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ローリングストック法とは?|具体的な手順やポイントを解説

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ローリングストック法という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ローリングストック法とは、自然災害などに備えて食糧や備蓄品を管理する方法のことです。

この記事では、ローリングストック法の手順と注意点、メリットやデメリットについて解説します。

ローリングストック法とは簡単に説明すると?

ローリングストック法とは災害用備蓄に関する方法論です。具体的には、非常用のストックを消費期限が近いものから消費し、消費した品目はその都度新しく補充する、といった手順を踏みます。

全体の量が多い場合でも管理しやすい点が特徴で、食糧のみならず、医薬品や日用品などの定期的なチェックを要する備品にも応用できます。

したがって、多くの従業員を抱える企業でもこの方法が採用されています。

企業におけるローリングストック法の手順

ここでは、企業におけるローリングストック法の手順を解説します。

3つのポイントを理解して、負担の少ない管理を目指しましょう。

必要な備蓄量を把握する

まず、自社に必要な備蓄量を把握しましょう。従業員の人数が多ければ当然、備蓄量も増えます。

ポイントは、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、全従業員に対応する量を準備することです。

一般的に、食糧や水は3日分の備えが求められます。また、1日に必要な水は1人あたり3Lです。

よって、非正規雇用を含め従業員が100人いる企業であれば、3×3×100=900Lの水を備えましょう。

品目と消費期限をリスト化して保管する

必要な量の食糧を準備したら、品目ごとに賞味期限をリスト化します。

リスト化により、古いものと新しいものを明確にできます。古いものから順に消費することで、消費期限切れによる廃棄のリスクを抑えられるでしょう。

また、保存する場所や箱に消費期限を明記し、古いものを手前に配置するようにしましょう。保管場所が複数あるときは、保管場所もリストに記すことをおすすめします。

消費と補充のサイクルを回す

ローリングストック法では、消費と補充のサイクルを適切に回すことが重要です。

リストから消費期限をチェックし、古いものから消費しましょう。

そして、食糧や備品は使った分だけを買い足します。新しく補充した物品の情報も同じように、リストに追加するのです。

リストを定期的に確認し、非常食や備品を適切に管理しましょう。

企業における食糧備蓄のポイント

ここでは、企業が食糧を備蓄するときのポイントを解説します。目安となる量、保管場所、アレルギーなどへの注意点をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

食糧・飲料の備蓄は3日分を前提とする

食糧や飲料は、3日分の備蓄が目安です。

内閣府は、帰宅困難者の待機期間を最低3日と提示しています。

ただし、これはあくまでも最低限の量です。余裕を持って1週間程度の量を準備すると望ましいです。

拠点ごとに備蓄をする

拠点ごとに備蓄を管理することもポイントです。

支社、支店、工場など、多くの拠点を持つ企業では、1か所での備蓄では対応できません。災害時には、人の移動や物資の輸送が困難です。それぞれのオフィスや事業所ごとに、従業員に見合った量の備蓄が必要です。

万が一の不足に備え、拠点ごとに作成したリストを全体で共有しておきましょう。

食物アレルギーを考慮する

食物アレルギーに配慮した品目の備蓄も重要です。というのも災害時は、特別な配慮を必要とする食品の入手が難しいのです。

阪神・淡路大震災や東日本大震災をはじめ、新潟県中越沖地震の際にも、体質の問題から食糧を確保できない状況に陥った方々がいました。とくに、アレルギーがある人にとっては命の危険にさらされる重要な問題です。

