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いざというとき、どこに避難する?指定避難所について理解を深めよう

勤務先で大災害が発生したとき、どこに避難すべきか、即座に答えられますか。

総務・防災担当者は、いつ起きてもおかしくない大震災に備えて、避難勧告や避難指示が発動した際に、従業員全員を安全に避難先に案内できるよう、最寄りの避難場所と安全なルートをしっかり確認しておきたいもの。正しい知識を、平常時から従業員に伝え、訓練を重ねておくことが、緊急時のパニックを防ぎ、各自の冷静な行動につながります。

ここでは、前もって押さえておきたい指定緊急避難場所と指定避難場所の違いや、その役割について解説。さらに、避難先に移動する際の留意点や、給水ステーション、広域避難場所など、合わせて地図上で確認しておきたい重要ポイントについても幅広くご紹介します。未曾有の大震災が発生したら、自社の人や物などの資源は自分たちで守りましょう。

指定緊急避難場所と指定避難所は違う


平成23年3月、東日本大震災発生時。
各地方自治体では学校や公民館などの公共施設を、自身や津波など災害から身を守るための指定避難所として定めています。東日本大震災では、そうした場所の多くにも大津波が押し寄せました。
このような教訓を踏まえ、平成25年6月に災害対策基本法が改正され、新たに「指定緊急避難場所」及び「指定避難所」に関する規定が設けられました。この章では「指定緊急避難場所」と「指定避難場所」について解説します。

指定緊急避難場所とは

指定緊急避難場所とは、災害の危険から命を守るため、緊急的に避難する場所のこと。災害の種類(洪水、がけ崩れや地滑り、高潮、地震、津波、大規模な火事、内水氾濫、火山現象)ごとに安全性等の一定の基準を満たすことが条件となっています。国土地理院の「指定緊急避難場所データ」では、災害種別ごとに指定緊急避難場所を公開しています。

指定避難所とは

指定避難場所とは、災害の危険性があり避難した住民等が、災害の危険性がなくなるまで必要な間滞在、または災害により自宅に戻れなくなった住民等が一時的に滞在する施設のこと。

ポイントは、避難場所は「地震や洪水、津波など、非常事態にまず逃げる場所」で、一時避難場所などです。避難所は「災害が発生したとき、家が倒壊するなど、居住場所を確保できなくなってしまった住民に提供する場所」。どちらも兼ねている場所もあります。

いざというときに逃げる場所を、きちんと決めておくことが重要です。

いつ?どうやって?避難にあたっての判断と注意点


避難先を把握できていても、どのようなタイミング、どの経路で従業員を避難させるべきか、安全確保に直結する大切な問題です。そこで、「いつ避難すればいいのか」「どうやって避難するべきか」について具体的に考えてみましょう。

いつ避難すればよいのか

自治体から発令される避難情報には、危険度の低い順から、「避難準備・高齢者等避難開始」、「避難勧告」、「避難指示(緊急)」があります。「避難準備・高齢者等避難開始」が発令された段階から主要な指定緊急避難場所が開設され始めます。

また、危険を感じる場合などは、自分たちの判断で早めに避難することも可能です。緊急地震速報を受信したり、大きな揺れを感じたら、まずは落下物等から身を守り、揺れがおさまるまで待ちます。その後、災害情報・避難情報をもとに避難行動を判断。テレビ、ラジオ、自治体からの情報に注意し、正しい状況の把握に努めましょう。

緊急時には「家のそばの動物園からライオンが放たれた」「今日の夜中に大地震が起こる」などデマが飛び交いがちですが、自分の目と耳で確認した理性的な判断が求められます。

【ポイント】避難するべきか留まるべきか、地区内残留地区かどうかを確認
たとえば千代田区は「地区内残留地区*」に指定されており、避難するよりも、オフィス内に待機するのが安全とされています。誤った避難誘導は、かえって危険を招きかねません。自社が地区内残留地区かどうかは、東京都都市整備局の一覧表で確認できます。*地区内残留地区は、地区の不燃化が進んでおり、万が一火災が発生しても、地区内に大規模な延焼火災の恐れがなく、広域的な避難を要しない区域のこと。千代田区内では、平成25年5月時点で34ヵ所、約100k指定されています。

どうやって避難するべきか

避難場所を把握できていても、避難場所までの経路に危険な場所があると、たどり着くことが困難になります。

そのため、避難経路の情報についても、事前に確認しておくことが必要です。まず、オフィスから避難場所に向かう経路を2~3コース想定します。その際に、避けるべき危険なポイントをチェックし、実際に周囲に目を配っておきましょう。道幅の狭い道、ブロック塀、ガラス張りビル、大きな看板、古い建物等などが挙げられます。

これらの情報をもりこんだ「防災マップ」を作成し、従業員に配布しておくことも有効です。ルートや危険個所の他、緊急連絡先も併せて記しておくとよいでしょう。

【ポイント】避難するときの注意点!

