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ポータブル電源は災害時に備えて必要!適切な容量・活用シーンを解説

ポータブル電源は災害時に備えて必要!適切な容量・活用シーンを解説

災害発生時、停電する可能性があります。停電が長期間に及ぶと、暑さや寒さを凌げないだけではなく、連絡手段がなくなり不便な思いをするでしょう。そうした状況の対策には、ポータブル電源がおすすめです。

本記事では、防災対策の一環として用意しておくべきポータブル電源について、その容量や活用シーンなどを解説します。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

ポータブル電源とは

ポータブル電源は、充電式のリチウムイオン蓄電池が搭載された大容量バッテリーです。大容量で高出力のため、災害時の非常用電源に適しています。

モバイルバッテリーとは異なり、家庭用コンセントのAC100V交流電源出力が可能で、1000W以上の消費電力を必要とする家電も使用できます。モデルによっては数種類の端子を接続できるため、スマートフォンやPCの充電だけでなく、冷蔵庫や小型のIH機器なども使用可能なのです。

企業でも災害時ポータブル電源は必要

企業の防災対策においても、ポータブル電源は必要です。災害時のBCP(事業継続計画)に、電気の供給は欠かせません。

災害発生時には、とくに多くの電力を必要とする状況が予想されます。スマートフォンやPCの充電をはじめとし、冷蔵庫や冷暖房機器などにも多くの電力を要するでしょう。そうした状況だと、乾電池式のモバイルバッテリーでは供給が追いつかなくなります。

また、ガスや燃料を必要とする発電機では、燃料切れとともに電気の供給ができなくなります。一方、ポータブル電源はソーラーパネルで充電できるため、燃料がなくても充電できるというメリットもあるのです。

企業防災用では1000Wh以上の容量が必要

ポータブル電源を選ぶ際は、消費電力に応じた容量のものを選ぶ必要があります。消費電力とは、電化製品を動かすために使われる電力のことです。

企業では多くの電力を使用します。そのため企業防災で用意するポータブル電源には、1000Wh以上の容量が必要です。

企業で使用することの多い電化製品と、必要なワット数の例を紹介します。

  • デスクトップPC:150W~300W
  • ノートPC:50W~120W
  • LED照明:60W
  • 扇風機:50W~60W
  • 冷蔵庫:150W~500W

たとえば、60W消費するLED照明を合計8時間使用するために必要な容量は480Whです。冷蔵庫は大きさにもよりますが、500Wの消費電力を必要とするものであれば、1時間稼働するのに500Whの容量が必要です。

ほかにも、発電機やソーラーパネルもセットで用意しておくことをおすすめします。

企業でも有事にポータブル電源が役立つシーン

有事の際、企業にてポータブル電源が役立つシーンはいくつか考えられます。非常時は電力の確保が重要であるためです。

ここからは、企業が被災した際、ポータブル電源が具体的にどのようなシーンで役立つかを紹介します。

災害時の初動に活用できる

災害発生時には事業を継続するためのBCP計画が重要ですが、ポータブル電源があれば、停電した状況でも遅滞なくBCPを発動させられます。初動の安否確認や、責任者からの指示連絡に活用できるでしょう。

また、大規模災害が発生した直後は、停電が起きる危険性も高くなります。停電は長期化する場合もあり、停電時に活動するための光源が必要でしょう。その際、防災用の照明では光量が足りなかったり、長持ちしなかったりといったケースがあります。ポータブル電源には照明がついている商品もあるため、非常用の光源としても備えておくと安心です。

安否確認のためにも使える

災害発生時には、従業員の安否確認が非常に重要です。初動における安否確認の際、連絡手段を確保するためにポータブル電源が活用できます。

通信機器の維持、スマートフォンやタブレットの充電に電力は欠かせません。また、停電時でもWi-Fiや通信システムを稼働させられるため、安否確認だけでなく、人員の確保やクライアントへの連絡も可能です。

被災が長期化した場合、指揮伝達にも電力は必要です。また、データの保守やバックアップが必要なケースもあるため、ポータブル電源を用意し、電力源を確保しておきましょう。

