近年、地震などの自然災害が頻発しており、企業は従業員の安否確認を迅速に行えるような体制を備えておくことが求められています。これから安否確認の準備を始めるという方のなかには、安否確認表とはどのようなものか気になっている方もいるでしょう。
この記事では、安否確認表の項目とテンプレートを紹介します。Excel(エクセル)やGoogleスプレッドシートで管理するメリット・デメリットについても解説し、両方で使えるテンプレートも提供します。
目次
安否確認表の項目
いざというときに「何を確認すればよいのかわからない」という混乱を防ぐために、事前に確認すべき項目について明らかにしておきましょう。その際に役立つのが安否確認の回答結果を記入する「安否確認表」です。
災害発生後は、できるだけ早期の事業復旧を目指すのは当然のことです。しかし、従業員やその家族の安全、設備の稼働状況を確認し、問題がないことがわかるまでは、無理に事業活動を再開すべきではありません。
きちんと安否確認を実施せずに事業活動を再開させようとした場合、緊急対応できる人員を確保できず、かえって初動対応が遅れてしまう可能性があります。そのため、災害発生時など緊急時には、安否確認を実施することが重要です。
ここでは、安否確認表の主な記入項目について紹介していきます。
従業員の安否状況
従業員全員を対象に、以下の点を確認します。
- 怪我の有無
- 避難できているか
- 避難している場所
- 被害の程度
従業員の回答率を高めるために、安否確認の重要性について、事前の周知を徹底します。定期的に安否確認の訓練を実施して、いざというときに従業員全員が迅速に回答できるように準備しておきましょう。
従業員の家族の安否状況
事業活動を早急に復旧させるためには、従業員の協力が欠かせません。しかし、従業員の家族に被害が出ている場合、緊急対応することは困難です。緊急対応できる従業員を把握するためにも、従業員の家族の安否状況を確認することが重要です。
施設の被害状況
機械や器具、建物などの設備に被害があり、安全に使用することが困難な場合、従業員を出社させることは避けるべきです。使用する設備の安全性が確保されていない状況下で従業員を就業させることは、重大な危険にさらすことになりかねません。
災害によって損傷を受けた機械や器具は、正常に作動しない可能性があり、思わぬ事故やケガを引き起こす原因となります。労働安全衛生規則に違反することにもなります。
そのため、安否確認時に施設の被害状況もあわせて確認することが不可欠です。危険性が高いと判断された設備については、修理や交換が完了するまで使用を控えるなどの措置を講じる必要があります。
取引先の被害状況を確認することも重要
事業の継続には、取引先の被災状況も大きく関わってきます。とくに、取引先から部品や原料の供給を受けて製品を製造している企業の場合、取引先が被災して供給が滞ると、製品の製造が難しくなります。
このような事態を避けるためには、取引先の被害状況を早急に確認することが必要不可欠です。取引先の工場が被災していないか、従業員の安否は確認できているか、代替生産や代替輸送の手段はあるかなど、詳細かつ正確な情報を収集することが事業継続の鍵を握ります。
万が一、主要な取引先からの供給が停止してしまった場合、代替となる供給先を速やかに探さなければなりません。このような事態を避けるため、供給先の分散や、緊急時の連絡体制の整備が求められます。
安否確認表のテンプレート
ここでは、安否確認表のテンプレートと記入例を紹介します。安否確認を実施する際、または防災訓練を行う際の参考にしてください。
氏名 | 部署 | 役職 | 安否確認年月日 | 従業員の安否状況 | 従業員の家族の安否状況 | 施設の被害状況 | 家屋の被害状況 | 避難先 | 緊急対応の可否 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
山田太郎 | 営業部 | 主任 | ○○年○○月○○日 | 無事 | 妻と子供は無事、母親は軽傷 | 機械や器具に大きな被害なし | 屋根の瓦が落下 | 近くの小学校 | 可能 | 母親は病院で手当を受けている |
鈴木花子 | 経理部 | 係長 | ○○年○○月○○日 | 軽傷(頭部に小さな切り傷) | 両親は無事、兄弟の安否は確認中 | 未確認 | 壁や柱にひび割れ | 市民体育館 | 不可 | 兄弟の安否が確認でき次第、追って連絡する。会社への復帰時期は未定 |
田中健太 | 人事部 | 部長 | ○○年○○月○○日 | 無事 | 妻は無事、子供3人は祖父母宅に避難済み | 未確認 | 外壁の亀裂 | 自宅 | 可能 | – |
このように安否確認の結果をまとめると、誰が緊急対応できるのか判断しやすくなります。
たとえば、山田太郎は怪我をしておらず、緊急対応が可能です。施設や器具などの設備にも大きな被害はなく、就業しても設備による危険リスクに晒される心配は少ないといえます。
一方、鈴木花子は頭部に軽傷を負っています。さらに、兄弟の安否を確認できていないことから、緊急対応することは困難です。
安否確認表をExcelやGoogleスプレッドシートで管理するメリット
事前にExcelやGoogleスプレッドシートで安否確認表のフォーマットを作成しておき、安否確認の回答が届いた後にデータを入力していくという方法があります。ここでは、安否確認表をExcelやGoogleスプレッドシートで管理するメリットについて説明していきます。
