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【労災かくしは犯罪です】労災申請は悪じゃない。企業を守ってくれる盾だった

従業員が通勤中・仕事中にケガをしたときや、事故に遭ったとき、あなたの会社では、面倒がらずに「労災」の報告をされていますか。

もちろん、多くの企業が何かあった場合、「労働基準監督署(以下、監督署)」に労災の届出をしています。しかし中には、労災保険の保険料が上がってしまうかもしれない、企業の社会的信用がなくなってしまうかもしれないなど、さまざまな理由から労災をないものとしてしまうケースも多く見られます。

これは「労災かくし」といわれる犯罪です。世間に知られたら、それこそ社会的信用がなくなってしまうのですが、労災申請を嫌がる企業は少なくありません。そこで今回は、そもそも労災保険とはなにか、労災の手続き方法から、企業にとってのメリット、デメリットまで、労災について考えてみましょう。

労災保険とは、通勤・仕事中のケガ、病気などの保証を行う制度

そもそも労災保険とは、仕事中や通勤中に事故や災害に遭い、ケガや病気になって、体に障害が残る、もしくは死亡した場合などに保障を行う制度のことです。災害にあった被保険者の社会復帰や、被保険者の遺族への援助なども対象に含まれます。

通勤・仕事中におけるケガや、仕事内容が関係する病気などが労災保険の範囲であるのに対し、通勤・仕事中以外でのケガ、出産、仕事に関係のない病気などは健康保険の範囲になります。

この労災保険料は、すべて会社が負担するもので、労働者による保険料の負担、申告は必要ありません。年に一度、雇用保険と合わせた「労働保険料」として、前年度分をまとめて申告し、納付することとなっています。

労災保険料の計算方法は、以下の通りです。

労災保険料=全従業員の年度内の賃金総額×労災保険料率

ここでいう「賃金」は賞与や多くの手当てを含む額であり、税金、保険料の控除する前の支払い総額のことです。4月1日〜翌年3月31日に支払いが確定した賃金が対象で、事業主や法人役員の賃金は、労災に加入していないため、除外します。

「労災保険料率」は、事業の種類によって異なります。たとえば、林業の保険料率が60/1000なのに対し、食料品製造業は6/1000、電気、ガス、水道または熱供給の事業は3/1000。この数値は、原則3年ごとに改定されています。

労災を報告すると企業に何が起こる?

労災を報告することで、企業にどんな影響が起こるのでしょうか。まず考えられるのは労災保険料率が上がることです。

ですが、これは1件、2件の労災申請で大きく変動するものではありません。また、保険料の給付額が保険料に影響するのは、従業員が100名以上いるような、規模の大きな事業所のみ。その場合も、労働局から労災保険料の増減の通知が来ます。

また、過労による怪我など、労災認定が多くなると、監督署の監査対象となり、従業員へのヒアリングなど抜き打ち調査が行われることがあります。だからこそ、労災をかくし続ける裏には、残業代未払いや悪質な労働環境など、表面化して欲しくない事情があるのかもしれません。

【POINT】
・労災を報告したところで、1、2件の報告では大幅な保険料率の上昇はない<会社負担額は増減しない>
・極端に労災を隠し通す企業は、労災以外に職場の安全性や管理面などが悪質な場合が多い

労災かくしをすると企業の社会的信用がなくなり、企業存続の危機に陥ることも

労災を報告しても、企業にはあまり影響がないことがわかりましたが、それでも「労災かくし」は多くの企業が行っていることも事実です。

【労災かくし3つの行為】
1、「労働者死傷病報告」を故意に監督署に提出しない行為
2、虚偽の内容を記載した「労働者死傷病報告」を監督署に提出する行為
3、監督署に虚偽の陳述および報告をする行為

※労災保険を使ったかどうか(労災で治療を受けたか)は問わない。ポイントは「被災者が不利益を被らず事業者などから別途補償を受けてかどうか」。被災者にとってマイナスではなければ問題ない。

