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総務が変われば、会社が変わる。知っておきたい「戦略」総務の業務一覧

「表舞台に出ることがない」「雑用が多い」など、地味で裏方的なイメージを持たれがちな総務の業務…。

たしかに総務は、会社に直接の利益をもたらす部門ではありません。しかし、組織にかかわる事務を一手に引き受ける立場だからこそ、感謝をこめて「縁の下の力持ち」と呼ばれることもあり、社内で必要不可欠な業務として重用されている事実はまちがいありません。

さらに最近では「戦略総務」という概念も登場。黒子役に徹するのではなく、経営の作戦計画を練り上げて他部門のリーダーシップをとる役割が、総務に期待されるようになっています。

ここでは「戦略総務」とは何かを説明したうえで、この観点から、総務の業務を一覧で整理し、今後の総務がどのようなスタンスで会社を支えていけばいいか、解説します。

「守りの総務」から「戦略総務」へ

総務は、会社の事務業務のすべてを取り扱う部門です。いいかえれば、総務とは、生産・販売・営業など直接的に利益を生むライン部門ではなく、組織全体にかかわる事務を担当し、助言や支援を行うスタッフ部門。具体的には、「他に分類できない業務」を一手に引き受け、経営トップや各部門が働きやすいようにサポートする役割です。

こういった役割から、「守り」のイメージを持たれがちな総務ですが、近年、これからの総務のあるべき姿として、能動型の「戦略総務」が注目を集めています。これは、企業を内部から変える部署として、総務自身が戦略性を持ち、企業の司令塔として機能していくべきとする考え方です。

この背景には、企業をとりまく環境が、労働力不足、グローバル化、ワークスタイル変革などにより、今までと大きく変化していることが挙げられます。激しい競争を生き抜くためには、日々、現場の効率化と活性化を図りつつモチベーションを高めることが求められますが、その舵取りは、組織全体を見渡し各部門とも深く関わっている総務が最適なのです。

総務の業務は多岐にわたりますが、次章では、この新たな「戦略総務」の視点から、業務を整理しポイントを解説します。

全社に影響力を発揮する!総務の業務一覧

「戦略総務」とは、トップの右腕として、組織の各部門がその専門機能を最大限に発揮できるよう、先見性をもって統括することです。言いかえれば、従来の総務に求められるのが、他部門のニーズにてきぱきと応える力(主に事務処理能力)だったのに対し、「戦略総務」では、トップのニーズに応える力(主に情報収集・分析能力)に加え、他部門にアドバイスや提案を行う力(交渉力、経営センス)といった、新しい能力が求められているといえるでしょう。

そしてこのように、組織の前面に立ち企業を動かす力を持つからこそ、今まで以上に、一般社会とも積極的にわたり合っていくことが重要です。

この観点から、総務の業務を次の5種類に分けて解説します。

①経営トップの「懐刀」(ふところがたな):経営上の意思決定に役立つ情報分析・提供、アドバイスや進言

総務は、経営トップに最も近いところに位置しているからこそ、経営上の意思決定に必要な情報提供を行うことが可能です。経済や社会の動き、業界の動向、他社情報などに、常に鋭いアンテナを張りめぐらせておくことで、トップが求める最新の情報を随時提供します。

また単なる情報の提供にとどまらず、トップからの指示に基づき、情報分析を行うこともあります。企業のためにベストと思われる戦略の立案も求められます。

一方、トップの言いなりになるだけでは適切でないこともあります。「戦略総務」の「戦略」には、社会的な正義を守り世間に恥じない行動をとる勇気も含まれます。企業の不祥事が相次ぐ時代にあって、トップの判断の誤りや社内の不正が分かったときには、道を正すべくトップにアドバイス・進言を行うことも大事です。

