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サプライチェーンを災害から守る!6つの手段と想定される影響を解説

地震大国日本は、災害に備えてサプライチェーンを維持する取り組みが不可欠です。
サプライチェーンは、一部のトラブルが全体に影響してしまうため、企業だけでなく地域経済や社会にも影響が広がります。

今回は、災害などの緊急時にサプライチェーンを守るための具体的な取り組みや、災害がサプライチェーンに与える影響について詳しく解説します。

サプライチェーンを守ることは、事業を守る取り組みであることはもちろん、地域経済を素早く復興させることにもつながる重要な要素です。
災害時に備えた対策に、ぜひご活用ください。

サプライチェーンとは

サプライチェーンとは、Supply(供給)と Chain(鎖・連鎖)を合わせた言葉で、商品が生産者から消費者に届くまでの一連の流れをいいます。

一般的には「調達→生産・製造→物流→販売→消費」に含まれる全ての流れを指し、これらのつながりを経て、私たちは商品を手にすることができています。

スーパーに並んでいる野菜を例に考えてみましょう。
野菜は、生産者から始まり、農協や集荷業者、配送業者などを通じて店舗に並び、私たちが購入することができます。
さまざまな部品や原材料を組み合わせて製造される商品は、この流れがさらに複雑になります。

在庫管理も、サプライチェーンの流れのひとつです。
生産者から消費者までの距離が遠い場合や、さまざまな加工を経た商品などは、さらに多くの事業者がサプライチェーンとして関わっています。

このように、製造業や小売業、配送業など、多くの企業が関わって取り引きがつながっているのがサプライチェーンの流れです。そのため、ひとつの企業の活動が途切れると、影響は他の企業にも及び、サプライチェーンが途絶えてしまいます。

地震大国日本で災害からサプライチェーンを備える重要性

サプライチェーンは、自然災害によってさまざまな影響を受けます。
特に日本は地震大国であるため、災害からサプライチェーンを守る取り組みが不可欠です。

大きな地震が発生すると、サプライチェーンの各段階で、さまざまな被害が発生する可能性があります。たとえば、工場や生産施設が被害を受けたり、物流の流れが途絶えたりといった影響が考えられます。

影響を受けるのは被災地周辺だけではありません。サプライチェーンのひとつが被害を受けると、影響は他の部分にも波及します。
生産や物流の流れが一部で途絶えると、企業は製品の供給ができなくなってしまいます。
製品の供給が途絶えると、顧客や取引先からの信用も失いかねません。

大きな地震や災害からサプライチェーンを守ることは、事業の継続性を確保し、リスクを軽減するために欠かせない大事な要素です。

企業は、サプライチェーンの災害対策を徹底し、リスク管理に努めることが重要です。

災害によるサプライチェーンへの被害が与える影響

災害が起こると、物流やインフラ、生産プロセスや人的資源など、多方面に影響が生じます。

企業にとって特に懸念されるのが、地域経済への影響と、企業の事業再開の面です。

地域経済も影響を受ける

災害が起こると、道路や鉄道などの交通インフラが損傷し、物流が途絶えてしまう恐れがあります。
そのため、製品の輸送が遅れ、サプライチェーン全体に影響が及んでしまいます。

被害を受けた地域の企業は、物流ネットワークや生産プロセスに支障をきたし、商品の生産や流通が停止することがあります。
これにより、企業の売り上げや雇用にも影響が及び、地域経済にも深刻な影響を与えます。

サプライチェーンの中断によって、特に深刻な打撃を受ける可能性があるのが、災害が発生した地域の中小企業や地元企業です。
災害による物流の混乱や生産ラインの中断により、商品の欠品や納期遅延、品質不良など、さまざまな問題に直面します。

さらに被害を受けた地域では、生活や仕事も混乱し、社会的な不安から消費者の購入活動が変化することも考えられます。生活必需品の需要が急増したり、不安定な経済状況から消費行動が抑制されたりするかもしれません。

また、被害を受けた企業の代わりに競合の企業が台頭するなど、地域経済の産業構造に変化が出ることも考えられます。

このように、災害がサプライチェーンに与える影響は、地域経済にも大きな影響を及ぼします。

事業全体の再開が困難

災害によって被害を受けた企業は、以下のような理由から、しばしば事業の再開まで時間がかかります。

  • 建物や設備が被害を受ける
  • 部品や製品を供給するサプライチェーンが中断する
  • 労働力が不足する

災害によって建物や設備が被害を受けた場合、事業の再開には修復や復旧が必要です。
特に生産設備が被害を受けた場合、事業の再開までに長い時間を要します。

サプライチェーンの中断により、部品や原材料の供給が途絶えたり、製品の輸送が滞ったりすることも考えられます。
その結果、企業の生産能力が大きく低下することも考えられます。

さらに懸念されるのが、従業員が被災し、住居を失ったり労働力が不足していくことです。
被災した地域では、従業員が復興活動に従事することもあり、事業再開に必要な労働力が確保できず、再開が遅れることもあります。

このように、災害によって事業の再開にさまざまな困難が生じます。
企業は災害に備えて、有事に迅速な対応ができるよう、あらゆるリスクを想定し事前に対策を考えておくことが重要です。

