災害は忘れた頃に突然襲ってくるものであるため、いざというときに備えて普段から防災対策をしておく必要があります。
とくに企業は従業員一人ひとりの安否を迅速に確認し、事業活動の復旧に向けてスムーズに動き出さなければなりません。組織が災害時における安否確認の手段や手順を事前に決めておくことは、事業活動の一環だといえるでしょう。
この記事では、企業が災害時に安否確認をする方法を5つ紹介します。安否確認メールの具体例も紹介するので、参考にしてください。
目次
災害時の安否確認の方法は統一することが重要
災害時の安否確認の方法は統一しておくことが重要です。従業員同士がメールやLINE、SMSなどで各自安否確認を行っても、その情報が人事部や経営企画部などの然るべき部署に届かなければ組織として活用ができません。また、会社から必要な情報を全従業員に届けたくても、伝達手段が統一されたうえで共通認識が形成されていなければ、迅速な情報伝達は行えません。
何らかの理由によって、事前に指示した方法で連絡が取れないこともあります。そのような場合に備えて、バックアップとしてその他の方法も用意しましょう。たとえば、安否確認システムで連絡が取れない場合には、SNSで連絡をするといったように事前にマニュアルを作成してください。
企業が災害時に安否確認をする方法
災害時には迅速な安否確認が求められます。企業が災害時に安否確認をする主な方法は、以下のとおりです。
安否確認の方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
メールを送信 | ・電話回線が使用できない状態でもメールを送受信できる ・従業員が落ち着いたときに回答できる | ・通信サーバーがダウンすると送受信できない ・メール作成や回答の集計を手動で行う必要がある |
電話で連絡 | ・新たに操作方法を覚える必要がない ・従業員の声を確認できる | ・電話回線が混雑している場合にはつながりにくい |
SNSやメッセージアプリで連絡 | ・新たに操作方法を覚える必要がない | ・一人ひとりに手動で連絡する必要がある ・回答を集計することが困難 |
災害用伝言ダイヤルを利用 | ・電話回線が混雑している状態でもつながりやすい | ・録音できるメッセージの長さが30秒以内と制限されている ・伝言の集計が困難 |
災害用伝言板を利用 | ・電話回線が使用できない状態でも利用できる | ・1人ずつ確認する必要がある ・伝言の集計が困難 |
安否確認システムを利用 | ・災害発生時に自動でメールを送信できる ・回答を自動で集計できる | ・月額費用が発生する ・導入後に従業員を訓練する必要がある |
安否確認として採用する方法を選ぶには、事前準備や集計の手間などを考慮する必要があります。次に方法ごとのメリット・デメリットを説明します。
メールを送信
日常で使っているメールは安否確認にも活用できます。CCやBCCを使うことにより、多くの従業員に一斉に連絡することが可能です。
メールを送信する際、一目で重要なメールであることが分かるように、件名や本文の冒頭に安否確認であることを記載しましょう。安否確認以外の内容も盛り込むと、受け手はすぐに何を伝えたいものか判断できません。
以下は、総務部の防災担当者から従業員に送信するメールの例文です。
件名:安否確認 本文:○○株式会社 総務課の△△です。 本日、震度○以上の地震が発生しました。 まずはご自身とご家族の安全確保を第一に考え、行動してください。 落ち着き次第、本メールに返信する形で以下の回答をお願いします。 ①本人の状況 ②家族の状況 ③自宅の状況 ④現在の場所 ⑤出社の可否 ⑥その他連絡事項 |
メリット:電話回線が使用できない状態でもやり取りできる
メールは、インターネット回線を通じて送受信します。そのため、災害発生時に電話回線が使用できない場合でも、連絡を取れる可能性が高いです。また、従業員が落ち着いたあとに返信できる点もメリットのひとつです。緊急避難を妨げることなく、安全を確保した状態でやり取りできます。
