地震が発生すると間もなく、震度4や震度5といった数値が発表されます。この「震度」とは何を表しているのでしょうか。また、震度7より大きな震度を聞かないのはなぜなのでしょうか。
本記事では地震に関する知識や、企業が取るべき地震対策について詳しくご紹介します。
目次
震度7以上がない理由
震度とは地震が起きたときに、ある地点の地表でどれだけ揺れたのかを表す指標です。同じ地震であっても、震源からの距離や地盤の強さなどによって、揺れの大きさは異なります。
国によって震度の表し方はさまざまで、日本においては震度0から震度7までが割り当てられます。以前は気象庁職員の体感や被害状況から震度を判断していましたが、1996年4月以降は全国に設置された計測震度計で観測するようになりました。
気象庁によると、最大級の被害をもたらすのは震度7であり、それ以上の震度を発表することに意味はないとしています。そのため、震度7の揺れには上限がありません。もし想定外の大きな揺れが発生したとしても、震度8や震度9ではなく震度7と表現されるのです。
震度5と6が強と弱に分けられる理由
かつて震度は、0から7までの8階級で表していました。しかし1996年10月以降は、震度5と震度6をそれぞれ5弱・5強・6弱・6強に分け、10階級で表すようになりました。
そのきっかけは、1995年に発生した兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)です。このとき、同じ震度でも被害状況にばらつきがあったため、震度5と震度6をそれぞれ細分化することが決定しました。
10階級で表すことによって、震度と被害状況の関係をより細かく把握するようになったのです。
震度と揺れの状況
気象庁は、各震度における揺れや想定される被害の目安を示しています。震度0から震度7までの状況を、それぞれ詳しく見てみましょう。
震度0~震度3
「震度0」
人間は揺れを感じませんが、地震計には記録されます。
「震度1」
屋内で静かにしている場合には、わずかに揺れを感じる人もいるでしょう。
「震度2」
屋内で静かにしている場合には、大半の人が揺れを感じます。眠っている場合は、目を覚ます人もいるでしょう。吊り下げている電灯がわずかに揺れます。
「震度3」
屋内にいる場合、ほとんどの人が揺れを感じます。歩いている場合は、揺れを感じる人もいます。眠っている人は、大半が目を覚ますでしょう。棚にある食器が音を立てることもあり、屋外の電線は少し揺れます。
震度4
ほとんどの人が驚き、歩いていても揺れを感じます。眠っている場合、ほとんどの人が目を覚ますでしょう。
吊り下げている電灯は大きく揺れ、棚にある食器類は音を立てます。固定されていない置物は倒れる場合もあるでしょう。屋外の電線も大きく揺れ、自転車に乗っていても揺れを感知できます。
また、震度4以上の揺れがあると、鉄道や高速道路では、安全確認のため運転見合わせ、速度制限、通行規制が行われることもあります。
震度5弱
大半の人が恐怖を感じ、物につかまりたいと感じる揺れです。吊り下げられた電灯は激しく揺れ、棚の食器類が落ちる場合もあります。すわりの悪い置物は大半が倒れ、固定していない家具は動くおそれがあります。
まれに窓ガラスが割れる場合もあるでしょう。また、電柱が揺れ、道路も被害を受けます。地面に亀裂ができたり、液状化が起きたりするでしょう。斜面では落石や崖崩れが発生するかもしれません。
震度5弱以上の揺れが起きた場合、安全装置の付いたガスメーターは遮断装置が作動し、ガスの供給を停止します。地域によっては断水や停電が起きるおそれもあります。
安全のためにエレベーターが自動停止することがあり、運転再開に時間を要する場合もあるでしょう。
震度5強
何かにつかまらないと歩くことが困難で、大半の人が行動に支障を感じます。棚にある食器類は落ちる物が多くなり、テレビ台からテレビが落ちることもあります。固定していない家具が倒れるおそれもあるでしょう。耐震性が低い建造物では、壁に亀裂が見られることがあります。
補強されていないブロック塀や、据え付けが十分でない自動販売機は倒れる場合があります。また、自転車は運転するのが困難で、自動車に関しては停止する場合もあるでしょう。
震度6弱
立っていることが困難になる揺れです。固定されていない家具の大半が倒れ、ドアは開かなくなります。壁のタイルや窓ガラスは破損し、落下することもあるでしょう。
耐震性の低い建物では、壁に大きな亀裂が生じることもあり、それどころか建物が傾いたりすることもあります。地面では地割れが、斜面では崖崩れや地滑りが発生することもあります。
電話やインターネットは、安否確認の問い合わせが増加することで、つながりにくくなるでしょう。そのため、震度6弱以上の揺れが起きた場合は、通信事業者によって災害用伝言ダイヤルや災害用伝言板が提供されます。
震度6強
立っていることができず、這わないと移動できないほどの揺れです。固定されていない家具はほとんどが動き、倒れることも多くなります。
壁のタイルや窓ガラスは破損し、補強されていないブロック塀はほとんどが崩れるでしょう。耐震性の低い建造物では、傾いたり倒れたりします。
地面に大きな地割れができ、斜面では崖崩れが多発します。大規模な地滑りが起きるおそれもあるでしょう。
また、震度6強以上の場合には、ガス、水道、電気の供給が広い地域で停止することも考えられます。
震度7
最大の被害をもたらす地震の基準です。固定されていない家具はほとんどが動いたり、倒れたり、飛んだりします。補強されているブロック塀であっても、破損するおそれがあるでしょう。
