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安否確認は派遣社員も対象?企業の義務や対応のポイントを解説

安否確認は派遣社員も対象?企業の義務や対応のポイントを解説

安否確認とは、災害や緊急事態が起こった際に従業員が無事であるかどうかを確認するものです。社員であれば緊急時の安否確認を行うのが一般的ですが、「派遣社員の安否も確認する義務があるんだろうか?」と疑問に感じた経験はないでしょうか。

そこでこの記事では、企業が安否確認する対象に派遣社員も該当するのか、派遣元事業主と派遣先企業のどちらが対応するべきなのかなどを解説します。また、安否確認における課題やポイントもまとめましたので、参考にしてください。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

派遣社員も安否確認の対象すべき!必要な理由とは?

企業において、派遣社員を含む従業員の安否確認が必要な主な理由は以下のとおりです。

  • 派遣先にも派遣社員の安全に責任が生じる
  • 従業員の安全を守るため
  • 事業継続に関する判断を下すため

それぞれの理由について、詳しく解説します。

派遣先にも派遣社員の安全に責任が生じる

基本的には派遣元事業主が安否確認の義務を負うとされているものの、企業には雇用形態に関わらず、すべての従業員に対しての安全を確保する責任(安全配慮義務)があります。つまり、派遣元・派遣先両方に安全確保の責任があるのです。

厚生労働省 第8 労働基準法等の適用に関する特例等」においても、以下の事項については、派遣先の事業主に責任を負わせると述べられています。

  • 労働者派遣の実態から派遣元の事業主に責任を問うことの困難な事項
  • 派遣労働者保護の実効を期すうえから派遣先の事業主に責任を負わせることが適当な事項

派遣元と派遣先は、派遣社員の安全確保において互いに協力し合うことが大切です。迅速な状況把握のためにも、安否確認の連絡はどちらに先にするか、派遣元と派遣先の「誰」と「どのように」連絡をとるかなどを共有しておきましょう。

従業員の安全を守る

企業において安否確認が必要な最大の理由は、従業員の安全を守るためです。

前述の通り、企業には安全配慮義務の視点から雇用している従業員とその家族の安全を守る責務があります。また、そもそも社員に被害が及んで事業が継続できなくなれば、企業の経営維持に関わります。人道的な面からも経営的な視点からも、災害時に社員の安否確認を行うのは当然です。

事業継続に関する判断を下す

安否確認には、事業継続に関する判断を下す目的もあります。たとえば、自然災害や新型コロナのような感染症が流行した際、企業として業務を続けられるのか否かについて経営判断が求められるでしょう。業務を休止するか、継続するかの判断をすみやかに行わなければ、従業員はどう行動してよいのか迷ってしまうためです。

事業を継続するためには、従業員の人員配置が必要です。安否確認の際には、従業員が出勤できるのか、自宅からでも業務ができるのかを確認しましょう。従業員の出勤可否により、通常どおり事業を継続するのか、一部の事業のみ再開するのか、はたまた休業するのかを判断します。

派遣社員の安否確認を行う上で起こる課題

派遣社員の安否確認を行うにあたって、責任の所在や個人情報の扱いなど、考えておくべき課題はたくさんあります。被災してからでは対応が間に合わないため、平常時に課題の確認をしておくことが重要です。

以下は派遣社員の安否確認を行う際に発生する、主な課題です。

  • 責任と権限の所在
  • 個人情報保護への配慮
  • 迅速な情報共有の難しさ

責任と権限の所在

責任と権限の所在については事前に明確にして、関係者間に齟齬がないようにしましょう。前述したように、原則として派遣社員に対しての責任や権限を持っている企業は派遣元です。一方で、企業は雇用形態に関わらず、すべての従業員に対して安全を確保する義務があります

業務中に災害が起こった場合、現場にいる人員の安全は現場を管理している企業にしか守れないでしょう。安全確保の観点から見れば、実質的には派遣先が権限を持つともいえます。

個人情報保護への配慮

個人情報とは、メールアドレスや電話番号、住所などの特定の人物が認識できる情報のことです。派遣で仕事をする際に派遣元に個人情報を提供していても、派遣先には共有されていない場合があります。

個人情報に対しての配慮はいるものの、災害などの緊急時には連絡先が必要です。派遣先は使用目的を派遣社員に伝え、同意をもらった上で派遣元から個人情報を提供してもらいましょう

迅速な情報共有の難しさ

災害発生時は、一刻も早い従業員の安否確認が求められます。しかし、派遣社員の場合は「誰が」「どのようにして」安否確認をするのか明確になっておらず、迅速に情報が共有できないケースが多々あるでしょう。

