登山が趣味の方、仕事でよく山に入る方にとって「遭難」はもっとも身近なトラブルです。何らかの事故やトラブルに見舞われて山で遭難した際は救助ヘリや山岳救助隊が出動しますが、無料というわけではありません。これらの救助活動を受けた場合、どれくらいの費用が必要になるのかをあらかじめ知っておきたいところです。そこで、ここでは遭難時の捜索方法や捜索費用・防止策などについてまとめました。
遭難時にはどのように捜索・救助が行われるか
捜索費用・救助費用の説明の前に、山で遭難したときに捜索・救助を行う組織について説明します。山岳救助を行う公的な組織として、警察の山岳警備隊や消防の山岳救助隊などが挙げられます。警察の山岳警備隊は遭難者の救助だけでなく、山岳地帯の治安維持や交通安全、環境保全を目的とした活動を行っているのが特徴です。一方、消防の山岳救助隊は特別救助隊を兼任していることが多く、山中での救助活動をスムーズに行うため、日ごろからさまざまなトレーニングを行っています。
これらの公的組織は連携体制をとっており、捜索・救助を共同で行う場合も例外ではありません。一般的な遭難の捜索・救助の場合、まずは遭難者もしくは親族から警察や消防に遭難した旨の連絡が入ります。ただし、警察や消防に通報したからといって必ず連絡した機関が動いてくれるわけではありません。遭難が発生したエリア、気象、部隊の配置などを検討し、もっとも適当だと思われる部隊に出動命令が下ります。警察に連絡をしても、消防の山岳救助隊が救助を行うことはよくあります。
救助要請をしたあとは命令を受けた警察、もしくは消防の部隊がヘリコプターを使って捜索を行います。基本的に山岳の遭難救助はヘリコプターを使用しますが、近年はドローンを活用しようとする動きも出始めています。ドローンを使った山岳救助の実証実験も行われていますし、今後救助の現場に導入される可能性は十分あるでしょう。
救助ヘリが来たからといって安心はできません。山岳地帯ではヘリが着陸できる場所が限られているので、近くに着陸できそうな場所があればそこへ移動する必要があります。また、場合によっては着陸せず、静止状態のヘリから救助隊員を吊り降ろして遭難者を吊り上げることもあります。
ここまでは公的な機関による山岳救助のフローをご紹介しましたが、実は民間で山岳救助を行う組織もあります。山岳会や山小屋を管理している団体が独自に救助部隊を編成していることもあり、警察や消防と協力して救助作業にあたります。また、ヘリコプターを使った捜索サービスを提供している企業もあり、クライアントの要請に応じて救助を行っています。
参考:
jRO日本山岳救助機構合同会社 事故発生から救助までの流れ
TIME&SPACE 日本の「ドローン技術」が遭難者を救う! 富士山で行なわれた山岳救助の実験に密着
遭難時の捜索費用・救助費用はどのくらいかかるか
山での遭難救助では、警察の山岳警備隊や消防の山岳救助隊などが捜索・救助を行います。警察や消防といった公的機関の救助隊が捜索・救助にあたった場合は費用がかかりません。緊急を要する怪我や病気などで救急車を利用したときの搬送費が税金で賄われるのと同様に、捜索や救助にかかった費用も税金で賄われます。
ただし、山で遭難した際は民間の組織に協力を依頼して捜索にあたることも少なくありません。山岳での捜索は人手や地形をよく知る人を必要とするため、地元の山岳会などへ依頼するケースがあるのです。
こうしたケースでは費用が発生します。民間の山岳会に協力を依頼した場合は、1日1人あたり2~3万円の費用が発生します。仮に2万円だとしても、山岳会のメンバーが5人いればそれだけで1日に10万円、5日間捜索を行えば50万円の費用が必要になるわけです。
また、忘れてはいけないのが救助ヘリの存在です。現代の山岳救助においてヘリコプターの出動は必要不可欠な救助活動といっても過言ではありません。もちろん山岳救助隊が所有しているヘリコプターであれば捜索費用・救助費用は税金で賄われます。しかし、山岳救助隊のなかにはヘリコプターを所有していない部隊もあります。
そうした部隊は多くの場合、維持費用が高額になるため所有はせず、必要なときだけ民間の業者に依頼する体制をとっています。ヘリコプターの費用は業者によってまちまちですが、1日3時間飛ばしたと仮定すると燃料費なども含めて約150万円前後になることもあります。この費用は遭難した本人に請求されます。
一方で、埼玉県では、全国で初となる自治体ヘリによる山岳救助を有料化する条例が施行されました。すでに適用もされており、山で遭難した60代の男性をヘリコプターで救助したとき、約1時間の飛行における燃料費として5万5000円を請求しています。
このように山岳会のメンバーの動員や民間ヘリの利用など、民間の組織に協力を依頼すると基本的に費用が発生します。また、埼玉県のように今後防災ヘリを有料化する自治体がどんどん増えていく可能性もあります。
ただし、民間の救助活動を受けた際に発生した費用が保険の対象になることもあります。山岳保険やレジャー保険などに加入していると、条件をクリアしていれば保険金が支払われます。全額支給とならない場合もありますが、すべてを自己負担で賄う必要がなくなるので助かるでしょう。頻繁に山へ行く方は加入を検討しておくと安心です。
参考:
MountainCity 山で遭難した時の費用負担は?知っておきたい山岳遭難費用
産経ニュース 山岳遭難者の救助、58分で5万5000円なり…ヘリ出動で埼玉県が請求 有料化条例を全国初適用
シェアしたくなる法律相談所 もし冬山で遭難したら費用はいくら請求される?
