プロジェクトを実行する過程で、予期せぬトラブルが発生することは珍しくありません。しかし、トラブルによって納品日に間に合わなかったり顧客を満足させられる成果物を作れなかったりすれば、企業への影響が大きいものとなるでしょう。
そのため、プロジェクトを遂行するときは、あらかじめ想定されるリスクを把握し、必要に応じた対策を検討しておくことが重要です。
そこでこの記事では、プロジェクトにおけるリスクマネジメントについて解説します。起こり得るリスクの種類や対処法、リスクマネジメントのプロセスを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
プロジェクトにおけるリスクマネジメントとは
プロジェクトにおけるリスクマネジメントとは、プロジェクトを実行するうえで発生する恐れのあるリスクを把握し、その対処法をあらかじめ定めておくことです。
プロジェクトが順調に進んでいたとしても、事故や災害などにより予想外のリスクが発生する可能性はあります。そのため、あらかじめ起こり得るリスクを想定しておき、普段からそのリスクに備えた対策が必要です。
一般的なリスクマネジメントの指針「ISO31000」
リスクマネジメントにおける一般的な指針は、「ISO31000」に規格として定められています。ISOとは、スイスのジュネーブに本部を置く、国際的に通用する規格を制定している非政府機関のことです。
ISO31000には、リスクマネジメントの手法や関連用語などが記載されています。活用すると企業全体でリスクマネジメントにおける意思統一を図ることができるでしょう。
プロジェクトにおけるリスクの種類
プロジェクトにおけるリスクは、主に以下の4つに分類できます。
- 個別リスク
- 全体リスク
- 事象リスク
- 非事象リスク
それぞれについて解説します。
1.個別リスク
個別リスクとは、発生したら1つ以上のプロジェクトのタスクに影響を与えるリスクのことです。たとえば、設備の故障によって業務が滞るリスクや、人的リソース不足で特定のタスクの質が低下するリスクなどが個別リスクに当てはまります。
個別リスクは発生するか生不確かであり、発生した場合はプロジェクトの進行に影響が出ると予想されます。
2.全体リスク
全体リスクとは、市場の変化や為替の変動など、発生するとプロジェクト全体に影響を与えるリスクのことです。
全体リスクには悪い影響だけではなく、プロジェクトの成功へ導くようないい影響も含まれます。つまり、プロジェクトの結果に影響を与える不確実な要素はすべて「全体リスク」にあたると言えます。
3.事象リスク
事象リスクとは、ある出来事によって招かれるリスクのことです。取引先の廃業、顧客からの設計変更、災害、人的ミスなどあらゆる事象が事象リスクに当てはまります。
プロジェクトの責任者は発生し得る事象リスクを洗い出し、対策を講じておく必要があります。
4.非事象リスク
非事象リスクは、外的要因によらないリスクです。非事象リスクはさらに曖昧さリスクと変動リスクに分類できます。曖昧さリスクとは、不確実な将来へのリスクのことです。十分な知識がないままプロジェクトを実行し上手くいかないなどの例が挙げられます。
一方、変動リスクとは、計画の不確実性に由来するリスクのことです。製品の仕上がりにバラつきが生まれるなどの例が挙げられます。
プロジェクトにおけるリスクマネジメントの具体的なプロセス
プロジェクトを進めていくうえで起こり得るリスクは、前述で紹介したリスクだけではありません。企業や事業内容などによって異なるため、プロジェクトに合ったリスクマネジメントを行う必要があります。
プロジェクトにおけるリスクマネジメントの具体的なプロセスは、主に以下のとおりです。
- 起こり得るリスクを洗い出す
- リスクの分析を行う
- 各リスクへの対応策を検討・実行する
- モニタリング・改善を行う
それぞれのプロセスについて解説します。
1.起こり得るリスクを洗い出す
まず、プロジェクト進行中に起こり得るリスクを洗い出します。たとえば、地震をはじめとする自然災害や為替の変動など、前の項目で取り上げた以外にもさまざまなリスクが想定されます。
なお、起こり得るリスクを洗い出すときは、プロジェクトマネージャーだけではなく複数の担当者を集めて、あらゆる角度から検討することが重要です。偏りがないよう、想定される影響はす漏れなく把握しておきましょう。
2.リスクの分析を行う
想定したリスクの分析を行います。リスクの分析とは、リスクがどれほどの頻度で発生し、どれほどプロジェクトに影響を与えるかを検討することです。
プロジェクトのリスクは複数ありますが、すべて一度にリスクマネジメントできるとは限りません。そのため、プロジェクトへの影響が大きく発生率の高いリスクから優先的にリスクマネジメントを実施していきます。とくに、プロジェクトの成功に大きな影響を与えるリスクに対しては、慎重な対応が求められるでしょう。
