保育園は小さな子どもを預かる場であるため、保育環境の整備は欠かせません。とはいえ、保育園での事故や怪我はあとを絶たず、どう対策すべきか悩む園の関係者もいるでしょう。
子どもや従業員の安全を守るために、保育園におけるリスクマネジメントの実施は重要です。起こり得るリスクをあらかじめ把握しておけば、必要な対策を講じやすくなり事故を防ぎやすくなります。
この記事では、保育園におけるリスクマネジメントについて解説します。具体的なステップや行う際のポイントも解説しているので、あわせて参考にしてください。
目次
保育園におけるリスクマネジメントとは
保育園におけるリスクマネジメントとは、主に園児に起こり得るリスクを把握して、その対応策を事前に講じることです。保育園は幼い園児たちが集まる場であり、重大な事故が起こる可能性があります。命にかかわる事故も起こり得るため、あらかじめリスクマネジメントを実施して園児を守らなければいけません。
とはいえ、リスクマネジメントを実施しても、すべての事故を防止できるわけではない点に注意しましょう。予測される緊急事態を想定した備えを準備しておきつつ、万が一事故が生じた場合の対応方法もあわせて検討しておく必要があります。
なお、厚生労働省は保育園における安全について、以下のように述べています。
保育所保育において、子どもの健康及び安全の確保は、子どもの生命の保持と健やかな生活の基本であり、一人一人の子どもの健康の保持及び増進並びに安全の確保とともに、保育所全体における健康及び安全の確保に努めることが重要となる。
引用:保育所保育指針(◆平成29年03月31日厚生労働省告示第117号)
上に書かれているような子どもの健やかな生活の基盤となる保育所の安全確保には、リスクマネジメントが欠かせないと言えます。
保育園におけるリスクマネジメントの必要性
保育園におけるリスクマネジメントの具体的な必要性は、以下のとおりです。
- 園児の安全を守れる
- 保護者の考え方に対応できる
- 働き方の多様化に対応できる
- 社会的な信用を維持できる
それぞれについて解説します。
園児の安全を守れる
保育園でリスクマネジメントを実施すると、園児の安全を守ることにつながります。小さな園児が通う保育園では、あらゆる事故が発生するリスクがあります。それらの予防策を講じておくと、事故を未然に防げるでしょう。
たとえば、園児が出入り口の扉で指を挟んだり、家具の角で頭をぶつけてしまったりすることが想定できます。起こり得るあらゆるリスクに対して先に対応策を考えておくと、園児たちがのびのびと生活できる保育環境を整えられます。
保護者の考え方に対応できる
近年は少子化や核家庭の増加、子育て環境の変化などによって、保護者の意識も変わりつつあります。たとえば、ひと昔前であれば「子どもは怪我をするもの」と考えていた保護者もいたでしょう。
しかし、現代では軽度の怪我であっても「よくあること」で済まされないケースが増えており、以前よりもリスクマネジメントの必要性が高まっています。保護者が安心して預けられる保育環境を整備することは、保育園にとって重要な要素です。
働き方の多様化に対応できる
働き方の多様化は、保育園でも取り組まれています。パートやアルバイトといった非常勤の割合が増加傾向にあり、職員の入れ替わりも激しい保育園もあります。また、職員の経験年数や勤続年数が短くなっている傾向があることから、今まで自然と行われてきた経験や体験談の蓄積が難しくなっているのが現状です。
そのため、過去の経験や学びがない現場が多くなり、リスクが発生しやすい環境に陥りやすい傾向にあります。しかし、リスクマネジメントを実施していれば、新規の職員であってもリスクに気付きやすくなり、事故を回避する仕組みを構築できます。職員の経験や勘に頼らず、誰でも安全な保育を提供できるでしょう。
社会的な信用を維持できる
保育園がリスクマネジメントを行っていると、社会的な信用を維持しやすいです。
保育園で重大な事故が発生すると保護者や地域住民からの信用を失い、場合によっては閉園に追い込まれるケースもあります。安心して子どもを預けられる場としてあり続けるためにも、園のリスクマネジメントは欠かせない要素と言えるでしょう。
保育園でリスクマネジメントを行う際の具体的なステップ
保育園でリスクマネジメントを行う際の具体的なステップは、以下のとおりです。
- リスクの洗い出しを行う
- リスクを評価・分析する
- リスクの対策方法を検討する
- 保育園全体で共有する
- リスクマネジメントに関するマニュアルを作成する
- 定期的な振り返りを行う
それぞれのステップについて解説します。
1.リスクの洗い出しを行う
まず、保育園で想定されるリスクの洗い出しを行いましょう。具体的には、以下のような事例が考えられます。
