企業のリスク一覧|企業リスクの対策と管理方法を解説

遠藤 香大(えんどう こうだい)
企業が直面するリスクは多岐にわたり、それぞれに適切な対応が求められます。企業リスクを深く理解し、対策を把握しておきたい担当者もいるでしょう。
そこでこの記事では、企業が直面するリスクの一覧、リスクに対する対策、リスクの管理方法について解説します。
目次
企業のリスク一覧
企業のリスクを一覧で紹介します。どのような企業も直面する可能性があるため、正しい知識を身につけましょう。
戦略上のリスク
まずは、戦略面で直面するリスクです。経営戦略や事業計画の前提である事業環境が変化することで発生します。経営判断を誤ったり、競合企業の参入による変化に対応できない可能性は、どのような企業も抱えているものです。
また、新しい国に進出する場合は、日本で成功した戦略が通用しないこともあります。文化の差を見落としてしまい、大きな損失を招くケースもあるでしょう。
企業の経営戦略には常に多様なリスクが伴うため、詳細な市場分析、および戦略の柔軟な見直しが求められるのです。
財務上のリスク
次に、企業の資金に関連したリスクです。財務上のリスクは企業経営に大きな影響を与え、場合によっては事業の継続が難しくなるおそれもあります。
財務上のリスクとしては、以下のような例が挙げられます。
- 取引先が倒産してしまい、債権回収ができなくなった
- 金利や為替レートなどが大きく変動した
- 投資していた株式が大きく下落した
- 保有する資産や負債の金額が大きく変動した
影響の大きいリスクを定期的に見直し、適切な対処方法を考えるようにしましょう。
自然災害のリスク
企業のリスクには、自然災害によるものも挙げられます。
以下が、代表的な自然災害です。
- 大地震
- 津波
- 台風
- 豪雨
- 感染症によるパンデミック
このような自然災害は発生の予測が困難なうえ、影響が広範囲に及びます。自社の設備が破壊されるだけでなく、被災した取引先が業務を停止することで、サプライチェーンが断絶するおそれもあるでしょう。その結果、事業の復旧に時間を要し、経営へのダメージは膨らみます。
過去の災害を教訓にして、企業として自然災害のリスクに備えることが大切です。
オペレーショナルリスク
オペレーショナルリスクとは、システム不具合、作業ミス、事故などの内的要因によって発生するリスクです。トラブルは企業の信頼性を低下させるため、注意しましょう。
たとえばセキュリティ対策に不具合が起きれば、情報が漏れるかもしれません。人的ミスで機械が停止すると、作業中断による納期遅れのリスクも考えられます。
内的要因のリスクを最小限に抑えるためにも、管理や予防策を講じることが不可欠です。
コンプライアンスリスク
最後に、法令遵守違反などのコンプライアンスリスクです。罰金の支払い義務が生じるほか、顧客からの信用を失うおそれもあります。
たとえば知的財産権を侵害したり、横領や不正を企てたりすると、ニュースとして取り上げられ、経営に大きなダメージを与えることが想定されます。
一度失った信頼を取り戻すことは困難です。企業は法令遵守を経営の基本とし、コンプライアンスリスクへの対応策を確立しましょう。
企業リスクの洗い出し方法
企業が直面するリスクは、その規模や事業内容によって異なります。自社が直面するおそれのある問題点を見つけ出し、精査する取り組みが求められます。
どのように問題点を見つけるのか、2つの方法があります。
リスクを分類する
まずは、どのようなリスクがあるのかを分析します。
企業を取り巻くリスクにはさまざまな種類があり、対策は一律ではありません。それぞれのリスクを区別し、リスクに対して効果的な管理戦略を考える必要があります。
リスクがどの程度の影響をもたらすのか、影響する期間はどの程度なのか、要因で分類すると分かりやすいでしょう。実際に現場や担当者にインタビューやアンケートをし、部門ごとのリスクを把握するようにします。そして、それに優先順位をつけ、対策を講じましょう。
リスクを適切に分類することは、企業の成長に不可欠です。
リスクを定量化する
次に、リスクを数値で表します。定量化することでリスクの規模や影響を可視化できるでしょう。定量化する際は、以下の点に注目します。
- どの程度の割合で発生するのか
- 被害の想定規模はどうか
- 対策は容易か困難か
リスクを数値化すると、客観的な視点でリスクに向き合えたり、リスクを従業員とも共有しやすくなったりするでしょう。
リスクの定量化は、企業のリスク対策を向上させるために重要な取り組みなのです。
企業リスクの対策
ここからは、具体的な企業リスクの対策を解説します。リスクに備える際の参考にしてみてください。
リスクの防止
一つ目は、リスクの防止です。リスクが発生する原因にアプローチし、未然に回避しましょう。よく起こりがちなリスクや、発生すると影響の大きいリスクなどに対して有効です。
一例として、個人情報の漏洩リスクに対してセキュリティシステムを強化する取り組みは、情報の不正アクセスを防止できるでしょう。さらに従業員へのセキュリティ研修を実施すると、内部からのリスクを減少させられます。
積極的にリスクの防止対策を講じ、企業の財産と評判を守りましょう。
リスクの受容
二つ目は、特定のリスクを意図的に受け入れる対策です。リスクが極めて低い場合や、リスクを避けるためにかかるコストより損失のほうが小さい場合などは、リスクとして分類しつつも、とくに対策は取らずその状態を受け入れます。
