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外国人労働者受け入れは今後も拡大する?企業の課題とは

外国人労働者は、慢性的な人手不足が問題視される日本にとって、なくてはならない存在です。平成30年12月には改正出入国管理法が成立しました。今後外国人労働者はさらに増加し、あらゆる企業の支えとなる可能性があります。

しかし、外国人労働者の受け入れには、労働環境などの問題や課題点も少なからず存在しています。この記事では、外国人労働者の現状や、企業が外国人労働者受け入れのためにどのようなことをすべきかをご紹介していきます。

外国人労働者受け入れの現状と問題


外国人労働者は、日本の人材不足を補う上で重要な存在です。外国人労働者は毎年増え続けていて、2017年には過去最多の128万人を記録しました。近年、少子高齢化が進行し、人手不足に悩む経営陣からは、外国人労働者受け入れの強い要望が出てきているのが現状です。

しかし、その一方で外国人労働者受け入れにはさまざまな問題があります。たとえば、外国人労働者の労働環境の問題が挙げられるでしょう。外国人労働者との契約書を作成せず、労働条件を口頭で伝える企業や、契約書を作成してもそれが守られないケースなどがあります。

ほかに、労働時間の管理がされておらず、実際の労働時間よりも短い時間で働いたことにされ、賃金が少なく支払われるケースも報告されています。さらには、労働基準法を守らず外国人労働者を奴隷のように酷使し、各種手当を与えていない実態も明らかになってきました。職場の日本人による、いじめやパワハラの問題も少なくありません。

また、永住者以外の在留資格で働いている場合、ビザの更新は不可欠です。雇用者が申請書類に今後も働いてもらう旨を証明してサインをしなくては、強制的に帰国となってしまいます。その弱味につけこみ、賃金引き下げの契約書へ同意がないとビザ延期の申請書類にサインをしない、と脅迫する悪質な経営者も存在しています。

このような労働環境もあって、外国人労働者からは「日本で働くのは奴隷になるようなもの」と捉えられ、外国人労働者の失踪にも繋がっています。また、このような労働環境の問題は、日本人労働者の雇用に悪影響を与えるという問題もはらんでいます。

これまでは、労働力が不足している場合、賃金をあげることで経営陣は対処していました。しかし、外国人労働者を安い賃金で雇えるということになれば、経営陣は賃金をあげる努力をしなくなるおそれがあります。結果、日本人の賃金も下がっていき、失業者を多く出すことになるといった事態を引き起こすことが懸念されています。

外国人労働者は増加しており、平成30年12月には「出入国管理法」の改正法が成立するなど、政府もより外国人労働者を受け入れていこうとしています。それには現状の外国人労働者の労働環境・人権問題を直視し、今後日本人労働者へ及ぼす影響をきちんと精査する必要があるといえそうです。

参考:
日本経済新聞2018/1/26 外国人労働者128万人 過去最高、厚労省 外国人頼み一段と
産経新聞2018/12/25 外国人拡大方針を正式決定 受け入れは当面9カ国
全労連 特集・外国人労働者との共生をめざして 外国人労働者の実態と問題点
Abema TIMES 2018/11/5 後になって日本人から不満続出?「外国人労働者受け入れ拡大」で議論しておくべき問題点は
しんぶん赤旗2018/10/25 外国人労働者受け入れ 現状を正さないで拡大するのは問題
Livedoor’NEWS2018/11/14 外国人労働者ら、まるで奴隷の現状「私は物じゃない」
産経新聞2018/12/25 外国人拡大方針を正式決定 受け入れは当面9カ国

今後、外国人労働者受け入れはどうなるか
>今後、外国人労働者受け入れはどうなるか


2020年開催予定の東京五輪の影響もあり、サービス分野や建設業者はより深刻な人手不足に陥っています。元々、日本は外国人労働者の受け入れを「高度な専門知識を持っている人」に限定し、単純労働を認めていませんでした。ただし、このような制限は建前の面があり、実際には技能実習や、留学生の資格外活動などの名目で外国人労働者を受け入れていたのです。

このように制度が形骸化してしまっていることや人手不足の現状を受け入れて、政府は、平成30年に成立した改正出入国管理法で、以下2つの新しい在留資格を創設しました。

①業界団体による「技能試験」に合格し、生活に支障のない程度の日本語能力があるならば、最長5年間日本で働ける

②技能実習制度を修了した人はさらに最長で5年間働ける

つまり、上記の新しい在留資格が誕生することで、より外国人労働者は増えていくことが予想されます。平成31年1月現在、農業・介護・建設・宿泊・造船といった、特に人手不足が顕著な5分野でさらなる受け入れの拡大が予定されています。

