自然災害や火事などの緊急事態が発生した際、従業員の安否確認を迅速に済ませることが重要です。安否確認の手段はさまざまにありますが、電話での安否確認は有効なのでしょうか。
今回は、電話で安否確認をするメリットとデメリットについて、他の安否確認の方法と合わせて解説します。
目次
電話で安否確認をするのは有効か?
電話での安否確認は企業の人数にもよりますが、あまり有効ではありません。電話は緊急時に回線が混雑したり、連絡が必要な人数が多いと時間がかかったりするリスクがあるためです。
とくに災害発生時は通信障害によって電話の受発信がしにくくなり、そもそも安否確認ができないというリスクもあります。
電話で安否確認をするメリット
普段から使っている人が多いため、誰でも使えるツールだということは、電話で安否確認をするメリットです。
電話は、プライベートでもビジネスシーンでも使います。電話を使ったことがないという人はほぼおらず、使い方をレクチャーする必要がありません。
また、現在では、ほとんどの人が携帯電話を持っているため、ツールを従業員分購入するコストも省けます。他にも、声や環境音から相手の状態を直接確認できるという点もメリットといえるでしょう。
画面の文字では相手の感情はわからないため、これは声で話せる電話ならではのメリットです。
電話で安否確認をするデメリット
電話で安否確認をすることには、メリットだけではなく複数のデメリットがあります。
例えば、人数が多い企業・組織での利用は現実的ではありません。電話で安否確認をするということは一人ひとり連絡しなければならず、連絡の時間と手間がかかるためです。人数が多い企業になると、集計にも多くの労力を要します。
また、災害時は電話がつながりにくくなったり、発信が集中して回線の許容量を越えるリスクもあります。実際、東日本大地震発生時は発信制限が設けられ、電話での連絡が取りづらい状況になりました。
相手が不在の場合に確認できなかったり、バッテリーが消耗して連絡できなかったりすることがあるというデメリットもあります。被災や避難をしていると連絡ができない可能性も否定できません。
また、電話を利用した安否確認のシステムとして災害伝言ダイヤルがありますが、こちらも社員全員の安否確認をするためには、時間がかかります。これは、それぞれに電話をかける時間が累積し、かけ直しにも時間を要するためです。災害伝言ダイヤルは、不特定多数の方が個人的にそれぞれの安否を知らせるためのシステムで、企業向けとはいえません。
電話で安否確認をする方法
電話で安否確認をする方法は、主に緊急連絡網を使う方法と災害伝言ダイヤル(171)を活用する方法の2種類です。それぞれで特徴が異なるため、ここからはそれぞれの概要や特徴について詳しく解説します。
緊急連絡網
緊急連絡網とは誰が、誰に、どういう順番で、どういう方法で連絡するかを定めた表のことです。ツリー状の図で掲載されているものが一般的で、状況把握及び判断と指示をする役職の高い順に名前と電話番号が記載されています。
緊急連絡網を活用する際は、個人情報の保護が重要です。適切に管理して外部への漏洩や内部の悪用がないように注意しなければなりません。
災害伝言ダイヤル(171)
災害伝言ダイヤルを使う方法もあります。災害伝言ダイヤルは、NTT東日本と西日本の伝言サービスです。
震度6以上の地震などの大規模な災害が発生した際に、電話がつながりにくい状況下でも安否確認ができるように提供されています。
災害伝言ダイヤルの利用方法は以下の通りです。
- 被災地にいる人が「171」へ電話をかける
- 自分の電話番号をキーとして伝言を録音する
- 被災地以外にいる人が「171」へ電話をかける
- 安否を知りたい人の番号をキーとして伝言を再生する
企業が災害伝言ダイヤルを活用したい場合は、従業員に災害伝言ダイヤルの概要と使い方を周知しておく必要があります。
電話以外で安否確認をする方法
安否を確認する方法は電話以外にもあります。そこでここからは、電話回線が使えないときでも利用可能な安否確認の方法をご紹介します。