避難に際しては、瓦礫やガラスで足を怪我しないように、靴底が厚く動きやすい靴を履きましょう。
また、高い建物の近くを通る際には、上からガラス等が落ちてくる可能性があるので、できればヘルメット、防災頭巾、丈夫なかばん、座布団などで頭を守りながら、避難します。建物の崩壊が起きた地区では、大量の粉塵が舞っているので、マスクをつけます。
避難中に瓦礫を除去する場合には、少なくとも軍手、出来れば皮手袋を使用します。

そのほかの避難場所・応急給水場所について


緊急時に企業の従業員が避難する先は、一般的に緊急避難場所ですが、目的や利用者によっては他にも避難先が用意されているため、違いを知っておきましょう。

要配慮者優先避難所

要配慮者(要介護高齢者、障害者、妊婦、乳幼児、外国人等の、特に配慮を必要とする人々)を優先させた指定避難所です。公民館などが指定されています。

二次避難所

すぐに開設するのではなく、避難者を指定避難所だけでは受け入れることが難しくなったときに利用する施設です。

福祉避難所

避難行動要支援者が避難生活をするための、特別な配慮がなされた避難所です。二次避難所なので、小学校などの一般の避難所にいったん避難した後、必要と判断された場合に開設されます。開設期間は原則として災害発生の日から最大限7日間。施設自体の安全性が確保されているとともに、手すりやスロープなどのバリアフリー化が図られており、障害者支援施設、保健センター、養護学校、宿泊施設などが該当します。

一時集合場所

避難場所に避難する前に、学校のグラウンド・地域の公園など、近隣の避難者が一時的に集合する場所です。

広域避難場所

指定緊急避難場所のひとつ。
火災が広がって地域全体が危険になったときに、集団で避難することのできる場所です。ふく射熱や煙から身を守り、安全を確保するための場所で、相当程度(およそ5ha以上)の河川敷、グランド、学校、公園・緑地などのオープンスペースが指定されています。指定避難所のように避難生活をする場所ではありません。

応急給水場所

水道施設に被害があったとき、一定の水量を確保できる施設です。市立の学校や配水場などを指定しています。住まいからおおむね半径2kmの距離内に1か所として、都内212カ所(浄水場、給水所、応急給水槽等)に開設されます。たとえば東京都の災害時給水ステーション(給水拠点)の位置は、下記のようになっています。

参考】東京都水道局:覚えてください!お近くの災害時給水ステーション(給水拠点)(地図)

一時滞在施設

学校や企業など、身を寄せる場所にいる際に大地震に遭った時は、その施設で安全にとどまることが基本となりますが、移動中など屋外で被災した帰宅困難者については、一時滞在施設で待機していただくこととなります。

都内では、都立施設のほかにも、民間事業者や区市町村等の協力により、一時滞在施設の確保を進めています。ただし、民間一時滞在施設については、民間事業者の意向により、事前に情報を公表していない施設があります。

大地震が発生した際には、受入可能となった一時滞在施設の情報を、東京都や各区市町村、駅前滞留者対策協議会等から速やかに発信します。ただし、事前に情報を公表している施設についても、施設の被害状況により、帰宅困難者の受入れができない場合があります。発災時には、一時滞在施設の開設に関する情報が発信されてから行動してください。

・一時滞在施設の確保状況(令和4年1月1日現在)
1,155か所(443,115人分)

参考】東京都防災ホームページ:一時滞在施設などの情報

まとめ

避難勧告や避難指示を受けてからの行動は、文字どおり一刻を争うもの。火災や津波の危険を目前に緊迫した状況下で、避難先について丁寧な説明を行う余裕のない可能性もあります。そのような場面では、従業員ひとりひとりが正しい避難場所を理解しているか、そこまでの安全な経路を頭に入れているかどうかが生死を分ける結果につながりかねません。

緊急時の避難について人任せにするのではなく、避難場所に関して正しい知識を持ってもらうのも総務・防災担当者の大事な仕事です。そのためにも平常時から、防災マニュアルや避難マップを用いて説明や訓練を重ねることで、いざというとき、冷静に対応する気構えを従業員各自に持ってもらうようにしましょう。

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