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企業の台風対策!保険や補償も紹介

地球温暖化に伴い、台風の規模や強さなどが大きくなってきています。台風によって、公共交通機関が計画運休をする機会も増えてきました。台風が企業活動に及ぼす影響も大きく、事前の対策が重要です。

災害大国の日本では、毎年のように大型台風が発生します。台風が企業活動に及ぼす影響は大きく、日頃の対策が大切です。当記事では、企業における台風の対策方法や、発生した場合の保険などについて解説します。防災に取り組む際の参考にしてください。

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監修者:木村 玲欧(きむら れお)

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授

早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。
著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。

企業のとるべき台風対策

はじめに、企業が日頃から取り組める台風対策を紹介します。防災を実施するには、災害を想定して事前に取り組む準備が不可欠です。台風対策の場合も、備蓄や避難訓練など一般的な対策が有効です。手軽に始められる対策から習慣づけましょう。

ハザードマップを調べる

まずは自社がある地域のハザードマップなどを調べて、台風によってどのような被害が想定されているのかを確認しましょう。その内容を社内で共有することで、日常とは違う「台風」に対する理解につながります。

ハザードマップは災害からの被害を減らすことを目的として、たとえば、洪水や浸水・土砂災害などでその地域がどのような被害が想定されるかを示したり、避難場所や避難所、防災関係施設などの位置を表示した地図であり、各地域ごとに作成されています。

台風の場合は、大雨がもたらす洪水や浸水土砂崩れのリスクがあるため、自社や関連施設がどのよな危険にあるかを確認した上で、危険にさらされる可能性がある時には、建物の台風対策を行ったり、避難場所を確認しましょう。

国土交通省が提供する「ハザードマップポータルサイト」では、web上で地域を指定して、縮尺を変えたり、掲載する情報を選択しながらハザードマップを閲覧することが可能です。

参考:国土交通省 ハザードマップポータルサイト

食料や飲料などの準備をする

台風によって、停電になったり、近隣の店舗が休業したり、公共交通機関の運休によって社内に留まる必要があります。このため、従業員の食料や飲料の備蓄を事前に準備しましょう。

しばらく事業所内に待機する状況を想定し、食料は2〜3日分準備しておくことをおすすめします。

具体的には、温めて食べられる防災専門の非常食をはじめ、レトルト食品や缶詰、カップ麺などの複雑な調理工程を必要としない食材を準備するとよいでしょう。

さらに電気やガス、上下水道などのライフラインを使用できない場合は、カセットコンロの他、災害用トイレなどの備蓄も重要です。これらは地震の備えとも重なるところが多いので、ぜひ自社で備えておきましょう。

台風対策のための備えをする

台風対策のための備えをしましょう。たとえば、吸水シートを備えておけば、台風で雨漏りや浸水が発生した際に手早く処理ができ、事業所内の設備や書類への被害を防げるでしょう。止水板や土のうなどは、建物内への浸水を防ぐことができます。

また、台風対策用の養生テープなどを窓ガラスに貼ることで飛散防止の効果があります。このテープは粘着力がありながらも、剥がしやすく跡に残りにくい特長があります。

可能ならば、ガラス飛散防止フィルムを窓ガラスに貼り付けておけば、強風や飛来物で窓が割れても、ガラスが散らばるリスクを低減できます。

災害対応マニュアルを周知する

災害が発生した時の災害対応マニュアルを従業員に周知することは、従業員の「わがこと意識」を上げるために効果的です。

もし既存のマニュアルや計画が社内にあれば周知を徹底し、なければ新たにマニュアルを作成しましょう。マニュアルの内容としては、従業員の命を守り、従業員の命を守り、事業所の安全を確保しながら、事業を復旧・継続するための行動計画などが一般的です。

台風が接近した際の行動や対策を明記すれば、緊急事態が起こっても素早く行動できます。

マニュアルの周知やマニュアルに基づく防災訓練を通じて、従業員全員に防災意識を共有できることが理想的です。

防災訓練を行う

災害を想定して日頃から防災訓練を実施すると、緊急事態が発生した際の行動に役立ちます。台風による被害を防止するための対応策や、避難が必要な場合の判断基準や実際の避難経路を把握するなど、定期的に訓練を繰り返すことが大切です。

