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ITリスクマネジメントとは?意味や重要性、実施する方法を解説

事業を運営する中でシステム障害などのトラブルが発生し、リスクに備えるにはどのようにすればよいか気になった方もいるのではないでしょうか。将来的に起こり得るITについてのリスクを把握し、できる限り被害を少なくするための取り組みとして、ITリスクマネジメントが有効です。

この記事では、ITリスクマネジメントの意味や重要である理由、ITリスクマネジメントの進め方について解説します。企業のITリソースの管理や運用に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

ITリスクマネジメントとは

ITリスクマネジメントとは、ITインフラやシステムを活用する上で生じ得るリスクをあらかじめ把握し、対処方法について検討する取り組みのことです。

混同されやすい用語にリスクアセスメントがあるものの、ITリスクマネジメントとは意味が異なります。リスクアセスメントとは、企業が抱えるさまざまなリスクについて分析や評価を行う取り組みのことです。一方、ITリスクマネジメントは、把握されたITリスクに対処するための取り組みを指します。

リスク事象を把握することの難しさ

ITリスクを適切に把握することは簡単ではありません。ITリスクの把握が難しい理由として、次の3つが挙げられます。

  • ステークホルダー間で共有する難しさ
  • リスク事業の評価基準を定めることの難しさ
  • ステークホルダーの立場による捉え方が異なること

それぞれについて詳しく解説します。

ステークホルダー間で共有する難しさ

ITプロジェクトには、現場で実際に起こっていることを正しく把握することの難しさがあります。

仮にシステム構築がスケジュール通り進行しなかったとして、プロジェクトマネージャーが顧客に対して「要件定義を行った後で、曖昧な要求を行ったことが原因である」と断言し、関係者全員がその課題解決に向けて動き出すことができるでしょうか。

とくに、初めての取引で顧客との信頼関係が十分に構築されていない場合、直言することは難しいでしょう。また、担当者が上司に対して「顧客が要件をしょっちゅう変更する」と相談したとしても、新たな要望が出るたびに会社同士の再交渉が行われるということは現実的ではありません。

ITプロジェクトにおいて生じる問題は水面下で処理されているケースが多く、表に出てこないリスクを多数含んでいます。

リスク事業の評価基準を定めることの難しさ

ステークホルダーが評価基準を正しく認識しづらいということも、ITリスクの把握が難しい要因です。

プロジェクトマネージャーやエンジニアがリスク事象であると強く認識している事象があったとしても、ITの知識がない発注側の経営者や担当者にとっては些末な問題であると感じられることがあります。

その場合は、リスクであると認識してもらうための十分な説明や根拠が必要です。ただし、リスク事象について必ずしも網羅的に説明できるとは限りません。

ステークホルダーの知識量によって、基準が異なります。そのため、リスク事業の評価基準を定めることは困難です。

ステークホルダーの立場による捉え方が異なること

ステークホルダーの立場によっても、何をリスクと捉えるのかが異なります。経営者は会社全体について、部長は部署や事業そのものに目を向けていることが一般的です。プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体、技術者はシステムに目を向けています。

技術者にとっての関心ごとは、システムが稼働するかどうかです。プロジェクトマネージャーは定めた要件がスケジュール通りかつ予算内に進捗すること、部長はシステムが稼動することによる事業の成果、経営者は会社同士の信頼関係や業績、キャッシュフローへの影響などを気にかけています。

これらのように、様々な立場からの要求や要望が飛び交うため、プロジェクトを取りまとめることは困難です。立場によってリスク要因と認識するものが異なることが、難しさにつながっています。