遭難の防止策
遭難しないためには、しっかりと登山ルートや天候に関して下調べしておくことが重要です。とくに、初めて登る山については入念なリサーチを行い、遭難の事例や危険箇所を事前に把握しておきましょう。山岳遭難の事例をたくさん掲載している書籍もあるので、登山にチャレンジする前に熟読しておくとよいかもしれません。
また、地図とコンパスは必ず持参しましょう。山に入る前に地図を確認し、休憩するときも自分の現在地を把握しておくことが大切です。迷ってから初めて地図を見る方もいますが、すでに手遅れになっていることも少なくありません。頻繁に地図を見ながら歩けば、道に迷ったとしてもおおよその位置がわかるはずです。
怪しいと思ったら、確実に道がわかるところまで引き返すようにしましょう。わからないままどんどん進んでしまうと遭難してしまう恐れがあります。むやみに動き回ってしまうと体力を無駄に消耗してしまいますし、救助の難易度が上がってしまいます。下手に動かず、発煙筒を使うなどしてじっと救助を待った方がよいケースもあります。
ほかにも、遭難時には山を下るのではなく、尾根に出る方法があります。山を下っていくと滝や沢に出くわすことがありますし、谷間に入ると携帯電話の電波が届かなくなることもあります。電波が届かなくなると救助を呼べなくなってしまうので、それを回避するにも尾根に出た方がよいでしょう。後々ヘリコプターで捜索してもらうにしても、尾根にいた方が見つけやすいという利点があります。
もちろん遭難しないのが一番ですが、もし遭難したときのためにツェルトを持参することをおすすめします。ツェルトは、思いがけない山での宿泊や休憩に役立つ軽量の小型テントです。日帰り登山だと荷物になるので持っていきたくないという方もいるかとは思いますが、ツェルトがあれば遭難しても寒さをしのげますし、目立つので発見が容易になります。
民間企業のサービスに登録しておくのも遭難の防止策として効果的です。もしものときのことを考えて、オーセンティックジャパンのサービスの利用を検討しておきましょう。同社では「COCOHELI」というサービスを提供しており、会員になると高精度な発信機が搭載された会員証を貸与されます。万が一のときには捜索ヘリが居場所を正確に見つけ出し、救助組織に引き継いでくれます。また、全国網のヘリネットワークを構築しており、出動費用も3フライトまでは無料です。年会費は税別で3650円とリーズナブルなのもポイント。万が一に備えて、検討する価値はあるでしょう。
参考:
YAMA HACK 手のひらサイズの命綱|ツェルトのおすすめモデルはコレ!
YAMA HACK 山岳遭難に合わないために!傾向と対策を知って楽しい登山にしよう
COCOHELI あなたと、あなたの大切な人を救う会員制捜索ヘリサービス ココヘリ
まとめ
遭難して山岳会や民間ヘリを利用した捜索・救助活動を受けると、多額の捜索費用・救援費用が発生することがあります。まずは遭難しないようにしっかりと準備をしてから登山に出発しましょう。ただし、どんなに気をつけていても遭難する可能性はあるので、万が一への備えは大切です。保険への加入や、オーセンティックジャパンのサービスなどもぜひ検討してみてください。