アレルギー対応の食品は、少なくとも2週間分を準備しておきましょう。

ローリングストック法のメリット

ここでは、ローリングストック法の3つのメリットを解説します。

ある日突然やってくる災害に対応できる

ローリングストック法のメリットとして、突発的に発生する災害への対応が挙げられます。

災害が発生すると流通や製造がストップし、物資が品薄になります。したがって食糧や飲料、日用品の確保に苦労するでしょう。

企業は帰宅困難者の受け入れを想定しなければなりません。多くの従業員を抱える企業ほど、計画的に備蓄をしておく必要があります。

災害時の帰宅困難者の対応について解説|事前準備についても紹介

備蓄非常食の賞味期限切れを防ぐ

ストックの消費期限切れを防げる点もメリットです。ローリングストック法を活用すれば、品目に合うサイクルで、古いものから順に消費できます。

非常用の物資を普段の消費に充てるため、いつの間にか消費期限が切れてしまうような状況を回避できます。

これにより、食品ロスも削減できるでしょう。したがってSDGsへの取り組みを掲げている企業では、目標達成の手段としても有効です。

食べ慣れた食料を用意できる

日頃から食べ慣れたものをストックできる点もメリットです。ストックを入れ替えるために日常的に消費すれば、備蓄の内容把握にも役立ちます。アレルギーのある人にとってはとくに重要なポイントです。

味や食感などを前もって知っておくと、災害時にも安心して食事ができます。

食べるものを事前に把握しておくことで、精神的な負担を軽減できるでしょう。

ローリングストック法のデメリット

ここでは、ローリングストック法のデメリットについて解説します。

保管スペースが必要

ローリングストック法では定期的に備蓄品を入れ替えるため、すぐに取り出せる保管スペースの確保が必要です。スムーズな入れ替えができないと、ローリングストック法はうまく機能しません。

最低でも3日分の備蓄が求められるため、従業員の多い企業はスペースの確保が課題でしょう。適切な防災のために、保管場所については社内でよく検討してください。

日常的な消費期限のチェックが必要

業務の一環として、消費期限のこまめなチェックが求められる点もデメリットです。

非常食には消費期限があり、期限が切れると廃棄しなければなりません。備蓄の量が多いほどチェックの負担も大きくなるでしょう。また、品目によって期限が異なる点も負担かと思います。

しかし一度チェックを怠ると、把握がより難しくなります。チェック忘れを防ぐためにも、確認する頻度やタイミングをあらかじめ決めておくことが大切です。

コスト高になる可能性も

コストが高い点も、デメリットです。

できるだけ保存期間の長いものを選んだほうが、運用が楽になります。しかし保存期間の長い品目ほど、単価が高い傾向にあります。管理面と費用面のバランスを考えることが必要です。

食糧備蓄を無駄にしない取り組み

定期的な消費を前提とするローリングストック法では、食糧や備蓄品を無駄にしない取り組みが重要です。

ここからは、備蓄を無駄にしない取り組みをご紹介します。

定期的に従業員に試食をしてもらう

従業員を対象に、定期的に試食会を実施する方法があります。試食会を開催して多くの人に消費してもらうと、食品ロスを抑えられるでしょう。

また、被災時には多くの人が不安を覚えます。食べ慣れている食品であれば、精神面での負担が軽減するでしょう。 

期限の迫っている食品を利用し、ストックを食べてもらい、従業員が非常食に慣れ親しむ機会を設けます。そして人気の高い品目を優先的にストックすれば、非常時にも食事を楽しめるかもしれません。

備蓄食糧を社会貢献に活用する

食糧や備蓄品を、地域貢献や国際貢献として活用する方法があります。たとえば、被災地の復興支援としての活用や、子ども食堂での活用などが挙げられます。また、海外での防災教育の一環としても利用できるでしょう。

この方法であれば、期限の迫る食品を廃棄する手間やコストを削減しつつ、社会貢献もできます。社会貢献活動を続けることによって、企業の信頼性が向上するでしょう。

フードバンクを利用する

フードバンクに寄付をする方法もあります。フードバンクに余っている食糧を提供すると、そこから各福祉施設や団体に寄付される仕組みです。

食品ロス削減だけでなく、本当に食糧を必要とする人たちへの支援ができます。

参照:「フードバンク」|農林水産省

ローリングストック法を知り防災対策に活かそう!

ローリングストック法は、消費期限の近いものから順に備蓄を消費し、消費した分だけを補充する方法です。食糧だけでなく、医薬品や日用品にも応用できます。

手順を知り、ぜひ企業の防災対策に活用してください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。