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安全衛生教育とは何?内容と無料で使える資料をご紹介

安全衛生教育とは何?内容と無料で使える資料をご紹介

労働災害を防ぐために、企業は安全衛生教育の実施を求められます。今回は安全衛生教育の定義、目的、実施方法、資料などについて解説します。適切な安全衛生教育を実施し、事業や従業員をリスクから守ることが重要です。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

安全衛生教育とは

安全衛生教育とは、労働者の安全や健康を確保するために、安全衛生を従業員に伝える教育です。事故や災害を未然に防ぐという目的があります。

安全衛生教育は事業者に定められた義務です。具体的な内容については、労働安全衛生法で示されています。

安全衛生教育という用語

安全衛生教育という用語は幼児から中学生までの教育現場においても用いられています。

学校保健安全法の施行に伴い、2011年度の新学習指導要領から指導内容に盛り込まれました。児童であろうと従業員であろうと、事故を防ぎ健康に過ごすことは大切だからです。

(参考:厚生労働省「安全衛生教育について」

安全衛生とのちがい

安全衛生とは、労働者の安全や健康を確保するための取り組みです。労働環境には機械の誤動作による事故や、有害物質の取り扱いによる健康被害など、さまざまなリスクが存在しています。

一方で安全衛生教育とは、安全衛生を従業員に周知させる教育活動です。安全衛生を理解することで、従業員の安全に対する意識を向上させ、危険を防ぎましょう。

安全衛生教育の法的根拠

労働安全衛生法は、一定の危険有害業務に就く場合に、資格の取得や特別教育の実施を義務づけています。このように、労働災害の防止には、従業員の適切な教育が必要であると判断されています。

なお安全衛生教育には、法令上の義務によって実施しているものもあれば、事業者が独自に実施しているものもあります。

安全衛生教育の目標

安全衛生教育の目標は「現場で災害を起こさない」ことです。

緊急事態の際には、頭で危険を理解すると同時に、体で安全を確保する必要があります。これらを達成するために、日頃から教育することで従業員の意識を高めましょう。

また、安全で安心な社会づくりに参加し、貢献できるようになることも安全衛生教育の目標です。意識、知識、行動力、支援などといった、労働安全の基盤となる力をつけましょう。

安全衛生教育の種類

安全衛生教育には、求められる内容によりいくつかの種類があります。ここからは、雇用時の教育、作業内容を変更したときの教育、危険有害業務従事者への特別教育、職長や監督者に対する教育、安全衛生水準向上のための教育について解説します。

雇用時の教育

雇用され、新しい職場環境に配属された従業員には、現場特有のリスクや安全対策に関する知識が必要です。機材の安全性や作業場の健康リスクなどを正しく把握すると、従業員はルールや確認作業の意味を知り、安全への取り組みを能動的に実施できます。

作業内容を変更したときの教育

新しい商品を製造する場合、あるいは新素材の導入があった場合には、変更した作業内容や新たに生じるリスクについて教育しなければなりません。

作業内容が変更されると、未経験の手順が含まれうるため、リスクに対応する教育や訓練が不可欠でしょう。

また、法令や社内規則が改正された際にも、作業内容に変更が生じる可能性は高いため、注意が必要です。

危険有害業務従事者への特別教育

危険な業務に従事する従業員には、一般的な安全衛生教育に加え、担当する業務に関する教育が求められます。たとえば化学物質や高圧電流を取り扱う際には、わずかなミスが重大な事故につながるため、入念な教育が必要です。

作業の手順だけでなく、業務内容の科学的な理解や関連する法令の知識もまた、安全に業務を行うために必須の知識でしょう。

職長・監督者に対する教育

現場を統率する職長や監督者には、従業員に安全意識をもたせる義務があります。そのため、職長は優れたリーダーとなるために、管理能力や指導力に関する教育を受けます。

具体的な教育内容は、コミュニケーション、問題解決、意思決定、労使関係などです。加えて、安全衛生や安全衛生教育についての理解、知識、職務経験も求められます。

安全衛生水準向上に向けた教育

安全衛生水準の向上を目指し、従業員は継続して教育を受けます。

技術の進化、新たなリスクの発見、業務の変更などの変動する状況に対処する必要があります。

製造業の現場は、新しい機械を導入したり、生産ラインを変更したりする機会が多いです。そうした変化に対応し、安全水準を常に維持するためには、定期的な教育とトレーニングが不可欠でしょう。

安全衛生教育の指導者は誰?