それぞれ特徴が異なるため、企業規模に応じて適切な方法を選択しましょう。
災害伝言板(web171)
まずご紹介するのは、災害伝言板です。災害伝言板は、先ほどご紹介した災害伝言ダイヤル(171)のWebサイト版であり、電話番号をキーとして伝言の登録または閲覧ができます。
震度6弱以上など、大規模な災害が発生した際にアクセスできるようになります。NTT東日本と西日本で、それぞれ利用できる機能が若干異なるため、事前に機能を確認しておきましょう。共通して、上限はあるものの同じ電話番号で複数の伝言を登録できます。
メール
メールも、電話以外に有効な安否確認方法です。メールは、一度に多くの社員へ伝達ができるため連絡の遅れが生じる心配がなく、一人ひとりに連絡をする手間もかかりません。
また、リアルタイムでなくても内容を確認できる点も特徴です。電話は口頭でしか伝えられないため、再度確認することができませんが、メールなら内容を後から確認することもできます。
安否確認の内容のみを簡潔に書く程度なら、文字を打ち込む時間もさほどかからないでしょう。
SNS
SNSを活用して、安否確認をする方法もあります。近年、SNSは急速に普及して多くの人が何かしらのSNSを利用しています。
SNSで安否確認をするためには、個人のSNSアカウントを企業で把握する必要があります。SNSアカウントはプライベートのものであることから、企業に把握されたくないという従業員もいるでしょう。この場合、安否確認の重要性などを伝えて理解を得なければなりません。
また、SNSは平常時からの運用が必要です。SNSでの安否確認は優先度は低いものの.可能であればSNSアカウントを確認することをおすすめします。
LINE
LINEを安否確認に活用するという方法もあります。LINEも多くの人が利用しているツールのため、新たにアカウントを作ったり操作方法をレクチャーする必要はほぼありません。
LINEでの安否確認は、通常のトーク機能を利用する方法もありますが、「LINE安否確認」機能を活用する方法もあります。
LINEでは、震度6弱以上の大規模な災害が発生した際に、ホームタブに赤枠の「LINE安否確認」が出現します。「LINE安否確認」をタップすることで、友達に状況を共有できるのです。企業でLINEを導入していたり、連絡先を交換していたりする際はおすすめです。
チャットツール
ChatworkやSlackなどのチャットツールを、安否確認に活用する方法もあります。
平常時の業務でチャットツールを使用しているなら、そのまま利用可能です。普段から使い慣れているため、特に操作性に困ることもないでしょう。
ただし、スレッドの運用や解答ルールを決めておくなどの工夫が必要です。特に、安否確認の連絡が他のメッセージに埋もれてしまわないようにご注意ください。
安否確認システム
専用の安否確認システムを活用する方法もあります。安否確認システムとは、事業継続計画(BCP)のために必要なツールで、安否確認をもとに状況の把握・検討ができます。
従業員への適切な指示・情報共有をスムーズにできたり、無事であることや業務に従事できる否かを確認できます。収集した情報は自動で集計されるため、集計の手間もかかりません。
安否確認システムは、経営資源の一つである「ヒト」を守ることをサポートしてくれます。
安否確認システムの基本機能
安否確認システムは、ツールごとにさまざま機能が搭載されています。基本的な機能としては、一斉送信・自動一斉送信・自動集計・掲示板などです。
ここからは、安否確認システムの基本機能についてそれぞれ詳しくご紹介します。
一斉送信
安否確認システムのほとんどに、一斉送信機能が搭載されています。一斉送信機能は、緊急事態が発生した際に全社員に安否確認や連絡事項を一斉に送信できる機能です。
メールやスマホアプリ、SNSと連携しておくことで、連絡がつきやすい手段に送信できます。
自動一斉送信
安否確認システムには、自動一斉送信機能も搭載されていることが多い傾向にあります。この機能は、夜間のように手動での送信が難しい状況で災害が発生した場合でも、自動的に一斉送信できる機能で、安否確認を速やかに行えます。