災害が発生した際には速やかな対応が求められます。また、社内での訓練だけでなく、地域の防災訓練に参加することもおすすめです。地域の人々と連携を取り合い、地域で人的被害を出さないことを目指しましょう。

台風による企業への被害・影響

ここでは、台風の被害が企業活動に与える一般的な被害・影響を解説します。オフィスの立地条件に応じて、異なる被害に見舞われるおそれがあります。また、建物への被害だけでなく、会社の収益面でも被害が発生する可能性もあるので、事前に想定しておくことが重要です。

出退勤の安全性

台風の発生で周辺の交通状況が悪化すると、出退勤の安全性の問題が発生します。

具体的には公共交通機関が止まったり、道路が通行止めになったり大渋滞する場合や、歩道に物が散乱して通行が危険となる場合もあります。

普段の交通手段が使用できず従業員の移動が制限されることに加え、徒歩での出退勤中に怪我をするリスクも考えられるでしょう。

安全が確認できるまでは、従業員を社内に留めたり、出退勤を停止させる対策が効果的と言えます。

建物への被害

台風の被害として真っ先に挙げられるものは、オフィスや工場など建物に与える被害です。

企業活動を実施する建物が被害を受けると、業務が継続困難な状況に陥り、休業や場合によっては移転を余儀なくされる可能性があります。

具体的には、洪水・浸水による建物の損壊、設備機器への被害の他、小さいものとしては、強風で窓ガラスが割れたり、会社が所有するブロックや看板などが飛ばされることもあります。

自社の敷地から飛んだ物が他社の建物に被害を与えるケースもあるため、対策が不可欠です。

高潮や土砂による被害

大雨や強風がもたらす被害だけでなく、二次災害として起こる高潮や土砂災害による被害も想定する必要があります。

高潮や土砂災害は立地条件によって被害規模が変化するため、企業ごとに個別の対策が求められます。

立地の面では、とくにオフィスが海に近い場合は高潮や高波での浸水が大きなリスクです。

また、オフィスが山に近い場合は土砂災害に巻き込まれるリスクが高まります。

前述したハザードマップの確認とあわせて、自社の立地ではどのようなリスクが高いのかを事前に把握しておきましょう。

人手不足による業務への影響

災害の影響で一時的な人手不足に陥ると、社内の業務が滞ります。また、担当者や責任者が出勤できずに、仕事が進まない可能性は十分に考えられます。

出勤できない従業員の人数があまりにも多いと、休業せざるを得ない場合があります。

必要に応じて、安否確認のもとに柔軟な人員配置をしたり、リモートワークが可能な業務についてはリモートワークの環境を整えるなど、必要な対策を行いましょう。

取引先の被害によるリスク

取引先が受けた被害を通じて、自社の事業が影響を受ける可能性があります。会社が事業を進めるうえで、取引先企業との協力関係は必要不可欠です。たとえば製造業では、材料の調達先として関係を持つ取引先や、工場での生産を外注している馴染みの取引先が。

災害の影響で休業や廃業に追い込まれると、自社の業務まで滞る可能性があります。

とくに、ある業務を一社だけに依存している場合は、そのリスクが高いと言えます。

台風発生に向けたBCP(事業継続計画)対策

災害発生に備えて、台風対策についてのBCP(事業継続計画)を策定しましょう。

台風の被害を最小限に抑え、非常事態でも事業の継続が可能な環境を作ることが理想です。

ここでは、台風に備えたBCPについて紹介します。

被害を出さないための備え

災害で事業をストップさせないために、まずは被害を出さないための備えをしましょう。

建物の浸水被害を防いだり、浸水してデータサーバ等が破損した時のためにデータのバックアップをとっておきましょう。停電に備えて、予備の電源を確保したり、上下水道の停止に備えて、水や災害用トイレをそなえることも有効です。

また、従業員の出社基準を決めておき、出退勤における人的被害を出さないことも重要な対策です。

災害発生時に起こる問題を予測して、先手を打つ姿勢で対策を進めましょう。

事業継続に向けた備え

被害が大きい場合は現場の復旧作業に追われ、災害前の状態に戻るまで時間と手間がかかると想定されます。その状況下でも事業を継続できるような環境の整備が重要です。

具体的には、データのクラウド管理やテレワークの導入が挙げられます。ライフラインの停止やそれに伴う出勤停止が長引くことを見据えてオンラインや遠隔地での事業継続を試みましょう。

