企業に求められる安全管理とは?|具体的な取り組みと注意点を詳しく解説

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木村 玲欧(きむら れお)

企業における安全管理は、従業員と資産を守るために欠かせません。ただ、どのように安全管理対策を行えばいいか分からない経営者や担当者もいるでしょう。

この記事では、安全管理策の取り組みと、その実施にあたっての注意点を詳しく解説します。

企業における安全管理とは?

企業に求められる安全管理はさまざまです。まずは、安全管理の意義や目的などを紹介します。

企業の「安全管理」の意義

企業の「安全管理」は、働いている人の安全を守る取り組みのことを指します。従業員は企業にとって貴重な財産です。そのため、働きやすい快適な職場環境を作ることが重要です。

たとえば機械の操作について、企業における安全管理として以下のものが挙げられます。

  • 危険度の高い機械を初めて操作する人に、丁寧な研修を実施する
  • 手袋やヘルメットなどを従業員に提供し、使用を義務づける
  • 騒音を対策する

従業員を危険から守る取り組みは、長期的には企業の生産性向上にもつながります。

職場の安全管理が労働災害を防ぐ

職場の安全管理を徹底し、労働災害の発生を防ぎましょう。

厚生労働省の「令和5年労働災害発生状況」によると、休業4日以上の死傷者数は132355人で、前年に比べて1769人増えています。また、この数字は過去20年で最多です。

少子高齢化の進む日本では、ますます人手が不足しています。人材確保の面からも、安全に働ける環境を作り、労働者のモチベーションを挙げる取り組みが非常に重要です。

従業員と企業で協力し、職場の安全管理に努めましょう。

(参考:厚生労働省「令和5年 労働災害発生状況」

安全管理の目的

安全管理の目的は、大切な従業員を守ることです。従業員の安全は、企業の持続的発展に欠かせません。

企業は、職場での事故を予防しなければなりません。さらには、従業員の安全意識を向上させることも大切です。

たとえば職場から危険物を取り除くだけでなく、安全に関する研修を行うことも、安全管理なのです。

労働災害防止は企業の責任

労働災害を防止するための法律「労働安全衛生法」では、労働災害が発生した際、責任を企業に求めます。

労働災害が発生すると、企業側には次のような責任が生じます。

  • 刑事責任
  • 損害賠償責任

とくに民事上の損害賠償責任が問われると、企業は多額の賠償金を支払わなければなりません。

安全管理に関するその他の法令・義務

安全管理に関する法令として、次のようなものが挙げられます。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法施行令
  • 労働安全衛生規則
  • 安全配慮義務

労働基準法とは、環境を整え、不当な労働条件から労働者を守る法律です。労働安全衛生法施行令は、労働安全衛生法の実施細則を定めています。

労働安全衛生規則は、身体に害をなす物質の取り扱いや、健康診断の運営方法などを規定しているものです。

安全配慮義務とは、企業側が従業員を守るために配慮する義務です。研修や環境整備などが挙げられます。

これらの法律を確認して、安全管理の取り組みを進めましょう。

安全管理の具体的な取り組み

ここからは、安全管理の具体的な取り組みを6つ紹介します。企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。

労働災害防止

労働災害防止とは、勤務中に起こり得る災害を防ぐための取り組みです。関連する法を遵守し、適切に対応します。

勤務中の不幸な事故を防ぐため、次の4原則を守りましょう。

  • 整理
  • 整頓
  • 清掃
  • 清潔

作業場所を整理し、必要なものはいつでも使えるようにします。また、こまめに掃除をして職場環境を改善し、清潔な状態を維持しましょう。

職場環境の整った職場では、労働災害をはじめとする事故は起こりにくいのです。

危険に対する措置

安全管理は計画的に取り組みましょう。

勤務中に起こり得るリスクに対して、適切な対策をとることが大切です。具体的には、次のような取り組みが該当します。

  • 労働時間や残業時間を見直す
  • 作業内容に危険がないか見直す
  • 設備や機械は定期的に検査する

安全に働ける職場は、安全のみならず生産性の向上も期待できます。それぞれの問題に適切なアプローチをし、従業員が安全に働ける職場作りを目指しましょう。

安全教育

安全教育とは、従業員に安全について正しい知識を伝える取り組みです。

教育には次のようなものが挙げられます。

  • 作業内容を変更するときの研修
  • 危険な業務へ就業させるときの事前勉強会
  • 現場のリーダーに対する研修会
  • 中高年齢の従業員に対する教育

適切な教育は、安全な職場環境と労働者の健康を維持します。

快適な職場環境の整備

企業側は、快適な職場環境を提供する必要があります。職場環境は従業員のモチベーションに関係し、疲労軽減効果に寄与します。

従業員の声を聞き、不快に感じる要素を取り除きましょう。作業場の温度が不快という声があれば、エアコンを導入したり、大きな窓を取り付けたりします。疲労回復支援として休憩室を設置することもおすすめです。

