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災害の発生で途切れたサプライチェーンが他社を巻き込んだ深刻な損害に。企業が取るべき対策とは。

BCPは、災害が起こったときにいかに事業を継続していくか計画することです。

サプライチェーンは、供給先の事業継続にも相互に影響を及ぼす密接な関係になるため、よりBCPの策定が必要となります。

今回は、災害がサプライチェーンにもたらす影響とBCP策定で心がけるべきことをご紹介します。

災害によるサプライチェーンへの影響で考えられること


サプライチェーンとは、製品の原材料が生産されてから組み立てられ、消費者に届くまでの一連の工程のこと。1つのサプライチェーンだけでも製造業・小売業と多くの企業が関わっており、1つの企業が活動を停止すると連鎖的に他の企業にも影響が出ます。

具体的に考えられる影響は次の2つです。

交通インフラの麻痺によるサプライチェーンへの影響
道路の通行規制、駅・空港の機能停止。部品が届かず、工場が稼動できない、製品を小売店に納品できないといったことが考えられる。企業設備の損壊によるサプライチェーンへの影響
企業の工場や在庫管理の倉庫が被害を受ける。製品の製造ストップや在庫の大幅な減少が考えられる。

災害によりサプライチェーンが滞ることが恐ろしいのは、被害が自社だけでなく取引先にも及ぶことです。また、取引先が災害による被害を受け、自社がそれに巻き込まれる場合もあります。

どの企業も、サプライチェーンをつなぐ相手に求めるのは、「非常時のリスクヘッジをきちんと考えられているか」です。非常時のことを考えていない、もしくは非常時の計画が甘い企業とはそもそも取引をしない、という企業も多いはず。

サプライチェーンに大きな影響を与えないようなBCPを策定すると、取引先からの厚い信頼を得ることができるのです。

過去の大震災で起こったサプライチェーンへの影響


2018年9月に発生した北海道地震では、北海道にある多くの工場が操業を停止しました。工場は、王子製紙、トヨタ自動車、森永乳業、キリンビールなど大手の上場企業が多く、熊本地震以上の経済損失になったと報道され、その損失は5兆円を超えるともいわれています。

■森永乳業
災害による停電で工場や冷蔵設備が停止し、自家発電設備のない倉庫の冷蔵品を廃棄する事になりました。

北海道は日本の生乳生産率の半数以上を占める酪農拠点ですが、停電による冷蔵設備の停止の他、搾乳もままならない状態であったため、牛乳やバターなどの乳製品の供給に影響が出ることが懸念されています。

■トヨタ自動車
自動車は原材料の生産から製造の流れにおいて、いくつもの工場を通過して組み立てられます。震災により、北海道にある工場が操業できなくなったことで、前後の工程を担う工場に影響が出てしまい、結果的に全国にあるすべての工場の操業をストップする事態となりました。自動車製造がストップすることで、自動車販売の機会損失に繋がってしまいます。

2011年に発生した東日本大震災では、被害総額は約16兆9000億円にのぼると内閣府が推計しています。ここまで被害総額が大きくなった原因のひとつには、サプライチェーンの分断が挙げられています。

東日本大震災での被害総額が大きい理由は、被災地域が多かったからだけではありません。企業が、部品などの供給拠点を多く持つようになったことや、他社に製造を委託していたことが理由として挙げられます。

メーカーによっては、被災地以外の工場も操業できなくなり、結果的に被害総額が大きくなったと分析されているのです。

参考:北海道大地震が企業直撃 経済損失は熊本以上の5兆円超えも(日刊ゲンダイ)

サプライチェーンを考えたBCPの策定が重要

サプライチェーンを考慮したBCP策定のポイントは次の3つです。

サプライチェーンが寸断されてしまうと、自社の損害に直結します。そのため、他社と連携を取るようにする対策も必要です。他社との取引の開始や継続を検討するにあたり、BCPを策定しているかどうかは大きな判断材料になります。災害が発生したときに、被害が最小限に抑えられる、復旧が早期になるなどの効果が期待できるからです。

1.人員の管理
災害直後に工場を再稼動するための人員の集合や、ドライバーが輸送中に災害に遭った場合の確認を怠らないことが被害を最小限に食い止める方法の一つです。社員の安否システムの導入や災害対応の人材リソースの把握、災害時の動きなど、BCPの基本的な部分もきちんと策定しておくことが重要になります。

従業員の無事を確認し、指示を出すのに向いているのが安否確認サービスです。従業員がボタン1つで安否を知らせ、企業側も安否状態の把握を一括管理できる機能を持っています。

また、輸送車両の位置情報を把握できるシステムを利用することにより、交通インフラのどこに影響が出ているのかを調べられます。空いている輸送車両を用いて、被災した地域の対応を臨時で行うなど、即座に対応することも可能です。

2.設備や機械の管理
製造メーカーの場合、工業などの設備自体に耐震ができているか確認し、必要に応じて耐震補強をする必要があります。耐震補強だけでなく、その他の防災対策も行いましょう。

災害によって機械の故障を防ぐような体制になっていることも重要です。機械が倒れないように支えを設けるといった対策を取ってください。

3.資材の管理
工業製品を製造している企業は、部品や原材料の調達に関して、取引先から供給されなくなった場合に、どのような対策をとるか二次的な対応も検討しましょう。

ひとつの取引先に絞らずに複数の取引先から供給してもらうという方法は、供給が途絶える可能性が低くなる一方で、コストが余計にかかってしまうというリスクがあります。

自社が原料や部品を供給しているような場合は、保管しておく倉庫を分散して管理しておくのもひとつの方法です。複数に分散させると管理コストはアップしますが、いざ災害が起こったときに供給がゼロになることを防げます。

海外の倉庫を利用することもひとつの手段になるでしょう。ただし、海外の場合は、輸送に日数がかかる場合もあります。

このように、災害を想定し、メリット・デメリットを考慮しながら具体的にBCPを作成します。災害が発生したとき、どう対処していくかで、損害の額も格段に差が出ることを理解しておきましょう。日頃の備えがいざというときに自社を助けるのです。

まとめ

サプライチェーンは、大きな災害が発生したとき、被災地以外の工場などにも影響が及ぶことが多く、想定外の損失が発生する危険があります。

また、自社の損失だけでなく他社にも損失が及ぶことも念頭に置かなければなりません。そのため、自社だけでなくサプライチェーンを考えたBCPの策定は非常に重要です。しっかりと検討しましょう。

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