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英語で安否確認訓練を実施して外国人従業員の安全を確保しよう!

あなたの職場に外国人の従業員はいますか?

詳細は後述しますが、在留外国人の数は年々増加しています。

そのため、企業は、在留外国人が安全かつ安心して生活・就業するための環境を整えることが大切です。

その取り組みの一つとして、外国人従業員に対する「安否確認訓練」や「避難訓練」などが挙げられます。

日本語が流暢な外国人従業員ばかりであるとは限らないことから、英語を使ってこのような訓練をすることが必要です。

この記事では、外国人従業員に対して英語での安否確認の手順や、その訓練のポイントについて詳しく解説します。

これを読めば、各企業の防災担当者は外国人従業員に対して、どのようなサポートや取り組みを行うべきか見えてくるでしょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

企業に求められる英語での安否確認

企業で働くのは日本人だけとは限りません。外国人を雇用している企業も多いです。まずは、企業が外国人に向けて、英語でも安否確認を行うべき理由について紹介します。日本人とは異なる外国人ならではの事情も理解できると思います。

日本における外国人労働者数の増加

厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」によると、令和4年10月の段階で外国人労働者は1,822,725人おり、前年比で95,504人増加し、届出が義務化された平成19年から過去最高を更新したとのことです。

日本は少子高齢化が進み、今後ますます国内における労働人口が減少していくことから、外国人労働者の数は今後さらに増えていくことが予想されます。

そのため、外国人労働者が安心して働ける環境を提供することは各職場において必要不可欠なことです。

地震に慣れていない外国人は多い

下記の表は内閣府が発表した世界の震源分布とプレートを表した図です。

 出典:内閣府

残念ながら日本は、世界で稀に見る地震大国です。日本国内の何処にいても地震から逃れることはできません。またこの図を見ると、地震が発生する場所と発生していない場所がはっきりと分かれていることがわかります。日本は、世界の陸地の1%にも満たない国土ですが、世界で発生する地震のおよそ10%が日本とその周辺で発生しています。

また日本は、プレートとプレートの境界にあるために、2011年東日本大震災のようなプレート型の巨大地震もあれば、2016年熊本地震や2018年北海道胆振東部地震のような内陸型の地震もあります。いずれも震度7に相当する強い揺れを私たちにもたらしました。

一方、地震をほとんど経験してこなかった外国人はたくさんいます。彼らは、地震が発生した際にどのような行動を取るべきかが理解できていない場合が多くあります。

英語での情報収集は困難

令和2年に出入国在留管理庁が発表した「在留外国人に対する基礎調査の概要」によると、公的機関が発信する情報を入手する際の困りごと」と「災害時の困りごと」について在留外国人に尋ねたところ、それぞれ下記のような結果になりました。

【公的機関が発信する情報を入手する際の困りごとランキング】

ランキング困りごと回答者の割合
1位多言語での情報発信が少ない33.8%
2位やさしい日本語での情報発信が少ない23.4%
3位スマートフォンなどで利用できる公的機関(市区町村・都道府県・国)が作成したアプリでの情報発信が少ない16.8%

【災害時の困りごとランキング】

ランキング困りごと回答者の割合
1位信頼できる情報の情報源がわからなかった12.6%
2位避難場所が分からなかった10.2%
3位警報・注意報などの避難に関する情報が、多言語で発信されていないため分からなかった9.8%

この結果から、近年在留外国人の人口が増えているとはいえ、日常生活や災害時において彼らが必要な情報を得られる環境がまだ十分に整っているとは言えないことがわかります。

外国人労働者が安心して就労できる環境の提供

上述した内容をまとめると、地震などの大災害を経験したことがある在留外国人はあまり多くありません。それどころか小さな地震が発生するだけでも動揺して、不安に感じてしまうでしょう。

大規模な自然災害が発生すると、災害をよく理解しているはずの日本人でも、必要な情報を入手することが困難なになります。ましてや、日本語が使いこなせない在留外国人であれば尚更です。

このような状況であることから、それぞれの企業は外国人従業員が災害発生時にも安心して就労できる環境を提供することが大切になります。

外国人に対して英語で安否確認(訓練)を行う上でのポイント

次に、安否確認訓練の具体的な手順に入る前に、日本語でコミュニケーションを取ることがあまり得意でない外国人に対して安否確認を行う上で注意すべきポイントについて紹介します。

下記の4点に注意しましょう。

  • 英語で情報発信をしているサイトを案内する
  • 英語での安否確認文言を決めておく
  • いくつかのシチュエーションを想定した避難経路を予め伝えておく
  • 防災担当者の指示がなくても自ら防災対応ができるよう訓練を重ねる