しかし、先述のとおり日本は労働環境に問題があるケースも多く、外国人労働者にとって仕事がしやすい・働いてみたい国であるかは疑問が残ります。近年、アジアの各国では賃金が上昇傾向にあるため、日本にまで来て働かずとも、本国で働いた方がよいと考える人も増えています。

また、好景気の中国でも高齢化が進み、外国人労働者に介護の担い手になって欲しいという考えが出てきています。加えて韓国でも、外国人労働者をより多く受け入れる「雇用許可制」という制度が制定されています。

そのため、今後は国際的な人材争奪戦に勝たなくてはならない可能性が出てきます。日本は外国人労働者受け入れ拡大に向けて動き出しますが、人材確保のための国際競争といった、これまでにない状況への対策も考察する必要がありそうです。

参考:
NIKKEI STYLE 2018/8/27 外国人労働者、今後も増える? 受け入れ策は転換点に
NHK解説委員室2018/6/27 「これから増える? 外国人労働者」(くらし☆解説)
経済界2018/9/10 外国人労働者受け入れ解禁で日本の労働市場はどうなるか
ニッポン放送2018/7/4 森永卓郎が提言~外国人労働者が日本経済に与える深刻な影響

今後、外国人労働者受け入れはどうなるか
>企業ができる外国人労働者受け入れの準備


外国人労働者の受け入れ拡大や、将来的な人材確保のための競争に打ち勝つためには、外国人労働者が働きやすい環境を準備し、整えていくことが必要不可欠です。受け入れの準備として企業側にできることは、以下のようなものが挙げられます。

①慣習や文化の違いを理解しておく

外国人労働者の慣習や、文化をある程度理解しておかなくては、思わぬトラブルが発生することがあります。外国と日本の常識は異なるということを理解して、企業が事前にある程度の勉強をして準備しておきましょう。

②就労ビザの取得が可能か調査する

外国人労働者を採用する際には、就労ビザを取得する必要が出てきます。しかし、職種などによってはビザが取得できないことがあります。自社が就労ビザ取得可能な職種であるかをきちんと調べ、準備しておく必要があります。

③精神面での配慮も考えておく

外国人労働者にとって、母国を出て日本で働くことには不安が伴います。このような不安感を取り除くための準備も大切です。

外国語のできる日本人スタッフの採用や、相談役を決めておくなど、コミュニケーションの取りやすい環境をあらかじめ整えておくことです。意志疎通をしっかりとはかり、勤労意欲の向上を目指したり、企業の意向を伝えていく準備をしたりすることは非常に大切だといえるでしょう。

④外国人労働者のキャリアプランも明確に

外国人労働者が離れていくことを防ぐためにも、外国人労働者のキャリアアップについて真剣に考え、準備しておくことは大切です。外国人労働者の中には、海外でのキャリアを積むことを目的にしている人もいます。そのような方へのサポートや、面談をする環境を整えて準備しておく必要があります。

⑤外国人労働者雇用労務責任者を選任する

外国人労働者を10人以上受け入れて雇用するのならば、外国人労働者の雇用労務を管理する「外国人労働者雇用労務責任者」を置かなくてはならないと定められています。もしも、10名以上を受け入れる予定があるのならば、事前に担当者を選任する準備が必要です。

そして、ビザの取得に関して企業側で調査せず、外国人労働者に任せきりにしている場合、不法就労での雇用で罰則を受ける可能性もあります。また、外国人労働者を理解しようとしなかった場合、外国人労働者が疎外感を覚えて仕事を辞めてしまうおそれもあります。

外国人労働者を受け入れる企業だけでなく、実際に労働者が働く現場レベルまでこの制度について理解を深める必要がある、といえるでしょう。

参考:
ガルベラ・パートナーズ グループ 外国人雇用|増え続ける外国人労働者、御社の受けいれ準備は大丈夫?
neocareer PORTAL 外国人労働者受入れはどうすればいいの?メリットや注意点を大公開【最新版】
ProCommit 留学生や外国人を採用する時の7つの準備とは

まとめ

外国人労働者は、企業の人手不足を解消する上で必要不可欠な存在です。ただし、外国人労働者を獲得するには、国際的な人材獲得競争に打ち勝つ必要があります。そのためには、現状の労働環境の問題点などを見直さなくてはなりません。

企業は、受け入れ時の契約内容を労働者の合意のもと書面化するのはもちろん、文化的背景の違いまで考慮する必要があります。真に企業経営に益となる方法で、外国人労働者受け入れの環境を整えていきましょう。

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