木造住宅や鉄筋コンクリート住宅を問わず、傾いたり倒れたりする建築物はさらに増えます。
地震に関する知識
日本は言わずと知れた地震大国です。そのため、多くの人が地震に関する知識を持っていると考えられます。しかし、知っているようで知らないことも多くあるでしょう。たとえば「なぜ日本で地震が多く発生するのか」という問いに答えられる人は、意外に少ないと思います。
ここからは、日本に地震が多い理由、地震発生のメカニズム、マグニチュードに関してそれぞれ分かりやすく解説します。
地震発生のメカニズム
地震発生の主な原因は、地下で起きる岩盤のずれです。岩盤のずれは、地球を覆う大小十数枚のプレートと呼ばれる岩盤が移動することで起こります。その移動速度は年間数cmと微々たるものですが、2つのプレートが接する場所では圧縮されたり引っ張られたりすることでひずみが蓄積され、やがて地震のエネルギーとなるのです。したがって、地球上で発生する地震はプレートの境目に集中しています。
日本周辺には海洋プレートと大陸プレートの境界が連なっており、海底に深い溝を形成しています。その主な場所は以下のとおりです。
- 千島海溝
- 日本海溝
- 相模トラフ
- 駿河トラフ
- 南海トラフ
- 南西諸島海溝
大陸プレートの下に海洋プレートがもぐり込む場所では、その境界にひずみが生じます。この力が蓄積され、限界を迎えて元に戻ろうとするとき、地震は発生します。日本で地震が多く発生するのは、日本列島がプレートの境界付近に位置しているためです。
震度とマグニチュードの違い
地震の報道で、よく「地震の規模を示すマグニチュード」という表現を耳にします。震度とマグニチュードの違いは何でしょうか。
震度は、ある地点で観測された揺れの大きさを指すため、観測地点によって数値が異なります。一方マグニチュードは、震源で生じたずれの規模を表しています。つまり、地震そのもののエネルギーを指し示す数値なのです。
マグニチュードの算出方法は複雑で、正確に割り出すには時間を要します。しかし海に囲まれている日本では、地震後の津波に備える必要があり、気象庁はマグニチュードをすみやかに見積もって速報しています。このため、のちに発表される正確なマグニチュードは、速報値と異なる場合もあるのです。
マグニチュードは1大きくなるごとに、そのエネルギーがおよそ32倍になります。つまり、2大きくなると約1000倍になります。
企業が行うべき地震対策とは
地震の多い日本では、各家庭だけでなく企業も地震対策を行う必要があります。ここからは、企業に求められる基本的な地震対策についてお伝えします。
備蓄物の確認
企業では地震発生に備え、社内に防災備蓄品を用意しておく必要があります。ヘルメット、軍手、電池、工具類などが相応しいでしょう。
また、従業員が帰宅困難になった場合のために、以下のような品物を用意し、日頃から確認しておくことも重要です。
- 水(1人あたり1日3リットル)
- 主食(アルファ化米やクラッカーなど)
- 簡易トイレ
- 衛生用品(トイレットペーパーや生理用品など)
- 毛布(1人1枚)
- 懐中電灯
- 携帯ラジオ
- 敷き物(ビニールシート)
東京都帰宅困難者対策条例によると、水や主食は3日分を目安に、従業員の数より10%多めに用意するのが望ましいとされています。備蓄品をリストにまとめ、主食に関しては消費期限を過ぎることのないよう管理しましょう。
参考:東京都帰宅困難者対策条例・東京都総務局総合防災部「東京都帰宅困難者対策ハンドブック」
避難に備えた取り組み
地震が発生した際は、迅速な避難行動こそが命の安全を守ります。避難方法や避難経路をあらかじめ共有し、企業防災マニュアルに明記しましょう。
いざというときに避難経路が使えないという事態のないよう、経路や部屋の出入口付近に障害物がないか日頃から確認してください。万一の場合に備えて、避難経路を複数準備しておくのもおすすめです。
従業員の多い企業や高層ビルなどにおいては、避難する人が殺到し、混乱する可能性もあります。適切な指示をするために、メガホンやハンドマイクも用意しておきましょう。
また、地方自治体が発表しているハザードマップを平時に確認し、社屋周辺や自宅までの経路におけるさまざまな災害リスクを把握しておくことも必要です。
BCP対策の実施
BCPとは「事業継続計画」の略称です。自然災害、テロ、感染症拡大などによる被害を受けた際、企業の損害を最小限にとどめ、重要な事業を早期に復旧させるため、事前に策定する計画のことを指します。地震だけでなく、さまざまな緊急事態に備えることが必要です。緊急事態発生時においても業務を継続させることができれば、顧客や社会に貢献し、企業価値を高めることにもつながります。
日本は自然災害の多い国です。内閣府は、2011年の東日本大震災を受けて、「事業継続ガイドライン」を発表しました。そのなかでBCPの必要性を明示し、企業に対して一層の拡充を求めています。
また、中小企業庁では「中小企業BCP策定運用指針」を策定しました。中小企業の実情や特性を鑑みて、BCP対策の具体的な方法を分かりやすく説明しています。
参考:内閣府「事業継続ガイドライン」・中小企業庁「中小企業BCP策定運用指梁」
地震の知識を把握し、企業の災害対策を見直そう!
本記事では、震度7が最大である理由、震度0から7までの揺れの概況、地震発生のメカニズムなどについて詳しく解説しました。あわせて、企業が取るべき地震対策についてもご紹介しました。
地震に関する知識を深め、企業としてしっかり対策することは、BCPの観点からも重要です。