情報収集に役立つ

被災初期は、とくに情報収集や指揮が必要です。被害状況がどの程度か分からなければ、どのような指示を出すべきかも分かりません。通信手段が確保できれば、情報収集や従業員への指示が可能になります。

また、従業員からの報告によって被害状況を把握し、停電が長引くなかでも事業継続の施策を講じられます。また、本社や公的機関との連携を維持できるため、従業員もより確実な情報を収集できるでしょう。

従業員のスマホ、タブレット、PCを充電できる

情報収集や安否確認が必要になるのは、企業だけでなく従業員も同様です。家族の安否が確認できなければ、危険を冒してでも帰宅する従業員が現れてしまいます。

そうした状況を防ぐためにも、従業員のスマートフォンを充電できるようにする必要があるでしょう。スマートフォンが使えると、安否確認システムを用いて家族の安否が確認できます。その際、ポータブル電源があれば、従業員の端末を充電できます。モバイルバッテリーでも充電は可能ですが、容量を考えるとポータブル電源のほうが安心です。

そのほかにもポータブル電源であれば、従業員が所有する小型ポータブル電池の再充電にも利用できるうえ、停電が長期化した際には地域住民への支援にも転用できます。持ち運べるため、事業所に移動して使用することもできるのです。

基幹システムを維持させられる

産業用のポータブル電源があれば、小規模なシステムを数日稼働させられます。停電復旧まで業務を完全に停止させることはせず、可能な範囲で電力を使用し、早期復旧を目指すことが大切です。ポータブル電源は持ち運べるため、停電が長引いているエリアに移動させてシステムを復旧させることもできるでしょう。

停電の長期化が予想される場合には、ソーラーパネルと連動させると有効です。ソーラーパネルで充電しておけば、ガソリンを利用する発電機のような燃料切れの心配がありません。長期にわたって電力源の確保が可能なのです。

気温に応じた温度調整ができる

冬場に災害が発生した場合、暖房器具の稼働が従業員にとって生命線です。低体温症を防ぐためには、ストーブや電気毛布などの暖房器具を使用する必要があります。

また、夏場であれば、エアコンが停止すると熱中症になってしまうでしょう。6畳程度のオフィスであれば、ポータブル電源で扇風機を稼働させたり、エアコンを稼働させたりできます。

そのほかにも、電子レンジや電気ケトルを動かせるため、温かい食事や飲み物を摂ることができ、体力の維持に役立つでしょう。ただし、これらの調理器具は電力の消費が大きく、長時間使用できない点に注意してください。

ポータブル電源が企業防災に不要と言われる理由

これまで紹介してきたように、ポータブル電源は防災対策にとても役立ちます。一方で、企業防災には不要と言われることがあるのも事実です。

ここでは、企業防災にポータブル電源は不要と言われる理由を解説します。

日本の場合、停電が起きても1週間以上長引くことはないと考えられているから

電力は人々の生活に不可欠なインフラであるため、停電時は早急な復旧作業が行われます。そのため、1週間以上長引くことは少なく、ポータブル電源がなくても乗り切れるという声もあります。

しかし、大規模災害であれば、復旧まで時間を要してもおかしくありません。いつどこで東日本大震災や熊本地震のような大地震が発生するか分からない以上、ポータブル電源は備えておいたほうがいいでしょう。

緊急事態発生時にしか使用せず普段は使わないため、費用対効果が悪いから

ポータブル電源を使用するのは緊急事態が発生した際のみで、普段使用することはまずありません。費用も決して安いものでないため、費用対効果が悪く、必要ないと言われることがあります。

しかし、災害時に電力が使えないと、企業は甚大な損失を出してしまうでしょう。災害時に電源が使用できないことで予想される損失と、ポータブル電源にかかる費用を正しく比較することが大切です。

以上のように、ポータブル電源は企業防災に不要と言われることがありますが、被災状況が長期化するケースは多々見られます。事業継続に欠かせない電力を確保するためには、ポータブル電源は必要不可欠と言えるでしょう。

ポータブル電源を企業防災に活用しよう

大規模災害発生時には、長期にわたって停電が起きるおそれもあります。

企業において、電力源の確保は必要不可欠です。従業員の安否確認や事業継続のために、ポータブル電源を活用しましょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。