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100年続く老舗企業に学ぶ、倒産しないための準備と企業の組織存続力

日本が「老舗企業大国」と呼ばれているのをご存知でしょうか?世界に創業200年以上続いている企業が約5,600社ある中で、その半数を超える約3,100社が日本に存在しているのです。

そんな老舗企業の中にも、2011年3月11日の東日本大震災の影響によって大きなダメージを負った企業があります。

しかし、例え倒産寸前にまで追い込まれても復旧を遂げ、事業の継続を成し果たしてきた危機対応とそれを可能にした組織作りが老舗企業にはありました。

今回は、大きな困難を幾度となく乗り越えてきた老舗企業から、倒産しないための準備と、100年以上企業として在り続けるために必要な要素を5つの観点から学んでいきたいと思います。

企業らしさを生み出す「のれん」を創る

企業が長期間に渡って事業を運営していくためには、他社と異なる個性が必要になります。そのためには、何よりも自社のビジネスに対して一貫した考え方や経営理念を尊重することが大切です。

そして、その理念を社内で共有していくことで企業の個性が生まれます。そんな企業らしさ、つまり「のれん」を創ることは老舗企業を目指す上で欠かせません。

扇子とうちわの老舗「伊場仙」:公式サイト

センスとうちわの老舗企業である伊場仙では、もともと紙や竹の素材を扱っていたものの、付加価値を高めるためにうちわの販売を始め、その後に浮世絵の出版を手掛けるなど、時代のニーズに合わせて扱う商品を変化させてきました。

しかし、どれだけ扱う商品が変化しようとも、伊場仙では紙と竹という素材への追求という信念は揺らぎません。その証拠に同社では副業、セカンドハウス、二号さん(俗にいう「愛人」のこと)など、本業への力が分散する「2」がつくことには、一切手を出さないという教えが代々引き継がれているそうです。

価格競争に巻き込まれない!強みを持った「商い」を創る

経営理念を表す「のれん」の次に必要なのは、企業の強みを活かした「商い」です。

多くの老舗企業に見られる共通点の一つに、価格以外の付加価値で競合企業と勝負できるという強みが挙げられます。そんな「商い」を創るために必要な要素が以下の(1)〜(3)です。

(1)中核的な技術・ノウハウ
(2)小さな差別化の積み重ね
(3)顧客との接点・対面

大野屋總本店:公式サイト

安永年間(1772–81年)に創業し、現在までに多くの足袋や和装肌着、ガーゼのねまきなどの和装雑貨を提供してきた大野屋總本店は、創業以来、価格競争とは一線を画す経営方針を貫いてきました。

「足袋を履く人が減るスピードよりも、足袋をつくる人が減る方が早い」という逆転の発想に基づき、宣伝をすることなく「足袋が必要な人=大野屋總本店」となる時に向けて、品質とサービスのきめ細やかさを磨き続けています。

顧客だけでなく、取引先とも良好な「関係」を創る

強みのある「商い」を成長させるために必要なのは、取引先との間の良好な「関係」を創ることです。それにより、自社の力だけでなく、取引先から商品・サービスに対しての様々なアイデアを吸収することができます。

そして、成長した「商い」は、顧客を十分に満足させることに繋がります。満足させる商品・サービスを提供することで、顧客に「また来たい」「また買いたい」という感情を生み、「顧客ロイヤルティ(顧客が持つ企業や商品に対する愛着)」の向上へと結びつくのです。

千疋屋総本店:公式サイト

果物に特化した商品提供、サービスを展開している千疋屋総本店は、顧客だけでなく取引先の仲卸との良好な関係を200年以上継続しているという信頼と実績を誇ります。メディアで取り上げられた際にも「おごらず、あせらず、欲張らず」という家訓を忘れることなく、バブル期の際にも株や不動産には決して手を出さないなど、実直な経営方針が周囲との強固な関係を築くことに一役買っています。

商いを支える「従業員」や「後継者」を育てる

「のれん」「商い」「関係」によってサービスを提供するための土台は固まりました。しかし、それを生かすも殺すも従業員次第。中小企業において、限られた人材資源の中で商品の品質を維持させる「育成」が至上命題になります。

千疋屋総本店:公式サイト

千疋屋総本店では店頭での従業員と顧客のコミュニケーションを非常に重要視しています。宮崎マンゴーのように店頭に並ぶ期間が短い商品に関しては、食べ頃を適切にアドバイスできるようになるまでに10年ほどかかると言われています。それに対して、千疋屋総本店では従業員には必ず初物を食べさせる、実際に生産者の顔を見て人柄を触れさせるなど、大手が参入できないほどに人材育成へ時間を割いています。

業種や世代を超えた「地域ネットワーク」の構築

人は一人では生きていけないように、企業も自社だけで事業を継続するのは困難です。そのため、老舗企業の多くは、業種や世代関係なく地域に交流の場を設けるための「地域のネットワーク」作りを積極的に行っています。

そこでは異なる業種や世代だからこそ得られる発見も多く、経営者同士で様々な情報を共有し合うことが、それぞれの組織強化に繋がります。このような交流を積み重ねることで、利害を超えた強い信頼関係を伴った「地域ネットワーク」を築くことができます。

江戸屋:公式サイト

江戸屋は1718年の創業以来、ブラシの製造・販売を手掛け続ける日本を代表する老舗企業の1つです。同社の代表取締役である濵田氏は、江戸時代中期から続く「べったら市」の保存会会長を2003年から務め続けるなど、自社の事業のみならず、日本橋が誇る江戸文化の保存にも力を注いでいます。

まとめ

各老舗企業に共通しているのは、こういった一連の流れを企業の伝統として伝承してきているということです。

決して自社の利益に走ることなく、取引先、顧客、地域という一連の繋がりを尊重し、全体としての繁栄を見据えるからこそ長期に渡って事業の継続を可能にしたのではないでしょうか。

企業としてのあるべき姿を問い続け、長期的な事業継続を目指しましょう。

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