労働者の声に耳を傾け、心身の負担を軽減しながら、パフォーマンスの向上を目指しましょう。 

安全管理体制の構築

適切な安全管理には、安全管理体制の構築が不可欠です。体制を整えることで対応がスムーズに進み、法的責任の遵守にもつながります。

安全管理のリーダーを明確にし、安全体制を整えておきます。ほかにも、管理者をサポートする人員も選出しておきましょう。

これらは職場の安全を保障し、企業の持続可能性を支える上で重要です。

安全管理のために選任すべき人員

労働安全衛生法では、事業者が安全衛生体制を構築するために選任すべき人員を紹介しています。

企業の業種や規模に応じて適切な人員を選出しましょう。

総括安全衛生管理者

総括安全衛生管理者は、安全衛生管理全体の責任を担う重要なポジションです。

元方事業者が選任する人員であり、対象となる業種は多岐にわたります。主に次のような職種で指定されます。

  • 建設業
  • 製造業
  • 運輸業
  • 農林水産業

主な仕事は、企業における安全衛星管理の方針を決定し、運用することです。また安全衛生研修を企画し、円滑な研修を目指し関係各所と連携します。

安全管理者

安全管理者とは、安全管理の責任を持つ者です。「安全管理者」の資格を取得した者から選出してください。「安全管理者」資格は、厚生労働大臣認定の研修を受ける、または試験に合格することで取得が可能です。

対象となる主な業種は、次の通りです。

  • 林業
  • 建設業
  • 運送業
  • ゴルフ場経営

各事業所を視察し、危険があれば改善することが求められます。従業員の命を守る大切な役割であるため、資格を持っているだけでなく、知識や経験のある人が望ましいでしょう。

安全衛生推進者

安全衛生推進者は、従業員数が10人から50人の事業所において、危険や健康障害の防止対策を執り行います。選出される業界は、次の通りです。

  • 林業
  • ガス業
  • 熱供給業
  • 水道業

安全衛生推進者の選出が不要な業界では、衛生推進者を選びます。安全衛生推進者は、安全や衛星の大切さを啓発したり、労働者の意見を聞き取ったりと、現場に寄り添った安全衛星管理を担当します。現場の安全に関するリーダーとして、職場作りの改善に貢献するのです。

統括安全衛生責任者・安全衛生責任者

統括安全衛生責任者と安全衛生責任者はともに、元請事業者から仕事を受けている人のいる職場で、労働災害を防止する役割を担います。

前者は事業所や企業全体の安全・衛生を担当します。選任するのは元請事業者です。

建設工事、土木工事、造船工事などの特定工事において、複数の事業者が同じエリア内で作業する場合に、労働災害や健康被害を発生させないために選任されるものです。

後者は事業所や部門の安全・衛生を管理します。業務の請負人から任命される役職です。

主な業務として、事故に対する再発防止策の提案やリスクマネジメントなどが挙げられます。

産業医

産業医は、医学の知識を活かして企業や工場にアドバイスする役割を担います。50人以上の人が働く場所は、産業医の設置が義務づけられています。さらに残業時間が長い職場も、産業医の選任が必須です。

主な業務は、健康診断の管理やメンタルヘルス対策、緊急時における医学的な対応や指示です。産業医は第三者として、職場の安全管理に貢献します。

安全委員会

安全委員会は労働安全衛生法で定められており、安全や健康を守る役割が与えられます。構成は、事業主と労働者代表です。林業や製造業の一部では、常時50人以上の人が働く現場で設置を義務づけています。

主な業務は、毎月一回以上安全委員会を開催し、計画の立案や予防対策などを話し合うことです。他の従業員にも委員会の内容を案内し、職場環境の改善につなげます。

安全管理の注意点

ここからは、安全管理の注意点を2つ紹介します。注意点を把握してから安全管理に取り組みましょう。

日常的な取組みとして組織全体で行う

日常的な取り組みを組織全体で実施するようにしましょう。法律で定められた安全管理を実施しているだけでは、ルーティン化してしまい、安全管理が形骸化してしまいます。

たとえば、安全管理を会議だけで決定しても、現場の声は届きません。総括安全衛生管理者が現場に出向き、従業員の意見に耳を傾けることで、組織全体の安全に対する意識が変わります。

双方向のコミュニケーションを重視し、安全管理を改善しましょう。

従業員一人ひとりに安全管理の意識づけを行う

従業員一人ひとりが、安全管理の大切さを意識することが大切です。事故の多くは人為的なミスを原因としているのです。

具体的には、安全教育を実施したり、作業開始前のチェックリスト確認をルーティン化したりすることが推奨されます。

社内で安全文化が構築されると、職場での適切な安全管理につながります。

安全管理を万全にして事業・社員を守ろう

安全管理は、企業活動の継続に必要不可欠な取り組みです。職場環境を整えるなど、日常から組織全体で様々な対策をしながら安全管理体制を構築しましょう。

また、責任者を決めて安全管理に努めましょう。万が一の事態に備えて、BCP対策をすることも安全管理のひとつです。

BCPとは、Business Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」などと訳されます。自然災害やテロ、感染症などに対して、被害を最小に抑えるとともに、たとえ被害・影響が出てしまったとしても、適切な対応で速やかに事業活動を復旧・継続させることを目的とした計画です。

職場環境を整えるなど、日常から組織全体で様々な対策をしながら安全管理体制を構築しましょう。安全管理を万全にして、誰もが前向きに働ける職場環境の実現を目指してください。

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