ただし、災害発生時にはインターネット回線が混雑し、メールを送受信できないこともあります。そのような場合には「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」がおすすめです。00000JAPANとは、災害発生時にNTTドコモやau、ソフトバンクが無料で開放する公衆無線LANサービスのことで、Wi-Fi画面のネットワーク一覧から00000JAPANを選ぶだけで利用できます。利用時間や回数制限はありません。
デメリット:通信サーバーがダウンすると連絡を取れない
自然災害によって通信サーバーがダウンすると、メールの送受信が一時的にできなくなる場合があります。また、災害発生時に自治体や電力会社への問い合わせが急増し、通信インフラに予期せぬ負荷がかかると、通信サーバーがダウンして連絡を取れないこともあります。
さらに、安否確認のためのメールの管理作業に手間がかかる点もデメリットです。メールの本文作成や送信先の管理、受信した回答の集計など、多くの作業を手作業によって行うこととなり、多くの労力と時間を要します。
会社での役立て方
災害が発生したら、防災担当者が従業員に安否確認のメールを送ります。従業員が受信許可リストを設定している場合、安否確認メールが届かない可能性があるため、事前に設定を変更してもらうか、受信許可リストに登録してもらう必要があります。
また、メール配信システムを活用するのもひとつの手です。メール配信システムは一斉送信に特化しているため、従業員の多い企業でも従業員に一斉にメールを送信できます。
電話で連絡
安否確認の方法の中には、緊急連絡網をもとに従業員の電話番号に連絡するという方法があります。緊急連絡網とは、緊急事態が発生した際に「誰が」「誰に」「どの順番で」「どのように」連絡をするのかを定めたものです。
メリット:従業員の声を確認できる
特別なシステムは必要なく、従業員が電話のつながる端末を持っていれば、安否確認を行えます。新たにシステムの操作方法を覚える必要はなく、従業員の負担が少ない点がメリットです。また、電話で従業員の声を確認できるため、文字のみの場合よりも従業員の状態をより詳細に把握できるでしょう。
デメリット:電話回線が混雑しているとつながりにくい
災害時には電話回線が混雑しやすく、従業員に電話がつながらないことがあります。携帯電話が手元にあっても連絡を取れない点がデメリットです。
非常時にすぐに確認できるように、ローカルフォルダとクラウド上の両方で保管しておくことがおすすめです。そうすれば、インターネットがつながらないときにはローカルフォルダで確認できて、またいつも使用している端末以外で電話をかけるときにはクラウド上で確認できます。
会社での役立て方
災害が発生したら、緊急連絡網をもとに順番に電話をかけていきます。一人が大勢に電話をかけるのではなく、電話を受信した従業員が、緊急連絡網をもとに次の担当者へ電話をかけます。
安否確認の電話は、役職の高い順にかけていくことが一般的です。たとえば、部長が課長A・課長Bに電話をかけると、課長Aは係長A・係長Bに、課長Bは係長C・係長Dに電話をかけます。
安否確認を行う対象は、正社員だけにとどまりません。業務委託者、パート、アルバイトなども含める必要があるため、事前に誰が連絡をするのか明確にしておきましょう。
なお、従業員の電話番号の登録は、強制できません。事前に安否確認に使用することを説明し、同意を得たうえで登録してもらう必要があります。
SNSやメッセージアプリで連絡
SNSやメッセージアプリを利用して従業員と連絡を取り合っている企業にとっては、これらのツールは災害時の安否確認として有効です。
メリット:新たに操作方法を覚える必要がない
普段から慣れ親しんでいるSNSやメッセージアプリを使用することにより、安否確認の際に操作方法に戸惑うことなく、迅速に連絡を取れます。
また、LINEなどの一部のメッセージアプリでは、送ったメッセージが開封されたかどうかを確認できる機能があります。これにより、返信がない場合でも相手がメッセージを見たかどうかを把握することが可能です。これは、従業員の安否を確認するうえで大きなメリットといえます。
デメリット:従業員のアカウント登録が進みにくい