安全衛生教育を自社で行うとき指導者となるのは、総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全管理者、業務に精通した従業員などです。

雇用時や作業内容変更時の安全衛生教育については、法令による指定はありません。安全衛生法の内容を確認しつつ、自社の業務と関連する教育内容を定め、実行します。

安全衛生教育は外部委託も可能です。自社での実施が難しい場合は検討をおすすめします。

社内における安全衛生教育の方法

安全衛生教育を社内で行う場合、以下の手順を踏むことが重要です。また、公的機関による無料の資料も多いため、ぜひ参照してください。

計画作成

安全衛生教育を継続して実施するために、中長期の実施計画を作成し、それに沿った教育をします。計画的に教育を行うことで、必要な技能や知識を網羅できます。

また、教育の内容だけでなく、実施する時期についても考慮しましょう。

実施者の決定

計画を作成できたら、それぞれの業務について実施責任者を選任します。実施計画の作成、教育の実施、実施結果の記録、保存などの役割が挙げられます。扱う分野の専門知識や教育経験を持つ人が適任でしょう。

安全衛生教育を進めると、実施者としての能力を持った従業員が育成されます。そうした人材を新たに教育実施者とすることで、社内の安全衛生への安全意識が継承されていくでしょう。

教育の実施

教育は計画に則って実施します。教材については、指定のカリキュラムだけでなく、労働災害の事例を盛り込んだ具体的な内容にしましょう。

実践的な教育を行うことで、技能の習得も可能です。製造業の現場では、機械や化学物質の取り扱いが求められるため、こうした教育がおすすめです。

また、いつどのような安全衛生教育を受けたか、従業員ごとに記録しておくと効果的でしょう。

安全衛生教育に使える無料資料

安全衛生教育に使える無料の資料は、公的機関や自治体から数多く公開されています。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」は、共通のテキストや動画に加え、業種別に安全衛生教育の教材を取り揃えています。安全衛生マネジメント協会からは、社内の安全衛生教育に使える教材を無料で利用することが可能です。東京都教育委員会は、幼児から高校生までを対象に安全衛生教育動画を公表しています。

こうしたコンテンツは、安全衛生教育の資料として利用できるでしょう。

社員の安全を守るためにはBCP(事業継続計画)の策定がおすすめ

BCPとは、Business Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」などと訳されます。自然災害やテロ、感染症などに対して、被害を最小に抑えるとともに、たとえ被害・影響が出てしまったとしても、適切な対応で速やかに事業活動を復旧・継続させることを目的とした計画です。

安全衛生教育だけでなく、BCPの策定もまた、社員の安全を守る有効な手段です。

BCPには災害時に身を守る方法、安否確認、準備しておく物資などをまとめましょう。

BCPと安全衛生教育計画を同時に策定することで、より万全な安全衛生対策が期待できます。

安全衛生教育で企業・従業員を守る

安全衛生教育は企業や従業員を守るために不可欠です。個々の従業員にしっかりと安全衛生教育を施すと、事故防止や安全衛生の確保に向けて知識と技術を得られます。

また、安全衛生教育とBCPを同時に実施することで、安全衛生対策を完璧なものにしましょう。

BCPを策定できていないなら、トヨクモの『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用をご検討ください!
早ければ1ヵ月でBCP策定ができるため「仕事が忙しくて時間がない」や「策定方法がわからない」といった危機管理担当者にもおすすめです。下記のページから資料をダウンロードして、ぜひご検討ください。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。