3.各リスクへの対応策を検討・実行する
リスクの分析ができたら、リスクごとに必要な対策を検討・実行しましょう。
リスクの対応策は、発生前の備えである「リスクコントロール」と発生後の備えである「リスクファイナンシング」の2つに大別できます。具体的には以下のとおりです。
手段 | 概要 | |
---|---|---|
リスクコントロール | 回避 | リスクを伴う活動自体を中止して、リスクを回避する |
損失防止 | 損失発生を回避して、リスクの発生頻度を減らす | |
損失削減 | 損失発生を回避して、リスクの発生頻度を減らす | |
分離・分散 | リスクを1ヵ所に集中させず、分離・分散させる | |
リスクファイナンシング | 移転 | 第三者からの損失補填を受ける |
保有 | 自己負担によって損失をカバーする |
(参考:2016年版 中小企業白書)
「プロジェクトに想定されるリスクの損失を最小限にするには、どういった対策が必要となるか」を考えたうえで、対策を実行します。リスクコントロールとリスクファイナンシングを組み合わせて対応策を講じ、プロジェクトへの影響を最小限に抑えましょう。
4.モニタリング・改善を行う
リスクマネジメントを実行して終わりにするのではなく、定期的にモニタリングしましょう。
プロジェクトを進行していくなかで、発生し得るリスクが変わったり、想定どおりの状況とは違ったりするケースは少なくありません。現状に合ったリスクマネジメントを行うためにも、定期的にモニタリングを行って状況に応じた対応策を考えるべきです。日々リスクマネジメントの方法をアップデートすることにより、トラブル時の企業の損失を最小限に抑えられるでしょう。
プロジェクトで発生し得る7つのリスクと主な対処法
プロジェクトで発生し得るリスクは、主に以下の7つです。
- リソース不足
- 運用上のトラブル
- パフォーマンスの低下
- コミュニケーション不足
- 目標が不明確
- 予算の超過
- タイムラインの遅れ
それぞれのリスクについて解説します。
1.リソース不足
プロジェクトを進めていくうちに、リソース不足に陥るケースがあります。たとえば、プロジェクトを遂行するために必要な人的リソースを確保できずに、業務に遅れが生じることもあるでしょう。とくに、プロジェクトマネージャーが適切にリソースを確保できていないと起きやすいリスクです。
リソース不足を回避するためには、プロジェクトの計画段階や初期段階で必要なリソースを確認して、あらかじめ確保しておくことが重要です。チームが持つリソースを十分に活用しながらプロジェクトを遂行すると、リスクを回避しやすくなるでしょう。
2.運用上のトラブル
プロジェクトを遂行していると、予想外の変更やトラブルが起こる可能性があります。たとえば、プロジェクトの主要メンバーが離脱したり、経営陣の変更によって予算配分が変わったりすることもあるでしょう。こういったトラブルはプロジェクトに関わる従業員の不安に直結するため、業務の遂行にも大きな影響を与える可能性があります。
なお、このような運用上のトラブルをすべて把握・回避するのは不可能です。そのため、プロジェクトに関わる従業員には、柔軟な対応力が求められます。不測の事態が起きたときに備えた話し合いを事前に行うのも、有効な手段です。
3.パフォーマンスの低下
プロジェクトを遂行していると、想定どおりのパフォーマンスを発揮できないケースがあります。たとえば、納期を極端に短く設定していると、時間に追われて満足できるパフォーマンスができないでしょう。検討時間を十分に確保できずに、曖昧な状態のままプロジェクトを推し進めてしまう恐れもあります。
プロジェクトを実行する際は、パフォーマンスの低下を防ぐための策を講じておくことが重要です。予想外の出来事に備えてフォロー体制を十分に整えたり、従業員同士がコミュニケーションを取りやすい環境を用意したりするのも効果的です。
4.コミュニケーション不足
プロジェクトを遂行するうえで、従業員同士のコミュニケーションが不足するとあらゆる損害が生じる可能性があります。トラブルが起きたときに従業員同士で報告や相談ができないと、対応が遅れるでしょう。結果的に、プロジェクトの遂行にも大きな影響が出るかもしれません。
プロジェクトの遂行前にすべてのリスクを明確にするのは難しく、実行する過程の中で表面化する問題もあります。予測していなかったリスクに対処しプロジェクトを成功させるためには、関わるすべての従業員同士の密なコミュニケーションが欠かせません。定期的に会議を行ったり、すぐに相談・報告できる環境を整えたりすると、話しやすい雰囲気になるはずです。
5.目標が不明確