デメリットは、従業員が会社にアカウントを開示することに抵抗感を持ち、登録が進みにくいことです。電話で連絡する場合と同様、個人情報であるため、登録の強制はできません。事前に目的を説明し、同意を得たうえで登録してもらう必要があります。しかし、プライベートと仕事を分けたいと考えている従業員にとって、プライベートのアカウントを開示することは受け入れがたいものでしょう。
また、SNSやメッセージアプリの回答結果を集計することが困難である点もデメリットです。とくに従業員数が多い場合には集計しきれず、被害状況や緊急対応できる従業員が誰なのかを迅速に把握できません。
会社での役立て方
災害が発生したら、LINEやX(旧Twitter)、Facebookなどで安否確認を行います。一人の担当者がチャットやDMで個別に連絡を取ることは困難です。そのため、部署などのグループ単位で確認担当者を決めておくとよいでしょう。
災害伝言ダイヤルを利用
災害伝言ダイヤルとは、災害発生によって被災地に電話がつながりにくい状態となった場合に、NTT東日本とNTT西日本が提供する音声メッセージサービスです。「171」へダイヤルし、ガイダンスに従って操作することにより、音声を録音・再生できます。
具体的な操作手順は、以下のとおりです。
- 「171」に電話をかける
- ガイダンスに従い、録音の場合は「1」を、再生の場合は「2」をダイヤルする
- 伝言を録音・再生する
メリット
災害伝言ダイヤルのシステムは全国に分散して運用されており、災害が発生した際には被災地外で電話を受け付けます。それにより、被災地の電話回線が混雑している状況でも、つながりやすくなっています。
デメリット
災害伝言ダイヤルは、録音可能なメッセージの長さが1件あたり30秒以内に制限されています。この時間内で安否確認の情報を伝えるためには、事前に伝えたい内容を簡潔にまとめておかなければなりません。この準備を怠ると、メッセージが途中で切れるリスクがあります。
また、伝言の確認・集計は手動で行う必要があり、従業員の多い企業にとっては大きな負担となります。そのため、録音時間が制限されている点と、集計に手間がかかる点はデメリットといえます。
会社での役立て方
従業員一人ずつ伝言を確認する必要があり、一人の担当者が従業員全員の伝言を確認することは困難です。SNSやメッセージアプリの場合と同様に、部署などのグループ単位で確認担当者を決めておくとよいでしょう。確認担当者が伝言を確認し、防災担当者に現状を報告するという仕組みであれば、スムーズに伝言を確認できます。
また、従業員が災害用伝言ダイヤルの使い方を知っているとは限りません。事前に災害用伝言ダイヤルの使い方について説明しておきましょう。
災害用伝言板を利用
災害用伝言板は、携帯会社が提供している、インターネット上の伝言サービスです。インターネットで文字による伝言を登録すると、他社携帯電話やパソコンなどから内容を確認できます。
大手キャリアの災害用伝言板の概要は、以下のとおりです。
メッセージ登録可能件数 | メッセージ登録内容 | |
---|---|---|
NTTドコモ | 1携帯電話番号あたり10件 | 状態とコメントを選択する。コメントは「無事です。」「被害があります。」「自宅に居ます。」「避難所に居ます。」から選択できる |
au | 1携帯電話番号あたり10件 | 「無事です。」「被害があります。」「自宅に居ます。」「避難所に居ます。」「コメント見て」から選択できる。かつ、コメントを100字まで入力できる |
ソフトバンク | 1携帯電話番号あたり80件 | 「無事です」「自宅にいます」「被害があります」「避難所にいます」「移動中です」「会社にいます」「学校にいます」から選択する。かつ、全角100文字までコメントを入力できる |
メリット
災害用伝言板は通話回線とは異なるデータ通信を行っており、通話回線に依存していません。これにより、災害時の電話が混み合っているときでも利用できる点がメリットです。
デメリット
伝言の確認と集計を手動で行わなければならない点がデメリットです。とくに従業員の多い企業では、多くの時間と労力を要します。従業員のメッセージを1件ずつ確認し、安否情報を集計する作業は、迅速な対応を必要とする災害時において大きな負担となります。
会社での役立て方
