近年、企業における安否確認の重要性が再認識されているため、自社でも体制を整えようと考えている人もいるでしょう。安否確認が必要なときは混乱している状況下にあるため、あらかじめ確認手順を把握しておく必要があります。
そこでこの記事では、企業における安否確認の具体的な手順を紹介します。安否確認の際に把握すべきことや実施する際のポイントも解説しているので、あわせて参考にしてください。
目次
企業における安否確認の重要性
近年、新型コロナウイルスの蔓延や大規模地震の増加などにより、企業における安否確認の重要性が注目されています。そもそも企業には従業員の健康と安全に配慮する義務が課せられており、労働契約法の第5条では以下のように記されています。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
(引用:労働契約法(平成19年12月05日法律第128号))
この安全配慮義務は、災害をはじめとする緊急事態にも適応されるため、どのような状況においても直接雇用する従業員のほか、派遣労働者も安全に過ごせる環境を維持しなければいけません。そのため、企業はあらかじめ安否確認方法を決めておき、従業員の健康と安全を守れる仕組みを構築する必要があります。
安否確認を行う際に把握すべきこと
企業が安否確認を行う際は、以下の3つを把握することが大切です。
- 従業員の状況
- 従業員家族の状況
- 業務に対応できる従業員数
それぞれについて解説します。
従業員の状況
まず、従業員の状況を把握しましょう。「従業員は無事なのか」「怪我をしている場合はどの程度負傷しているのか」などを把握します。従業員からの回答が得られない場合は、他の手段で連絡をしたり、様子を見に行ったりするのも一つの方法です。
従業員家族の状況
従業員だけではなく、その家族の安否確認を実施している企業も多いです。たとえ従業員が無事であっても、家族が被災していれば通常業務の対応は難しいからです。そのため、事業の早期復旧や現状把握のためにも、従業員家族の状況も確認しておくといいでしょう。
業務に対応できる従業員数
安否確認を行う際は、安否と合わせて緊急対応できるかどうかも聞いておきましょう。事業を早期復旧させるためには、従業員の協力が必要不可欠です。イレギュラーな業務が発生する可能性も高いため、すぐに稼働できる従業員にはそれぞれに応じた業務依頼を行います。
なお、従業員やその家族が無事であっても、交通手段がなかったり通信環境が悪かったりすると出社できません。そのため、状況に合わせた業務依頼ができるように、今の状況を詳しく聞いておくのがおすすめです。
安否確認の手段
企業における安否確認の主な手段は、以下のとおりです。
- 電話
- メール
- SNS
- 安否確認システム
事前に安否確認方法を決めておくのは極めて重要です。とくに従業員数が多い企業は安否確認方法を定めていないと、安否確認作業に時間がかかります。従業員の安否確認は重要な業務ではあるものの、ここに時間がかかってしまうと事業の早期復旧が難しくなり、損害が大きくなるでしょう。
ここから紹介する主な手段を参考にしていただき、自社に合った方法を決めてください。
電話
1つ目は電話の活用です。あらかじめ従業員の電話番号を把握しておき、災害が起きたときに電話で連絡する方法です。電話を活用すれば新たなシステムを導入する必要もなく、声で安否確認を行えるため、より状況を把握しやすいでしょう。
しかし、災害時は電話回線が混雑しやすく、従業員と連絡がつきにくい場合もあるため、他の手段も確保しておくと安心です。なお、電話を活用して安否確認を行う場合は、緊急連絡網を作成しておくのも一つの方法です。災害が発生したら緊急連絡網にしたがって電話をしていくと、1人に大きな負担がかかることはありません。ただし、従業員の個人情報を多くの人と共有することになるため、管理には注意が必要です。
メール
2つ目はメールの活用です。メールはインターネット回線を通じてのやり取りであるため、電話が使用できないときでも活用しやすいです。従業員のタイミングで返信できるため、緊急事態時でもやり取りしやすいでしょう。
しかし、インターネット回線が混雑すると、メールの送受信に時間がかかる点がデメリットです。そのような場合は、災害時に無料開放されている公衆無線LANサービスを活用するのも一つです。さらに、メールでの安否確認は1つひとつ手作業で行う必要があるため、担当者の負担が大きくなりやすいのも考慮しなければいけません。とくに従業員数が多い企業では、確認作業に多くの時間と労力を費やすでしょう。
SNS