②全社の「コミュニケーションのパイプ機能」:上からの情報伝達、部門間の調整

激しい企業の生存競争を勝ちぬいていくためには、社員が一丸となってモチベーションを高めて業務に臨むことが欠かせません。そのためにも、会社がかかげる経営理念や方針を社員1人1人にまで浸透させ(情報伝達)、足並みを整えることが重要です。その旗振り役を果たすのが総務です。

また部門が異なると、ともすれば自分の部門の殻に閉じこもり、全社的な意思疎通がおろそかになりがちです。この部門の壁を破り、横断的にコミュニケーションをとれるよう、調整する(部門間調整)ことも総務の重要な仕事の1つ。これに加え「戦略総務」では、各部門が設定した目標をまとめあげ、一体感をもって推進していけるよう、適切なアドバイスや協力要請をすることが求められています。

③全社的活動の先導役:全社的イベントの企画、運営

株主総会や入社式は、総務の本来の重要な業務ですが、加えて、スローガンやモットーを具体化するために、全社的な活動を展開することも多くなっています。最近では経費節減運動や禁煙促進運動、リサイクル活動などがよく見られます。

こうした全社的な活動は、全社員の意識を盛り上げ、自発的参加・実行を促すねらいから実施されます。全社員への浸透と活動の進展を図り、リーダーシップをとるのが総務です。

④「企業の顔」としての活躍:受付・電話・文書等による、外部との接触

外部との折衝としては、官公庁への登記や届け出、許認可申請などが筆頭に挙げられますが、「戦略総務」にはそれ以上の積極性が求められます。総務担当者の応対の良し悪しが会社のイメージを決定し、社会的影響をつくりあげるといっても言いすぎではないからです。

具体的にいえば、ネット社会の今日、企業への苦情や不満は瞬間的に社会に広がり、企業イメージの失墜につながりかねません。これを食い止めるため、消費者に適切な対応をとることは総務の大切な役割です。

また今日では、いったん不祥事や事故が起きればマスコミの反応も早いため、とりかえしのつかない信頼低下がもたらされるおそれがあります。一方、新製品PRや企業宣伝などにもマスコミは必要不可欠な存在です。会社を代表する総務だからこそ、企業と社会との架け橋であるメディアを大切にし、誠実な態度で接することが求められます。

さらにCSRの概念が一般的になった今日、企業は、利益を追求するだけでなく、社会の一員として信頼され親しまれる存在でなければなりません。地域コミュニティに溶け込むため、イベントに積極的に参加したり、公害防止に気を配ったりすることも一例です。全社員の意識を啓発し、これらの活動に率先して取り組むのは総務の役割です。

これらに該当する業務は以下の通りです。

【「企業の顔」としての業務】
・広報
・官公庁との渉外
・地域との渉外
・社会貢献活動
・環境対策

⑤各部門の「サービススタッフ」:企業活動を円滑に進めるためのスタッフ業務

総務の仕事の大半は、社内のサポートにあります。必要ならできるかぎりの対応をするサービス精神も大切ですが、「戦略総務」の場合はさらに一歩踏み込み、経費節減や合理化、効率化といった大局的な観点からアドバイスする必要がある場面も生じます。

これらに該当する業務は以下の通りです。

【各部門の「サービススタッフ」業務】
・文書作成、固定資産・備品、消耗品などの管理
・保安・防災業務
・情報セキュリティの整備
・福利厚生業務
・安全衛生管理
・従業員の健康管理
・社内外の慶弔業務

まとめ

従来の総務は「依頼や要望に応える」受身的な役割でしたが、企業をとりまく環境の激変に伴い、今日では、企業の中核として組織を先導する、より積極的な姿勢が求められています。
「戦略総務」をふまえ総務の業務を一覧で示しましたが、内容は従来と同じでも、総務担当者の心構え1つで、守りの姿勢であり続けるか、組織をリードする前向きの総務となるかが、変わってきます。総務の仕事は、どうしても「今までそうしてきたから」「会社の慣習だから」と固まった思考に陥りがちですが、「戦略総務」の考え方をとりいれることで、社内に新しい風を送り込んではいかがでしょうか。

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