要は、ケガや病気を負った被災者がいることを報告しなかったり、嘘をついたりすることを労災かくしといいます。

では、労災かくしを行ってしまう事業者の心理はどうなっているのでしょう。

【労災かくしが行われてしまう主な理由】
・元請や上位請負会社に「うまく処理してくれ」と要求され、断ると仕事がなくなる状況かもしれない。
・現場で事故を起こしたことがわかると、仕事がストップしてしまう。
・保険料率が上がり、結果資金繰りに支障が出る可能性がある。
・被災者からの報告が遅く、今さら労災があったと監督署に報告しにくい。
・被災者から「たいしたケガではない」と言われ、放置してしまう。結果、休業が長引き、休業補償等負担ができなくなる。
・労災事故を発生させると社内評価が下がり、のちの対応策も煩わしいため、手間や負担がかかる。

労災かくしはなぜ起きてしまうのか。それは「仕事がなくなるかもしれない」という深刻なリスクを感じてしまうことが、一番大きいのかもしれません。

また、労働者死傷病報告の監督署への提出は、労働案勢衛生法(以下、安衛法)第100条、労働安全衛生規則97条により以下のように定められています。

【「労災かくし」は犯罪行為】
・労働者死傷病報告の提出を怠る、もしくは虚偽の報告をすると、50万以下の罰金に処せられます(安衛法第120条、第122条)
・第120条の違反行為があれば、行為者を罰するほか、その法人または人に対しても、各本条の罰金刑を科する(安衛法第第122条)。司法処分では、安衛法・労働基準法が両罰規定あり(刑法はなし)。

このように、労災を申請しないでおくと書類送検されるリスクが高まり、仕事を進めるどころか、取引停止等を課せられてしまうことがあります。起訴されると、さらに重い処罰が科せられ、社会的な信用がなくなり、企業の存続の危機に関わる事態となる可能性もあります。そのため労災が明らかに認定されるケガや病気をした場合は、かならず申請しなければならないのです。

厚労省は、労働基準関係法令違反に係る公表事案(厚生労働省 2021年7月)を公表しています。

「労災かくし」は、犯罪であり、まちがいなくしないほうが企業のためとなるのです。

労災保険の手続きは迅速に

では、労災保険を手続きするとき、どんな手順を踏むべきなのでしょうか。

ケガや病気、死亡など、災害の内容や事故の内容によって、手続きの方法、手順が異なります。医師の診断書など必要書類を揃え、給付金の支給請求書とともに監督署に提出。通常は、会社が手続きを行うか、個人に指示をだし、書類を作成させることになります。

特に気をつけるべき点は、休業4日以上の「労働者死傷病報告」の期限です。こちらは、災害発生後、遅滞なく労働基準監督署に報告書を提出しなければない、と規定があります。おおむね、1週間から2週間程度といった解釈で問題ないでしょう。1ヶ月を超過した場合は、提出が遅れた理由についての書面による報告を求められることがあります。

具体的な手続きの方法については、以下の厚生労働省のパンフレットを参照してください。

参照:
労災保険 請求(申請)のできる保険給付など(厚生労働省)〜全ての被災労働者・ご遺族が必要な保険給付等を確実に受けられるために〜
以下の情報は、申請までの流れと必要な書類がすべて記載されたパンフレットです。被災者本人向けですが、総務担当の方も目を通し、従業員に周知しましょう。
1、仕事または通勤が原因で負傷したり病気になった場合
療養(補償)給付、休業(補償)給付、休業補償特別援護金
2、仕事または通勤が原因で親族が亡くなった場合
遺族(補償)給付、葬祭料、長期家族介護者援護金、未支給の保険給付、労災修学援護費、労災就労保育援護費
3、すでに労災保険給付を受けている場合
傷病(補償)年金、障害(補償)給付、アフターケア、介護(補償)給付、義肢など補装具の費用の支給、外科後処置、その他の支援制度
4、会社の健康診断で異常の所見があると診断された場合
二次健康診断等給付

まとめ

労災が発生した場合、労働者を対象にした保険ではありますが、実は守られているのは事業主側になります。業務中の事故で労働者が死亡した場合、遺族への補償を企業側が求められることがあり、補償金額はかなり大きなもの。その負担を肩代わりしてくれるのが、労災保険なのです。まずは、先ほど紹介したパンフレットなどで従業員に労災について教育し、「意図しない労災かくし」が発生しないよう徹底して呼びかけることも必要になります。

企業の会社負担額も、適正な料金となるよう、3年に一度改正されています。正しい知識を持ち、適切な判断を下せるようにしておきましょう。

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