3つ目はLINEをはじめとするSNSの活用です。普段からSNSを活用して従業員と連絡を取っている企業であれば、新たなシステムを導入することなく迅速な連携が可能となります。LINEのように既読が分かる機能を搭載していれば、従業員の返信がなくても確認できたかどうかは把握しやすいです。グループ機能を活用すれば、1人ひとりにメッセージを送る手間も省けるでしょう。
ただし、従業員とSNSでつながっていない場合は、安否確認の重要性を理解してもらった上でアカウントを教えてもらう必要があります。従業員のなかには、仕事とプライベートを分けたい方もおり、アカウントの開示に抵抗を感じる場合もあるでしょう。
さらに、SNSを活用して回答結果を集めた場合、集計や分析に手間がかかるのもデメリットです。1つひとつの回答結果を確認しながら集計を行う必要があるため、安否確認作業の完了までに多くの時間を要するでしょう。
安否確認システム
4つ目は、安否確認システムの活用です。安否確認システムとは、災害時に従業員の安否確認を迅速に行うツールです。災害時を想定して設計されているため、回線が混雑した状態であってもスムーズに連絡を取り合えます。安否確認システムによって詳細は異なるものの、安否確認メールを自動で一斉送信できたり、回答結果を自動で集計・分析してくれたりするものが多いため、安否確認にかかる手間を大幅に削減できます。その結果、迅速な事業復旧も可能となるでしょう。
ただし、新たなシステム導入に抵抗を感じる人もいるかもしれません。新しいシステムを導入すると使い方を覚える必要があるため、定期的な訓練が必要不可欠ともいえるでしょう。
安否確認の具体的な手順
先ほど紹介した把握すべき3つの事柄と手段を念頭に置きながら、以下の流れに沿って安否確認を実施しましょう。
- 身の安全を確保する
- 従業員の安否確認を行う
- 回答結果を集計する
- 業務に対応できる従業員数を把握する
- 事業復旧に向けての計画を立てる
具体的な手順について解説します。
1.身の安全を確保する
まずは、自分の身の安全を確保しましょう。企業には従業員を守る義務があると説明しましたが、身の安全を確保しなければ従業員も守れません。その上で身近にいる従業員の安全を確保しつつ、助けを必要としている人はいないかを確認します。
なお、身の安全を確保する上で避難経路の確保や避難所の把握は欠かせません。日頃からこれらを把握しておくことで、緊急事態が起きたときの迅速な初動が可能となるでしょう。
2.従業員の安否確認を行う
身の安全を確保できたら、従業員やその家族の安否確認を行いましょう。少しでも早く安否確認を実施することで助けを必要としている人を把握できたり、事業復旧の計画を迅速に立てられたりします。
安否確認を行う際は、簡潔で誰が見ても分かりやすい内容・方法で伝えましょう。緊急事態が発生したときは、普段と違って冷静な判断を下しにくいです。そのため、先ほど紹介した把握すべき3つのことを意識しながら、必要最低限の連絡をすることが大切です。
3.回答結果を集計する
次に、従業員から得られた安否確認の回答結果を集計しましょう。「無事を確認できた従業員は誰か」「家族に被災者が出た従業員は誰か」などを分かりやすくまとめておくと、今後の事業復旧にも役立てられます。また、回答を得られていない従業員がいれば、再度安否確認の連絡をできるでしょう。
回答結果を集計するフォーマットは、緊急事態が発生してから作成するのでは遅いです。あらかじめ集計方法や内容を決めておき、フォーマットに沿って入力できるように整えておくと迅速に安否確認を行えます。従業員の連絡先を一緒にまとめておけば、連絡を取る際もスムーズです。
なお、安否確認システムを導入していれば回答結果を自動で集計・分析してくれるため、安否確認にかかる手間を大幅に削減できます。回答結果を得られていない従業員がいた場合は、自動でメッセージを再送できるため、素早い状況把握が可能となります。
4.業務に対応できる従業員数を把握する
集計した結果をもとに、緊急対応できる従業員数を把握しましょう。「どれほど従業員数を確保できるか」「出社できる従業員はいるか」などを整理すると、次のステップに進みやすくなります。
なお、事業の早期復旧を目指すあまりに、従業員に無理をさせるのは厳禁です。とくに地震後は余震の危険性も高いため、何よりも身の安全を最優先にするべきです。その上で緊急対応できる従業員数を把握しましょう。
安否確認システムであれば、出社の可否や交通手段なども集計結果として確認できます。回答結果の集計をもとに条件を絞り込んだメッセージを送信できるため、必要に応じた対策が可能となります。