災害はいつ、どこで発生するかわかりません。責任者が被災したり、不在の際に災害が発生した場合でも、自動一斉送信機能があれば従業員へのスピーディーな対応が可能です。
自動集計
自動集計機能も、ほとんどの安否確認システムに搭載されています。自動集計機能は、一斉送信・自動一斉送信に対する回答をシステムが集計してくれるサポート機能です。
電話やメールなどで安否確認をする場合、自分たちで情報を集計しなければなりません。従業員数が多くなるほど集計の負担が大きくなり、かなりの労力になります。しかし、安否確認システムを使えば自動で集計してくれて、状況を可視化できるため状況の把握が容易になります。
掲示板
掲示板機能も、多くの安否確認システムに搭載されています。掲示板は、安否確認や緊急時の連絡を掲載できるだけではなく、社員同士の交流に役立ちます。
平常時も利用可能で、平常時に全従業員に知らせたいことや情報を掲載することで、それぞれに連絡をする手間が省けます。
電話利用が可能な安否確認システム3選
安否確認システムは、現在さまざまな企業が提供しています。そのため、いざ導入しようと思ってもどれがよいかわからないと悩む場合もあるでしょう。
そこでここからは、電話利用できる安否確認システム3選をご紹介します。
エマージェンシーコール
▲出典:インフォコム株式会社HP
『エマージェンシーコール』は、インフォコムが提供している安否確認システムです。音声通話はガイダンスに従って操作するため、緊急事態発生時も迷うことなく利用できます。
メールやスマートフォンアプリなどにも対応しているほか、有料オプションとしてLINEとの連携や気象庁との地震情報システムとの連携も可能です。
料金は月額40,000円〜で、別途入会金20,000円がかかります。
Biz安否確認/一斉通報
▲出典:NTTコミュニケーションズ株式会社HP
『Biz安否確認/一斉通報』は、NTTコミュニケーションズが提供している安否確認システムです。電話の音声による安否確認が可能で、メールやスマートフォンにも対応しています。その他の主な機能としては、以下の通りです。
- 自動配信・再配信
- リアルタイム自動集計
- 組織階層単位の権限
- 個人情報非表示
- 健康管理情報の収集
月額費用は10,400円(10IDまで)ですが、14日間無料トライアルを試してから導入するとよいでしょう。
安否確認サービス2
『安否確認サービス2』は、トヨクモが提供している安否確認システムです。シンプルな操作性やLINE連携など多くの魅力がありますが、最大の特徴として国内で唯一契約会社による一斉訓練を開催しています。訓練を重ねることで、より適切な行動が可能になります。
初期費用は無料で、月額6,800円から利用できます。リーズナブルでありながら、BCPに必要な機能が多数搭載されているためおすすめです。
安否確認システムを選ぶポイント
安否確認システムは数多くあり、どれがよいのかと迷う方もいるでしょう。最適な安否確認システムを選ぶために、安否確認システム選びの際は以下のポイントを確認しましょう。
- 使い勝手はよいか
- 登録範囲の自由度は高いか
- データセンターの分散・安定稼働か
- 導入コストが適切か
- バージョンアップされているか
- 24時間電話サポート窓口はあるか
安否確認システムを導入して企業の防災対策を始めよう
電話での安否確認も一つの手段ですが、従業員数が多い場合は一人ひとりへの連絡や集計が手間になります。加えて災害時は通信障害のリスクがあり、連絡できなくなる可能性もあります。
企業の防災対策には、災害時を意識して作られた安否確認システムを導入することがおすすめです。
トヨクモでは『安否確認サービス2』というシステムを提供しています。直感的な操作で従業員の安否確認をできるツールで、災害時にも遅延が起こらず、スムーズな連絡が可能です。
また、30日間の無料お試しは何度でも利用可能です。
企業防災を始めようと考えているときには、是非ともご検討ください。