たとえば小売店が割賦販売やローンなどの信用販売を取り入れれば、顧客からの遅延支払いや不払いのリスクが生じるでしょう。しかしながら、信用販売によって販売拡大が期待できるため、小売店はこのリスクを意図的に受け入れています。
リスクの受容が企業を発展させる場合もありますが、もしトラブルが起こると、発生した損害は企業の負担となります。本当に許容していいリスクなのかを、よく検討するようにしましょう。
リスクの軽減
三つ目として、リスクの影響を最小限に抑える対策が挙げられます。リスクを完全に排除することは難しいものの、リスクを軽減させることで、企業へのダメージを減らすことができます。リスクの軽減は、リスクの危険性を下げる取り組みと、被害を最小限にする取り組みの2種類です。
代表的なリスクの軽減の取り組みを例に挙げるとすれば、BCP(事業継続計画)です。自然災害が発生した際、どのようなプロセスで復旧するかの計画を立てておくことで、事業への被害を抑えるというものです。
不測の事態に対応できるよう、日頃からリスクの軽減に取り組む姿勢が大切です。
リスクの移転
最後に、リスクの移転について解説します。リスクの移転とは、予想されるリスクを第三者に移し、自らの負担をなくしたり減らしたりする戦略です。発生する頻度自体は少ないものの、発生すると大きな被害が出るリスクに対して有効です。
火災保険に加入することで損失を保険会社へと移したり、データをクラウドに移行したりする取り組みが該当します。
リスクの移転は潜在的な損失を抑え、事業の安定性を保つでしょう。
企業リスクの管理方法
リスクは対策だけでなく、管理も重要です。
ここでは、主な管理方法を5つ紹介します。
経営陣が陣頭に立つ
経営陣が積極的に社内のリスク管理を担いましょう。トップが積極的にリスク管理をすることで、組織全体にリスク意識を浸透させ、企業の信頼向上につながるためです。
たとえば、経営陣が情報漏洩リスクの重要性を理解していると、情報セキュリティに予算や人員を回せます。その結果、情報がより強固な形で保護され、セキュリティ対策が強化されるのです。
専任の部署を立ち上げる
経営陣と近い部署に専任の部署を立ち上げ、リスクを管理する方法です。専任部署がリスク対応のプロセスを一元的に担当することで、専門性や連続性が高まります。
専任部署には、リスクの未然防止策や、従業員へのリスクマネジメント教育などを実施するといいでしょう。緊急事態発生時には、経営者や関係部署と協力しながら適切にリスクを管理します。
ただし、専任部署にすべて任せるのではなく、組織全体でリスクの情報を共有することも大切です。
企業リスクを総合的に管理したいと考えている経営者は、専任部署の立ち上げを検討してください。
危機管理マニュアルを作成する
緊急事態に対応する方法が明記された危機管理マニュアルを作成しましょう。マニュアルがあれば、不測の事態でも迅速に対応でき、被害を最小限に抑えられるでしょう。
危機管理マニュアルとして、BCP(事業継続計画)の作成がおすすめです。自然災害やテロなどが発生した際、どのように復旧するのかを考えるきっかけとなるでしょう。
また、危機管理マニュアルを従業員にも共有し、企業を取り巻くリスクや、緊急事態発生時における従業員の行動を明確にしておきます。
作成したマニュアルを活かし、いざというときに備えましょう。
従業員へ周知徹底する
従業員とリスクを共有するよう取り組みましょう。従業員が業務で直面するリスクを認識すると、適切な対処が可能となります。具体的には、危機管理セミナーを継続的に実施したり、シミュレーショントレーニングで訓練したりしてリスク管理の教育をします。
大切なのは、危機に対してどのように判断し、行動すべきかを具体的に伝えることです。
組織一丸となってリスクに対応しましょう。
定期的な見直しを実施する
対策ができていないリスクは、定期的に対策の進捗を確認します。そして状況に応じて、柔軟に措置を講じましょう。定期的な見直し以外にも、外部環境や事業環境の変化に伴うタイミングでも見直しを行うことが大切です。
リスクは定期的に見直し、状況にあわせて対策を変えていきます。市場や技術はめまぐるしく変化するため、新たなリスクが発生する危険性が高いのです。対策を適宜更新し、変化するリスク環境に対応できるよう努めましょう。
災害のリスクに対応するポイント
災害の多い日本において、企業は災害リスクに対して適切な対応が求められます。災害のリスクに関しては、以下2点のポイントを押さえましょう。
まずは、迅速な初動対応ができるよう備えておくことです。避難訓練を行ったり、BCP(事業継続計画)を作成したりして、適切に対応しましょう。とくに初動対応では、従業員の安否確認をいかに早く行えるかがポイントです。安否確認には、トヨクモの『安否確認サービス2』の導入がおすすめです。
また、災害のリスクを回避するよう準備しておきましょう。大きな自然災害ですと、自社だけではカバーが困難でしょう。そのためにも保険に加入したり、クラウドサービスを利用したりする方法がおすすめです。
リスクに備えた対策を用意しよう
企業がリスクに対応するためには、どのようなリスクがあるのかを一覧で把握し、適切な対策や管理を実施することが不可欠です。
リスクに対応するためには、平時から対策を取るといいでしょう。自然災害時には、従業員の安否確認が事業継続を左右します。トヨクモの『安否確認サービス2』を活用し、リスクを最小限に抑えましょう。