防災・BCP・リスクマネジメントが分かるメディア

通勤災害は労働災害認定される?通勤の範囲や業務災害との違いを解説

通勤災害には、通勤の際に受けた怪我、疾患、障害などがあります。労働災害保険は、こうした通勤災害および業務災害について、その被害や療養費を補償する保険です。通勤災害と業務災害は補償の内容が違います。今回は通勤災害の範囲や業務災害との違いを解説します。

プロフィール背景画像
プロフィール画像

編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

通勤災害とは

通勤災害とは、労働者が通勤の際に受けた怪我、疾患、障害などのことです。死亡した場合も通勤災害に含まれます。

「通勤」とは、就業に関連する、住居と就業場所の往復や単身赴任先の住居と帰省先住居の移動です。就業場所から別の就業場所への移動も通勤です。これらを「合理的な経路および方法で行うこと」が通勤とされています。

通勤の途中で私的な逸脱または中断があると、そのあとは通勤とはなりません。ただし、日常生活上必要な行為を最小限度の範囲でする場合には、通勤とみなされます。

業務災害とは

業務災害は、労働者が就業中に業務を原因として負った負傷、疾病または死亡です。「業務上」とは業務と傷病の間に因果関係があることをさします。

言い換えると、「このような仕事をしていなかったらこの災害は起きていない」と主張できる災害が業務災害です。「業務上」の定義については、「会社の支配あるいは管理下にある」業務遂行性と、「労働契約に基づいた事業主の管理下で危険が現実化した」業務起因性が要点です。

通勤災害と業務災害の違い

通勤災害と業務災害の共通点は、どちらも労災保険の対象であるという点です。そして、両者の違いは、通勤中か業務中かということです。

業務による災害で業務起因性や業務遂行性が認められると、疾病の原因、責任は事業者によるものであり、雇用者による「補償」の対象とされます。一方、業務に伴う移動である通勤の場合、たとえば通勤電車の事故で怪我をしたとき、直接的責任は雇用者にはありません。そのため、労災保険においては補償ではなく「療養給付」と呼ばれます。

通勤災害は労働災害に認定される?

ほとんどの通勤災害は、雇用者に災害の責任がありません。しかし、通勤災害は労災保険の対象です。

ここからは、通勤災害と業務災害の違い、ならびに通勤災害が労働災害に含まれる理由を説明します。

基本的には労働災害として認定される

仕事に関連する移動中の事故や災害は、基本的に労働災害として認定されます。

注意する点は、労働災害の範疇にある疾病には健康保険を利用できないことです。

労災保険を使用すると「勤務先に迷惑がかかる」と思い、ためらうケースがありますが、こうした行為は逆に「労災かくし」とされて行政処分の対象です。使用しないことで、逆に会社に迷惑がかかります。

労働災害として認められないケース

通勤災害は労働基準監督署が認定します。しかし、「通勤」の定義から逸脱した移動をすると認められません。

たとえば、仕事帰りに飲食店へ寄ったり、通勤中に忘れ物を取るため戻ったり、通勤から逸脱した経路で事故に遭うとどうでしょうか。こうした場合、通勤災害として認められない可能性が高まります。

経路の逸脱が、日用品の購入をはじめとする「日常生活上必要な行為をやむを得ない理由により最小限度の範囲で行う」ケースである場合は、通勤経路に戻ったあと再び「通勤」と認められます。

「通勤」にあたる範囲

通勤災害が労働災害にあたるには、「通勤」の要件や定義が重要です。労働災害が定義している「通勤」について、いざというとき、判断できるように知っておきましょう。

住居と就業場所との間の往復

「通勤」は、基本的に住居と就業場所との往復です。

就業場所とは、その日被災者が出勤した、または出勤予定だった場所です。営業で勤務地以外に直接向かっていた際も、適正な理由があれば認められます。

経路の合理性は必須です。帰宅途中に映画館へ寄ったり、仕事と無関係な知人に会ったりした場合は、合理的な経路とは認められません。

就業場所から他の就業場所への移動

就業場所から他の就業場所への移動中に被災した場合はどうなるのでしょうか。

ひとつの事業者で勤務を終え、次に別の就労場所へ移動する際、「住居と就労場所間の移動である」通勤災害の定義から外れます。この点に関しては、「2つ目の事業者に対しての通勤災害とみなしたほうがいい」という議論が活発です。

ある事業者にて、勤務の一環として移動があるケースでは、移動中も勤務が続いているとみなされ、通勤災害ではなく業務災害に該当します。

住居と就業場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動

転勤に伴い、配偶者、子ども、介護の必要な両親などと暮らしている労働者が、新たな就業場所まで毎日通勤することが困難であるとします。そうした場合、労働者は他の住居に住むでしょう。

