~事業継続に必要なこと、全部お伝えする総合メディア~

脱「長時間労働」「パワハラ」!今こそ企業の過労対策を始めよう

2015年12月、入社してわずか9ヶ月の電通の女性社員が、職場での精神的ストレスを苦に自殺。2016年9月には労災認定もされました。この事件、とくに2016年末には大きくニュースに取り上げられたので、記憶に新しい方も多いことでしょう。

月100時間以上にも及ぶ長時間労働に加えて、上司からの嫌がらせを受けていたという彼女の一件を受け、「長時間労働」に強く反対する流れがいま日本で起こっています。

この事件を重く受け止めた厚生労働省は2016年12月末、「過労死等ゼロ」緊急対策を打ち出して企業へ注意喚起をおこないましたが、果たしてこれで本当に過労死を防ぐことはできるのでしょうか?

従業員の過労死・過労自殺を防ぐために、企業は何をできるのか。過労死の現状について押さえながら見ていきましょう。

年間500件近い、「過労死」「過労自殺」の労災請求

過労による死には、身体的負荷による「過労死」と精神的負荷による「過労自殺」の2種類があります。

長時間の労働により肺や心臓に著しい負荷がかかって、くも膜下出血や心筋梗塞が原因で命を落としてしまうのが、「過労死」。長時間労働やパワハラなどによるストレスによって、うつ病などの精神障害を起こした結果、自殺するのが「過労自殺」です。電通の女性社員の事件は、「過労自殺」のケースになります。

厚生労働省が発表している平成27年度「過労死等の労災補償状況」によると、身体的負荷による「過労死」の労災請求は283件、精神的負荷による「過労自殺」の労災請求は199件。この数値は、平成23年〜平成27年の間、「過労死」「過労自殺」ともにほぼ横ばい。この数年で大きな改善はされていないことがわかります。

むしろ、10年前の平成17年のデータでは「過労死」請求336件、「過労自殺」請求147件なので、精神的負荷については上がっているのです。

そこでここからは、2016年の年末に厚生労働省が発表した「過労死等ゼロ」緊急対策の指針をもとに、企業はどのような対策を取っていけばいいのか解説していきます。

過労死ゼロに向けて〜違法な長時間労働を許さない取組の強化

2016年末に公表された「過労死等ゼロ」緊急対策では、以下の3つの指針が発表されました。

1.違法な長時間労働を許さない取組の強化
2.メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組の強化
3.社会全体で過労死等ゼロを目指す取組の強化

そのなかでもまず、1.違法な長時間労働を許さない取組の強化では、以下の4つの施策が打ち出されています。

第一に、新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底。使用者が労働者の労働時間を把握するためのガイドラインを新たに定め、労働者が自己申告した時間と実労働時間の間に差が見られる場合、使用者は実態調査をおこなわなければなりません。また、暗黙のうちに強制されていた研修や自己啓発の時間も労働時間として義務付けられることとなりました。

第二に、長時間労働にかかわる企業本社に対する指導。これまで事業所ごとにおこなわれていた労働基準監督署の監督指導を、企業幹部に対して実施。全社的な改善を促します。

第三に、是正指導段階での企業名公表制度の強化。これまでは、月100時間以上の残業が年間3事業場以上で認められていた場合のみ企業名を公表されていました(実績1社)。しかし、その要件を拡大して、月80時間以上の残業が2事業場以上で認められた場合にも企業名を公表することとなったのです。

第四に、36協定未締結の事業場に対する監督指導の徹底。36協定(法定労働時間を超えた時間働かせる場合に結ばなければならない労使協定)をまだ締結していない企業を指導することを定めました。

もちろん、このような施策を受けずとも適正な労働時間を保っているところ企業はあることでしょう。しかし、長時間の時間外労働について不安を覚えている企業はどうすればよいのでしょうか。有名企業の例を見てみましょう。

<三菱地所の取り組み>

企業リサーチサイトVORKERSが2017年2月におこなった「就活生向け『働きがいのある』ホワイト企業ランキング」で1位となった三菱地所株式会社は、2016年10月に「健康経営宣言」を制定して、社員の健康への配慮に力を入れていることで知られています。

