土砂災害は地震や大雨の影響で発生します。会社や社員を土砂災害の被害から守るために、企業としてできる対策にはどのようなものが挙げられるのでしょうか。
この記事では、土砂災害の特徴、前兆、実際に発生したときの対応について詳しく解説します。また、事前にできる対策についても触れますので、ぜひBCP策定の参考にしてください。
目次
土砂災害とは
土砂災害は、大雨や地震、火山噴火のあとに起こる以下のような災害のことです。
・山や崖が崩れる
・崩れた土砂が雨や川にまじって流れ出す
土砂災害を分類すると、以下の3つがあります。
・山や谷から勢いよく流れてくる「土石流」
・広範囲が滑り落ちる「地すべり」
・突然崩落する「がけ崩れ」
いずれの場合も人や家屋に甚大な被害をもたらすため、軽視できない自然災害です。
土砂災害対策のポイント
ここでは、土砂災害への備えとして企業が実施すべき対策について解説します。
以下3つのポイントを挙げますので、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
土砂災害警戒区域を知る
土砂災害警戒区域を知ることは、対策において重要なポイントです。
自社の所在地が、土砂災害のおそれがある土砂災害警戒区域、あるいは土砂災害特別警戒区域に含まれているかどうかを調べます。
調べる際は、各都道府県のホームページや国土交通省によるハザードマップを参照します。より詳細な情報については、各市町村のハザードマップを確認するとよいでしょう。
この際、避難経路や避難場所についても、事前に把握しておくことが肝心です。
大雨が降りだしたら気象情報に注意する
大雨が始まったら、大雨警報や土砂災害警戒情報などの気象や防災に関する情報に注意することも重要です。
とくに、土砂災害警戒情報は、大雨警報(土砂災害)が発表されている状況で、土砂災害発生の危険度が非常に高まったときに、降雨の状況を考慮して都道府県と気象庁が共同で出すものです。
各自治体長は、この基準をもとにして避難指示の発表を検討します。これらの情報を確認するための方法は、以下が挙げられます。
・気象庁のホームページ
・各自治体のホームページ
・テレビやラジオなどのメディア
・携帯電話のアラート
停電に備えて、懐中電灯、携帯電話のバッテリー、携帯ラジオなどを準備しておくとよいでしょう。
土砂災害警戒情報が発表されたら、全員が安全確保行動をとる
土砂災害警戒情報が発表された際は、速やかに対象地域にいる全員が避難などの安全確保行動をとることが重要です。
土砂災害警戒情報が発表されるときは、いつ土砂災害が起こってもおかしくない状況、あるいは既に起こっているかもしれない状況であるためです。
具体的には、5段階のうち警戒レベル4に相当します。慎重に分析を重ねた過去のデータを根拠としているため、信頼度は高いと言えるでしょう。
雨の状況や周囲の反応を伺っているうちに、さらに危険度は高まります。
もし、自分のいる地域が土砂災害警戒区域などに関係している場合には、発表後は事前に把握した避難経路を辿って、速やかに避難しましょう。
また、特に危険がない場合では、いたずらに外出をせず、停電などに備えた準備をした上で、安全確保をしましょう。
土砂災害の前兆
もし土砂災害の発生を事前に知ることが可能であれば、被害はより軽減されるでしょう。
そこで、以下に土砂災害の前兆として、過去の災害でとりあげられた現象について紹介します。
なお、このような現象があったからといって必ず土砂災害が起きるわけではなく、逆に、このような現象がなくても土砂災害が起きることもあります。正しい理解のもとに、判断基準の1つとして知っておきましょう。
土石流の前兆
土石流の前兆は、以下のとおりです。
・山鳴りや地鳴りがする
・木の裂ける音や石がぶつかり合う音がする
・川の水が濁り流木が混ざる
・土の腐臭がする
・大雨が続いているのに川の水位が下がる
土石流は時速20㎞〜40㎞とも言われ、人や家屋を一瞬のうちに飲み込みます。長雨や集中豪雨の際は、周囲の音や臭いに注意して、異常があれば早めに避難などの安全確保行動をとることが重要です。
地すべりの前兆
地すべりの前兆には、以下のような現象が挙げられます。
・地面に亀裂が入り、陥没する
・がけや斜面から水が噴出する
