災害リスクマネジメントの対策例6つ|重要性や企業事例も紹介

遠藤 香大(えんどう こうだい)
自然災害や人為災害などは、いつ発生するか正確に予測することが困難です。災害が発生した際に十分な準備をしておかなければ、企業の存続が危うくなることもあるでしょう。そのため、災害リスクマネジメントは企業にとって不可欠なものとなっています。
この記事では、災害リスクマネジメントの重要性や企業でできる対策例について解説します。また、実際に災害リスクマネジメントを導入している企業事例も紹介します。災害リスクマネジメントを導入していない、または見直しを検討している企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
災害リスクマネジメントの重要性
災害リスクとは、自然災害や人為災害が発生した場合に、企業に与える損害や影響の可能性のことです。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 地震による建物の倒壊
- 洪水による工場の浸水
- サイバーテロによるデータ漏洩
企業にとって災害リスクマネジメントは、自然災害や人為災害などによる損害や影響を軽減し、事業を継続させるために不可欠です。事業が中断すると、収益の低下や顧客からの信頼低下だけではなく、企業の存続が危うくなる場合もあります。
そのため、リスクマネジメントを導入し、災害に備えることが非常に重要です。
備えるべき災害の種類
中小企業庁の「中小企業白書(2016年版)」によると、台風、地震、洪水の順に発生件数が多いです。しかし、被害額は地震が最も高く、地震1回による被害の大きいとわかるでしょう。
▲出典:中小企業白書(2016年番)第4章:稼ぐ力を支えるリスクマネジメント
近年地震が頻発化しており、地震対策は必須です。台風や洪水も発生件数が多いため、地震と台風、洪水に関するリスクマネジメントを優先して導入しておくとよいでしょう。
(参考:中小企業白書(2016年版))
災害リスクの大きさを決める3要素
災害リスクでは、3つの要素で災害による損害の大きさが決まると考えられています。3つの要素は、以下のとおりです。
要素 | 概要 |
---|---|
ハザード(Hazard) | 地震や台風など、脅威となる災害の存在や大きさ |
脆弱性(Vulnerability) | 災害に対する被害の受けやすさ |
暴露(Exposure) | ハザードにさらされている程度 |
ハザードにさらされている度合いが高く、災害に対する被害の受けやすさも高い場合、災害リスクは高くなります。災害リスクを減らすためには、ハザードにさらされることを回避し、災害に対する被害の受けやすさを低減することが重要です。
災害に備えたリスクマネジメントの対策例
ここでは、企業でできる災害に備えたリスクマネジメントの対策例を紹介します。
- 避難場所・避難経路を従業員に周知する
- 備蓄品を確保する
- 調達先を分散する
- 定期的にデータをバックアップする
- BCPを策定する
- 安否確認システムを導入する
避難場所・避難経路を従業員に周知する
ハザードマップを利用して災害の危険区域を特定し、その情報をもとに安全な避難場所と避難経路を選定します。従業員が把握していなければ安全に避難できないため、避難場所と避難経路は必ず従業員に周知しておきましょう。
ただ避難場所や避難経路を伝えるだけではなく、定期的な避難訓練を通じて、実際に経路を確認してもらうことが重要です。それにより、災害発生時のパニックを防ぎ、落ち着いて行動できるようになります。
備蓄品を確保する
災害が発生した際、従業員は事業所で避難することとなる可能性があるため、社内に防災備蓄品を確保しておきましょう。
東京都条例第十七号 東京都帰宅困難者対策条例の第七条では、従業員の3日分の飲料水や食料などを備蓄しておくように定められています。
第七条事業者は、大規模災害の発生時において、管理する事業所その他の施設及び設備の安全性並びに周辺の状況を確認の上、従業者に対する当該施設内での待機の指示その他の必要な措置を講じることにより、従業者が一斉に帰宅することの抑制に努めなければならない。
(引用:東京都条例第十七号 東京都帰宅困難者対策条例)
2 事業者は、前項に規定する従業者の施設内での待機を維持するために、知事が別に定めるところにより、従業者の三日分の飲料水、食糧その他災害時における必要な物資を備蓄するよう努めなければならない。
