あなたは「バイトテロ」という言葉を、耳にしたことがあるでしょうか?
飲食店の学生アルバイトが、キッチンの上に寝そべっている写真をTwitterに投稿する。
不動産店のスタッフが、芸能人が借りている物件の情報をfacebookに流してしまう。
このような、従業員・スタッフの「モラルの無い行動」が、SNSを通じて一気に広がり、企業の評判を著しく損ねてしまうという現象です。まさに、企業内での「アルバイトによるテロ行為 (バイトテロ)」と言えます。
「評判を損ねる」というレベルにとどまらない場合もあります。企業サービスへの信頼が落ちて売り上げが激減したり、企業内の機密情報が漏洩したり、といった重大な問題につながる可能性も……。
目次
企業にとって大きなリスクに……!バイトテロの有名事例
この「バイトテロ」が話題になり始めたのは、2013年。アルバイトスタッフによる度を超えた悪ふざけが、SNS上に投稿される問題が相次ぎました。
事例①:体を半分冷蔵庫に入れてしまう
ステーキ店の学生アルバイトが、体の半分を冷蔵庫に入れている写真をTwitterに投稿し炎上した事例。店側は食材の廃棄や消毒を行って信頼回復に努めたが、風評被害はおさまらず。最終的にその店舗は閉店に追い込まれた。(2013年8月)
事例②:食器洗浄機に横たわったり、流し台に足をかけたり……
東京都多摩市の老舗そば店の学生アルバイトが食器洗浄機に横たわったり、流し台に足をかけたりするなどしている写真をTwitterに投稿。「不衛生だ」などのクレームが相次ぎ、店は閉店。破産するに至った。(2013年8月)
以上2例は、最終的に店舗が閉店に至るという最悪のケースとなりました。
データは一度でも投稿されてしまえば、完全に削除することは不可能。企業イメージを下げてしまう写真や動画が、インターネット上に残り続けることになります。つまり、最も大事なのは「投稿をさせない」こと。
どうしたら「投稿」を未然に食い止めることができるのでしょうか?
具体的な「SNSガイドライン」を作成する
企業としてSNSガイドラインを作り、スタッフに対して明確な「ルール」を示すことは大切です。SNSに投稿する内容に関して、どこまでがOKで、どこからがNGになるのかをはっきりさせておきましょう。
ガイドライン作成時に注意したいのが、「具体性」です。ガイドラインは抽象的で難しい表現になりがち。学生アルバイトでも理解しやすいような、できるだけ簡単で、具体的な内容にするのが望ましいと言えます。
参考になる例として挙げられるのが、「日本マクドナルド」のSNS利用に関するルールです。
1.社会、倫理に反する投稿や発言は行ってはいけません。
NG:車いすって邪魔じゃない?
NG:今日来たお客さん、超キモかった!
(引用:日本マクドナルド ソーシャルメディアの利用に関するルール)
このように具体例を示しつつ、わかりやすい言葉で説明がなされています。
リスクの大きさをイメージさせる
バイトテロの当事者に共通する特徴として「SNS投稿が不特定多数に見られている」という意識に欠けている、という点が挙げられます。当事者の多くが「仲間内でのウケ狙い」が目的で、軽い気持ちで投稿したと釈明しているのです。
軽率な投稿をさせないためには、それが「スタッフ個人」にもたらすリスクの大きさをイメージさせることが必要になります。
・実名、住所、学校名、プライベート写真などの個人情報がネット上に晒される
・企業側から多額の損害賠償を請求される
・炎上時の画像や批判の書き込みはネット上に残り続けるため、就職・転職の際に不利になる場合がある
などといったリスクがあることを、採用・研修の段階で認識させることが抑止につながります。過去の事例で、当事者がどれほど悲惨な目にあったのかを伝えることも、よりリアルなイメージを持たせるには効果的でしょう。
損害賠償に関する誓約書を記入させる
採用に際して、バイトテロを起こした場合の損害賠償を約束させる誓約書を記入してもらいます。問題が発生した時に、当事者はどれほどの賠償をする必要があるのか、採用責任者がきちんと説明しましょう。
前述したバイトテロ事例②では、不適切な写真を投稿した学生に対し、総額200万円の損害賠償命令が出されています。こうして事例を持ち出して、具体的な金額を示すことも大切です。
「〜した場合には、損害賠償を請求する可能性があります」よりも、「〜した場合には、最大200万円の損害賠償を請求します」という表現の方が、強い抑止効果が期待できます。
この時、誓約書にただサインをさせるだけではなく、本人の言葉で誓約書の文言を記入してもらうことも、意識付けに効果的です。
事前の対策で、「バイトテロ」のリスクを限りなくゼロに!
SNSが普及し、誰でも情報の発信者側になれる現代だからこそ発生してしまう「バイトテロ」。対策の方法はなく、アルバイトの人たちの良心に任せるしかない……と思ってしまいがちですが、事前に出来ることはあります。
まずはアルバイトの人たちが、誤った投稿をしないような仕組みをつくり、それを運用していくようにしましょう。その第一歩を踏み出すことが「バイトテロ」をゼロにすることにつながっていきます。
きちんと事前の対策を行い、バイトテロが起こらないような組織を目指しましょう。