企業が災害などの非常事態に備え、事業活動の継続を確保するための計画です。

サプライチェーンを災害から守る手段6つ

災害からサプライチェーンを守る6つの手段を解説します。

  • BCPを策定する
  • 生産拠点を分散する
  • 頑丈な流通網を確保する
  • 災害時の生産体制を整える
  • 災害時の需給バランスを想定したデータを蓄積する
  • 競合他社との連携及び協定を結ぶ

BCPを策定する

BCP(事業継続計画)とは、災害対策や従業員の安否確認、システムの復旧など、緊急時に必要な対策を事前に準備し、迅速に対応するために策定します。

BCPを策定することで、サプライチェーンに潜んでいるリスクを特定し、それらの対応策を考え、整えておくことが可能です。災害発生時にも、事前に準備した対応策を迅速に実行して、リスクを軽減することができます。

たとえば代替品や代替手段の確保や、生産プロセスの変更など、サプライチェーンの各プロセスにおける被害を最小限に抑えることにつながります。
さらに災害が発生しても、事業の継続が可能であることを示すことができます。事業の継続性を確保することは、顧客や取引先との信頼関係を維持するためにも非常に重要です。

BCPについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご参照ください。

生産拠点を分散する

生産拠点を分散させることは、サプライチェーン全体を守る方法として非常に有効です。
地域を分けて複数の生産拠点を配置することで、生産拠点全体が災害の影響を受けることを回避できます。

自然災害の影響を受けにくくするためには、地理的な条件が異なる地域や海外などに生産拠点を分散させることが重要です。
異なる地域での生産により、製品や生産量を販売地域に合わせて生産することもできます。

ただし、生産拠点を分散させることは、コストやリスク管理の観点から、容易なことではありません。
それぞれの拠点での品質管理を統一したり、製品の輸送や在庫管理などを適切に行うなどの対応が必要になります。

頑丈な流通網を確保する

頑丈な流通網を構築することは、災害時のサプライチェーンの継続性確保に非常に重要です。
流通網を整えておくと、物流拠点や輸送ルート、倉庫などの情報を集約し、サプライチェーン全体の状況が把握しやすくなります。

災害発生時、別の物流拠点を利用したり、代替輸送ルートを利用したりなど、迅速な対応が可能です。

サプライチェーン内の特定の地域で発生した災害によって、製品供給が途絶えるリスクも回避するなど、調達リスクを低減することにもつながります。

災害時の生産体制を整える

災害が発生した場合、被災した生産拠点での生産が一時停止する可能性があります。このような事態に迅速に生産を再開できるよう、生産体制を整えておくことが重要です。

たとえば、停電などに備えて、非常用の電源を確保したり、電源をバックアップするシステムを導入したりするなどが対策として考えられます。

代替生産ラインを整えておく、代替部品・材料を用意するなどの体制を整えておくなども、リスク回避のために必要です。代替手段を確保するなどの体制を整えて、部品や材料の供給が途絶える事態に備えます。

災害時の需給バランスを想定したデータを蓄積する

災害時にはどのような需要が高まり、どのような供給が必要となるかといった、需給バランスを想定したデータを蓄積しておくことも重要です。

過去の災害時の需要動向や、地域ごとの需要特性などを分析し、需要予測データを蓄積することで、需要の急増にも柔軟に対応することができます。

物流インフラの中断に備えて、在庫状況を正確に把握しておくことも大切です。

在庫数、在庫場所、製品の消費期限などのデータをしっかり管理しておくことが、需要変動への迅速な対応にもつながります。

競合他社との連携及び協定を結ぶ

サプライチェーンを守る取り組みとして、自社のグループ企業との連携はもちろん、競合他社との連携も検討する必要があります。
協力してサプライチェーンを維持するための協定を結ぶなど、緊急時に備えた対策を進めておくことが重要です。

競合他社との連携や協定によって、より強いサプライチェーンを構築することにつながります。
たとえば競合他社と、災害時には製品や在庫の共有をする、輸送手段を共有するなどの方法があります。

顧客や取引先への責任を果たし、信用を維持するためにも、平時から競合他社との連携を深める取り組みは欠かせません。

ただし、競合他社との協力には、情報共有や信頼関係の構築など、多くの課題があります。そのため、事前に十分な競技や調整を行い、信頼関係を築くことが重要です。

BCP策定は、災害時のリスクを最小限に抑える最適な対策

災害時のサプライチェーンを守る重要性をお伝えしました。
サプライチェーンは、一部のトラブルが全体に影響してしまいます。そして、災害はある日突然起こります。

災害に備えるためには、事前に災害時を想定した計画を立て、できる限りの対策を施しておくことが欠かせません。
そのために有効な手段が、BCPの策定です。

BCPを策定することで、サプライチェーンにおける重要な機能やプロセスを特定し、事業を維持する対策を講じることができます。
BCPには、従業員の安全確保、代替のサプライヤーの確保、在庫管理の最適化、リスクマネジメント計画の作成なども含まれます。

災害時のリスクを最小限に抑え、事業を継続するために有効な、BCPの策定には、以下の記事をご活用ください。