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台風被害を未然に防ぐ!地域の特性を知って従業員を守るためのマニュアル作成方法

7月から10月にかけて接近・上陸する数が増える、台風。暴風雨をもたらすだけでなく、川の氾濫や土石流、がけ崩れ、地すべりなど、大きな自然災害が発生する危険性もあります。

台風は危険ですが、地震と違い、あらかじめ被害を予測できます。今回は、台風対策のマニュアルづくりができるよう、台風の危険性、被害を未然に防ぐ備え方を解説します。今すぐ実践できるよう、自社のやり方に合った台風対策を確立させましょう。

甘く見られがち? 台風の危険性とは


毎年やってくる台風の季節。改まって台風対策なんて考えなくてもいいんじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、大雨による土砂災害や浸水害、高潮や高波、そして暴風雨による被害など、台風の本当の危険性について説明します。

1 大雨による災害
・土砂災害
すさまじい破壊力をもつ土砂が、一瞬にして多くの人命や建物などの財産を奪う、土砂災害。山の斜面や自然の急傾斜の崖、人工的な造成による斜面が突然崩れ落ちる崖崩れや、川底の石や土砂が一気に下流へと押し流される土石流などがあります。
・浸水害
短時間の強雨などが原因で下水道やポンプによる排水が追いつかず、道路や建物が水につかる災害です。
・水害
河川の上流域での大雨などを原因として下流で生じる増水や氾濫により、水位の堤防越え、堤防の損傷・決壊、そして建物等の浸水が起こる災害です。

2 高潮による災害 
高潮は、気圧が下がって海面が吸い上げられたり、もしくは強風により海水が海岸に吹き寄せられることで、海面が異常に上昇する現象です。短時間のうちに急激に潮位が上昇し、海水が海岸の堤防等を越えると一気に浸水。多数の建物の床上、床下浸水などを引き起こします。1999年の台風18号の高潮では、熊本県不知火町で13名、また、2004年の台風16号では瀬戸内海沿岸で高潮が発生して3名の方が亡くなりました。

3 高波による災害
波は、風が強く、吹く距離が長いほど高くなります。台風の中心付近では10mを超える高波になることも。また、台風がはるか南海上に発生した場合でも、うねりとなって太平洋沿岸まで伝わって来ることもあります。

4 暴風による災害
平均風速15~20m/sの風が吹くと、歩行者が転倒する危険性が出たり、高速道路での車の運転に支障が出るようになります。さらに風が強くなると、建物の損壊、農作物の被害、交通障害、窓ガラスの損壊などのほかにも、風で飛ばされてきた物で電線が切れて停電したり、怪我をしてしまうこともあるでしょう。最大風速が40m/sを超えると電柱が倒れてしまいます。

以上のように、台風はさまざまな被害をもたらし、社会に甚大な被害をもたらす危険性があります。被害を未然に防ぐためにどのような方法があるのか、次の章で確認してみましょう。

台風被害を未然に防ぐ方法

台風対策は、誤った方法をとると、企業の財産に損害が生じたり、従業員が生命の危機にさらされてしまうことも考えられます。そうならないように、被害をなるべく最小限にするための台風対策を考え、実行しましょう。

1 台風の理解と予知
まずは、到来する台風の理解と、災害を予知します。気象庁のホームページを参考に、台風の大きさや早さ、進路、いつ暴風域に入るのかなど台風の性質を理解し、適切な判断が下せるよう準備します。

また、あらかじめハザードマップを入手し、地域特有の危険性を確認することも重要です。ハザードマップには、避難所の場所が記載されているので、職場から最寄りの避難所へのルートも確認しましょう。

ハザードマップで各事業所の立地(地形や道路など)の特性を把握することは、作成の単位についても内容についても極めて重要です。特に注意を要する土地は次のとおりです。

■ゼロメートル地帯:堤防が決壊すると大被害を受けるおそれがあります。都内では、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区などが挙げられ、23区の面積の約2割を占めます。
■海岸地帯:高潮と台風が重なったときに高潮が猛威を振るいます。特に低い土地では厳重な警戒が必要です。
■河川敷:昔河川敷だったところも、豪雨により浸水する危険性があります。荒川や多摩川などが代表的です。
■造成地:丘陵を切り崩した造成地は、地質や地形が不安定で、豪雨で地盤が緩むと崩れる危険があります。
■扇状地:山間部への集中暴雨によって土石流が発生すると、直撃を受ける恐れがあります。武蔵野台地が典型的です。

