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いずれは国家資格に!?受験者急増中の防災士とは

いつ起こるか誰にも予測できない災害。だからこそ災害が起きた時、多くの人はパニックに陥ってしまいます。そんな時その場にいると安心なのが、防災や減災に関する知識や技能を持ち、リーダーシップをとることができる人。リーダーを起点に素早い対応ができれば、被害の拡大を最小限に抑えることができるでしょう。

しかし、そういった人が運良くその場にいるかは分かりません。大切な家族や職場を守るため、いざという時は自分がリーダーシップをとれるようになっておくことをオススメします。

そこで今回ご紹介するのは、今注目を集めている「防災士」

民間の資格である防災士ですが、相次ぐ自然災害の影響を受け、国家資格への昇格も期待されています。大切な人々の命は守るのはもちろん、企業の防災担当になるにも有利な資格と言えるでしょう。

防災士の具体的な役割とその取得方法について、ぜひ参考にしてみて下さい。

緊急時のリーダー、防災士の役割

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日本防災士機構は、防災士について以下のように定義しています。

「自助・共助・協働」を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、そのための十分な意識と一定の知識・技能を習得したことを、日本防災士機構が認証した人です。
(引用:日本防災士機構)

防災・減災に関するスキルを習得して生かすこと、そして、職場や地域の防災力を高めるため、防災・減災活動につとめることが防災士の責務です。また、災害時に人々の生命にかかわる被害が少しでも軽減されるように、救助・応急活動の中心になることも求められます。

防災士は、資格取得の際に、救急救命講習を受講する必要があります。そのため専門家に代わって救助・応急活動も行えます。また、周囲の人々に指示を出して非常用備品の用意をさせるなど、災害現場におけるリーダーとしての役割が求められます。

民間の資格ですが、専門性を持って活動にあたる「防災のプロ」として認められるため、企業の防災担当者が取得するケースが増えており、近年では、個人だけではなく、企業単位での防災士の資格取得も盛んになっています。

日本郵便は、全国の20,000人の郵便局長すべてを防災士とする目標を掲げて、話題となりました。近年、これまでにない大災害が数多く発生しているため、日本郵便の様な先進的な取り組みをしている企業を中心に、防災士の価値が高まっていくでしょう。

防災士になるためのステップ

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個人だけでなく、企業単位でも取得が進む防災士の資格ですが、具体的にどのように取得すればいいのでしょうか。防災士になるための手順は、通常、次の通りです。

①日本防災士機構が認証した研修機関が実施する「特設会場において専門家講師の講義
による12講座(1講座60分以上)以上の受講」および「研修レポート等」の提出による
研修カリキュラムを履修して「履修証明」を取得する。

②前項研修講座の履修証明を取得した者は、日本防災士機構が実施する「防災士資格取得試験」を受験し、合格する。(受験料=3,000円)

③全国の自治体、地域消防署、日本赤十字社等の公的機関、またはそれに準ずる団体が主催する「救急救命講習」を受け、その修了証を取得する。 (なお、前項研修講座に救急救命講習が含まれている場合は、講習により修了証が取得出来ます。)

④上記3項目の証明書を取得することにより、日本防災士機構への「防災士認証登録申請」が完了。(申請料=5,000円)

参考:日本防災士機構・防災士になるには(手順と手続きについて)

簡単にまとめると、「講座を履修」「資格試験に合格」「救急救命講習を受講」という3ステップが必要です。長期間勉強しなければ取得できないという資格ではないため、「仕事が忙しくあまり時間が取れない」という方も、気軽に取り組むことができるのではないでしょうか。

また、研修は機構が指定した研修機関や多くの自治体により、全国各地で行なわれているため、遠出する必要はありません。

研修先の一覧はこちら

日本防災士機構・防災士養成研修期間のご案内

こうして気軽に取得できる体制が整っているため、防災士自体の認知度があがるとともに、防災士を取得する人は年々増えています。

防災士養成研修と資格取得が始まったのは平成15年。それから13年経った今では、全国で109,093人もの防災士が活躍しているのです(平成28年3月末現在)。

実際の防災士の活動例

防災士の育成・活用を行う日本防災士機構は、活動内容を広めるために毎年一度「防災士REPORT」を発行しています。2018年版のレポートをもとに、防災士の活動例をいくつかピックアップしました。

岐阜県:中学・高校生をはじめ若い防災士が続々誕生

中学生防災士による要支援者避難訓練

防災リーダーを育成するため、岐阜県恵那市では「防災アカデミー」を年に一度実施しており、「防災士REPORT2018」の作成時点で322名の防災リーダーを輩出。中学・高校生の防災士も多数誕生しており、同地域では積極的な防災訓練が行われています。

恵那市は土砂災害警戒区域等が900ヶ所もあり、過去には430人が孤立する豪雨も発生したため、コミュニティレベルで防災意識を高める必要がありました。恵那市では、こうした背景により実施している防災訓練・体制作りのなかで、防災士が活躍しているようです。

熊本県:防災士資格を保有する学生によるボランティア

熊本県民総合運動公園陸上競技場における
支援物資仕分け作業

防災士資格を保有する熊本大学生を中心とした「熊助組」は、2007年に発足した災害復旧支援に携わっているボランティア団体です。同団体の発足直後に発生した土砂災害・浸水被害の際には、土砂撤去や家財の運び出しに率先して協力し、2015年に熊本大学工学部の公認サークルとなりました。

2016年に発生した熊本地震では、熊本大学の体育館にて避難者の誘導や毛布の配布を行い、不安に襲われる人々を励ますべく声かけを継続。

物資の搬入に協力する一般ボランティアが参加した段階で、積極的に人手不足の現場に移動するなど、防災士としての知識をフル活用して熊本再起に貢献しました。その後も、熊本地震が残した傷跡をケアするため、仮設住宅の入居者を対象にした支援を継続しています。

福島県:防災士会による年間40回の防災イベントを実施

福島県総合防災訓練では段ボールベット設置を指導

東日本大震災の翌年に発足された福島県防災士会は、福島県消防学校にて講演や防災訓練などのイベントを年間40回ほど実施。2017年に開催された防災訓練には、2,000名もの訪問者が集まり、防災サマーキャンプや防災カフェなどの活動に多数の防災士が参加しています。

特にビニール袋・新聞紙・ラップを使って、ベストやスリッパといった防災グッズを作成する講座は人気があるようです。このような楽しさと勉強を交えたイベントを通じて、防災意識を促進するために活動をしています。

参考:日本防災士機構「防災士REPORT2018」

「防災のプロ」への一歩を踏み出そう

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いざという時には、プロが救助に駆けつけてくれるのを待つだけでなく、自ら行動を起こす必要があります。大きな自然災害が多発している日本において、防災・減災の知識を持つことは、今や不可欠と言えるのではないでしょうか。

防災士になれば、予期せぬ災害に直面しても専門性の高いスキルを生かして、主体的に行動することができます。大切な人々の命を守ることができるだけでなく、職場や地域のコミュニティを救うリーダーとして活躍できるのです。

企業の防災担当の方、非常時に皆を守りたいという想いを持っている方、ぜひ取得を検討してみてはいかがでしょうか。あなたが一歩踏み出すことによって、多くの人の命を守ることができるかもしれません。

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