SNSやメッセージアプリの場合と同様に、部署などのグループ単位で確認担当者を決めておきましょう。それにより、確認担当者1人当たりの負担を軽減できて、スムーズに伝言を確認できます。
また、キャリアによって、伝言を登録・確認するサイトは異なります。従業員が伝言を登録していても、登録したサイト以外で伝言を確認しようとした場合、当然ながら伝言は表示されません。安否確認が非効率なものとならないように、事前に従業員の使用しているスマホのキャリアを確認しておく必要があります。
安否確認システムを利用
安否確認システムは、災害時に企業が従業員の安否を迅速に確認できるように設計されたサービスです。災害時の使用を想定しており、通信規制などの緊急事態でも安定して稼働するように設計されています。
これまで安否確認の方法としてさまざまな方法を紹介してきましたが、いずれも一斉に従業員全員に連絡を取ることは困難です。また、手動で回答結果を集計しなければならず、防災担当者は安否確認ばかりに手を取られて、緊急対応に集中できません。次のアクションに移行できず、事業を復旧させるまでに時間がかかります。
しかし、安否確認システムを活用すればスムーズに現状を把握できるため、次のアクションに移行しやすいです。事業が停止する期間を短く抑えられるため、企業が存続する可能性が高くなるといえます。そのため、災害時の安否確認を検討しているのであれば、安否確認システムの導入がおすすめです。
メリット
多くの安否確認システムは気象庁の災害情報と連動しており、気象庁の発表に合わせて自動で通知を送信します。この機能により、災害発生時にはすぐに従業員に通知が送信され、未回答者には自動で再配信されます。未回答者の数を最小限に抑えられて、少ない手間で迅速に安否確認を行える点がメリットです。
また、回答結果は自動集計されるため、誰から返信が来ていないのかすぐに把握できます。迅速な対応が求められる災害時に、集計の手間を削減できる点もメリットといえます。
デメリット
安否確認システムを導入すれば十分というわけではありません。システムを効果的に活用するためには、事前の訓練が不可欠です。
従業員がシステムの使用方法を理解していなければ、安否確認の通知に対応できません。安否確認システムを導入する場合には、従業員がシステムの使用方法を理解できるような場を設け、使用できるようにしておく必要があります。
会社での役立て方
災害が発生すると、自動で通知が送信されます。防災担当者は自動集計された回答結果を確認し、従業員に適切に指示を出す必要があります。たとえば、出社が可能と回答した従業員に対して、出社する場所や時刻などを連絡します。
なお、安否確認システムを導入する場合、従業員の連絡先を収集する必要があります。安否確認の重要性を説明し、期日を設けて連絡先を登録してもらいましょう。
企業が災害時の安否確認で把握すべきこと
企業が安否確認で把握すべき点は、以下の3つです。
- 従業員の状況
- 従業員の家族の状況
- 緊急対応できる従業員数
従業員の家族が被害を負っている場合には、従業員が業務を遂行することは困難です。そのため、企業は従業員だけではなく、従業員の家族の安否を確認する必要があります。
また、事業継続や復旧作業のために人員を確保する必要があります。そのため、安否確認時にすぐに稼働できるかを確認し、緊急対応できる従業員はどの程度いるのか把握しましょう。
災害時の安否確認には安否確認サービス2がおすすめ
災害は突然襲ってくるものであるため、安否確認の方法を用意しておくことが重要です。この記事では、安否確認の方法として以下の方法を紹介しました。
- メールを送信
- 電話で連絡
- SNSやメッセージアプリで連絡
- 災害伝言ダイヤルを利用
- 災害用伝言板を利用
- 安否確認システムを利用
この中でも、とくに安否確認システムの利用がおすすめです。安否確認システムの多くは気象庁の災害情報と連動しており、自動で通知が送信されます。また、回答結果も自動で集計できるため、通信の送信や集計の手間を削減できる点で災害時の利用に向いています。
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