- 導入費用がかからない
- 扱いに慣れている
- データを抽出できる
なお、Excelをクラウド上で利用できる「Microsoft 365 サブスクリプション」というサービスもあります。しかし、Offece2019など過去のシリーズと関連性が高く、使い勝手が良いことから、ローカルで利用する「Offece 2021」を利用している企業は多いでしょう。
そのため、本記事でいうExcelはOffece 2021として説明します。
導入費用がかからない
安否確認表をExcelやGoogleスプレッドシートで管理するメリットの一つは、導入費用がかからないことです。Excelはさまざまな業務に活用できるため、すでに多くの企業で導入されており、新たなソフトウェアを契約する必要がありません。Excelを導入していない場合でも、Googleスプレッドシートを活用することにより、導入費用をかけずに管理を始められます。
また、買い切り型のOffice2021やGoogleスプレッドシートでは、月額費用や保守費用も必要ありません。使用していないときも費用は発生しないため、もし使用しない月があったとしても費用が無駄になりません。
扱いに慣れている
ExcelやGoogleスプレッドシートは、ビジネスの現場で広く使われているソフトウェアであり、多くの人が日常的に使用しています。さらに、表の作成や編集、データの入力といった基本操作は、直感的に行えるUIデザインであるため、新たに操作方法を覚えることなく、すぐに管理を始められるのです。
また、関数を活用することで、安否確認表の管理をより効率的に行うことができます。たとえば、緊急対応の可否の部分に、「可能」「不可能」のプルダウンメニューを設定することで、入力の手間を大幅に削減することが可能です。
必要なデータを抽出できる
ExcelやGoogleスプレッドシートには、データを集計したり、特定の条件に合致するデータを抽出したりするためのさまざまな関数が用意されています。これらの関数を活用することにより、次のアクションに必要な情報を素早く収集することが可能です。
たとえば、安否確認が完了していない従業員のリストを作成したい場合、関数を使えば、入力されたデータの中から、安否確認の状況が「未確認」または、安否確認年月日が空欄となっている従業員を自動的に抽出できます。これにより、安否確認の進捗状況を迅速に把握できるのです。
また、緊急対応が可能な従業員の人数を知りたい場合も、関数を使えば簡単です。緊急対応の可否の項目で「可能」と入力されているデータを集計することにより、緊急対応できる従業員の人数をすぐに知ることができます。
安否確認表をExcelやGoogleスプレッドシートで管理するデメリット
使い慣れているExcelやGoogleスプレッドシートで安否確認表を管理するメリットはいくつもありますが、デメリットも存在します。メリット・デメリットを理解したうえで、管理方法について検討することがおすすめです。
ここでは、安否確認表を管理するデメリットをExceとGoogleスプレッドシートに分けて紹介します。2つのサービスに共通するデメリットもあわせて解説します。
なお、こちらでも引き続き、ローカルでのExcelの利用を想定して解説します。
安否確認表をExcelで管理するデメリット
安否確認表をExcelで管理する主なデメリットは、以下の2つです。
- 同時に編集できない
- データの復元が困難
同時に編集できない
Office 2021のExcelでは、同じファイルを複数のユーザーが同時に編集することができません。そのため、安否確認表の入力作業を複数の担当者で分担している場合、順番に入力を行う必要があります。これにより、作業効率が大きく低下してしまいます。
また、他の担当者が入力している間は、最新のデータが反映されないという問題もあります。最新の情報を確認するためには、その担当者が入力作業を終えるまで待たなければなりません。このため、リアルタイムで安否確認の状況を把握することが難しく、緊急時の対応が遅れてしまう可能性があります。
同時編集できるツールとして、Googleスプレッドシートがあります。使い方はExcelとほぼ同じで、機能も遜色がありません。ただし、共有権限の設定や情報漏洩対策が必要です。
データの復元が困難
何らかの原因でデータが消失してしまった場合にも、Exlceではデータの復元は困難です。Excelファイルが破損したり、誤って削除してしまったりすると、それまでに入力されたデータが失われてしまいます。
消えてしまったデータについては、再入力が必要となり、多大な手間と時間がかかってしまいます。重要なデータを失わないために、定期的にバックアップを取っておくことが重要です。
安否確認表をGoogleスプレッドシートで管理するデメリット
Googleスプレッドシートはクラウドを利用したサービスであるため、複数のユーザーが同時に編集することができます。ただし、インターネットにつながらない環境では利用できません。
災害が発生した際には、多くの人がインターネットにアクセスするため、サーバーに負荷がかかってインターネットにつながらないことがあります。また、停電によってサーバーが機能しなくなり、インターネットにつながらなくなることもあるのです。
そうなると、たとえ電話で安否確認ができたとしても、その回答結果をスプレッドシートに反映させることができません。インターネットがつながらない環境では、リアルタイムで回答結果を集計できない点がGoogleスプレッドシートで管理するデメリットといえます。
ExcelとGoogleスプレッドシートに共通するデメリット
ExcelやGoogleスプレッドシートを使って安否確認表を管理することには、いくつかのデメリットが存在します。そのなかでも特に大きな問題は、集計作業に多くの時間を要するということです。
災害発生時には、迅速に緊急対応できる人数を把握することが非常に重要となります。しかし、メールや電話などで確認した内容をExcelやスプレッドシートに手動で記載し、集計作業を行う場合、従業員数が多ければ多いほど膨大な時間がかかってしまいます。
また、人的ミスも起こりやすく、同じ人を二重に入力してしまったり、入力が漏れてしまったりするといった人的ミスの生じる可能性もあるのです。
安否確認の結果の管理には安否確認システムを活用しよう
安否確認を行う方法には、メールや電話、SNSなどさまざまな方法がありますが、安否確認システムの活用をおすすめします。安否確認の結果を効率的に管理できるからです。
安否確認システムとは、災害発生時などの緊急事態において、従業員に安否確認のメッセージを自動で送信するツールのことです。従業員からの回答結果を自動で集計するため、ExcelやGoogleスプレッドシートのように回答内容を手動で入力する必要がありません。また、回答内容はすぐに反映されるため、リアルタイムで最新情報を把握できるのは大きなメリットでしょう。
このように、安否確認システムを導入すれば、他の方法での安否確認管理にありがちな「回答結果の集計に手間がかかる」「リアルタイムでの最新情報を確認できない」という問題の解消につながります。導入費用はかかるが、災害時の効率的な安否確認に大いに役立つため、導入するといいでしょう。
その他の安否確認方法
安否確認の方法には、安否確認システム以外の方法もあり、それぞれのメリット・デメリットを以下にまとめました。自社に最適な安否確認方法を検討する際の参考にしてください。
安否確認の方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
安否確認システムを利用 | ・災害発生時に自動でメッセージを送信できる回答結果を自動で集計できる | 初期費用や月額費用が発生する操作方法を覚えるための訓練が必要となる |
メールを送信 | ・電話回線が使用できない状態でも送受信できる 従業員の都合の良いタイミングで回答できる | ・通信サーバーがダウンすると送受信できない ・メール作成や回答結果の集計を手動で行わなければならない |
電話で連絡 | ・新たに操作方法を覚える必要がない ・従業員の声を確認できる | ・電話回線が混雑している場合にはつながりにくい ・一人ひとりに電話をかける手間が発生する |
SNSやメッセージアプリで連絡 | ・新たに操作方法を覚える必要がない ・新たにソフトウェアを導入する必要がない | ・一人ひとりに手動で連絡する必要がある ・回答結果を集計することが困難 |
災害用伝言ダイヤルを利用 | ・電話回線が混雑している状態でもつながりやすい | ・録音できるメッセージの長さが30秒以内と制限されている ・伝言内容の集計が困難 |
災害用伝言板を利用 | ・電話回線が使用できない状態でも利用できる | ・1人ずつ伝言板を確認する必要がある ・伝言内容の集計が困難 |
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安否確認システムを導入する際の課題は、従業員全員分の情報の登録に手間がかかることでしょう。安否確認サービス2は、SmartHRやfreee人事労務、cybozu.comなどの外部システムと連携しており、ユーザーや部署の情報を1クリックで登録できます。
30日間の無料お試し期間が用意されており、何度でも利用できます。自動課金や機能制限はないため、興味がある場合には、無料お試しを利用してみることがおすすめです。
初期費用(税別) | 0円 |
月額費用(税別) | ライト:6,800円プレミア:8,800円ファミリー:10,800円エンタープライズ:14,800円 |
最低利用期間 | なし |
主な機能 | 外部システム連携/通知条件の設定/予行練習/自動一斉送信/回答結果の自動集計/家族の安否確認/災害以外のお知らせ送信ほか |
対応言語 | 日本語、英語 |
稼働実績 | 能登半島地震、熊本地震など |
無料トライアル | あり(30日間の無料お試し) |
効率的に安否確認を実施したい場合には安否確認システムを
安否確認表には、従業員やその家族の安否状況を記載します。ExcelやGoogleスプレッドシートで安否確認表を管理するという方法もありますが、手打ちで回答結果を入力しなければならず、常にリアルタイムで回答結果を集計できるわけではありません。効率的に安否確認を実施したい場合には、安否確認システムを活用して回答結果を管理することがおすすめです。
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