事故が起こりやすい場所 | 想定されるリスク |
---|---|
出入口 | ・ドアで指を挟む ・他の園児とぶつかる ・不審者が侵入する |
保育室 | ・家具で頭をぶつける ・引き出しで指を挟む ・転倒する ・掲示物が落下する ・コンセントで遊ぶ |
トイレ | ・転倒する ・オムツ交換台から落下する |
園庭 | ・遊具から落下する ・遊具が故障する ・遊具の角で頭をぶつける |
保育園では事故につながる恐れがある「ヒヤリハット」もリスクの事例として洗い出しておくのがおすすめです。「ヒヤリハット」とは、重大な事故につながる一歩手前の事柄を指す言葉です。実際には事故に至らなかった場合も、職員から定期的にヒヤリハットについて報告してもらう機会を設けておくと、リスクマネジメントの実施に有効活用できます。
2.リスクを評価・分析する
リスクを洗い出したら、各リスクの評価・分析を行います。評価・分析とは、各リスクがどれほどの頻度で発生する恐れがあるか、またそのリスクはどの程度の損害を生むかを可視化して、リスクマネジメントの優先順位をつけることです。
保育園ではあらゆるリスクが想定されるため、思いつくままにリスクマネジメントを行っていると優先すべき対策が後回しになる恐れがあります。そのため、あらかじめリスクの評価・分析を行って優先度の高いリスクから対応策を考える必要があります。
具体的には、以下の項目をチェックしましょう。
- 子どもの年齢
- リスクが発生する恐れのある場所
- 起こる可能性が高い時間帯
とくに、繰り返し起こり得るリスクや重大な事故につながりやすいリスクは優先的に評価・分析を実施します。
なお、リスクの優先度を明らかにする際は、リスクマップと呼ばれるフレームワークを活用するのがおすすめです。リスクマップとは、リスクの発生頻度や影響度を可視化するものです。縦軸に損害規模、横軸に発生頻度を位置づけて、それぞれのリスクを当てはめていきます。そして、洗い出したリスクを「損害大・高頻度」「損害大・低頻度」「損害小・高頻度」「損害小・低頻度」の4つに分類すると、どのリスクから対策すべきかを可視化できます。
3.リスクの対策方法を検討・実施する
リスクの優先順位が明らかになったら、それぞれの対応策を検討・実施します。
たとえば、出入口のドアで指を挟むリスクが高ければ、完全に閉まりきらない工夫をしたり、園児だけではドアを開けられないようにしたりするのも有効な手段でしょう。職員の数や園児の状況を考慮しながら、対応策を検討してください。
4.保育園全体で共有する
決定した対応策については、保育園全体で共有することが重要です。一部の職員だけが把握しているだけではリスクを回避できません。それぞれのリスクに対して、どのようなリスクマネジメントを実施するかを共有し合い、保育園全体で取り組みましょう。
5.リスクマネジメントに関するマニュアルを作成する
リスクマネジメントについては、マニュアルにまとめておくのも一つの方法です。文書を作成しておけば誰でも読み返せるだけではなく、新規職員が配属されたときもリスクマネジメントを把握しやすくなります。保育園全体で徹底共有しやすくなるため、リスクマネジメントを実施しやすくなるでしょう。
6.定期的な振り返りを行う
リスクマネジメントは実施して終わりではなく、定期的な振り返りが必要です。実施した結果を集計して、どれほどの効果があったか、今後どれほどの効果が期待できるかを見極めます。必要に応じて今よりも確実に事故を防げる対応策を検討し、よりよい保育環境を整えることが重要です。定期的な振り返りを実施していけば、リスクの発生をより防ぎやすくなるでしょう。
保育園でリスクマネジメントを行う際のポイント
保育園でリスクマネジメントを行う際のポイントは、以下のとおりです。
- 保育園全体で協力し合う
- 園児の主体性を尊重する
- 事故後の対応方法も考えておく
それぞれのポイントについて解説します。
保育園全体で協力し合う
リスクマネジメントは、保育園全体で協力し合うことが重要です。園長をはじめとする一部の職員で対応策を考えるよりも、職員全体でリスクを洗い出したり評価・分析を行ったりするほうが、よりよいリスクマネジメントを実施できます。あらゆる角度からリスクを検討すれば、見落としも防ぎやすくなり、より適切なリスクマネジメントを実施できます。
園児の主体性を尊重する
リスクマネジメントを実施するうえで見落としてはいけないのが、園児の主体性です。
園児の命を守るためには、リスクを予防して重大な事故が発生しない環境作りが極めて重要です。しかし、リスクを恐れるあまりに過剰なリスクマネジメントを実施すると、園児の探求心が損なわれてしまい、成長に大きな影響を与えるでしょう。