また、電話での連絡する安否確認の方法では、迅速な対応が困難となる場合があります。一人ひとりに連絡をとっていると時間がかかるうえ、災害時には電話の回線自体がつながらない可能性も高いからです。早急に安否を確認して情報を共有するためにも、安否確認システムなどのツール導入を検討することがおすすめです。

派遣社員の安否確認を行う際のポイント

派遣社員の安否確認を行う際には、以下のポイントを押さえましょう。

  • 明確なルールを作成する
  • 派遣社員の不安に寄り添う
  • 派遣先と派遣元で協力し合う
  • 避難マニュアルの共有や避難訓練の実施を行う

以下で、詳しい内容を紹介します。

明確なルールを作成する

災害が発生したときに明確なルールがなければ、派遣社員は出社や帰宅に関して判断に迷います。とくに、通勤途上ならばなおさらです。派遣社員が混乱しないように、派遣元と派遣先は出社や帰宅基準を明確にし、派遣社員への連絡方法・情報の共有方法を取り決めましょう。

出社する日はもちろん、休日や自宅にいる際に災害が発生した場合、どのように対応したらよいかも決めておくと安心です。基本的には就業時間外に災害が発生したときは、派遣元が安否確認を行って派遣先に伝えます。

また、従業員自身が安全でも彼らの家族が被災している場合、出勤および就業は難しくなります。実際に業務につくことができる社員を正確に把握するために、社員自身だけでなく、家族の安否確認もスムーズに行えるような仕組み作りが重要です。

派遣社員の不安に寄り添う

派遣社員に対しては、安否確認システムの目的や使用方法を丁寧に説明したり、個人情報の取り扱いについて説明したりするなど、不安のない状態を作りましょう

例えば、安否確認システムを使用する際は派遣社員の個人情報などを登録しますが、登録した情報は正しく扱うこと、漏洩などのリスクは少ないことなどを事前に説明しておけば不安なく登録を進められます。

また、システムの使用目的や使用方法についても説明を行いましょう。実際に災害が起きた際、どのようにして連絡が来るのかが分かれば、災害時の不安も軽減できます。

派遣先と派遣元で協力し合う

派遣社員の安否確認において最も重要なのが、派遣先と派遣元で協力し合うことです。お互いにすり合わせができていないと、安否確認がスムーズに進みません。事前に体制を整備し、迅速かつ丁寧に連絡を取り合いましょう。

互いに役割をハッキリとさせておくと、実際に災害が起こった場合も慌てず、スムーズに連携が取れるようになります。

避難マニュアルの共有や避難訓練の実施を行う

オフィスでの就業においては、ビルや施設によって防災のルールがあります。派遣元や派遣社員は、非常階段・指定避難場所・ビルや勤務エリア独自の連絡方法などについて、派遣先の避難マニュアルとともに共有しておきましょう

また、派遣先の企業で避難訓練を行う際には、派遣社員にも参加を呼びかけるとよいです。日頃から防災の意識を持ってもらうことにより、いざというときに派遣社員を含めたすべての従業員が緊急事態にスムーズに対応できると期待できます。

災害発生時に派遣社員に対して行うべき対応

災害が発生した際、企業は派遣社員に対してどのような対応をすればよいのでしょうか。基本的には以下の順に対応しましょう。

  • 安全確保
  • 避難経路や避難場所の情報提供
  • 安否確認
  • 指示連絡

1.安全確保

何よりも、命が優先です。安全確保を最優先して対応します。

業務中の避難など安全確保に関する指示については、派遣社員は被災現場である派遣先の指示に従います。

派遣先企業は、「誰が」「誰に対して」「どのように」指示を出すのかを事前に決めておかなければなりません。災害発生時の混乱した状態で対応が遅れると、避難などの安全確保に関する対応がスムーズに行かないだけでなく、二次災害の発生も懸念されます。災害情報を円滑に共有し、安全な避難行動を促すことが重要です。

2.避難経路や避難場所の情報提供

大地震が発生した場合、続けて余震が発生する可能性があります。避難経路や避難場所の情報を素早く提供しましょう。

避難経路や避難場所については、派遣社員や派遣先の担当者は地図で確認するだけでなく、災害に備えて避難場所まで歩いてみるなど、災害時にスムーズに行動できるよう準備しておくのがおすすめです。最近では、避難所を確認できる防災アプリも提供されています。

避難場所については、以下の記事も参考にしてください。

3.安否確認

就業中に災害が発生した場合、派遣先企業は派遣社員に対して安否確認を行います。安否確認によって派遣社員の状況を知ることができれば、より的確な対策を立てられるでしょう。また、就業時間外の場合は派遣元の企業で対応を行います。

