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【9月1日は防災の日】中小・ベンチャーの会社でもできる「防災訓練」のススメ

9月1日「防災の日」は、1923年に関東大震災が起こった日です。災害の記憶を忘れず、備えを怠らないように制定されたこの記念日には、大企業や官公庁、学校など、日本全国で防災訓練が実施されています。

このように、大企業では当たり前のように実施されている防災訓練も、中小企業・ベンチャー企業では行われていない企業が少なくありません。必要だとわかっていても、コストがかかる上、利益を生む投資でもないので、なかなか実施には踏み切れないという事情があるのでしょう。

でも、よく考えてみてください。もし、首都直下型地震や南海トラフ地震のような大震災が起こったら? あなたの会社は、これらの大災害に対して、万全の対策を講じることができるでしょうか。この対策が万全でない場合、従業員を失うという莫大な「損失」を被ることになるのです。このリスクを予め回避するために、防災訓練の実施を検討すべきです。

「防災の日」という防災対策を考えるこれ以上ないタイミングで、あなたの会社でも防災訓練の実施を考えてみるのはいかがでしょうか。それでは、中小企業やベンチャー企業の方のために、従業員の命を守るため、最低限取り組むべき7つの防災訓練をご紹介しましょう。

必ず取り組むべき、4つの防災訓練

まず、災害時に緊急性があり、社員の命を救うために必ず実施しておかなければならない訓練を紹介します。ここで大切なことは、それぞれの訓練の担当者を事前に任命しておき、訓練のときから担当者が主導して実施されるようにしておくことです。

1. 初期消火訓練

消火器で自主的に消火する

地震によって火災が発生した場合、何よりも優先して、緊急で対応しなければなりません。自主的に消せるのが発火後、2分以内程度だからです。消火器を活用し、消火を行う必要があります。

災害時に戸惑うことなく、消火器を使うには、まず消火器の設置場所を知っておくことと、使い方を知っておくことです。実際に消火器を使う訓練は大掛かりなものになってしまうため、設置場所を把握しておき、使う手順をシミュレーションしてみましょう。

手順はピンを抜いて、ノズルを持って、レバーを握るだけ。消火器の飛距離は約6m。消火器で消火可能なのは、火が天井に回る前までです。もし火がそこまで燃え広がってしまったら、消火器では対処できません。また、消火器で火を消したとしても、まだ火元は残っている可能性があるため、必ず水をかけましょう。

実際の訓練では、こうした手順や注意事項を全体でシミュレーションしてみるといいでしょう。

また、防火扉が設置されているオフィスであれば、火と煙が拡がるのを遅らせるために、扉の閉鎖も行ってください。

ただし、自主的な消火を行うのは、発火したばかりの、あくまでも初期の火災のみです。建物の構造にまで火が拡がってしまうと、消火器での消火は不可能なので、そうなってしまったら避難することを優先しましょう。

消防署に連絡する

そして、自主的な消火と同時に行わなければならないのが、消防署への通報です。消火担当とは別に、情報連絡担当を設けます。電話が使用できないことも予想されるので、消防署に直接行って要請することも検討しておきましょう。そのため、オフィスから最寄りの消防署へのルートを防災訓練で確認しておく必要があるでしょう。

二次災害を防止する

初期消火に成功しても、余震によって新たな火災が発生することがあります。これを防止するために次のことを行いましょう。

まず、電気のブレーカーを切り、ガスの元栓を閉めることです。タバコの火、ストーブの火などは消えているか必ず確認します。また、工場などの設備が備わっている会社の場合、稼働している生産設備は手動で緊急停止させてください。

こうした確認事項は訓練時にシミュレーションするのはもちろんですが、チェックリストにしておくことが大切です。そうすれば、災害時の混乱した状態でも、忘れずに対処することができます。

2. 避難訓練

避難すべきかどうか判断する

避難は必ず行わなければならないわけではありません。オフィスに留まることが危険になった場合の最終手段が避難なのです。余震が続くことで、外の看板やガラスといった落下物による被害が予測されるため、オフィスの建物に損傷が少ない場合は留まるという選択肢を検討しておきましょう。

そもそも、地震が小規模の場合、従業員を退社させるという選択肢も検討しておく必要があります。

また、火災の延焼の危険性が少なく避難を行う必要がない「地区内残留地区」に指定されているエリアであれば、基本的に避難せずにオフィスに留まるようになっています。

この判断のフローについても、わかりやすいフローチャートにして災害時に見るシートとして準備しておくといいでしょう。災害担当者がいない会社の場合、こうしたフローややるべきことを見える化しておくことが大切です。