勤怠管理システムに業務用PCのログオン・ログオフ時刻を連携して、従業員の労働時間を可視化。また、上司が部下との面談を実施して健康状態を把握できるようにしています。

そのほかにも2016年からは全社員に対してフレックス勤務制度を導入。事前に早期退社する日を決める「早帰りデー」や有給休暇日数の目標を定める「ポジティブ・オフ運動」なども実施し、月の平均時間外労働時間は約24時間となっています。

もちろん、いきなりこのような制度の実施は難しいでしょう、ただ、正確に勤怠を測りそれを上司が確認できる仕組みが整っていない企業は、まずは勤怠管理システムから見直してはいかがでしょうか。

過労死ゼロに向けて〜メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組の強化

過労が原因でおこなわれる自殺を防ぐためには、長時間労働だけではなくメンタルへのケアも欠かせません。「過労死等ゼロ」緊急対策では指針として「メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組の強化」として以下の3つの施策が打ち出されました。

第一に、メンタルヘルス対策に係る企業本社に対する特別指導。メンタルヘルスに問題があった場合、これまで事業場単位で指導をおこなっていたのを、企業本社に対して指導。とくに過労自殺が起こった企業に対しては1年間継続して指導することとなりました。

第二に、パワハラ防止に向けた周知啓発の徹底。これまでは「パワハラ対策導入マニュアル」を作成して周知を促されていただけにすぎませんでしたが、今後は、事業場への個別指導の際にこのマニュアルを活用して、必要な取り組みなども含めて指導がおこなわれます。

第三に、ハイリスクな従業員を見逃さない取組の徹底。長時間労働をしている従業員の情報を事業者が産業医へ提供することを義務化し、過労死や過労自殺につながるリスクのある方が産業医と早期に面談することを推奨しています。

これらは国からの取り組みですが、では、企業はこれを受けて、どのようにメンタルヘルス対策を取ればよいのでしょうか。

<国際石油開発帝石の取り組み>

たとえば、ホワイト企業として知られる国際石油開発帝石株式会社(INPEX)では、従業員のメンタルケアを3段階に分けて考えています。予防(一次予防)、早期発見・対応(二次予防)、休職・復職(三次予防)です。

一次予防では、従業員が自身でウェブ診断をしてストレスチェックとセルフラーニングを実施します。この診断ツールは全従業員が気になったときにいつでも利用することができます。

二次予防としては、高ストレスと診断された従業員には産業保健スタッフが迅速に面談をして対応します。また、従業員の家族も利用できる24時間体制のカウンセリングサービス、EAP(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)も導入。従業員がストレスを抱え込まないよう、いつでも相談できる仕組みを構築しています。

三次予防——メンタル不全からの休職・復職については、2010年に作成されたマニュアルをもとに上司、主治医、産業医、保健師、人事スタッフらが連携。従業員の円滑な職場復帰をチームでサポートします。

従業員のメンタルヘルス対策を考えるうえでは、このように、段階別に必要なツールや面談、マニュアルを洗い出して考えることが求められます。もし何から手をつけたらいいかわからないという方は、まずは「一次予防」「二次予防」「三次予防」に分けて洗い出して考えてみてはいかがでしょうか。

「長時間労働」「パワハラ」対策を取らないのは、大きなリスク

2016年末から過労死・過労自殺に反対する流れは日に日に高まっています。もしかしたら、企業の総務の方のなかには「うちは常軌を逸した長時間労働やパワハラはしていないから大丈夫……」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、これだけ“長時間労働反対”の声が高まっている現在、たとえ問題が起こらなかったとしても、“対策をしていない”だけでもリスクになり得るのです。

他企業の事例に学び、まずはできることからひとつずつ取り組んでみてはいかがでしょうか?

トヨクモが運営する「みんなのBCP」とは

「みんなのBCP」とは事業継続に関わるあらゆることをメインテーマに、総務部の方にお役立ち情報を提供するブログメディアです。 トヨクモは緊急時のコミュニケーションツールである安否確認サービスを開発・提供しています。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA