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安否確認システムの導入率は?必要性や導入前後にすべきことを徹底解説

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安否確認システムは、災害大国である日本で事業を継続するにあたり重要な存在です。安否確認システムを活用することで、災害が起こった際に従業員が無事であるかを迅速に確認でき、復旧作業や事業継続のための対応をいち早く実施することができます。

この記事では、安否確認システムの導入率について、必要性や導入の前後に行うこととあわせて解説します。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

安否確認システムの導入率

日本では、突然の地震や津波などの自然災害リスクがつきものです。企業は事業を継続するために、災害時に迅速で正確な従業員の安否確認を行う必要があります。

現在では、企業の災害に対する意識の向上によって、安否確認システムの導入を検討している企業が増えています。

2023年5月に東京商工会議所が実施したアンケート調査結果では、有料の安否確認システムを従業員の安否確認手段として導入していると回答した企業は、32.3%でした。過去に行われた同様のアンケート調査結果と比較すると、導入率は増加傾向にあるといえます。

安否確認システムが必要な理由

安否確認システムが必要な理由として、以下の二つが挙げられます。

  • BCP(事業継続計画)対策になる
  • 安否確認漏れの防止

BCP(Business Continuity Plan)とは事業継続計画のことで、自然災害やテロ、感染症などに対して、被害を最小に抑えるとともに、たとえ被害・影響が出てしまったとしても、適切な対応で速やかに事業活動を復旧・継続させることを目的とした計画です。。

BCPにおいて、安否確認は重要業務の一つです。また、BCPを整備しておくことで、災害時の迅速な復旧だけでなく、企業への信頼度やイメージの向上にもつながります。

ただし、大企業のように従業員数が多い場合、従業員の安否確認が完了したかどうかについて、手作業で正確に把握することは困難です。安否確認システムを導入することで、安否確認のできた従業員と安否確認ができていない従業員を自動的に集計できます。

他にも、人為的な指示漏れや遅れによる二次トラブルを予防できる点、従業員のプライベートの情報への配慮が可能な点も安否確認システムのメリットです。

安否確認システムの導入が進まない理由

前述のとおり、安否確認システムの導入率は年々増加しているものの、未だ導入していない企業も多く存在します。ここからは、安否確認システムの導入が進まない理由について解説します。

導入企業自体は年々増えている

近年の災害リスクへの関心の向上を背景に、安否確認システムの導入に対する需要も年々増加しています。2018年時点で28.0%だった導入率は、2022年時点では30.8%となり、2023年には32.3%となっているため、緩やかに上昇しているといえます。

(参考:東京商工会議所:会員企業の防災対策に関する アンケート調査結果
(参考:東京商工会議所:会員企業の防災対策に関するアンケート 2022年調査結果

BCPを策定していない企業が多い

災害大国である日本の現状を考慮すると、災害発生時の被害を最小限に抑えるためにも、企業にとってBCPは早急に策定する必要があります。

しかし、東京商工会議所の2023年のアンケートによるとBCPを策定済みの企業は全体で見ると35%のみです。大企業では71.4%の企業がBCPを策定しているものの、中小企業では27.6%に留まっています。

BCPが策定されていない企業は、災害時にどのような対応をすべきかの意識が低かったり、具体的な対応計画がなかったりすることも考えられるため、安否確認システムの導入についても検討されていないことが考えられます。

具体的なリスクが分からない

東京商工会議所の2023年のアンケートでは、BCP策定の課題に関する質問に対して、「具体的なリスクが分からない」との回答が49.5%ありました。

具体的なリスクを明確にしないと、そもそもどのような被害・影響が自社を襲うのかのイメージができません。

リスクを明確にし、自社の中核事業を明確にすることで、リスクが顕在化したときの中核事業への被害・影響と、それを守るための対策を考えることが可能になります。安否確認は中核事業を守る対策であるために、これらのことを考えていないと、安否確認システムの導入についても検討されないことが考えられます。

人員や費用の余裕がない

基本的に企業規模が大きくなるほど、安否確認システムの導入率は向上する傾向があります。中小企業にとっては予算や人員に余裕がないことも、導入が進まない理由の一つです。

従業員数の少ない企業ではメールを始めとした手作業での安否確認が主流であり、システムの導入までには至っていない場合が多いといえます。

既存の安否確認方法のメリット・デメリット

従来の災害発生時における従業員に対しての安否確認は、メールや電話などが主流でした。これらの手段には、容易に利用できるからこそのメリットとデメリットがあります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

メール

メールで安否確認を行うメリットは、以下のとおりです。

  • 一括送信が可能
  • 同じ文面を簡単に送信できる

メールを用いることで、全従業員に対して同じ文面を一括送信することが可能です。一方で、メールによる安否確認には以下のデメリットがあります。

  • メールアドレスの変更等でメールが届かない場合がある
  • 通信障害やサーバーダウンなどでメールが届かなかったり遅配したりする場合があ
  • メールアドレスをリスト化しておく必要がある
  • 迷惑メールとして処理される可能性がある

総務省の資料によると、東日本大震災の際に携帯電話のメールがまったくつながらなかった割合は37.0%でした。今後の災害でも、相手に届かない可能性もあります。また、メールの送受信には順番があり、一括送信したメールが同時に着信するとは限りません。

さらに、メールを安否確認に活用するためには、リストの作成や迷惑メール扱いにならないための設定が必要です。

(参考:総務省情報通信白書平成24年版

電話

電話で安否確認を行うメリットは以下のとおりです。

  • リアルタイムの情報を伝えやすい
  • お互いの声が聞ける
  • その場でのやりとりで情報伝達の齟齬が少ない

電話では、リアルタイムに互いの声を用いてコミュニケーションを取れることが最大の特徴です。ただし、以下のデメリットが考えられます。

  • 通話制限などで、つながらない可能性が高い
  • 連絡に時間と手間がかかる
  • 連絡網が想定通りに回らなかったり、内容が変わったりするおそれもある

総務省の資料では、東日本大震災時に最もつながりにくかった通信手段は携帯電話の音声で、65.4%がつながらなかったとされます。固定電話についても、55.1%がつながりませんでした。また、通話での連絡は文章と比べて時間がかかるうえ、連絡網などを使って伝言を繰り返すと内容が変わってしまうことも考えられます。

(参考:総務省情報通信白書平成24年版

安否確認システムを導入するメリット

従来のような、手作業によって従業員個々にメールや電話で安否状況を確認する作業は、手間も時間もかかります。安否確認システムを導入することで、災害時の社内連絡の効率化やBCP対策を強化し、企業の安定した経営につなげられます。

従業員の安否を素早く、容易に把握できる

安否確認システムを導入すると、自動で安否確認の連絡や集計がデータ化されるため、手間や時間が大幅に減少します。手作業によって従業員に個別に連絡をして安否確認の返事を待つ必要はありません。

また、手作業では、非常時に混乱して正確性に欠けてしまう可能性もあります。安否確認システムを導入することでこのようなヒューマンエラーの防止が可能です。

非常時に素早く正確に従業員の安否を確認することは災害時における企業の事業継続にとって重要といえます。

災害時以外の緊急事態や日常にも対応可能

安否確認システムは災害発生時だけでなく、その他の緊急事態や日常での使用にも対応しています。

昨今では、感染症の蔓延時に従業員の感染状況を把握することが求められる場合もあります。安否確認システムを活用することで、日常的に従業員の体調や体温を集計可能です。複数のシステムを導入することなく済むため、システムを操作する従業員の負担も減らせます。また、従業員への連絡機能は、日常における様々な連絡にも試用することができます。

別の重要な災害対応に集中できる

災害発生時に公共交通機関が停止したり、道路などが通行止めになった場合、従業員が出勤不可になるような事態が多発し、事業継続が困難になる場合があります。安否確認ばかりに多数の人員と時間を割いていては、事業活動の復旧や継続はどんどんと遅れていきます。。

安否確認システムを導入することで、従業員への安否確認は安否確認システムが自動で行えます。そのため、災害対応の担当者は、その他の重要な業務に当たることができます。結果的に業務が中断する期間を最小限に抑えることが可能です。

安否確認システム導入の前にすべきこと

安否確認システムを導入する際には、以下を行っておきましょう。

  • 安否確認の目的を明確にする
  • システム運用の責任者を決める
  • 災害直後の行動指針とチェックリストを作成する
  • 定期的に訓練をする

災害発生時や感染症対策など、安否確認システム導入の目的を明確にしておきます。目的によって必要な機能や、適切なシステムは異なるためです。また、システムの運用にあたっての責任の所在を明確にしておくことで、システムの迅速な稼働が期待できます。

災害直後に被害を最小限に抑えるためには、組織的な行動だけではなく個人の行動も重要です。組織的な行動だけでなく、個人の行動指針も決めておきます。チェックリストを作成しておくと行動指針が明確になり、慌てることを防ぎやすくなります。

非常時を想定して日頃からイメージしておくことも大切です。定期的に訓練をしておくことで冷静な対応が可能になります。訓練のなかで改善すべき点が見つかった場合には、チェックリストを迅速に更新しましょう。

安否確認システム導入後にすべきこと

安否確認システムの導入後には、以下を行うことで安否確認システムを有効に活用できます。

  • 従業員登録の安全性を確認する
  • 定期的な動作確認を行う
  • 従業員の報告精度を確認する
  • 集計結果の報告頻度とタイミングを決めておく

従業員登録における個人情報の取り扱いに問題があると、企業運営に大きく影響します。

また、重複登録や登録処理の漏れなどがないかについても確認しましょう。

導入した安否確認システムが緊急時に稼働しないような事態を未然に防ぐため、定期的に動作確認を行うことが大切です。確実な通知と受信だけではなく、従業員が自身の安否情報を正確に報告できるか、スムーズに報告を集計できるかなども確認します。

安否確認を正確に行うためには、従業員が安否確認システムへ行う安否報告の精度が重要です。定期的な使用訓練を行い、全員が安否報告を返せるようにしましょう。

また、集計結果をどの頻度で確認するのか、集計された情報をどのように共有・報告するのかを決めておく必要があります。集計のタイミングが早すぎると集計しきれていない可能性がある一方で、遅すぎると手遅れになりかねません。試験的に運用を行って適切なタイミングを決めておきましょう。

安否確認システムの導入メリットは多い!従業員を守る仕組みを作ろう!

企業にとって安否確認システムは、災害時に従業員の安否を迅速に把握するだけでなく、事業継続の判断をするために重要です。安否確認システムの導入が、安否確認業務の効率化やBCP対策の強化につながります。

災害が多い日本においては、安否確認システムの導入は、会社の事業規模に関わらずさまざまなメリットがあるため、一度検討することをおすすめします。

安否確認サービス2の製品サイトに遷移します。
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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。