このとき、住居間の移動も通勤に含まれ、被災したときは通勤災害と認定されます。たとえば、単身赴任先の住居と実家との往復における被災は、通勤災害なのです。

通勤災害における労働災害保険の給付内容

通勤災害が認められた場合、労働災害保険から給付を受けられます。その内訳は療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭料、傷病年金、介護給付の7つです。これらの給付内容についてそれぞれ解説します。

療養等給付

療養給付は、被災による怪我や病気について、労災病院や労災保険の指定病院にて無料の診察が受けられる、現物給付型の制度です。やむを得ない事情により指定病院以外で治療を受けた場合、自己負担となった療養費を補償します。

病院や薬局の証明を受け、所轄の労働基準監督署に必要書類を提出すると給付が決定されます。通院にあたり、電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合、その費用も支給対象です。

また、業務災害においては療養補償給付ですが、通勤災害では療養給付とされています。

休業給付

休業給付とは、労災によって働けない期間の給料を補填する給付制度です。

療養から3日が経過すると支給が開始されます。給付される金額は、1日あたり給付基礎日額の60%です。休業の必要が認められ、休業していることが条件です。

また、療養開始からの3日間について、業務災害では雇用者に補填義務がありますが、通勤災害では補填義務はないとされます。

障害等給付

障害給付は、労災事故による怪我で障害が残った場合に、その後遺障害の程度に応じて支払われる給付です。障害の程度は1級〜14級に分類されます。

8級〜14級の障害が残った場合には、その等級に応じて給付基礎日額の56日分〜503日分の障害補償一時金が支給されます。1級〜7級までの障害が残ったときは、給付基礎日額の131日分〜313日分の金額が、障害補償年金の年間支給額です。

そのほかの給付

傷病で死亡した場合に支給される遺族給付には、年金と一時金があります。葬祭料とは、傷病で死亡し葬儀をする場合に給付される補償給付です。

業務上の傷病が療養から1年6カ月経っても完治せず、傷病等級の1級~3級に該当している場合、傷病等級に応じて給付基礎日額の245日分~313日分の傷病年金が支給されます。傷病年金と傷病給付は同時に受けられません。

他にも、傷病により介護が必要な状態になった場合、介護給付があります。

また、二次健康診断等給付は業務災害のみで認められます。

通勤災害に関するQ&A

通勤災害の定義や要件を理解していても、判断に迷うこともあるでしょう。

「通勤災害と業務災害のどちらに該当するか」だけでなく、「そもそも通勤災害に該当するのか」で迷うケースも少なくありません。

ここでは、通勤災害に関してよくある質問とその回答をご紹介します。

昼休みに家へ戻る途中の事故は通勤災害にあたる?

家と勤務先が近く、昼休みに帰宅して食事する人が、帰宅途中で事故にあった場合、通勤災害にあたるのでしょうか。

原則として、労働者が住居と就業場所を往復する過程で発生した災害は、就業との間に関連性が認められれば労災保険給付の対象です。そのため、今回のケースも通勤災害として認められます。

ただし、昼休みに自宅へ戻る目的が就業と無関係な場合、通勤災害とは認められない可能性もあります。

労働災害認定不可に不服があるときはどのようにすればいい?

労働災害は所轄の労働基準監督署が認定します。もし労働災害として認められなければ、裁定を不服とし、把握した翌日から3ヶ月以内に再度審査請求の手続きが可能です。

労働基準監督署や労災補償課のホームページからダウンロードできる審査請求用紙に必要事項を記入し、審査を担当する労働保険審査官へ提出します。なお、審査請求は口頭でも構いません。

通勤中に自然災害に襲われたときの対応は?

通常通勤中に自然災害が発生し、怪我を負った場合、労働災害にあたります。

出張中や就業先からの避難中、自然災害で傷病を負った場合も同様です。

出勤中に自然災害が発生した場合、家族の安否を確認し、勤務先へ安否を報告します。自社の防災マニュアルで、出勤途中に被災したときの対応を確認しておきましょう。

通勤災害の認定基準や判断間違いをしないように徹底しよう!

通勤災害と業務災害の区別は難しく、「そもそも労働災害にあたるのか」と迷うこともあるでしょう。

通勤災害の認定基準を知り、いざというときの判断を誤らないように備えてください。また、通勤災害の範囲や求められる補償について把握すると、適切な労災保険を受けられます。

プロフィール背景画像
プロフィール画像

編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。