また、BCPを策定し、災害発生時の具体的な行動方針を社内で共有することもおすすめです。

従業員の災害対応マニュアルの作成

従業員の災害対応マニュアルも作成しましょう。

従業員それぞれの出社基準によって人的被害を減らすとともに、出勤時に避難が必要となった場合には、避難誘導や連絡などの担当者を決めて、役割を分担しておけば緊急時でも円滑に動けます。

とくに、出社する従業員と、出社しない従業員の線引きを明確にすると、混乱を招かずに従業員を配置できます。通勤の可否、自宅の被害状況、家族の安否などを基準にすると判断しやすいでしょう。

安否確認手段の確立

災害時の状況を速やかに確認するために、従業員と連絡が取れる安否確認の方法を確立しておきましょう。

災害発生時に従業員が全員社内にいるとは限らず、通勤時の他、や自宅で被災する可能性もあります。一人ひとりに連絡すると手間がかかるようであれば、安否確認システムを導入すると、効率的な状況把握が可能なので、検討してもよいかもしれません。

たとえば、トヨクモの「安否確認サービス2」は、災害情報と連動して従業員に自動でメールを送信し、リアルタイムで安否の回答を集計できます。30日間の無料お試しもあるので、興味があれば参考にしてください。

安否確認サービス2の製品サイトに遷移します。

台風の被害による保険や補償について

この章では、台風の被害を受けた場合の保険を説明します。建物の破損や従業員の負傷など、台風発生時のリスクに対する保険です。内容や手当の適用範囲を踏まえ、どの条件ならば補償されるのかを確認しましょう。

建物への火災保険の水災補償

建物が受けた被害に対しては、火災保険の水災補償特約などで補償を受けられます。

日本損害保険協会が発行する資料によると、直近の2022年に発生した台風14号、15号で保険金を支払った実績があります。

参考:日本損害保険協会 近年の風水害等による支払保険金調査結果(見込み含む)

火災保険は、建物のみを保険対象として契約した場合には、建物内の機器が被害を受けても補償を受けられない仕組みです。そこで、建物と家財の両方を保険の対象にすることをおすすめします。もちろん台風などの水害でも保険がおりるような特約になっているかどうか、必ず確認をしてください。

もちろん台風などの水害でも保険がおりるような特約になっているかどうか、必ず確認をしてください。

従業員への労災保険

従業員が災害でケガを負った際に、労災保険で補償される場合があります。労災保険では、勤務中や通勤中に負った傷病に関して補償の請求が可能です。

台風の発生時では、勤務中に強風で飛んできた物がぶつかって負傷するリスクや、通勤中に転倒して負傷するリスクが存在します。

従業員の負傷に際して事業主が対策を怠っていた場合は、安全配慮義務違反として損害賠償を請求されることがあります。ただし、通勤については勤務中の範囲から外れるため、原則としては安全配慮義務の対象外です。

参考:厚生労働省 労働災害の発生と企業の責任について

従業員への休業手当

会社が休業すると、従業員に休業期間分の手当を支払う場合があります。

労働基準法第26条では、会社側の都合で従業員を休ませた場合に、休業手当の支払いを必要とする内容が明記されています。

参考:厚生労働省 休業手当について

一方で、災害で施設や設備が直接的な被害を受けるなど不可抗力で休業せざるを得ない場合は会社都合とは判断されず、休業手当を支払わなくてもよい規定です。

しかし、不可抗力でなく会社側の判断で休業する場合、例えば、台風で客足が遠のくために会社が判断して休業する場合などは、休業手当を支払う必要があるために注意が必要です。

年々増えている台風対策を今のうちから行おう!

当記事では、企業が実践できる台風対策を紹介しました。

BCPを事前に策定しておけば、被害を最小限に抑えられる可能性があります。

また、災害後に災害からの早期復旧や事業継続も可能となります。この機会に、自社の台風対策を見直してみてはいかがでしょうか。