プロジェクトの目標が明確に定義されていないと、達成すべきゴールが分かりません。「とりあえず新製品を作ろう」とイメージが定まらないままプロジェクトを開始してしまうと、どのような新商品ができればいいのかのゴールがないため、プロジェクト自体が頓挫する可能性があります。
そのため、プロジェクトを遂行するときは「何を目的としたプロジェクトなのか」「最終目標は何か」「どういう状態になればプロジェクトの成功と言えるのか」などをあらかじめ明確にしておきましょう。さらに、プロジェクト遂行中に定期的に進捗確認をしたり、従業員全員に目標を周知させたりすれば、途中で目標を見失う心配がなくなります。
6.予算の超過
プロジェクトを遂行していると、予算を超過してしまうリスクがあります。とくに、プロジェクトの計画段階で明確な予算設定をしていなかったり、非現実的な予算設定をしていたりすると生じやすいリスクです。
このリスクを回避するためには、プロジェクトの各要素を正確に見積もり、そのうえで予算を計算していくことが重要です。定期的に進捗状況を確認し、予算を見直しましょう。
7.タイムラインの遅れ
プロジェクトを進めていくと、想定よりも時間がかかってしまうケースがあります。進捗の遅れは予算の超過や、納品日の遅れといった損害につながります。プロジェクトの計画段階で、必要な時間を過小評価していると起こりやすいリスクと言えるでしょう。タイムラインの遅れを回避するためには、プロジェクトの計画段階でかかる時間を正確に把握しておくことが重要です。
また、プロジェクトの遂行中、特定の作業に想定以上の時間がかかると判明した場合にすぐスケジュールの調整をできる体制を整えておきましょう。プロジェクトマネージャーが常に各作業にかかる時間やプロジェクトの進捗を把握していれば、トラブルが発生したときも焦ることなく対応できます。タスクが適切に管理されていれば、従業員それぞれのパフォーマンスが発揮できるでしょう。
災害時のリスクマネジメントにはトヨクモ『安否確認サービス2』の導入がおすすめ
プロジェクトを進行していくなかで、見落としてはいけないリスクが災害です。地震や津波といった自然災害は回避するのは難しく、またいつ発生するか分かりません。そのため、プロジェクトへの影響を少しでも抑えるためには、あらかじめリスクマネジメントを実行することが重要です。
災害時のリスクマネジメントには、トヨクモの『安否確認サービス2』を活用しましょう。安否確認サービス2とは、気象庁の情報と連動して災害発生時に自動で安否確認を行えるサービスのことです。従業員から集まった回答結果を自動で分析するため、安否確認にかかるコストを大幅に減少できます。
安否確認サービス2の魅力のなかで、とくにおすすめしたいポイントは以下の2つです。
- 使いやすさを重視している
- BCPに必須な機能を搭載している
それぞれの魅力を解説します。
使いやすさを重視している
安否確認サービス2は、使いやすさを重視しています。SmartHRやfreee人事労務といった外部ツールを活用していれば、1クリックで簡単にユーザー情報を登録できます。
また、誰でも簡単に操作できるシンプルな画面が魅力です。デジタル機器に不得意な従業員でも操作しやすい設計であるため、災害時の混乱した状況下でもスムーズに活用できるでしょう。
BCPに必須な機能を搭載している
安否確認サービス2は、BCPに必須な機能を搭載しているのもポイントです。
BCP(事業継続計画)とは、災害をはじめとする緊急事態が発生したときの対策や、早期復旧を図る計画のことです。緊急事態時は事業を継続できずに、収益が悪化することも想定されます。この状態が長引けば、事業の存続にも大きな影響を与えるため、あらかじめ対応策を考えておくべきです。
安否確認サービス2には、BCPに必要と言われている以下の機能があります。
掲示板 | すべてのユーザーが書き込めるため、情報共有に活かせる | ・被災状況の伝達 ・災害時のマニュアル掲載 |
メッセージ | 宛先を指定したユーザーのみが閲覧・書き込みができる | ・一部の従業員との議論 ・部署単位での情報共有 |
一斉送信メール | 情報を一斉送信できる | ・被害状況の回答 ・災害時の対応 |
なお、これらの機能は日常的に使用できるため、普段から使い慣れておくと緊急時に慌てず従業員らと連携が取れるでしょう。
プロジェクトにおけるリスクマネジメントを考えよう!
プロジェクトを遂行していくなかで、あらゆるリスクが発生する可能性があります。そのため、あらかじめ必要に応じたリスクマネジメントを行っていれば、プロジェクトへの損失を最小限に抑えられるでしょう。
災害時におけるリスクマネジメントには、トヨクモの『安否確認サービス2』の導入がおすすめです。安否確認サービス2は初期費用が無料、かつ30日間の無料お試し期間も設けられていることから、導入に迷っている方でも試しやすいでしょう。災害時のリスクマネジメントを検討している方は、ぜひご活用ください。