避難をする

避難しなければならない事態になった場合に必要になってくるのが、私たちがよく知る避難訓練です。手順は次の通り。

1. 災害発生
2. 災害の発生源を確認。火災や建物の損傷のため、避難の必要ありと判断
3. オフィス内に通知・避難場所への誘導
4. 避難者の安否確認

避難場所は、自治体が指定する広域避難場所に避難しましょう。これは学校や公園などですが、必ず場所の確認をしておき、実際の訓練でもその場所へと避難すべきでしょう。

複数のオフィスが入居しているビルの場合、避難経路を確認しておきましょう。訓練のときは、避難通路や階段に物が置いていないかチェックしておいた方がいいでしょう。避難通路に物が放置されているのは消防法違反に当たります。

3. 救出・救助訓練


大きな災害の場合、オフィス内で負傷者が発生する可能性があります。その際は後述するように、応急救護が必要となります。また、行方不明者や外出者の安否確認が取れないという事態も起こり得ます。リーダーは連絡が取れない従業員の人数を把握して、救出活動を実施しましょう。

行方不明者がオフィスのどこかにいることが判明した場合、捜索に当たる捜索チームを複数人に任命し、捜索に当たってもらいます。この捜索チームも事前に決めておきましょう。

4. 応急救護訓練


オフィス内に怪我人が発生した場合、応急救護を行います。ただし、応急救護を実施するには訓練が不可欠です。救護担当者には普通救命講習を受講してもらい、心臓マッサージや人工呼吸などの応急手当の基礎知識と実技を定期的に学んでもらう必要があります。

また、AED(自動体外式除細動器)をオフィスに導入し、その使用方法を学ぶコースを受講するといいでしょう。消防署や赤十字で受けることができます。このコースは最短で45分から実施されており、これを学んでおくだけでも、従業員が死亡するリスクを軽減することができるはずです。担当者数人が受講し、それを社内でレクチャーするという方法で訓練に活用してもいいですし、短時間のコースを社員全員が受講してもそれほど負担ではないはずです。

余裕があれば取り組みたい、3つの防災訓練


前述の4つの防災訓練は必須。それよりも優先順位は下がりますが、取り組んでおきたい訓練を次に紹介します。

ただ、注意しなければならないのは、どの訓練も防災計画として事前に準備しておくことは必須という点は忘れないでください。

1つめは「対策本部設置訓練」で、災害時に対応を行う災害対策本部を設置する訓練です。どんな災害が起きた場合に設置するのか、夜間や休日の場合はどうするのか。予め決めておきましょう。

2つめは「情報収集・伝達訓練」。これは主に従業員の安否確認を目的とするもの。訓練として行う場合、通常の電話やメール以外の、安否確認サービスや防災無線を導入し、使い慣れておく訓練を行う必要があるでしょう。

3つめは、「帰宅計画の準備・実行」。これは、徒歩で出社・帰宅する訓練です。出社は夜間や休日に災害が起きた場合に、災害対策本部設置のために行うといった状況を想定しています。帰宅は災害状況の全貌が分かり、徒歩での帰宅が安全と確認された場合に行うことを想定しています。実際に歩かないまでも、道順の確認はしておくべきでしょう。

まずはあなたの会社でできる防災訓練からはじめよう

今回は全国的に防災訓練が開催されている9月1日「防災の日」というタイミングだからこそ、防災訓練の始め方を紹介してきました。とはいえ、「防災の日」だけが防災訓練を行う日ではありません。地震大国であり、今後も首都直下型地震や南海トラフ地震の発生が予測される日本では、常に防災を意識する必要があるのです。

今回は防災訓練を実施するということにフォーカスしましたが、そもそも訓練以前に、防災計画を立てることは企業にとって必須事項です。まず、あなたの会社に防災計画がない場合、策定を急ぎましょう。その上で、防災計画の中から、事前の練習が必要なことを防災訓練として実施してください。

とはいえ、防災訓練を実施していない中小企業・ベンチャー企業の方々は、まずはできることからはじめることが大切です。記事で紹介したような、最低限必要な防災訓練の箇所だけでも訓練しておくことが、従業員の命を守り、会社の利益を守ることにも繋がるのです。

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