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【災害時の水備蓄】被災中も人間に必要な水分量を絶やさない方法

サントリーの水大辞典によると、“私たち人間の体は、胎児で体重の約90パーセント、新生児で約75パーセント、子どもは約70パーセント、成人では約60~65パーセント、老人では50~55パーセントが水で満たされている”と言います。

大切な体の構成要素である水。あなたの会社は、十分な備蓄水を揃えていますか。

政府が2016年の熊本地震で被害を受けた企業に、震災時に有効だった取り組みは何かとアンケートをとったところ、最多は「備蓄品(水、食料、災害用品)の購入、買い増し」で、回答した554社のうち46%が挙げました(※複数回答)。備えあれば憂いなし、でもどこか「他人事」と思っていると十分な備蓄ができず、有事のときに慌てふためくことしかできないかもしれません。

今回は、人体を守るための災害時の水備蓄に関する基礎知識と管理方法についてご説明します。

【1】水備蓄に関する基礎知識


私たちの体の半分以上は水でできていて、水分補給が不足すると、体の中でさまざまな問題が発生します。

■体重の○%が低下したときの体の様子
・〜2% のどの渇き
・3%〜4% 食欲不振、イライラする/皮膚の紅潮、疲労困ぱい
・5%〜 言語不明瞭、呼吸困難/身体動揺、けいれん

このように、たった数%の水分不足でも、身体に大きな影響があります。仮に就業時間中に水害など自然災害に遭ったときオフィスに十分な備えがなかったら……。従業員の半数以上が水分不足に陥り、事業の継続はおろか生命の危機に瀕する可能性もあります。そうならないためにも、水を備蓄することは必要不可欠といえます。

【2】水の用途と備蓄方法


では、水分不足にならないためには、大人ひとりあたりどれだけの水分量が必要なのでしょうか。東京都防災ホームページでは、1日3リットルの飲料水が必要とあり、さらに熊本地震では「飲料水不足」が相次ぎ、5日分15リットルの水備蓄があることが理想とされています。

大人ひとりあたり1日に必要な水の量
・飲料水と生活用水を含めて 3リットル
*最低3日分、できれば5日分を備蓄するのが理想=ひとりあたり9〜15リットル必要

こんなに水が必要なの!?と思われた方も多いのではないでしょうか。水は飲料用だけでなく、以下のシーンで必要となります。

水が必要なシーン
1.脱水症状や血流が悪くなるのを防ぐため
・水分補給 *1日2リットル〜2.5リットル必要2.トイレ使用するため
・トイレ *水を流すには1回につき10リットル必要。被災直後は使えないと思ったほうがいい

3.食事をするため
・食事
水なしで作れる非常食もありますが、多くの料理では水が必要となる

4.体を清潔に保ち、感染症を予防するため
・手洗い
・歯磨き *1度の歯磨きに、3口程度の水が必要
・洗面
・洗髪
・入浴 *タオルを濡らして体を拭くのに500ミリリットル必要
洗面、洗髪、入浴の代用としてウェットティッシュや赤ちゃんのおしり拭きが有用

人が生活をするのに、これだけ水を使う必要があるのです。

もしもオフィスに50人いて、それぞれ3〜5日分の水を用意するとなると、なんと450リットル〜750リットルもの水が必要になります。それでもたった5日分の水分しかありません。ではどうやってこれだけの水を確保し、保管すればいいのでしょうか。

水を確保するひとつの方法として、ローリングストック法をご紹介します。

ローリングストック法とは?

(画像引用:日本気象協会

ローリングストック法とは、災害に備えた食品や飲料の備蓄方法のひとつ。製造日の古いものから食べたり飲んだりして、使った分を新しく備蓄として購入することで、常に一定量の備えがある状態にしておきます。

まず、人数分の必要な水を用意します。2リットルのペットボトル、もしくは12リットルのウォーターサーバーを利用して、常時保管しておくといいでしょう。

オフィスに50人いるとすれば、12リットルの浄水器だと最低38個のストックが必要になります。ストック場所を考えると非現実的かもしれませんが、仮に各デスクに2.5リットルずつ配布(100リットル分)すれば、およそ27個のストックで間に合うようになります。

次に、備蓄する水が古くならないように、1番古いものから消費します。水分はどれだけあっても困らないもの。社員が一人ずつ消費しながら、健康と備品を守りましょう。

飲んだ分は必ず補充。そうすることで、常に一定量以上の水分を保管することができます。

ローリングストック法を導入するメリットは4つあります。

(1)備蓄を始めやすい
(2)保管場所が慣れ親しんだ場所になる
(3)消費期限は切らさない
(4)災害発生時にも安心して水分を摂ることができる

また、水をローリングストック法で管理するとき、気をつけるべき点は「使う順序を間違えないこと」。次に飲む水がわかりやすいよう、目印をつけておいてもいいかもしれません。

水の配給場所を確認しておこう
また、災害が発生したら、水は応急給水施設もしくは給水車によって配給されます。応急給水施設は水道局によって指定されているので、オフィスから1番違い応急給水施設はどこなのか、あらかじめ確認しておきましょう。

たとえば、東京都の場合は「東京都水道局」に給水拠点の情報が掲載されています。

水の配給を受けるとき、必要なのは水をためる容器を確保することです。2リットルペットボトルのように、ふたがあり、持ち運びやすい形状のものがいいでしょう。

また水を運ぶのに、台車やキャリーバッグを使うのも便利です。

まとめ

水は、誰にとっても欠かすことのできない大切な糧です。それは普段生活しているときも、被災状態にあっても変わることはありません。

今回ご紹介したように、水分はたった数%でも不足してしまうと体に悪い影響がでてしまいます。したがって、企業の事業継続のためにも、水の確保はなるべく意識しておきたいところ。また、水だけを備蓄するのではなく、その他必要な備品についても常にチェックし、いつどんな事態に陥ってももいいように備えておくことが大切です。十分な備えが、有事における有効なBCP(事業継続計画)にもつながるのです。

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