これらの点に留意しておくことで、外国人従業員は緊急時にどのような動きを取れば良いか理解することができ、実際に緊急事態が発生した際にも比較的スムーズに行動できるようになるでしょう。この章を読んで、ぜひ参考にしてください。

英語で情報発信をしているサイトを案内する

前章でも紹介しましたが、日本に住む外国人は「災害時にどこから情報を収集すれば良いかわからない」点に悩んでいます。事前に英語を含む多言語で情報発信をしているサイトを伝え、有事の際はこれらを見るように伝えておきましょう。

下記のWebサイトがおすすめです。

WebサイトWebサイトの内容
The Japan Times “DISASTER INFORMATION日本国内で発生した災害に関するニュースと最新情報を英語で発信している災害時のLIVE BLOGによるリアルタイムの情報発信や災害が発生したときに知っておくべきことなどがまとめられている
内閣府「外国人への災害情報の発信について英語や中国語など計15言語で、日本での災害情報の発信について知ることができる資料避難指示に関連する役立つ日本語や、災害時に役立つアプリ”Safety Tips”の使い方などさまざまな情報が掲載されている
NHK「NHKワールドJAPANWebサイトとアプリを通じて19の言語でNHKのニュースやテレビ・ラジオの番組を配信。国内向けの災害時特設ニュースでは、英語の字幕をAIが読み上げるサービスもある。

いくつかのシチュエーションを想定した避難経路を予め伝えておく

日本は地震だけでなく、津波、火事、台風などさまざまな自然災害が発生する災害大国であることから、その土地で起きるいくつかのシチュエーションを想定した避難経路や避難場所について外国人従業員に前もって伝えておきましょう。

その際には、下記のポイントを伝えてください。

  • 最初に避難する一時的な避難場所は基本的には屋外だが、建物の耐震性や周辺地域の危険性などを踏まえて判断する
  • 災害発生時には、避難階段やスロープを活用し、エレベーターやエスカレーターは避難に使用しない
  • 事前に通路誘導灯や通路誘導標識の意味と、できれば位置を確認しておく
  • 避難経路図を見て、避難階段・避難経路・一時的な避難場所について確認しておく

また、災害はいつ起こるか分かりません。職場で就業中のときだけでなく、自宅にいる場合にも適切な避難行動ができるように、自宅周辺における避難経路や避難場所についても確認するように伝えておくことも大切です。

参考:https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/items/guideline04.pdf

防災担当者の指示がなくても自ら防災対応ができるよう訓練を重ねる

災害発生時に、すぐ近くに英語が話せる従業員がいるとは限りません。英語でのコミュニケーションが取れない状況であっても、自ら考えて動けるように繰り返し訓練を重ねることが重要であることを伝えましょう。

職場や学校だけでなく、多くの地域で防災・避難訓練を実施しています。中には、東京都のように在留外国人に特化した防災訓練を実施する地域もあるようです。

これらの訓練に参加することで下記のような体験をすることができ、実際に災害が発生したときにも慌てることなく適切な避難行動ができる可能性が高まります。在留外国人の従業員に地域の避難・防災訓練があること知らせて参加することをすすめましょう。

  • 起震車やVR等による災害体験
  • 安全に避難するための命を守る訓練
  • 初期消火や煙体験などの命を守る訓練
  • 避難所体験や炊き出し訓練など生活維持のための訓練
  • 災害時に役立つ翻訳アプリの体験
  • 防災・減災に関する展示ブース

株式会社YOLOJAPANが2019年に実施した災害の備えに関するアンケートによると、アンケート回答者の96%の在留外国人(404名)が、自然災害への備えとして、避難訓練に参加することに対して肯定的な意見であることから、企業が地域の防災・避難訓練に関する情報を提供することは、在留外国人が災害時に自ら防災対応ができるように訓練を重ねる上で非常に有効であると考えられます。

英語での安否確認文言を決めておく

外国人従業員だけでなく、防災担当者の日本人も英語で安否確認ができるようになっておくことが必要です。予め災害発生時の安否確認メッセージを定型文化しておき、いざとなったときにすぐに使えるようにしておきましょう。詳しいフレーズについては後述します。

また、安否確認メッセージを送信する際には、安否管理システムを導入することがおすすめです。安否確認システムとは、従業員の安否確認を一斉にできるシステムで、このシステムを活用することで、緊急事態が発生して混乱している状態であってもスムーズかつ効率的に従業員の安否確認業務を行うことができます。