ITのリスクマネジメントは、こうしたリスクの把握しにくさを理解したうえで、円滑にプロジェクトを進めるために必要不可欠なものです。

ITリスクマネジメントで想定するべきITリスク

ITリスクマネジメントで想定するべきITリスクは、以下の3種類に分けられます。

  • システム上のリスク
  • 人によるリスク
  • 自然災害によるリスク

ここでは、どのようなITリスクがあるかを具体的に見ていきましょう。

システム上のリスク

システム上のリスクには、ソフトウェアのバグやハードウェアの故障によるトラブル、クラウドサービスの障害などが含まれます。また、企業で使用している端末のマルウェア感染やネットワークへの不正アクセス、データ改ざん、DDoS攻撃、SNSアカウントの乗っ取りといったリスクも、ITリスクマネジメントで対処方法を想定しておくべき対象です。

老朽化したレガシーシステムを使い続けることによるデータ消失のリスクや、セキュリティリスクにも対処する必要があります。

人によるリスク

人によるリスクは、操作の誤りや媒体の紛失といったヒューマンエラーと、意図的な不正行為に分けることが可能です。

ヒューマンエラーの具体例として、個人情報を含む電子メールの送信先を誤ったり、社内の機密情報を保存したパソコンやUSBメモリを紛失したりすることによる情報漏洩が挙げられます。

意図的な不正行為の具体例は、企業に対する悪意を持った人間による情報漏洩やデータの消去などです。意図的な不正行為を行う人物は、必ずしも社外のハッカーなどであるとは限りません。過去には、顧客データの委託先企業に勤める従業員が、売却による金銭目的で顧客データを持ち出したという事例も発生しています。

ITリスクマネジメントに取り組む上では、過失と故意の両方のリスクを洗い出し、対処方法を検討することが重要です。

自然災害によるリスク

自然災害によるリスクには、停電による機器の停止やデータの消失、大規模な地震によるIT機器の破壊などが含まれます。近くに河川や海があるオフィスでは、洪水や津波によってIT機器が浸水する被害にも対処が必要です。オフィス周辺の地理的な要因を加味した上で、ITリスクマネジメントを実施することが求められます。

また、大規模な自然災害で交通機関が麻痺した場合、IT機器の管理者やオペレーターがオフィスにたどり着くことができず業務が止まってしまうリスクもあります。

ITリスクマネジメントの進め方

ITリスクマネジメントを進める際の手順は、以下の4つのステップです。

  • ITリスクを特定する
  • 対応の優先順位を決める
  • ITリスクへの対応を実施する
  • モニタリングと対応を継続する

ここでは、ITリスクマネジメントを実施する方法について解説します。

ITリスクを特定する

ITリスクマネジメントの最初のステップは、自社が抱えるITリスクを特定することです。企業で利用しているIT機器やソフトウェア、ネットワークなどの脆弱性、将来的に起こり得るトラブルなどを洗い出します。システム上のリスクだけでなく、人によるリスクや自然災害によるリスクについても、懸念されるトラブルを把握しましょう。

対応の優先順位を決める

次のステップは、特定されたITリスクについて、対応の優先順位を検討することです。複数のITリスクに対する優先順位を決めるための考え方として、発生頻度と被害の深刻度という2つの観点で検討する方法があります。

発生頻度とは、対象のITリスクが実際に発生する可能性を指す指標です。たとえば、メール送信時の誤操作や記憶媒体の紛失による情報流出は、日常業務における発生頻度が比較的高いITリスクだと考えられます。一方、地震や洪水といった自然災害によるIT機器の破損は、発生頻度が低いITリスクです。

被害の深刻度は、ITリスクによって生じる経済的損失の大きさや影響範囲の広さ、復旧にかかる時間などで判断されます。たとえば、バックアップが保存されているデータであれば、誤操作による消失が起きてもすぐに復旧できるため、被害の深刻度は小さいです。一方、システムへの不正アクセスによる機密情報の流出は、経済的な損失や信用問題につながるため被害の深刻度が大きいと考えられます。

最初のステップで洗い出したITリスクのなかで、発生頻度が高く、被害の深刻度が大きいものから優先的に対応することが重要です。

対応の優先順位を決める

次に、優先順位の高いITリスクから順に、具体的な対応を実施していきます。たとえば、システム上のリスクへの対応では、データのバックアップ体制の構築やネットワークの冗長化などの施策が有効です。