また、台風の到来、災害予防といった防災気象情報を入手するためには、次のような情報源があります。

気象庁ホームページ:警報・注意報・台風情報・解析雨量など
気象会社の情報提供サービス(サービス一覧):防災情報のウェブサイトを開設したり、電子メールによる防災気象情報の配信サービス等をしています。
都道府県や市町村の情報提供サービス(サービス一覧):自治体では、住民向けの防災ウェブサイトを開設したり、電子メールによる防災気象情報の配信サービス等を行っています。

2 オフィスの備え
雨や風がひどくなる前に社屋と周辺を整えましょう。

オフィス周辺の備え
■窓ガラスにひび割れ、ゆるみ、窓枠のがたつきがないか確認しましょう。
■窓や戸はしっかりとカギをかけ、必要に応じて補強。必要な建物の補修などもしておきましょう。
■排水機能を確認し、側溝や排水口を掃除して水はけを良くしておきます。特に、敷地内に降った雨水を集める「雨水ます」が詰まると道路冠水や浸水の原因になるので、丁寧な清掃が必要です。
■粗大ゴミや商品・紙束類など飛散しやすいものを放置しないこと。風で飛ばされそうな物は飛ばないよう固定し、建物の中へ格納します。
■階段に水が流れ込んできても安全に避難できるよう、手すりに脱落の危険性がないか確認しましょう。
■看板や案内板など破損していないか確認し、落下防止措置をとりましょう。

オフィスの中の備え
■重要な書類、パソコン、メモリーなど電子機器などを安全な場所に退避させましょう。
■交通機関などの運行が止まったときなどに備えて、非常用の備品があるか確認しましょう。
■飛散防止フィルムなどを窓ガラスに貼ったり、飛来物の飛び込みに備えてカーテンやブラインドを下ろしておきましょう。
■断水に備えて飲料水を確保しましょう。
■学校や公民館など、避難場所として指定されている場所への避難経路を確認しましょう。

3 社員関係
安全を第一に考え、柔軟に出退社時間などを変更しましょう。担当者の判断が求められる状況においては、防災時のプロアクティブの行動原則*に基づいて判断しましょう。

*プロアクティブの行動原則とは、米国で危機管理のトップに立つ人が考えるべく行動原則のこと。「疑わしいときには行動せよ」「最悪事態を想定して行動せよ」「空振りは許されるが見逃しは許されない」という三つの原理を指します。

自社を守る!台風対策のマニュアル作成

最後に、台風対策の一連の流れを、自社の環境に合わせマニュアルとしてまとめましょう。

防災マニュアルは、非常時の行動指針となります。常日頃からマニュアルの内容を理解し、行動できるようにするものであり、いざというときに初めて理解を試みるものではありません。

たとえば、台風対策マニュアルの作成時には、以下の6項目に関して、わかりやすく簡単にまとめておくとよいでしょう。

・台風発生時の組織体制、緊急連絡網、安否確認方法
台風発生時の出勤・退勤時間のお知らせや、緊急連絡が必要になった場合の連絡網などを記載
・情報収集と提供方法
台風の情報の収集方法、また企業からの提供方法について記載
・地域特有の危険性の有無とオフィスと周辺の備え(災害予防対策)
ハザードマップを確認し、自社の環境に合わせたオフィス環境の整え方のチェックシートを用意
・避難所の場所
ハザードマップを確認し、自社に一番近い避難所の場所を提示

まとめ

内閣府が平成21年に行った「防災に関するアンケート調査」によれば、「台風」は、身近な危険として「地震」に次いで2位(32.7%)でした。自然災害の中でも、国民全体の高い関心を集めていることがうかがわれます。地震対策は積極的に取り組んでいる企業が大半ですが、近年の異常気象や相次ぐ大雨被害をかんがみると、台風対策も怠ることはできません。一からマニュアルを作成するとなると身構えがちですが、これまでの地震を中心とした防災対策に、台風やゲリラ豪雨への留意点を盛り込むなど、実践的な取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。

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