英語対応もしている安否確認システムは、トヨクモの「安否確認サービス2」などおすすめです。
>> トヨクモの「安否確認サービス2」についてさらに詳しく知りたい人はこちらへ

英語で行う安否確認訓練の手順

安否確認訓練に参加する側の外国人が安否確認訓練においてするべきことは日本人と変わりありません。原則として下記の4つのことを行います。

  1. 自身の安全を確保すること
  2. 周囲の安全を確保すること
  3. 周囲の状況を確認すること
  4. 防災担当者に連絡して指示を仰ぐこと

防災担当者が安否確認訓練において準備しておくべきことは、下記の3つです。

  1. 考えうる災害パターンを想定した英語表現をまとめておく
  2. 海外拠点で災害が起こることも想定しておく
  3. 英語対応している安否確認システムの導入を検討する

ここではそれぞれの点について詳しく解説します。防災担当者がこれらの準備をしっかりと行なっておくことで、日本や海外拠点においてさまざまな自然災害が発生したとしても従業員の安全を十分に確保してスムーズに安否確認を行うことができるでしょう。ぜひ読んで参考にしてください。

あらゆる災害パターンを想定した英語表現をまとめておく

英語を母語にしている人は世界で数パーセントしかいませんが、英語は世界共通語であるため、英語を公用語や第2言語として使っている国を含めるとかなりの数になります。

そのため、英語で安否確認ができるようにしておくことで、従業員の安否をいち早く確認することにつながるでしょう。 

災害が発生すると平常心を保つことが難しく、咄嗟に英語表現が出てこないかもしれません。英語が苦手な方だけでなく、英語を得意としている方であっても、事前に災害時に使える安否確認のための英語フレーズを控えておくことが大切です。

下記のフレーズは安否確認のためのフレーズとして役立つため、しっかりと身につけておきましょう。

日本語英語
そちらの状況はどうですか?What is the situation there?
そちらの被害はどうですか?What is the damage there?
弊社の○○は無事ですか?Is our ○○safe?
手が空いたら連絡ください。Please let me know when you can.
あなたとご家族がご無事であることを祈ります。I hope you and your family are all safe.
大丈夫です。 / 無事です。I’m fine. / I’m safe.
どうかご無事で。Please stay safe.

参考:
https://block-eikaiwa.top/english-writing/everyday-phrase/post-2265/
https://bcp-manual.com/engish_safety_confirmation/

海外拠点で災害が起こることも想定しておく

下記はドイツのNGO団体ジャーマンウォッチが2021年に発表した世界の気候リスクランキングです。

ランキング国名
1位モザンビーク
2位ジンバブエ
3位バハマ
4位日本
5位マラウイ
6位アフガニスタン・イスラム共和国
7位インド
8位南スーダン
9位ニジェール
10位ボリビア

このランキングを見ると、日本は4位にランクインしており、気候リスクだけでも、日本のリスクは高いことが分かります。

海外には、地震や台風だけでなく、干ばつや虫害といった日本ではあまり経験しないような災害もあります。また、自然災害があまり起きない国で災害が発生してしまうと日本以上に混乱が起きて、支援物資の支給が滞ったり、治安が悪化してしまったりするリスクもあるでしょう。

そのため、日本で働く自社の外国人が被災するだけでなく、海外支社を持つ企業は現地で災害が起こることも当然想定しておく必要があります。

現地で働く外国人と、赴任している日本人の双方が安全を確保できるように、事前に準備をしておきましょう。

英語対応している安否確認システムの導入を検討する

前章でも紹介しましたが、安否確認システムを導入することで、災害発生時も迅速に従業員の安否を確認できます。海外で災害が発生した際にも、従業員の安否を確認した上で、日本側と速やかに連携をとりながら今後の対応を検討することが可能です。

また、安否確認システムの中には多言語対応しているものもあるので、日本語も英語も得意でない従業員の安否を確認したり、非英語圏での海外対応に使用したりすることもできます。

英語での安否確認訓練を行い日本内外で働く外国人従業員の安全を確保

この記事では外国人に対して英語での安否確認の手順や、その訓練のポイントについて紹介しました。

在留外国人の数は年々増加しており、今後もその傾向が続くことが考えられることからも、企業側は外国人従業員が災害発生時に安全に避難して、安心して就労できる環境を提供できるように日頃から準備をしておくことが必要です。

さまざまな国の出身者が想定されますが、まずは「英語」で安否確認訓練を行い、実際に災害が発生した際にもしっかり対応できるようにしておきましょう。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。