起こしても立ち直りは早くなります。ファンから「負けずに頑張れ」と応援してもらえることもあるでしょう。良い対応の例としてあげられるのは、異物混入が問題となった「ペヤング焼きそば」を製造するまるか食品。発覚後すぐに謝罪会見を開いて自社の非を認め、工場操業停止、製品回収を行ったことで、今では信頼を回復しています。
マスコミの報道は、世間の声を写す鏡です。つまり、マスコミに対して真摯に対応することは、商品を買ってくれる顧客に対して筋を通すことと同じ。保身ではなく、顧客を第一に考える企業だと思ってもらえるよう、誠実なマスコミ対応を心がけましょう。