園児は遊びや集団生活のなかで学ぶことも多く、すべてに制限を設けるとさまざまな経験を積めない恐れがあります。そのため、リスクマネジメントを行う際は、園児の主体性を尊重しつつリスクを予防できる方法を検討する必要があります。
事故後の対応方法も考えておく
リスクマネジメントを実施したからといって、すべてのリスクを回避できるわけではありません。そのため、万が一事故が発生した場合の対処法についても考えておく必要があります。
たとえば、園児が怪我をしたときは応急処置を行い、そのうえで保護者へ連絡したり必要に応じて病院を受診したりします。事故の状況によっては、保健所や警察などへの報告も必要でしょう。万が一リスクを防ぎきれなかったときの対応方法を考えておくと、緊急事態時の対応をすみやかに行えます。
保育園における災害時のリスクマネジメントの重要性
保育園においては事故のリスクマネジメントに加えて、災害時に備えたリスクマネジメントも必要です。保育園は幼い園児が多数集まっていることから、災害時の安全確保は極めて重要な課題です。たとえば、保育時間中に災害が起きた場合、園児や職員の安全を確保しながら保護者との連携が必要とされます。
さらに、災害後は少しでも保育を再開できるように、事業の早期復旧についても考えておく必要があります。災害時の被害を最小限に抑えつつ、事業継続と早期復旧ができるような体制を整えておくことが重要です。
保育園のリスクマネジメントにはBCP策定も有効
保育園のリスクマネジメントを行う際は、BCP策定も有効な手段です。
BCP(事業継続計画)とは、地震や情報漏洩といった緊急事態が発生したときの対策や防止策をまとめた計画のことです。地震をはじめとする緊急事態が起きたとき、職人の中には冷静な判断ができない方もいます。しかし、職員が冷静な判断をしなければ、園児の命にも影響が及ぶでしょう。そのため、BCPを事前に策定しておき、緊急時の行動を明らかにしておくことが大切です。すると、次の一手を出しやすくなり、迅速な初動が見込めます。
BCP策定には、トヨクモが提供する『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用がおすすめです。BCPコンサルティングは数十〜数百万円ほどするのが一般的ですが、BCP策定支援サービス(ライト版)であれば1ヵ月15万円(税抜)で提供できます。費用を抑えながら、緊急時の対応策を講じられるでしょう。
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※BCP策定支援サービス(ライト版)は株式会社大塚商会が代理店として販売しています。
災害時にはトヨクモの『安否確認サービス2』の活用がおすすめ
保育園におけるリスクマネジメントは、園児や職員を守るうえで欠かせません。場合によっては園児の命にも直結する事故が発生する恐れもあるため、リスクマネジメントの実施は迅速に行う必要があるでしょう。
また、地震をはじめとする自然災害が起きたときは職員も混乱状況下にあり、冷静な判断ができない場合もあります。とはいえ、園児の安全を確保しながら保護者に連絡する必要があるため、迅速な初動が欠かせません。そのため、事故だけではなく、災害時のリスクマネジメントについても速やかに考えておくべきです。
災害時のリスクマネジメントには、トヨクモの『安否確認サービス2』の活用がおすすめです。
気象庁の情報と連動して安否確認通知を自動で送信でき、職員や保護者の安全確認を速やかに行えます。安否確認の回答結果は自動で集計されるため、安否確認にかかる手間も大幅に削減できるでしょう。指定した特定の職員同士で議論したり、状況や指示を全体に周知できたりする掲示板機能もあり、災害時の臨機応変な対応がしやすくなります。
なお、安否確認サービス2は、直感的に操作できるのもポイントです。誰でもスムーズに操作できるので、どの年代の従業員でも利用しやすいのも魅力です。災害時の混乱状態であっても、簡単に安否確認ができるでしょう。
保育園におけるリスクマネジメントを理解しよう
保育園は小さな園児が多数集まるため、リスクマネジメントの実施が欠かせません。園児の命を守りつつ、保護者が安心して預けられる環境を作るためには早急な対応が必要と言えるでしょう。とはいえ、すべての事故を未然に防ぐのも難しいため、事故が起きたときの対処法も周知しておくべきです。
なお、災害時のリスクマネジメントには、トヨクモの『安否確認サービス2』の活用がおすすめです。迅速に職員の安否確認を行えるため、出社できる職員の数や被害状況も把握できます。また、保育園は早期復旧が望まれることから、対応策を講じるときには安否確認サービス2の掲示板機能が活用できるでしょう。