また、不正アクセスやサイバー攻撃、システム障害などが生じた場合に備えたマニュアルの策定などにも取り組みましょう。トラブル発生時の対処方法をまとめておくことは、自然災害によるリスク対応にも有効です。

人によるリスクへの対応として、従業員へのITリテラシー教育が挙げられます。IT機器やシステムの使い方やアカウント情報の管理、端末や記憶媒体を社外に持ち出す場合の注意点などを教育することで、ヒューマンエラーによるリスクを低減できるでしょう。意図的な不正行為への対策としては、社内のITセキュリティ強化が効果的です。

モニタリングと対応を継続する

ITリスクへの対応は、一度実施しただけで完了するというわけではありません。実行した施策が意図した通りにトラブル防止につながっているか、新たなITリスクが発生していないかなどを継続的にモニタリングする必要があります。

意図した効果が得られていない対応が見つかった場合は、取り組み方を改善するなどの見直しが必要です。トラブルやインシデントの発生件数などの指標を計測することで、ITリスクマネジメントの結果を定量的に把握し、継続的な改善に取り組めます。

ITリスクマネジメントを適切に実施するためのポイント

ITリスクマネジメントを成功させるためには、以下のようなポイントが重要です。

  • リスクへの対処方法についてコミュニケーションを取る
  • 実現可能性を重視する
  • 外部サービスの活用を検討する

ここでは、ITリスクマネジメントを実施する時のポイントについて解説します。

ITリスクへの対処方法についてコミュニケーションを取る

ITリスクへの対処方法のなかには、従業員への負荷が高まったり、業務効率に悪影響を及ぼしたりするものがあるかもしれません。たとえば、システムへのログインする際の手間が増える、テレワークで扱える社内情報が制限されるなどの支障が出ると、従業員から反発が生まれる可能性があります。

ITリスクマネジメントをスムーズに進めるためには、施策に取り組む関係者間でのコミュニケーションを密に取ることが大切です。話し合いを通じて、ITリスクに対処する必要性について理解を得ましょう。また、現場の負荷がより小さくなるような実施方法を模索することも重要です。

実現可能性を重視する

ITリスクマネジメントの対策で完璧を求めすぎると、費用や時間が過剰に必要となり、計画を実行できない可能性があります。

ITリスクマネジメントの本来の目的は、被害の最小化やトラブル対処の効率化などです。これらの目的を達成するためには、実現可能性を重視してITリスクマネジメントに取り組む必要があります。優先順位の高い対策から順に、予算やスケジュールの範囲内でITリスクへの対処を実行しましょう。

外部サービスの活用を検討する

ITリスクマネジメントでやるべきことは複数あり、時間や手間がかかります。社内のリソースだけで対応できない場合には、外部サービスの活用を検討することも1つの方法です。

コンサルティングやITソリューションなどの外部サービスを活用することで、より効率的にITリスクに対処できる可能性があります。受けられるサポート内容や費用対効果を吟味し、必要に応じて外部サービスの活用を検討しましょう。

ITリスクマネジメントでトラブルに備えよう

ITリスクマネジメントは、IT機器やシステムの利用において起こり得るトラブルを把握し、対処策を実施する取り組みです。トラブルが起こったときに被害を最小限に抑え、効率的に対処するために、ITリスクマネジメントを実施する必要があります。

リスクへの対処方法についてコミュニケーションを取ることや、実現可能性を重視することなどが、ITリスクマネジメントを適切に実施するポイントです。必要に応じて外部サービスの活用も検討し、ITリスクに備えましょう。

災害によるリスクに備えるサービスとして、トヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめです。安否確認サービス2を導入すると、災害時の安否確認や、対策指示の共有などを効率的に行うことができます。ITリスクマネジメントに取り組む企業の担当者は、安否確認サービス2の導入をぜひご検討ください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。