いずれの場合も、被災状況を派遣元・派遣先・派遣社員の間で情報共有することが重要です。電話やメールはつながらないことが多いため、企業はスムーズに確認が取れるようなシステムを事前に準備しておくといいでしょう。

4.指示連絡

最後に派遣社員に対して指示連絡を行います。あらかじめ出社か待機かの判断基準を設けておけば、災害が起こってから短時間で指示を出すことができます

原則としては、派遣元が指示を出しますが、派遣先が緊急で連絡したい場合もあるので、派遣社員の連絡先を把握しておきましょう。トラブルを防ぐために、事前にどんなときに派遣先から派遣社員に連絡するのかの基準も設け、派遣元と共有しておきます。また、リモートワークで就業中の従業員についても、安否確認や指示連絡はどこが行うのか災害時のルールをあらかじめ定めておきましょう。

派遣社員に安否確認システムを使うメリット

安否確認システムを導入すれば、自社の派遣社員を含めたすべての従業員とその家族の安否確認が迅速にできます。契約前にお試しができるサービスがありますので、ぜひ実際の使用感を確認してみてください。

派遣先へ個人情報の提供が不要

安否確認システムを導入していれば、派遣社員の個人情報を派遣先で把握せずとも、本人に安否確認システムに登録してもらえれば派遣元が安否確認を行えます。

たとえばトヨクモの安否確認システム『安否確認サービス2』の、派遣先の担当者であっても登録者の個人情報を見ることはできません。登録のハードルが低いサービスを導入することによって、企業は従業員の安否を迅速に把握でき、災害の際の状況把握に役立ちます。

スムーズな連絡や情報共有が可能

安全確認システムを導入していると、派遣社員を含めた社内の連絡や情報共有がスムーズになります。

安否確認システムは、災害や緊急事態が発生した際に、従業員の安否を尋ねるメッセージが自動で送信され、従業員が回答する仕組みです。安否確認だけでなく、ほかにも以下のようなさまざまな機能があります。

  • 怪我の有無や出社の可否など設問の設置
  • GPSによる位置情報の取得
  • 最寄りの避難所の表示
  • 掲示板での情報共有

掲示板などの機能は、災害時・緊急事態発生時に限らず、通常の業務連絡に活用できます。内容はシステムによって違いがあるため、導入の際は目的に合ったものを選びましょう。

家族の安否情報も確認できる

派遣社員だけでなく派遣社員の家族の安否確認もできるシステムを利用すれば、本人の出社の可否を判断しやすくなり、さらに派遣社員に安心を与えるメリットもあります

災害が起これば、家族の安否情報はもっとも気になることの1つです。派遣社員自身が無事であっても、家族の状況が不明であれば不安を抱えたまま仕事に従事せねばなりません。

安否確認システムの導入を検討する際は、従業員の家族に対する安否確認に対応しているかどうかを確認することがおすすめです。

人材派遣会社が安否確認システムを導入した事例|アポプラスキャリア株式会社

アポプラスキャリア株式会社の製品HPの画像です
▲出展:アポプラスキャリア株式会社

派遣先だけでなく、派遣元にとっても安否確認システムの導入は有効です。

医療医薬専門の派遣事業を行っているアポプラスキャリアでは、就業時間外における派遣社員の安否確認について、以下の課題がありました。

  • 離れた地域にも派遣していることによる初動の遅れ
  • 期間契約によって毎月入退社が発生する派遣社員の管理

安否確認システムの『安否確認サービス2』を導入することによって、これらの課題を解決して地方での災害にも素早く対応できるようになると同時に、工数の削減に成功しました

(参考:安否確認サービス2|全国各地にいる派遣スタッフの安否確認を一括管理 業務の属人化を解消し初動スピードの短縮に成功

安否確認システムで派遣社員の安全を確保

災害時や緊急事態の発生時に必要な情報を得られて個人情報も守れる安否確認システムは、自然災害や感染症など、さまざまなリスクの発生が予測されている日本において、従業員の安否を確認するために重要なシステムです。

派遣社員については、就業時間中と就業時間外でどこが安否確認を行うのかが異なります。しかし、派遣先企業と派遣元企業どちらの立場であっても、安否確認システムの導入は有効といえるでしょう。

トヨクモの提供している『安否確認サービス2』は、派遣社員の安否確認にもおすすめです。初期費用は0円で始められるため、派遣社員の安否確認の方法を検討している方はぜひ導入をご検討ください。

\安否確認サービス2 無料お試し/こちらのフォームからお申し込みいただけます!

無料お試しは、何度でもご利用可能です。ぜひこの機会に安否確認システムを体験してください!

  • 機能制限一切ナシ
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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。