災害発生に備えて、備蓄品を用意しておきましょう。なお、時期や地域、自社の業種などによって、必要となる備蓄品の種類や量は異なるため、以下は目安程度に参考にしてください。
- 飲料水(1人あたり9L:3L×3日分)
- 主食(1人当たり9食:3食×3日分)
- 毛布・保温シート(1人あたり1枚)
- 乾電池・非常用電源
- 懐中電灯
- 携帯ラジオ
- 衛生用品
- 救急医療薬品類
- 簡易トイレ
飲料水や主食には保管期間が設定されています。定期的に保管期間を確認しなければ、災害が発生した際に保管期間が過ぎており、飲めない・食べられないという事態になりかねません。そのため、用意したら終わりではなく、保管期間も管理する必要があります。
調達先を分散する
部品の調達先が被災した場合、部品の供給を受けられない可能性があります。自社が被災していなくても事業が影響を受けるリスクがあるため、調達先を分散することがおすすめです。
在庫を多めに確保しておけば、部品の供給が受けられるようになるまで在庫を消費し、事業を継続できます。ただし在庫の保管には、保管場所の費用や管理する従業員の人件費が発生します。在庫が増えるほど管理コストは高額となるため、在庫を過剰に抱えることはおすすめしません。
定期的にデータをバックアップする
災害発生によって施設が浸水すれば、重要なデータを失うリスクがあります。事業運営に関わる重要なデータや顧客情報が失われると大きな損失となるため、クラウドサービスや別の場所にデータのバックアップを保管しておきましょう。
災害はいつ発生するかは分からないため、日常業務を優先してしまいがちです。また、データのバックアップを手動で行う場合、操作ミスによって作業中にデータを失う可能性もあります。そのため、安全にバックアップを取るには、自動でバックアップを取るサービスの利用がおすすめです。
BCPを策定する
BCP(Business Continuity Plan)とは、災害や事故など緊急事態が発生した際に、企業がその影響を最小限に抑え、事業を継続・早期に復旧させるための計画のことです。BCPで災害発生後の行動を定めておくと、事業が中断する期間を最小限に抑えられます。
BCPは以下の手順で策定します。
- 基本方針を策定する
- 運用体制を決定する
- 中核事業と復旧目標を設定する
- 財務診断と事前対策を実施する
- 緊急時の対応の流れを決めておく
- 定期的に訓練を行い、ブラッシュアップする
BCP策定の詳細は以下の記事で確認できるため、策定がまだの場合にはぜひ参考にしてください。
リスクマネジメントのコストを抑えたいならBCP策定支援サービス(ライト版)がおすすめ
BCPはさまざまな手順を踏んで策定するものであり、初めて策定する方にとってはハードルの高いものです。コンサルティングサービスは便利ですが、数十万〜数百万円かかるものが多いため、利用を躊躇してしまう方も多いでしょう。
そのような方には、トヨクモの「BCP策定支援サービス(ライト)」がおすすめです。実績のあるコンサルタントがカウンセリングを実施したうえで、自社に合ったBCPを策定してくれます。さらに、BCP策定後にフィードバックを受けられるため、より自社に合った内容にブラッシュアップすることも可能です。
BCP策定支援サービス(ライト)では、最短1ヶ月でBCPを策定しています。興味がある方は、ぜひお問合せてみてください。
安否確認システムを導入する
災害発生時に事業を早期に復旧させるには、緊急対応できる従業員の人数を迅速に把握することが不可欠です。安否確認システムを導入すれば、すみやかに人数を確認し、次のアクションに移せます。電話やメールで安否確認を実施するという方法もありますが、連絡や回答結果の集計に手間がかかります。
安否確認システムは、災害発生時に従業員に自動で通知し、回答結果も自動で集計します。迅速に緊急対応できる従業員の人数を把握できる点に加えて、管理者が安否確認以外の業務に集中できる点もメリットです。
安否確認システムによって、備えている機能や料金プランは異なります。災害はいつ発生するのか予測が難しく、継続して契約する必要があるため、無理なく利用できる料金のサービスを選びましょう。
トヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめ
トヨクモの『安否確認サービス2』は初期費用0円で始められる安否確認システムです。最低契約期間は設定しておらず、解約金もかからないため、気軽に利用を始められます。
事前に通知条件を設定しておくと、条件を満たす災害が発生した際に自動で従業員に通知します。メールアドレスや専用アプリに加えて、LINEにも通知でき、未達を防止することが可能です。さらに、安否確認の連絡に未回答の従業員に対して自動で再送信するため、未回答率を下げられます。
料金プランは4つ用意されており、月額7,480円(税込)から利用を開始できます。30日間の無料お試し期間が用意されているため、興味がある方はぜひお問合せください。
初期費用・解約費用(税抜) | 0円 |
月額費用(税抜) | ライト:6,800円/プレミア:8,800円/ファミリー:10,800円/エンタープライズ:14,800円 |
最低利用期間 | なし |
主な機能 | 外部システム連携/通知条件の設定/予行練習/自動一斉送信/回答結果の自動集計/家族の安否確認/災害以外のお知らせ送信ほか |
無料お試し | あり(30日間の無料お試し) |
災害リスクマネジメントを導入している企業事例
ここでは、災害リスクマネジメントを導入している企業事例を紹介します。
株式会社高島屋
株式会社高島屋は、百貨店業や通信販売事業などを営む企業です。国内外で23もの商業施設を構えています。
高島屋グループでは、災害発生時の損失を最小限に抑えるための対応をマニュアル化した「イエローファイル」を整備しています。そのなかの「レッドページ」では、単店対応のレベルを超える災害や事故が発生した際の行動基準を手順化しており、人命第一を基本に被害の最小化、事業の継続・早期再開を目指します。
(参考:株式会社高島屋)
東レ株式会社
東レ株式会社は、機能化成品や炭素繊維複合材料などの製造・加工および販売を行う企業です。定期的にリスクマネジメントを見直し、優先して対応すべきと判断したリスクに対しては3年間を1期とするPDCAサイクルで低減活動を推進しています。
経営企画室内には、リスクマネジメントの専任組織であるリスクマネジメント委員会を設置しています。東レグループ全体の年間活動実績をリスクマネジメント委員会に毎年報告し、新たに顕在化したリスクの対応も含めて、次年度の年間活動計画について協議・策定を行っています。
(参考:東レ株式会社)
森ビル株式会社
森ビル株式会社は、ホテル事業やリゾート事業、ケア付高齢者住宅事業などを展開している企業です。全社的なリスク管理に関する課題・対応策を審議・承認するために、リスク管理委員会を設置し、リスク管理の評価・分析や対応方針の承認などを年に1回実施しています。
災害対策としてBCPを策定しており、自然災害や事故などが発生した際にも事業継続・早期復旧を目指せるように準備しています。また、サイバーセキュリティ対策としてサイバーセキュリティに関する社内規定を定めており、さらには定期的な訓練・教育を実施することにより、従業員のサイバーセキュリティ意識を向上させています。
(参考:森ビル株式会社)
万が一に備えた災害リスクマネジメントは必須
災害はいつ発生するものか分からず、災害対策を後回しにしてきた方もいるでしょう。十分な準備をしていない状態で災害が発生すれば、長期間にわたって事業が中断し、企業が存続できなくなることがあります。そのような事態にならないために、今からでも災害リスクマネジメントを導入しておく必要があります。
本記事では、リスクマネジメントの対策例として以下の方法を紹介しました。
- 避難場所・避難経路を従業員に周知する
- 備蓄品を確保する
- 在庫を積み上げる
- 定期的にデータをバックアップする
- BCPを策定する
- 安否確認システムを導入する
BCPを策定しておくと、緊急時にどのように行動すればよいか明確になります。しかし、決めなければならないことが多く、何から手をつければよいか分からないという方もいるでしょう。そのような方には、トヨクモの「BCP策定支援サービス(ライト)」がおすすめです。
実績のあるコンサルタントがカウンセリングをしたうえで策定してくれるため、自社に策定のノウハウがない場合にも安心です。緊急時に活用しやすいポケットサイズのマニュアルを作成できる点もおすすめのポイントです。興味がある方は、ぜひお問合せください。