・井戸や沢の水が茶色く濁る
・山鳴りや地鳴りがする
・樹木が傾く
地すべりは、大雨が染みた地下水の影響によるものです。斜面の一部あるいは全部が下方に移動する現象であり、当然、滑り落ちる土塊が大きいほど、甚大な被害を招きます。
がけ崩れの前兆
がけ崩れの前兆は、以下のとおりです。
・がけや斜面がひび割れる
・砂や小石が落ちてくる
・がけから水が湧く
・湧いていた水が止まる・濁る
・地鳴りがする
がけ崩れは、大雨や地震の影響により地表付近がゆるむことで起こります。前兆があってから実際に崩れ落ちるまでの時間が短く、より迅速な避難が求められます。
日頃から所在地の周辺を観察し、雨や地震の際には注意を怠らないことが重要です。
自然災害に対応している企業は少ない
三菱リサーチ&コンサルティングが2018年に実施したデータによれば、自然災害のリスクを把握している中小企業はあまり多くありません。
自然災害発生時に自社がどのような被害をどの程度受けて、いくらの損害が出るかを想定している企業は3割程度です。また、ハザードマップを見たことがある中小企業も半数以下の割合でした。
一方で、自社のリスクについて「いますぐ調べたい」「いずれ調べたい」と回答している企業の割合も半数以上あります。
これは、まだ社内においてリスク管理の体制が整っていないことを示唆します。
企業が事前にできる土砂災害の対策
土砂災害は、発生すれば短時間で被害が拡大するため、事前の備えが重要です。
以下、企業が取り組むべき平時からの備えについて、4つのポイントを挙げて解説します。
防災訓練の実施
企業として事前に取り組むべきことのひとつに、防災訓練の実施があります。
前述のとおり、警戒レベル4相当の情報が発表されたときは従業員全員について避難などの安全確保行動が必要です。
また、それが計画に明記されていたとしても、もし日頃の訓練を怠っていれば、いざというとき従業員がどう動いてよいかわからず、適切な対応がとれない危険があります。
冷静に対処するためには、適切な対応がとれるよう、体を慣らしておくことが重要です。何度も繰り返し実施することで従業員に定着するでしょう。
従業員の活動範囲や居住地のリスクの把握
従業員の活動範囲や居住地について、リスクを把握しておくことも重要です。
勤務時間以外のリスクについて理解を促すことで、従業員は土砂災害の危険性をより身近に感じ、適切な対応への意識を高めることにつながります。
さらに、今後、引っ越しなどで住居を選択する際にもリスクに対する高い意識をもって臨むことで、リスクが軽減できるでしょう。
防災・省エネまちづくり緊急促進事業の活用
防災・省エネまちづくり緊急促進事業の活用も、有効な対策です。
防災・省エネまちづくり緊急促進事業とは、防災や省エネに関する対策のために施設を整備する事業者を対象に、国が特別な助成金や補助金で支援する事業です。防災対策や省エネ対策の実施に加え、以下の要件を満たす必要があります。
・高齢者等配慮対策
・子育て対策
・環境対策
本事業の適用期限は、2025年3月31日までです。期間中に改装や新規施工を計画している事業所は、申請をおすすめします。
安否確認サービスの導入
安否確認サービスの導入も、有効な災害対策のひとつです。
自然災害発生時には気象庁などからの情報や警報に基づいて自動で一斉送信されるため、スムーズに従業員の安否確認ができます。また、行動履歴としてデータを収集・分析できるため、安否確認以外にもBCPや行動マニュアルでの対応を実施する際の人員確保などの状況把握にも役立ちます。
実際の場面に近い想定ができるため、安否確認サービスに加入している場合には、安否確認サービスを使った防災訓練をぜひ実施してください。
土砂災害対策をして命を守ろう
土砂災害は、発生すると短時間で被害が拡大します。そのため、日頃から従業員の防災意識を高めておくことが重要です。
企業側が事前にできる対策には、以下が挙げられます。
・防災訓練の実施
・従業員の活動範囲や居住地のリスクの把握
・防災・省エネまちづくり緊急促進事業の活用
・安否確認サービスの導入
たとえば、安否確認サービスについて、トヨクモの「安否確認サービス2」なら、30日間の無料お試し期間もあり、訓練で使用することもできます。興味のある方は、問い合わせてみてください。