5.事業復旧に向けての計画を立てる
従業員の安否確認と状況把握がある程度できたら、事業復旧に向けての計画を立てましょう。「今何をすべきか」「どういった対策が必要になるか」などを話し合い、必要な対策を実行していきます。
災害をはじめとする緊急事態時は、普段とは異なる状況下であるため、冷静な判断ができない場合もあります。緊急事態に備えるためにも、BCPを策定しておくのがおすすめです。BCP(事業継続計画)とは、事業資産の損害を最小限に抑えながら事業の早期復旧を可能にする計画のことです。あらかじめBCPを策定していれば、緊急事態が発生しても事業継続に必要な対策を取りやすくなります。
BCPを策定していない企業には、トヨクモが提供している『BCP策定支援サービス(ライト版)』の活用がおすすめです。BCPコンサルティングは数十〜数百万円ほどするのが一般的ですが、BCP策定支援サービス(ライト版)であれば1ヵ月15万円(税抜)で提供できるのが魅力です。費用を抑えつつBCPを策定したい方は、ぜひ利用してください。
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企業が安否確認を行う際のポイント
企業が安否確認を行う際のポイントは、主に以下のとおりです。
- 事前に安否確認方法を決めておく
- 安否確認の担当者は複数人選定する
- 定期的な安否確認の訓練を行う
それぞれのポイントを解説します。
安否確認の担当者は複数人選定する
事業規模が大きな企業の場合は、安否確認の担当者を複数人選定しておくのもおすすめです。担当者が1人の場合、その人が被災してしまうと安否確認をスムーズに実施できないからです。そうなると、その後の事業継続にも大きな支障が出てしまい、企業の存続にも影響を及ぼしかねません。安否確認を行う際は専任チームを作っておき、臨機応変な対応ができるように準備しておくのも一つです。
事業規模の小さな企業であれば、安否確認の担当者は1人でも問題ないでしょう。緊急事態時に対応することを想定した上で、事業規模に合った人数を選定します。
定期的な安否確認の訓練を行う
安否確認の手順を把握したら、定期的に訓練しておくのがおすすめです。たとえ社内に安否確認に関する情報を周知していたとしても、実際に行動すると分からないことが出てくるかもしれません。たとえば「従業員の連絡先がエラーで安否確認ができない」「安否確認の回答方法が分からない」といったトラブルも予想できるでしょう。
実際の災害が起きたときに、上記のようなトラブルが発生しないためにも定期的に安否確認の訓練を行っておくことが大切です。繰り返し訓練を行っておくと安否確認方法が定着するだけではなく、改善点が見つかる場合もあるはずです。緊急時に冷静な行動を起こせるような体制を構築しておきましょう。
スムーズな安否確認にはトヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめ
安否確認方法にはいくつかの種類があるものの、安否確認システムの導入がおすすめです。災害時を想定して設計されているため、通信環境の影響を受けにくくスムーズな安否確認を行えます。
数ある安否確認システムのなかでも、トヨクモの『安否確認サービス2』はとくにおすすめです。気象庁の情報と連動して自動で安否確認を行えるうえ、従業員から集まった回答結果を自動で分析できます。安否確認にかかるコストを大幅に削減できるため、迅速な事業復旧が可能となります。
また、安否確認サービス2には、BCPに必須の機能が搭載されています。事業復旧に向けての議論や情報共有にも役立てられるため、迅速な初動が見込めるのが魅力です。さらに、毎年防災の日である9月1日に全国一斉訓練を実施しているため「使い方が分からない」といったトラブルも防げるでしょう。
安否確認の手順を把握して緊急事態に備えよう
安否確認を行う際は従業員とその家族の状況を把握したうえで、緊急業務に対応できる従業員数を把握しなければいけません。今回紹介した安否確認の手順を参考にしながら、必要な情報を集めてください。スムーズな安否確認ができれば、迅速な初動が実現できるでしょう。
トヨクモの『安否確認サービス2』であれば、自動で安否確認通知を送信できるため、手間を省きながら現状を把握できます。また、メッセージや掲示板機能などを活用すると、スムーズに今後の計画を立てられます。誰でも簡単に操作できるため、幅広い従業員がいても対応しやすいでしょう。安否確認を迅速に行いたい方は、ぜひトヨクモの『安否確認サービス2』を利用してください。